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第758話 レールガン

 二人のゼクスペルが迫りくる中、俺達の上空を光る物体が飛翔していく。都市内の王城と兵舎、及び屯所に向けて、TOS-1A多連装ロケットランチャーからミサイルが発射されたのだ。次々と都市内から爆発音が聞こえ、ミサイルが着弾したことを俺達に告げてくる。


 「どこからの魔法攻撃だ?」


 ナールが不審そうに、火の手が上がる王城や兵舎方面を見ている。フォティアも同様にそちらに気を取られているようだ。


 まだ魔法攻撃だと思ってんの?やっぱあいつらはアフォだ。


「まあ関係ないわ。デカラビアが何とかするでしょ」


「人間のヤツはどうなるだろうな?」


「サイタラ?知らないわよ」


 なるほど。王城に巣くっているデモンがデカラビアで、糸を引いている人間がサイタラっていうヤツらしい。


 ゴオオォオオ!


 二人が会話する中、再び数発のミサイルが夜空を飛んでいく。するとフォティアがミサイルめがけて、炎槍を出現させ撃とうとしていた。しかし当然ミサイルの速度の方が速く、あっという間に敵の拠点に着弾する。


「フォティア、あれに構うな」


「わかったわ」


 ナールが俺達を睨みつけて、フォティアによそ見をしないように促した。俺達が再び歩みを進めてくるゼクスペルの二人に対し銃を撃ちまくっているのだが、避けるのはギレザムのM134ミニガンからの攻撃だけで、あとは高熱のベールに全て弾かれている。


《読まれてるな》


《では作戦通りに?》


《そう言う事だ》


 俺達は次の行動に移り、すぐにカララに念話を繋げるのだった。


《カララ》


《到着しました》


《よし!俺達はそのまま都市の外に出る!カララは予定通りに》


《はい》


 俺達は急いで都市の外に出るために、市壁の奥に潜り込んでいくのだった。


 ゴオッ!!ドゥッ!


 俺達が穴の東側から都市の外に出たとたんに、後ろから火炎が飛んできた。そのまま穴の中に居続けたら黒焦げになる所だった。俺達はそれを避けて壁際に退避する。


「あっっぶねぇ!」


「大丈夫でございますか!ご主人様!」


 よく見ればシャーミリアの手には、俺が外した尻尾アーマーが握られている。わざわざ運んで来てくれたらしい。それを地面に置いて俺の側に駆けつけてくる。


「放棄してよかったのに」


「あれは、ご主人様の大切なものです」


「いや、壊れちゃったし」


「ミーシャに見せましょう」


「わかった」


 穴の中からの火炎攻撃がひっきりなしに続いた。ナールとフォティアは、俺達から攻撃できないように連続して炎を吐き出しているらしい。そしてそれは功を奏していた。俺達は穴の中を覗くことが出来ないでいる。


「では私が」


 壁の脇で火攻撃を避けている俺の側にカララが来て告げた。


「やってくれ」


「はい」


 カララが手を引くような仕草をすると、ガガガガガガ!と音を立てて市壁の穴から土ぼこりが出てきた。カララの糸で、岩の壁が崩れるように細工していたのだった。そのおかげで火攻撃が止まる。


「ゼクスペルが止まりました」


 シャーミリアが俺に伝えてくる。


「でも、まあ…生きてるよな」


「はい」


 しばらくすると再び穴から土煙が噴き出して来て、炎の攻撃が始まった。ナールとフォティアは数トンの瓦礫を押しのけて、こちらに進んできているらしい。全くしぶとい奴らだ何をしても死にやしない。


 その時。


 ボグゥ!


 市壁の穴から、鋭い音が聞こえて来て炎の攻撃が止まった。


「よし!」


 キィィィィ!ヒューン!


 と後から音と風圧が押し寄せてくる。火攻撃を警戒ししばらく壁に隠れて時を待った。


「ご主人様。火の一族の気配が消えました!」


「よっしゃぁ!」


 一瞬で片が付いた。


 俺の作戦はこうだ。


 俺達が都市内で散々ナールとフォティアと戦い続ける。それは奴らの高熱ベールの前に、俺達の攻撃が通らない事を浸透させるためだ。その後俺達は逃げ、派手なサーモバリック爆弾での攻撃を行う。直撃ならそれでナールとフォティアは爆散していたかもしれないが、あんな小さな的にミサイルを当てる事は不可能に近い。そこで俺達は慌てて逃げ出す。当然、敵の二人は俺達が恐れをなして逃げたと思うだろう。だが市壁の中を通り過ぎる時に、カララが壁を崩して生き埋めにした。それでも二人は『小賢しい真似を』と鼻で笑ったと思う。


 この段階で、俺の作戦は成功していたのだった。


《ガザム!よくやった!》


《当たったのですね!》


《バッチリ!》


《良かったです》


 ガザムがいる場所は、この東の市壁の穴まで真っすぐに伸びた先にある。そこに俺達はこの最後の罠を仕込んでいた。そこに俺が仕込んだ兵器は…


 レールガンだ。


 巨大なレールガンをこの穴に向けて設置し、ガザムが引き金を引くのを待っていた。難点は電力供給をどうするか。この兵器を使うには大量の電力が必要となる。俺はその電力供給を可能にするために、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦を召喚していたのだった。この艦艇は建造費があまりにも高いために、結果米国で三隻しか建造されなかった艦艇だ。特筆すべきは、MT30ガスタービン発電機二基とRR450ガスタービン発電機二基及び、非常用ディーゼル発電機を複数搭載しているところ。それによりレールガンが必要としている二十五メガワットの電力を発電する事が出来た。


 そのレールガンの射線を、この市壁の穴の中心に来るようにセッティングしていたのだった。火の一族は何故か悠々と真正面から追って来る。恐らくは絶対的な自信がそうさせるのだろうが、俺はそれを想定して追ってくるあいつらを駆除する方法を考えた。


「敵の死体を確認してくれ」


「では私奴が」


 シュッとシャーミリアが消える。


《ご主人様!見事に吹き飛んでおります!》


 シャーミリアがウキウキと伝えてきた。俺に苦汁を飲ませたやつらが死んでいる事が相当嬉しいらしい。俺達が洞窟の中に入ってみると、あの火の一族がみぞおち辺りから上を無くして死んでいる。マッハ6で飛翔する合金の弾頭に、高音のベールなど何の意味もなさなかったらしい。


「いやあ…、ファートリア聖都で苦労した甲斐があったってもんだな」


「はい。あれがあっての作戦ですね!」


 ギレザムも喜んでいる。あんなに苦戦した相手が、こうもあっさり死んだことに笑いが止まらないらしい。そしてギレザムの言うとおり、ファートリア聖都でフーと戦っていなかったら、この作戦は思いつかなかっただろう。


「念のため」


 俺は数個の手榴弾を召喚してピンを外し、頭の無い胴体にズボっと突っ込んだ。


 バンッ!


 二つの死体は、木っ端みじんに炸裂する。


 あー、スーッとした。


 だが喜んでばかりもいられない。まだ都市にはデモンが巣くっている。


「じゃあ、次だな」


「「「「は!」」」」


 シャーミリア、ギレザム、カララ、ゴーグが返事をする。


《ルフラ!こっちは上手く行ったぞ!そっちはどうだ》


《リュウインシオンとヘオジュエが騎士を指揮して、市民たちをうまく避難させてくれました。今はドゥムヤ達が居たあばら家に怪我人などを収容しています》


 もちろん二十五万人全員が入るわけはないが、けが人や子供と老人を休ませるには良いだろう。


《わかった。俺達は次の作戦に入る》


《わかりました》


 俺はギレザム達に向き直る。


「ここからが少し厄介だ」


「そうですね」

「はい」


 ギレザムとシャーミリアが俺を見て言う。


「なぜ魔法陣が作動しないのか?もとより仕掛けてないのかな?」


「調べましょう」


「だな」


 俺達は再び市壁の穴を通って都市に入った。そして俺は腕のケースから、鏡面薬を取ってカプセルを割り地面い振りまいてみる。すると地面には仄かに魔法陣の線が光った。


「設置はされているようだ」


「市民が逃げたことで、魔法陣を作動させるのをやめたのでしょうか?」


 ギレザムが予想する。


「いや。俺達が再び侵入してくるのを待ってるんだと思う」


「なるほど。魔法陣を発動させて、我々を消滅させるつもりですね」


「じゃないかな」


「厄介ですね」


「ああ」


 敵は既に市民が避難したことを知っているのだろう。だが未だに魔法陣を発動させないのは、俺達に攻め入りさせない為だ。俺達が都市に入った途端に魔法陣を発動させてくるに違いない。


「なら入らないまでだ」


「「「「は!」」」」


《マキーナ!マリアを連れて市壁の穴まで降りて来てくれ》


 俺は上空のマキーナに念話を繋げた。


《は!》


 俺達が市壁の外に戻ると、そこにマキーナとマリアが降り立った。


「ごくろうさん」


「いえ、私は一度しか攻撃をしておりません」


「見事なスナイプショットだったよ。ギュスターブというデモンは意識外からの攻撃を読めずに、あっさり死にやがった」


「ありがとうございます」


「で、次の作戦に移ろうと思う」


 するとマリアが心配そうに俺に聞いてくる。


「カトリーヌ様は大丈夫でしょうか?」


「ああ、カティは洞窟の都市でアナミスと、市民の治癒にあたっている。今はアナミスと共に、召喚していたトラックに乗せて市民を輸送する準備をしている頃だ」


「わかりました」


 マリアは戦闘中もカトリーヌの事を心配していたのだろう。


「マキーナ!すぐに移動中のカトリーヌのもとへ!」


「は!」


 シュッ!


 マキーナが夜空へと飛び去って行った。もちろんアナミスだけでも市民や騎士たちをコントロールできるが念の為だ。


「さてと。敵はどうなったかな?」


「はい、ご主人様。都市内には未だデモンの気配が御座います」


「了解だ」


《ガザム!ミサイルの残弾を全部撃ちこんでくれ》


《は!》


 そして都市内からは再び爆撃の音が聞こえ始めるのだった。デモンの気配が消えるまで打ち込もうと思うが、恐らくは仕留めきれないだろうと思う。


《全弾撃ちきりました》


《了解だ。ガザムは拠点を離れてこっちに来い》


《は!》


「シャーミリア。デモンはどうだ?」


「消滅していません」


 想定内だ。


「よし。じゃあ最後の仕上げだな」


「「「「は!」」」」


 俺達は都市に入らぬよう、市壁に上がって都市内を確認する。都市内はあちこちから煙が上がっているが、敵は未だに沈黙を続けていた。デモンが現れる気配も、ドゥムヤが大挙して訪れる事も無かった。


「デモンがいる、おおよその位置は?」


 俺がシャーミリアに聞く。


「はい。既に王城は出ているようです。どうやら我々の攻撃を避けるために、森に逃げ込んだようです」


「森か…さすがに森は攻撃できないな」


「なぜでございましょう?」


「戦いが終われば、アラリリスの民がここに戻ってくる。その時に食料や水が調達できる森が焼けていれば、死活問題だ」


「なるほどでございます」


 案外、敵のデモンの頭は悪く無いようだ。恐らく俺が攻撃してこない事を想定し、森の中に逃げ込んだのだろう。あの森を無くしては二十五万の民を助ける事が出来ない。


「俺達が潜入すれば、魔法陣の罠を発動させるか…。だがこのままデモンを泳がせていたら何をするか分からないし、逃げられる可能性もある…」


 あちこちから火の手が上がる都市を眺めながら、俺は次の作戦を考えるのだった。

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