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第723話 調査会議

俺達、異世界転生組とモーリス先生が会議をしていた。


まずは砂漠の調査を経て分かった事を整理してみる。


一つ目は、空母落としによって発生した瘴気は更に成長していた。

二つ目は、瘴気が物理的な障害となって侵入を防いでいる。

三つ目は、瘴気はファントムの手を飛ばすほどの破壊力がある。

四つ目は、生物が全く居ない訳ではない。

五つ目は、超巨大メガロドンいて襲ってくると砂の津波が発生する。


以上の五つの項目が挙げられた。


「それに強い魔力で結界を張れば、少しの時間は防げるってことかな」


「じゃがラウルほどの魔力持ちでなければ無理じゃぞ」


「人間では到底無理ですか?」


「そうじゃな」


黒板に項目を書いていたグレースが先生に聞く。


「モーリス先生。あの瘴気のさらに奥はどうなっているのでしょうね?」


「まったく想像がつかんのじゃ」


「…ですよね」


もちろんあの先を推測する事など、モーリス先生にすら出来ないだろう。あれは俺の空母落としが原因で作られ、全くの未知の状態なのだから。だがあの巨大メガロドンの出現によって、新たな可能性が生まれたことを知る。


「とにかくあの先は全く未知の領域、もっと恐ろしい生物がすんでいる可能性だってあるということですね」


「それも否定できんのう」


いずれにせよ今の俺達の力では、あの砂漠を攻略する事など不可能だ。恐らくは敵もあそこを越えてはやって来れないだろうと結論付けた。


「しかし…なんであんなものが出来たんですかね?」


オージェが腕組みをしながら黒板を見つめて言う。


「ここからはわしの推測じゃが、恐らくあれはなにかを守っているのじゃろう」


「守っている?」


皆が先生を見る。一体誰が何を守っているというのだろう?モーリス先生の意外な発言に、俺達は次に出てくる言葉を待つのだった。


「わしが、今までの経験と知識を全てかき集めて考えてみるとじゃな、大地が自らを守っているんじゃなかろうかと思うのじゃ」


「大地に意志があると言う事ですか?」


「いや、大地に関するすべての事が、防衛本能を働かせておるのじゃないかと思うたのじゃ」


先生が立ち上がって黒板の方に歩いて行き、書き石を手にもつ。そして黒板の上にスラスラと何かを書き記していくのだった。


「まずは精霊じゃな。精霊とは自然の何にでも宿っていると考えられているのじゃ、それらが破壊された大地を修復するために、何かをしたとも考えられる」


「すみません先生、私の精霊は反応しませんでしたよ?」


エミルが否定するように言った。


「そのとおりじゃ。既にあそこは精霊の宿る土地ではない、だが精霊の思念が何かを発動させたとも考えられるのじゃ。まあこれはあくまでもわしの推測であって、他にも要因はあるがのう」


「他にも?」


「砂漠に生息しておった魔獣たちが大量に死んで、その魔力が瘴気に変わったとか。砂漠の魔獣は特別じゃろうからの」


「魔力がですか…」


「もちろんそれも推測じゃ」


先生はカツカツと書き石を滑らせながら言う。


「さらに考えられるのは、砂漠の地下に何かがあってそれが破壊された、もしくは地表に出て来たなどじゃろ」


最後の先生の言葉に俺は引っかかった。


「そう言えば…」


虹蛇が砂漠の地下に神殿を作って、何かを守っているようにも感じたのだ。もしかしたらそれらが破壊されて、あんな現象が起きたとも考えられるのではないか?


そう思った俺はふとグレースを見つめる。


「どうしたんです?ラウルさん」


「いや…虹蛇の記憶が呼び覚まされたりしてないかなと思って」


「ないですよ、どうしてです?」


「そうだよな…ただ無関係じゃなさそうな事を思い出したんだ」


「虹蛇が関係しているってことですか?」


「虹蛇は、こんな不毛な砂漠の地下に、ダイヤモンドの森のような神殿をつくっていたんだが、もしかしたら虹蛇が何かを守ろうとしていたとか…。シン国と砂漠の間にも結界を作っていたし、何か関係があるんじゃないかと思ってな」


「そうですか…でも、すみません…全く何も思い浮かびません」


「そうか…」


俺達の会話を聞いてモーリス先生が、それも黒板に書き記していく。そして書いたものを眺めて、何かを思案しているようだ。俺達は先生の発言を待つ。すると先生は更にスラスラと何かを書き始めてから、書き石を置いた。


「ふむ」


何か分かったのだろうか?


「その線が有力じゃろうな。もしくはすべてが作用しているのやも知れんのじゃ…」


「虹蛇が何かを守っていたと?」


「そうじゃな…もしくはその逆で…こちらの世界を守っていたのやも知れん」


「こちらの世界を守る?」


「例えばシン国は、あの砂漠から国を守るように結界が作られておったじゃろう。もしかしたらラウルが見た地下の神殿は、何かからこの世界を守るために作られたのやも知れんのじゃ」


「それを私が破壊してしまったという事ですかね?」


「まだ断定は出来んがのう、そしてこれから推測される事は、その地下の神殿は恐らく一つではなかったと思うのじゃ」


「砂漠の広範囲に分部していたという事ですか?」


「推測じゃがの、そう考えた方が辻褄があうのじゃよ」


前の虹蛇は次世代の虹蛇であるグレースに、何も告げずに受体してしまったので、それが真実かどうかは分からなかった。だがそう考えると確かに辻褄はあう。


「私の攻撃で、とんでもない事をしてしまいました…」


「ラウルよ、あの時は致し方なかったのじゃ」


「そうだよラウル。あのまま敵をやり過ごしていたら、シン国は滅びていたぞ」


モーリス先生とエミルが俺をフォローしてくれる。だが俺は、もっとやりようはなかったのかと自問自答してしまうのだった。


「おまえ、自分のせいだと思ってんのか?」


オージェは俺の心を見抜いているようだ。


「いやオージェ、実際そうだろ?」


「違うね。それを言うなら、ここに居る全員だろう。あれに対して誰もなすすべがなかった、むしろラウルはそれを強制的に止めたんだ。褒められる事はあっても、その過失を責める者はいないと思うがな」


「そうですよラウルさん。僕だって虹蛇の能力を全て使えたなら、止められていたのかもしれない。だけど受体したばかりで、何もできなかったのは事実です」


「そうか…」


「落ちこんでる暇なんてないぞ、敵はそうしている間にも部隊を再編して襲ってくるかもしれん」


確かにオージェの言うとおりだ。ここで悔やんでいても何の解決もしないのだ。やってしまった事よりも、これからの事を考えるのが先決だった。


「それにしてもじゃな…」


モーリス先生が、テーブルの上に置いた銀の筒を見つめる。


「これはどうするつもりなのです?」


「どうもこうもない、これは瘴気を閉じ込めるだけの魔道具じゃからの。ドワーフに作らせた銀の筒に、わしが魔導を施したやつじゃ」


「開けてみますか?」


「今は無理じゃ。これからバルムスとデイジーがくるのであろう?彼らがここに研究所を作ってからの方が良さそうじゃ」


「わかりました」


どうやらモーリス先生は、バルムスとデイジーが来るのを見越して瘴気を取りに行ったらしい。


「解決の糸口を考えるのは、あやつらが来てからじゃ。それよりも、わしらは次の行動を考えねばならんのじゃないか?」


「はい」


砂漠については全く放っておくことは出来ないが、結論としては敵もあの砂漠を通る事が出来ないという事だ。砂漠の防衛本能ともいえるので、恐らくは誰も寄せ付け無いと結論付けられた。


「という事は敵が侵入してくるとすれば、砂漠を迂回した東の街道と、西の山脈という事になりますね」


俺達は次の議題へと移る。


「そうなるじゃろうな」


「なら次の調査対象は、東の街道と西の山脈です」


「だとラウルよ、隊を二分割しなければならんな」


「ああオージェ。俺はそれも踏まえて航空部隊の強化を考えていたんだからな」


「俺の簡単な講習会で、マリアさんがヘリの操縦を覚えてくれたからね。何とかなりそうだ。」


「そうだなエミル。それについてはお前の指導のおかげだよ」


「いや…ひとえに彼女の才能だと思うがね」


「まあ…否定はしないけど」


俺はもっと時間がかかるかと思っていたのだが、マリアがヘリの操縦をマスターしてくれたおかげで作戦を早められそうだった。もう少しの訓練が必要だろうが、隊の編成をしやすくなったのは事実だった。


「わしは基地でバルムスとデイジーを待つとしよう」


「それはありがたいです。今までの状況説明と、基地をどうすべきかの説明をする人が必要です」


「ふむ」


「ヘリの操縦が出来るエミルと、マリアを起点に隊の編成を考えます」


「そうしよう」


そして、この基地の防衛もおろそかにするわけにはいかなかった。


「あいにく俺の直属は、マカ、クレ、ナタ、タピの四人を除いて全員がここに居ます。拠点防衛の人員配備も含め、隊を編成して行こうと思います」


そして隊の編成についての話し合いになった。


「まずは本隊をどうするか」


「重要なのは砂漠の国アラリリス方面じゃな」


「そうです」


「かなり危険じゃからのう、主力をそろえねばなるまいて」


「ええ、東の街道を南下する隊は私が率います」


俺が本体を率いる事を名乗り出る。するとグレースが発言した。


「なら兵器を出せる僕は、別動隊になりますね」


「そうしてくれ」


「各隊の隊長はラウルとオージェでいいよな」


「そうだなエミル」


「分かった。俺は西の山脈だな、了解だ」


「ああオージェ、頼む」


「なら俺はセイラを連れて行く。彼女は俺にバフがかけられるようだ」


「了解だ、それなら俺はファントムを連れて行かねばならない。まだ俺無しでは思考ができないからな」


「ならシャーミリア嬢も同じ隊におらねばならんじゃろ」


「はい」


「僕はオンジを連れて行きますよ、やはり虹蛇を守る一族だけあって特別な力があるようです」


グレースが言う。


「なら俺はヘリのナビにケイナを連れて行く、これまでの戦いでかなり正確な判断が出来るようになっているからな」


エミルが言った。


「防衛にはラーズを残してくれると助かるのう」


「はい、モーリス先生の護衛はラーズ無くして語れません」


「ふむ」


「更に防衛に向いた魔人を残していきます。ミノスも基地の防衛に、ティラは二カルス大森林基地に引き続いて、この基地でも進化魔人達の総指揮をとらせます」


「わかったのじゃ」


「ラウル。生存者がいる可能性を考えて、アナミスさんはアラリリス方面に行ってもらった方がよさそうだな」


「分かったエミル。アナミスはこっちで使う」


「人間がいる可能性があるなら、回復役もいるだろ?カトリーヌさんは行けるか?」


「ああエミル、ルフラとセットでなら問題ない」


「他に耐久力の高い魔人を教えてくれ」


オージェが聞いてくる。


「ドランとスラガだろうな」


「なら西の山脈の隊に連れて行っていいか?」


「そうしてくれ。ドランは航空戦力としても使えるが、ルピアも連れて行ってくれ」


「わかった」


そうして次々に候補を選出し、隊の編成が決められていくのだった。編成は次の通り。


砂漠の国アラリリス調査隊(本隊)

ラウル、マリア、シャーミリア、マキーナ、ファントム、ギレザム、ガザム、ゴーグ、カララ、アナミス、カトリーヌ&ルフラ


西の山脈調査隊

オージェ、エミル、グレース、セイラ、トライトン、ドラン、スラガ、ルピア、ケイナ、オンジ


基地防衛隊

モーリス先生、ティラ、ラーズ、ミノス、進化魔人数百名


そして人間のイオナ、アウロラ、ミーシャ、ミゼッタ、エドハイラ、ナガセハルト、イショウキリヤ、キチョウカナデ、ホウジョウマコは、基地へ残していく事となった。


「では、モーリス先生。母さん達を頼みます」


「分かったのじゃ、任せておれ」


「はい、それでは作戦決行の前日までに、各自で内容を練りましょう」


「「「了解」」」

「うむ」


あとはマリアのヘリ操縦の熟練度次第だ。エミルの試験を突破したら作戦開始となる。隊の編成及び作戦内容は、作戦決行の前日に全員に発表する事とする。もちろん情報が漏洩するリスクは無いだろうが、シン国からのまかない人などの外部の人間が来ているため慎重を期す。


そうして会議は終わるのだった。

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