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第571話 逃れた貴族の保護

村の前に貴族を待たせ、俺とエミルが村から離れ見えなくなる場所まで歩いて来た。


「エミル、貴族の度肝をぬくとしたらなんだろな」


「そりゃやっぱ戦闘ヘリだろ」


「やっぱそうかね?ずっと出番無かったもんな」


「そうだぞ、俺は一回もミサイルとか撃ってないんだぞ」


「よし!それじゃあ戦闘ヘリでビビらせちゃおうぜ」


「そうしよう」


「AH-1Zヴァイパーとかどうだ?」


「ああ最高だね」


「決定で」


そして俺は目の前にAH-1Zヴァイパーを召喚した。M197 20mm機関砲、ヘルファイア対戦車ミサイル16発、AIM-92 スティンガー空対空ミサイルを装備している。


「じゃあエミルは操縦をよろしく、俺がガンナーとして座る」


「ああ」


「じゃあこれを」


エミルにヘルメットとゴーグルを召喚して渡す。そして自分にはヘルメット表示照準システムを召喚した。


「ラウル!それなんだ?なんかすげえカッコいいぞ」


「これさ、ハイテクなんだよ!ヘルメットで向いた方向に機関砲がむくんだ、その後は自動的に計算し最適な照準をしてくれるってえ優れものだ」


「やっべえな」


「特別な射撃のスキルなんかいらないところが凄くないか?」


「マジすげえ」


「まあ、とりあえず乗るか」


「ああ」


二人は中学生のようにウキウキしながらヴァイパーに乗り込んだ。俺は自動照準のヘルメットを機器に繋ぐ。エミルはヘリを起動させてローターを回した。


「ラウル、機銃を動かしてみろよ」


「わかった」


俺が首を動かしてみると、機銃のカメラが俺の見ている方向に銃身を向けた。


「おおー!」


「どう?動いてる?」


「動いてる動いてる」


「これならケイナでもイケるんじゃないかな?」


「確かに。とにかく俺達で一度試験しないとな」


「だな!じゃあ行こうか」


「了解」


ヘリは直ぐに村の方向へと向かって飛んでいく。俺達の仲間と貴族や村人たちまでが見物人として出てきていた。


《シャーミリア、貴族と村人をもっと草原の方まで連れて行ってくれるか?間違って村に損害が出たらいけない》


《かしこまりました》


ヘリの上から見ていると、ぞろぞろと仲間達と貴族たちが動き出した。貴族たちの目はずっと俺達の方にくぎ付けだった。


《シャーミリア。貴族たちの反応は》


《信じられない、あの魔物はいったいなんなのだ?まさかあれが皇太子の力なのか?とざわついております》


よしよし!それなら目的の一つは果たしたな。


《草原に小高い丘が見えるな》


《はい》


《みんなにそこを見るように言ってくれ》


《かしこまりました》


貴族たちは俺達から小高い丘に目を向けた。


「エミル、あの丘だ。あの丘に攻撃をしてみる」


「了解」


ヒュンヒュンヒュン


ヴァイパーは素早くその丘にめがけて飛んでいく。丘を正面にしてホバリングで空中に待機した。


《シャーミリア。それじゃあ貴族たちにこう言ってくれ、これが魔人国の兵器の力だと。皆を守る盾となる力を目に焼き付けるように》


《かしこまりました》


シャーミリアが説明するであろう時間を待って丘を眺める。


「エミル、何からやるか?」


「まあ機銃からじゃね?」


「了解」


《ご主人様、貴族達に説明を終えました》


《オッケ》


「じゃあやるか」


ヘルメットの自動照準で丘を見ると照準が中腹あたりに合う。


カチ

バババババババババババ


丘の地面から土ぼこりが舞って岩が飛び散る。


カチ

ドシュー

ドガン!


次にヘルファイア対戦車ミサイルを撃つと、丘の地面が爆発して大きくはじけ爆炎が上がる。そして俺は次々にミサイルを発射した。次々と降り注ぐ爆炎が大きくなっていく。


《シャーミリア貴族は何て?》


《神の力であると。そしてあれを敵にして、我が国は存在し続けられるのかと申しております》


《これはあなた達を滅ぼすためにあるのではない、守るために来たのだと伝えろ》


《は!》


シャーミリアが伝えるのを待つ。


《終えました》


《なんと?》


《既に我々に選択肢など無かったのだなと申しております》


《了解だ。それじゃあそっちに向かうので恐れる事の無いように言ってくれ》


《は!》


エミルはヘリ貴族と村人がいる方に向かって飛ばす。さすがはエミル着地もスムーズで安定した操縦だった。


「じゃあ俺が降りたら彼らに説明する。エミルはデモンストレーション飛行をやってくれるか?」


「了解」


俺がヘリから出て地面に飛びおりると、村人から歓声が上がった。


「おお!皇太子殿下!」

「皇太子殿下ばんざーい!」

「ばんざーいばんざーいばんざーい!」


そして俺は村人たちの前に立った。


「あれをご覧ください!」


エミルが複雑なデモ飛行を行って見せている。


「あれは龍ですか?」


マルケスの娘ガルディアが言う。


「ちがうよ。魔人軍の兵器の一つなんだ。俺の仲間があれを操っている」


「凄い…」


エミルの曲芸飛行に次々と歓声が上がる。俺がエミルに手を振って降りてくるように伝えた。するとヘリは真っすぐこちらに向かって来て、静かに目の前に降りた。中からエミルが出て来て皆に手を振っている。


「マルケスさん。この力で皆様をお守りします。間違いなく村に潜伏するより、魔人基地にいた方が安全であるとお分かりいただけましたか?」


「はい。それ以上に魔人国に対しての、良き付き合い方を模索せねばならないという話になっております。このお力が我がバルギウスに向けられる事の無いようにと」


「いえいえ!我々はそのようなつもりはございません。ただ国政正常化の暁には、平和的に貿易をさせていただき両国の発展に向けてお付き合いしたいと思うだけです」


「しかし相当不利な国交を強いられる事になるのではございませんか?」


「私は恐怖政治をしくつもりはありませんよ。とにかく人々がより良い暮らしが出来るように尽力しているのです。私は北の大陸は皆が兄弟のような関係だと思っております。似たような民族の国々が争う事ほど無益な事はありません。既にファートリアもユークリットも、シュラーデンもラシュタルも、リュート王国もその垣根を取り払いつつあります。これからはバルギウスも各国と友好的にお付き合いできると良いと思っておるのです」


「理想論ではありますが、かような軍事力を持つ国の皇太子に言われると現実的に思えてきますな」


「まだ道半ばですが、ぜひ理想に向けてご一緒しませんか?」


俺はマルケスに手を差し伸べる。


「ここに居る貴族は了承するでしょうが…」


俺の手を取ってマルケスは言う。


「それではマルケスさん。実は他の村々にも貴族が逃げているのです。ここに居る貴族の方から代表6名が私の部下と同行して、残りの方達の説得にあたっていただけないでしょうか?」


「私達より位の高い貴族もおりますが?」


「やる事は同じです。私たちの軍事力を見てもらい納得していただきます」


「…は、はは。まあ…なんというか有無を言わさずですな」


「すみません。私もそう時間がないものですから、ここに居る8名の魔人が同行します。出来ましたら一緒に行動していただき話をつけていただけますと助かります」


「わかりました」


「お願いします」


そう伝えると俺は少し離れた場所に移動して、VBMRグリフォン多用途装甲車を2台召喚した。その1台にデモンストレーション用の12.7㎜ M2機関銃 AT4ロケットランチャー、M240機関銃などの装備を入れる。さらに後部に120㎜迫撃砲を連結した。


「では出発する時が来たら魔人部隊は車両に分割して乗るようにし、そして武器の無い方に貴族の皆さんを乗せてあげてほしい」


「「「「「は!」」」」」


「そして君」


「はい」


俺は部隊に一人連れて来たサキュバスに声をかける。


「基地で俺とアナミスが言ったとおりだ。もし万が一があったら穏便に解決するようにしてほしい」


「かしこまりました」


サキュバス兵は俺に頭を下げる。しかしこのサキュバス兵もなんでこんなに煽情的な格好をしているのだろう?胸とかお腹や太ももとかの肌の露出が激しい恰好をしている。


「皇太子殿下」


「はい」


マルケスが声をかけて来る。


「行く人間が決まりました」


「わかりました」


するとマルケスと5名の男たちが前に出た。


「ありがとうございます」


「これからのバルギウスを左右しかねない事ですからな、慎重に事を運ばないといけません」


「わかりました」


そして俺は魔人達に振り向いて言う。


「いいか!こちらは大切なお客様だ。くれぐれも魔獣や敵からの危害が加わらないように護衛を頼む。これから10カ所以上の村々を回る事になる、心してかかるように!」


「「「「「は!」」」」」


「では皆さん。出立はいつになさいますか?」


「それでは明日の朝一でお願いいたしたい」


「いいでしょう。ではそれまでの時間は、私とマルケスさんでお打ち合わせをしたいのですが?」


「わかりました」


「それでは解散いたしましょう」


「はい」


貴族と村人たちはそろそろと村に入って行った。マルケスとアグアマリー、ガルディアがここに残る。


「しかし…今あそこのあの大きなものはどこから出てきたのでしょう?」


マルケスが指さす方向にはBMRグリフォン多用途装甲車2台があった。


「まあ収納魔法のような物です」


俺はあえて召喚と言う言葉を使わない。召喚魔法は古から禁術とされていてイメージが悪すぎるからだ。


「収納魔法!初めて見ました。しかもあれだけ大きなものを…してあれは何ですかな?」


「乗り物です」


「乗り物?あれを馬車が引くのでしょうか?」


「いえ。あれはあれだけで動きます」


「何と‥‥」


また絶句している。


「これが魔人国の技術です」


「ははは。バルギウス軍は誰と喧嘩をしたのか分かっているのでしょうかね?」


「まあ、少なくともジークレスト皇帝代理はよくわかっておいでです」


「あの人も…災難だ」


「今にも血反吐を吐きそうな顔をしていました」


「なんともおいたわしい」


「同感です」


きっとバルギウス帝都でジークレストはくしゃみをしているに違いない。


「じゃあ…」


そして俺は魔人達に村の外に野営地を設置するように命令し、再びマルケス・シュトラウス邸へと足を向けるのだった。家に着き次第明日からの詳細の打ち合わせをした。そして…念のため元貴族達に不穏な動きがあった場合、粛清の可能性がある事も告げる。それはマルケスも重々承知の上で、ある程度は覚悟していたらしかった。


「…と言う事です。魔人国に対しての敵対行動などが無ければ、誰も怪我をすることは無いと思います。恐怖政治はしないと申しましたが、貴族たちの意思統一が図れなければ危険が及びます。裏切者などが出ないようマルケスさんが管理せざるをえないかと思いますが、その時は魔人の力を利用してください」


「皇太子殿下。私が裏切るとは考えないのですかな?」


「私は見る目があるのです」


というよりもシャーミリアがだけど。


「ふっ、そう言われては責任をもって遂行せねばなりませんな」


「ええ、美しい奥様と可愛いガルディアちゃんの為にも」


「ええ…」


まあこれでマルケスは魔人国の意向を汲み取って動いてくれるだろう。もちろん家族を人質にとるような事はしたくないが、出来るだけ多くの貴族を安全に移動させるために気を引き締めてもらわねばならない。まあ俺と一番最初にめぐりあってしまったのが不運だと思って、頑張ってもらうしかない。


「では」


「皇太子さまは、恐ろしくてしたたかで柔軟なかたですね」


不意にマルケスから声がかけられた。


「それは誉め言葉としてとらえておきましょう」


「はい」


「では明日」


俺はそう言い残してシュトラウス邸を出、村の外に作られた魔人軍のテント村へと足を向けるのだった。

次話:第572話 ユークリット王都へ

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