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第777話 各地の状況

 西山脈と砂漠から敵が進軍してこないと判断した俺達は、転移魔法陣を使ってアラリリス基地へ大量に兵士を送り込んだ。魔導エンジンを使って大陸中に設置した転移魔法陣のおかげで、魔人軍のバランス調整も出来るようになった。

 

 今アラリリス基地司令部の部屋には、俺と直属の配下達と魔人軍幹部、そして俺の親友グループの神々と、お付きの人たちが一同に会している。オペレーションルームのような場所で、ギレザムの報告を聞いていた。


「やっぱ敵も偵察を出してきているようです。アラリリス近郊でその気配を感じる事がありました。ですが本格的には攻めてこないようで、我々の出方を見ているのかと推測されます」


「なーるほどね。アラリリスからの反応が無いから見に来たか」


「なかなか捕まえられずにすみません」


「敵も随分と慎重になったもんだ」


 北の大陸で戦った時は、もっと大胆に攻めて来ていたはずだ。もしかしたら敵は切羽詰まってきているのかもしれない。まあお膝元まで迫って来たのだから、そうなるのも不思議ではない。そして次はギレザムに変わり、ダークエルフの隊長ウルドが立つ。


「報告いたします!ユークリット方面の状況ですが、敵に目立った動きはありません。今は全土に調査隊が送られ、転移魔法陣が設置されていないかの確認しています。全土の八割が調査され、今の所、転移魔法陣は確認されておりません。西及び東の山脈も探していますが、問題になる場所は発見されていないもようです」


「そうか、まあ油断は出来ないけど、北大陸の基地は人員と武装共に充実しているからな。むしろ貿易で動く商隊などが襲われないように気をつけたい」


「ラウル様のおっしゃっていた通り、各国を繋ぐ街道沿いに屯所を儲けて監視しています。また商隊の移動には、魔人軍の小隊が護衛につく事となっております」


「人間の社会でギルドが復活するまでは、俺達が守るしかない。魔獣の脅威はどうなっているかな?」


「ある程度、間引いて食糧にしていますが、これもラウル様のおっしゃるとおり乱獲しないようにしております」


「そうだな。生態系が崩れてしまうのはまずい」


「また、エミル様のお父上であらせられるハリス・ディアノ―ゼ様とマーカス・バートを中心に、助かった貴族たちが国政を行うようになりました。戦争が終わった頃には、イオナ様の迎え入れが整うと思われます」


 それを聞いたエミルが笑って言う。


「親父も頑張ってるんだな」


「は!それは素晴らしい働きぶりです」


 そして次にシュラーデンにいる、ライカン副隊長のマーグが立ち上がる。


「報告いたします!シュラーデンでございますが、未だに我を王として崇めております。今は人間の兵を増やすために、魔人達が戦闘訓練をしております。またサバーカを中心とした獣人たちが、住民の為に良く働いてくれております。シュラーデン所縁の貴族を捜索しておりますが、未だに見つかっておりません」


「なるべく人間達で自立出来るようにしたいものだがな。今のところは仕方がないだろう。あと強い王の方が国民も安心なんだろうし。お前がずっと王をしてくれてもいいんだぞ」


「ご冗談を。私は魔人軍として前線で戦いたく思っているのです」


「まあ、そういうな。後方での支援も立派な軍の仕事だよ」


「心得ております」


 マーグが座ると、今度はバルギウスに派兵しているミノタウロス隊長のタロスが立ち上がる。


「我もマーグと同感ですな。魔人は前線で力をふるった方が良いかと思うのですがな」


「いや、タロス。バルギウスには屈強な騎士がたくさんいるんだ。万が一があるかもしれないだろ? バルギウスの騎士を抑えるのはお前が適任なんだよ」


「わかっております。まあ、バルギウスの皇帝代理のジークレストが上手くやっておりますからな。あ奴のおかげで帝国兵はおとなしいものです。我が帝都に入ると、ビシッと両脇に並んで出迎えてくれますよ」


 そりゃ、お前がおっかねえからだよ。と、突っ込みそうになるがグッと堪える。タロスは魔人軍でもレアなミノタウロスの進化魔人だ。それを隊長として以下おっかない魔人達が最新兵器を持っているんだから、そりゃ怯えるだろう。


「バルギウスは問題なさそうだな」


「まあ、民は平和に暮らしております」


「よし」


 そして今度はラシュタルにいる、オーガの隊長ザラムが立ち上がった。


「報告いたします! 今のラシュタルはかなり復興が進んでおります。ティファラ女王とルブレスト・キスクによる民の人心掌握が上手くいっているようです。さらに税収も始まっており、国の財源を確保しつつあるかと思われます」


「さすがはティファラだな。いや、ルブレスト・キスクの力が大きいのかな?」


「ラウル様のおっしゃる通りでしょう」


「ラシュタル軍の状況は?」


「司令官のエリックが規律を守らせており、軍隊を維持ずるだけの兵員も集まりつつあります。また精鋭部隊と我らの合同訓練は今も続けられており、魔獣の対応も自分たちで出来るようにまでなりました」


「後はギルドか」


「は!ギルドについては、ルタン町とグラドラムまで繋いで活動をしつつあります。特に獣人のテッカとニケが中心となって活動しておるようです」


「獣人がギルドで活躍するなんて、昔では考えられないね。獣人がギルドに所属するってのはいい事だ。とても健全な事だと思う。何より彼らは人間の身体能力を大きく凌駕するからね」


「はい。また事務方では、マイルス少年と獣人のリューズがその力を発揮しているようです」


「彼らも頑張っているようだな」


「最後に、ティファラ女王がカトリーヌ様に会いたがっておりました」


「なるほど。転移魔法陣も整備されたし、戦局が落ち着いたら連れて行くか」


「は!」


 そして次に立ち上がったのは、サナリアに駐屯しているライカン隊長のジーグだ。


「報告いたします!サナリアの麦畑でございますが、戦前の三倍の広さとなりました。かなりの収穫量となり周辺国家の食糧事情を支えられるかと思います」


「凄いな。それはかなりの朗報だ。そしてサナリアは位置的に東北地方の要だ、また兵員を増やす予定になっているからよろしく頼むよ」


「魔人以外の人口も増えてまいりましたしね、かなり人の出入りが多くなりましたので助かります」


 俺の故郷のサナリアは大きく発展しそうだ。もしかしたらフラスリア以上の都市になるかもしれない。国力が増強されるのはいい事だった。そして次にフラスリア基地の、スプリガン副隊長マズルが立ち上がる。


「報告いたします!フラスリアは領主であるトラメル辺境伯の指揮のもとで、お茶の栽培に力を入れております。こちらの農場もかなりの広さとなり、充実かなりの供給量となるでしょう。更に領兵を募ったところ、かなり集まり軍備も増強しつつあります。我々の力を借りずに、魔獣の対応も出来るようになってまいりました」


「凄いな。フラスリアも充実してるようだ」


「トラメルがフラスリアにお立ち寄りの際は、お会いしてほしいとの事です」


「だな。トラメルにも世話になったしね。こんな戦いはちゃっちゃと終わらせて会いに行こう」


 そして次にクレが立ち上がる。


「報告します!ファートリア神聖国の王都もかなり復旧してまいりました。こちらは聖騎士や魔導士が多数生き残っていたため、サイナス枢機卿の下で国政も行われ始めました」


「そうか。まあ、サイナス枢機卿には聖女リシェルとカーライルもついてるしな。ユークリット王都同様に壊滅的な被害を受けたから、気長にやっていけばいいと思う」


「サイナス枢機卿からの伝言で、アウロラ様から国民に対して啓示を授けていただけるとありがたいそうです。新しいアトム神として国民の前で、お披露目式も行いたいそうです」


 確かに、ファートリア神聖国の国民は全てアウロラを崇め奉ってもらわないと。そしてマイクロ波兵器による、完全な信徒と化してもらう予定だ。その為にも普通の人間の暮らしが出来るように復興してもらいたい。


「わかった。戦いが終わったら検討する」


「伝えます」


 そして最後にナタが立つ。


「報告します!リュート王国でございますが、魔人軍との共同事業であるアグラニ迷宮の運営についてです。先日、第一回目のアグラニ迷宮二階層迄の解放を行いました。久しぶりに返り咲いたお客さん(冒険者)たちの反応も上々です」


「冒険者達に危険が無いようにな」


「そこは、アスモデウスがきちんとやってくれています。万が一が無いように、アグラニ迷宮に潜み危険な状態に陥った冒険者を陰ながら救っております」


「アイツも仕事してんなあ」


「一応、お客さん(冒険者)が危険な階層に潜り込まないように。二層の陰のラスボスをしてます」


「ずいぶん商売根性があるデモンだな」


「ラウル様に心酔しきっているようです」


「俺、アイツに何かしてやった事あったっけ?」


「どうでしょう?」


「何か褒美をやらないといけないかな」


 俺がそう言った途端、シャーミリア、ギレザム、カララ、アナミス、ミノスなどの直属の魔人たちが思いっきり嫌な顔をする。やはり基本的にデモンは嫌いらしい。このあたりはバランスを見て調整していかなければならないだろう。


「ま、まあ。いらないか」


「「「「「「「そうです! 必要ありません!!」」」」」」」


「わ、わかった」


 魔人達とデモンの確執は大きいようだ。とりあえずこの話題には触れないでおこう。するとシャーミリアが立ち上がって、俺に礼をして言う。


「では、ご主人様。総括を」


「とにかく各地の状況は悪くないようだ。前線で戦争をやっていて、国内がボロボロだと安定した戦いが出来ない。かつかつの戦いをやって来た今までと違い、きちんと国民の生活も見ていかなければならないのだ。その為、今回は各地を治める基地の司令官を呼んで話をしてもらった。俺は能力の都合上、どうしても前線に出なければならないからな。安心して任せられると分かっただけでも、心置きなく戦いに専念できるってもんだ!ありがとうな」


「「「「「「「「は!」」」」」」」」


 着実に世界は正常化しているようだ。安定した世界を再び壊されないように、徹底して敵を潰す必要がある。最前線に行く前に、各地に不備が無いか確認するのは俺の務めだ。


 魔導エンジンと転移魔法陣を運用して、これから更に各地の生産効率は上がっていくだろう。また現状を把握しておくことで、どこかに不備があれば必ず数値的に異常が出る。デモンや外敵が現れた場合、すぐに警戒網にひっかかるように些細な事も報告するようにしたのだ。


 これはその定例会の第一回目だ。

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