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第662話 潜伏した村へ

修正

三人の異世界人を処分→深く眠らせて天井裏に隠した


にしました

村からだいぶ離れた西側にヘリを下ろし、エミルとケイナには待機してもらう事にした。村で作戦が終了したら迎えに来る事になっている。


「村が見えました」


ルフラがカトリーヌの口で言う。俺も見えてはいるが、恐らくモーリス先生やマリアやカーライルには見えていないだろう。カトリーヌはルフラを纏って魔人の力が使えるため、鮮明に見えている。


「これを」


軍用暗視ゴーグルENVG-Bを召喚し、モーリス先生とマリアとカーライルに渡す。光魔法で照らしてしまうと相手にこちらの存在を知らせてしまうので、人間が暗闇を走って近づいていく為には必要だった。


「ふむ」

「はい」

「ありがとうございます」


魔法のローブを着た白髭のおじいさんのゴーグル姿、メイド服に身を包んだ女性のゴーグル姿、聖騎士の鎧をつけた男のゴーグル姿がそこにある。彼らが暗視ゴーグルを着けているさまは、いつ見てもシュールだ。


《スラガこちらは準備が整った》


《こちらもいつでも行けます》


《全員ハンドガンにサイレンサーを装着》


《《《《は!》》》》


スラガとマキーナ、アナミス、ルピアから返事が来る。俺もコルトガバメントを召喚しサイレンサーをとりつけた。マリアはP320とベレッタ92を常に携帯しており、俺がサイレンサーを二つ渡してやると、それを受け取って取り付けた。


《時計合わせ》


《《《《は!》》》》


《5、4、3、2、1》


ピッこれで魔人全員の時間が合わさった。


《シャーミリアは上空監視を続け俺達に指示をくれ》


《かしこまりました》


《では60秒後に作戦を開始する、転移魔法には十分注意するように》


《《《《《は!》》》》》


念話で通達をして、俺はモーリス先生たちの方を振り向く。


「今日は良い感じに曇ってくれている。潜入にはもってこいだ。異世界人を一人一人確保していこうと思うが、騒ぎそうな時や逃げそうになったら殺害してもいい」


「わかったのじゃ」

「はい」

「わかりました」

「おまかせください」


「作戦開始時間まで、7、6、5、4、3、2、1」


時間と共に俺達は音もなく村に近づいて行く。敵に気づかれれば逃げられる可能性があるため、やる時は一気にやる必要があるだろう。村の柵付近に到着し、村の中を伺うが視界に異世界人は入ってこない。


《シャーミリア。俺達の位置は把握しているな》


《は!そこから一番近い異世界人はその前方の建物の4軒先の、庭に木が2本生えた家の中に二人おります》


《了解》


そして俺は後ろを振り向きハンドサインで、皆の動きを指示していく。するとまるで特殊部隊のように、モーリス先生とルフラとカトリーヌ、マリア、カーライルがスルスルと闇の中を走って行った。彼らは慣れたもので、身のこなしが洗練されていた。


うん、最高の冒険者パーティーだ。


《ファントム、彼らに被害が及びそうなときは全力で護衛を頼むぞ》


《……》


俺はファントムと共にその家の裏手まで走った。あっという間にたどり着いて闇に潜む。


《シャーミリア、俺とスラガとの位置は?》


《逆方向の東より110メートルほど侵入し、ご主人様の場所からは南東に600です》


《わかった。スラガ!シャーミリアからは敵の位置を聞いているか》


《はい、こちらの家には三人が潜んでいるようです》


《状況は?》


《既に目視で確認しております》


《マキーナとルピアは両側の家の屋根に移って監視》


《《は!》》


《アナ!中の異世界人の状態が分かるか?》


《立っている一人が物色中のようです。二人は何かを食べているかと》


《分かった。スラガと潜入して速やかに眠らせろ》


《《は!》》


《突入まで、5、4、3》


《お待ちくださいご主人様!》


俺が突入の指示を出そうとした時、シャーミリアから念話が来る。


《スラガ止まれ!どうしたシャーミリア》


《村の南方面から新たに誰かがやってくるようです》


《わかった。全員陰にひそめ》


《《《《《は!》》》》》


もちろん人間チームにはルフラがいるので念話で伝わっている。もう一度俺達は建物の暗がりにひそめるように隠れた。


《村の中心あたりから数名がそちらへ向かいました》


《了解》


俺達がそこに潜んでいると、異世界人達の話し声が聞こえて来た。


「結構食いもんあったよな」


「ええやっと人間らしい食べ物が食べられそう」


「マジできつかったぜ」


「ほんと。この世界の人間は野蛮でやだ」


「マジで。とれたての肉とか半生で食うもんな」


「まあ、レアって焼き方なんだろうけど」


「味もしねえし」


「塩が無いみたい」


「まったく、文明人にはむりだな」


「とにかく、そろそろ彼女がくるわね」


「ああ、噂をすればってやつだ。どうやら来たようだぞ」


すると南の方角からガヤガヤと人の声が聞こえて来た。村に新たに侵入して来た異世界人だろう。


《ミリア。異世界人はどのあたりに分布している》


《ご主人様の周辺と村長宅内におります。スラガたちの所にいる三人は動いておりません》


《スラガ、アナミス聞こえたな。そちらは反対側にあたる、隠密行動で建物の異世界人を制圧しろ。マキーナとルピアは周辺を警戒》


《《《《は!》》》》


俺の指示で、スラガたちは音もなく潜入している頃だろう。


村の外から来た異世界人の声につられるように、俺とファントムが潜入しようとしていた建物から二人の少女が出て来た。


「あの、食料がありました」


女の子が怯えた感じに言う。


「おう、じゃあ全部もってこい」


「わかりました」


ふてぶてしそうなやつが、女の子に指示をして食料を持ってこさせるようだ。どうやら上下関係があるらしい。


「よう!来たか!」


「ええ、また新しいお仲間よ」


村の外から来たケバい女が言った。その女の周りには5人くらいの少年少女がいた。


「まったくどっから湧いて来るんだか知らねえが、なんだってんだろな」


「まあいいじゃない。どんどんスポーンして来るんだから使い放題だわ」


「マジでな」


「私もあなたも同じように出て来たんじゃないのかしら?」


「とにかく人数は多い方が良い。それにしても、あいつからここに飛ばされた連中はどこにいったんだろうな」


「いないの?」


「どこにもいない。なんとなく戦闘が行われた雰囲気はあるんだが、人っ子一人いないんだよ」


「最初に飛ばされた連中は上手くやったのかしら?」


「わからねえ、そいつらがいねえ」


「不気味ね」


「ああ、とにかく食いもんとかは確保出来たぞ」


「お腹減ったー。もう疲れたんだけどー」


「お前が連れてきたやつらはどうだ?」


「私の力で言う事を聞くわ」


「しっかし魔法なんてな、何でこんな力が使えるんだかわからねえし」


「まったくね」


どうやらこいつらは、何故今のような状況になっているのか分からないみたいだ。とにかく全体で何人くらいいるのだろう…一気に制圧するために掌握する必要がある。転移魔法を使うやつを最初におさえる事が出来ればいいのだが、そう都合よく行くとは限らない。


《ミリア、村の周辺に人はいるか?》


《いえ、村の外には誰もおりません》


《スラガの方はどうなっている?》


《はいラウル様。三人とも眠らせました》


《わかった。まずは待機していてくれ》


どこにいる…転移魔法を使うやつは一人か、二人か…


「しかしアイツの力はおっかねえよな」


異世界人の少年が再び話し出す。


「ほんとよね。人を飛ばせるし、なんか術をかけられると物凄い恐怖に襲われたような顔をするし」


「俺達は使い物になると思われてラッキーだった」


「そうだけど。ムカつく、何であんな子供にこき使われてるんだか」


「馬鹿!聞かれたらやられるかもしれないぞ」


「あ、いけない」


二人は口を噤んだ。どうやらこいつらは主犯格じゃないらしい。恐れている相手がいるらしいが、そいつはこの村のどこにいるんだろうか?


《こいつらは主犯じゃない、転移魔法を使うやつは他にいる》


《恩師様達を下がらせますか?》


《そうだなルフラ。音を立てないように六十メートルほど南東に移動してくれ》


《はい》


ルフラが状況を判断して先生達を下がらせてくれている。出来るだけ早急に、どこに転移魔法使いがいるかを知る必要がある。


《アナミス、建屋内の異世界人を深く眠らせて天井裏にでも隠してくれ》


《かしこまりました》


彼らを発見されれば俺達がここにいる事がバレてしまう。


《ミリア。一番人数が多い建屋は?》


《村長宅かと》


確かにあそこの建屋は大きい。みんなが休むには丁度いいだろう。


《みんな。恐らくこいつらは食料を確保して休息をとるはずだ。寝るまでこのまま待機する事にする。ここで寝なければ外に向かう可能性もある。逃がすくらいなら全て捕えてしまおう》


《《《《《かしこまりました》》》》》


《全員。村の端にある住居に潜入して身を隠せ》


《《《《《は!》》》》》


そして俺とファントムもその場所から離れて、異世界人の動きを監視する。数軒の家で食料を集めた少年少女が、次第に村長宅へと集まり始めた。


《皆が一斉に村長宅付近へと移動しているようです》


操られてんのかな?


《分かった。スラガたちは村長宅の東付近に待機、ルフラはモーリス先生たちと村長宅の南へ陣取ってくれ。もし逃げ出した異世界人が居たら対処をお願いする》


《《は!》》


《シャーミリアは、異世界人から見つからない場所を各隊に指定しつつ、村長宅まで誘導してくれ》


《かしこまりました》


俺とファントムも北西から村長宅へと向かった。シャーミリアの指示で、止まったり進んだりしながら異世界人に気づかれることなく近づいて行く。


《まってくださいラウル様》


ルフラからだった。


《全隊止まれ!》


俺とファントムも止まる。


《村長宅から四方へ50メートルほどに、警戒用の魔法が張られていると恩師様がおっしゃってます》


《スラガは分かったか?》


《分かりませんでした》


《マジか、俺もだ》


どうやら魔人達には感知できないような、索敵魔法を使う者がいるらしい。不用意に近づかなくてよかった。


《申し訳ございませんでした!ご主人様》


《ミリアでも分からんかったか?》


《はい》


《もしかしたら新種の魔法か能力かもしれん。魔人では確認できないのかも》


《お役に立てず…》


《それはいい。ルフラ、モーリス先生はなんと?》


《しばしまて、少し時間はかかるが相手に気づかれないように解除できそうだ。とのことです》


まったく、あのおじいちゃんはすげえ。魔法の事なら本当に何でも知っているようだ。俺達はそこに待機してしばらく息を潜める。


《解除できたそうです》


《はやっ!》


やっぱすげえ。


《進んでもかまわないと》


《了解だ》


《ご主人様。すべての異世界人が既に村長宅へと入ったようです》


《よし!》


そして俺達はそのまま闇から闇へと村長宅に向けて進んでいく。


《俺とファントムが位置に着いた!》


《こちらもです》

《こちらもです》


村長宅を三方向から囲み建物を監視する。建物からは灯りが漏れ、窓から中にいる人影が見えた。どうやら皆で飯を食っているようだ。やっと人が住んでいた村にたどり着いた事で、久々に人間らしい食事にでもありつけたのだろう。


《全員監視したまま待機だ。あいつらが寝静まるのをまつ》


《《《《は!》》》》


そして再び俺達は待機する。この中に転移魔法を使う者がいるのかどうか分からないが、もしいなかったら全員を制圧しアナミスの催眠をかけて連行するつもりだ。居た場合はモーリス先生が転移魔法解除をかける事になる。魔法使いどうしのスピード勝負となるだろう。先生が言うところによると、十秒以内に解除出来る確率は一割程度しかないという事だ。二人いる場合は、手も足も出せずに逃げられる可能性があるらしい。


《突入後は先生が魔法に集中する時間を作るんだ。先生が言うところでは十秒が限界だ。それ以上は間違いなく転移して逃げられるだろう》


《《《《《は!》》》》》


《シャーミリア》


《は!既に屋根の上に》


《了解だ。戦闘開始と同時に屋根を突き破って突入だ》


《かしこまりました》


四方と上を囲み俺達は異世界の少年少女が寝静まるのを待つ。もし転移魔法使いが二人以上いた場合は、巻き込まれるのを防ぐため全員が即時撤退する事を決めていた。


《これで一雨来ればもっとやりやすいんだがな…》


月を雲が覆っており、辺りは暗いままだったが雨は降りそうにもなかった。風もなく不気味で静かな夜だった。

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