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第519話 中層ボス

聞き及んでいた人類最高到達点の29層、そこは今までとは違う魔物がいた。魔物たちの死骸の墓場でもあるのだろうか?魔獣のスケルトンが大量にいたのだ。大蛇や狼のスケルトンが群れを成してうようよと漂っている。その群れにガントラックの上から、12.7㎜重機関銃5門でずっと掃射し続けていた。ファントムも下に降りて、M61バルカンをこれでもかというくらい撃ち続けている。


「凄い数ですね」


「このダンジョンの死骸が集められてでもおるようじゃ」


「何というか、ダンジョン自体にそんな力でもあるんでしょうかね?」


「不思議じゃのう」


俺は念のためヴァルキリーを装着して銃を撃つ皆の指揮をしている。モーリス先生は銃を撃つのに飽きて座ってしまった。モーリス先生と俺はガントラックの中央辺りに座って話をしていたのだった。


マリアはマクミラン TAC-50スナイパーライフルで、群れの中にいる大きめのサソリみたいな骨を集中的に狙っている。撃たれて怒ってこっちに来ようとすると、みんなが撃つ12.7mm銃とAT4ロケットランチャーを撃ちこまれて穴だらけになっていた。


「そろそろええんじゃないかのう?」


「みんなの射撃練習ですか?」


「あれ、練習になっておるのかのう」


「確かにむやみに撃っているだけに見えます」


「スケルトンたちも一向にこちらに近づけないようじゃし、というか骨が詰まって進めなくなってしまうのじゃなかろうか」


「でも先生。せっかくの人類最高到達点ですよ」


「でもこんな感じじゃのう…」


「わかりました」


俺はトラックの後ろから下に降りる。


「ファントム!手伝え!」


俺が手をかざすと目の前に、M777 155mm榴弾砲が召喚された。


ガシャン、ガパン


トラックの隣にM777 155mm榴弾砲を設置し始める。ここから骨の魔獣たちが居る部屋に向かっては、少し下り坂になっていた。とにかく気持ちの悪い虫の大群のように、骨の魔物たちがこちらに上って来ようとしては粉砕されている。


「よ!」


ドサ


俺は足元に155㎜榴弾砲を召喚した。それをファントムが持ち上げてM777に装填する。


「じゃあちょっとまってろ」


俺はトラックに戻りキリヤを呼ぶ。


「キリヤ君!ちょっといいか?」


「はい!」


「トラックの前に広く壁を作ってくれるか?」


「わかりました」


キリヤがトラックの前に行くのを見計らって全員に念話で伝える。


《シャーミリア、カララ、ルフラ、ゴーグ!射撃を止めてくれ!みんなはマリアとカティ、モーリス先生を守るように待機!》


《《《《は!》》》》


「よし!キリヤ君壁だ!」


「はい!」


トラックの前に岩のバリケードが作られ始める。日本人の魔力の豊富さのおかげでかなり堅牢なバリケードが出来た。


「ここに榴弾砲の砲身を差し込めるようにしてくれ」


「はい」


岩の壁が分かれたので、そこにファントムが榴弾砲の砲身を差し込んだ。


《魔物たちが上がってきました》


カララが伝えて来る。


《了解だ》


俺が岩の隙間から見ると、射撃を止めた俺達に向かってぞろぞろと骨の魔物が這い上がってきつつあった。


「よーし」


俺はM777の脇に行って榴弾砲の引き金になるワイヤーを持つ。


クイッ


ドーン!


榴弾砲は真っすぐに魔物たちの下へと飛んで派手に炸裂した。その間にも俺はすぐさま次弾を召喚し、それを阿吽の呼吸でファントムが装填している。


クイッ


ドーン!


砲弾は再び奥へと飛んでいき骨の魔物がいる部屋で炸裂した。


そして次弾


クイッ


ドーン!


テンポよく5発の榴弾砲を撃ち続けて先を見てみると、あれだけ蠢いていた大量の骨が見える範囲ではいなくなってしまった。


「ラウル様!」


「なんだいキリヤ君」


「崩落しませんか?」


「その時は俺の魔力を使ってキリヤ君が何とかすればいい」


「は、はい!分かりました!」


「じゃあ壁消して」


「はい」


キリヤが再び地面に手をかざすと、トラックの前からは壁が消え去った。


「よーし!みんな再び武器を構えてくれ!そのまま進むぞ」


「あの…これはどうするんです?」


キリヤがM777榴弾砲を見て言う。


「ああキリヤ君。この榴弾砲は使い捨てだから置いてく」


「つ、使い捨てですか?これが?」


「そうだ?」


「わかりました」


どうやらキリヤは貧乏性らしい。デカいM777を捨てていくと言ったらもったいなさそうな顔をしている。


「よし!ファントムはそのままついてこい!キリヤ君はトラックに乗りたまえ」


「はい」


俺とファントムが先行し始める。


「いけませんご主人様!私奴が先行します!」


「だめだ。俺がまったくダンジョン感を味わっていない」


「だ、だんじょんかん?」


「いいから」


俺の方にはM134ミニガン、手にはバレットM82。ファントムの方にはバカでかいM61バルカンがある。トラックに先行する事先に29階に入って行くが…


「残ってない」


「……」


見渡す限り骨の残骸が散らばっているだけで、どこにも魔物が蠢いてはいなかった。あのバカでかいサソリのような形の骨も居なくなってしまった。


《全員でこの階層の捜索をする!》


《《《《は!》》》》


《ルフラとファントムは残ってマリアとモーリス先生を守れ》


《はい!》

《……》


「キリヤ君!一応トラックの周りに壁を作ってくれ」


「はい」


俺とシャーミリア、ゴーグ、カララがこの階層に人間がいるか捜索に入る。


《横穴にはまだ魔物が残っている可能性がある。十分注意するように》


《《《は!》》》


皆がそれぞれの方向に向かって走って行った。俺も別方向に向かって探し始める。一つの横穴に入ろうとした時だった、デカいトカゲのスケルトンが出て来た。


「おわ!でけえ!」


俺を食おうと噛みついて来るが後方に飛び去って、M134ミニガンを撃ちこんだ。


キュィィィィィィィ


カカカカカカカンッ!


トカゲの頭蓋に穴が空いていくが、ひるむことなく突っこんで来た。そのままバレットM82を口の中に打ち込んでみる。


バグン


カカン


どうやら口の中の骨が砕けただけのようだった。さらに後方に飛び去って、俺はすぐさまAT4ロケットランチャーを召喚し骨のトカゲに向かって撃ちこんだ。


バガーン!


頭から前足くらいまでの部分が吹き飛んだが、最後に振りぬいてきた尻尾が俺を直撃してしまう。俺はそのまま反対側の壁に打ち付けられる。


だが…


ヴァルキリーを装着している俺には何の傷もつける事は出来なかった。


《どうですか?我が主》


《うん楽しい。ダンジョン攻略してる感じする》


《今の攻撃も我が避ける事は出来ましたが、あえて放っておいたんです》


ヴァルキリーがドヤ!って感じで言う。


《分かってるね?》


《ありがとうございます》


そんな会話をしつつもその横穴の奥に進んでみるが、どうやらその先は行き止まりのようだった。シルバーウルフ程度の大きさの骨の魔獣もいたが、思いっきり蹴散らしたら粉々になって吹っ飛ぶ。


《なんもない》


《我の感知にも何も》


《じゃあ戻る》


《はい》


《みんなはどうだ?》


他の捜索に出たやつらに声をかける。


《ご主人様、こちらは何も見つけられません》

《私の方もなにもありませんでした》

《俺の方もないですね》


《トラックに戻るぞ》


《《《は!》》》


そして俺達は直ぐにトラックに戻った。


「先生!ここにも人間はいませんでした」


「ふむ。やはり絶望的かもしれぬな」


「とにかく次の層に降りようと思います」


「ふむ。じゃがここから先は人間が入った事はない、恐らくは未知の魔物が存在しているかもしれぬ!十分注意するのじゃ」


「はい」


俺とシャーミリアとカララが先行し下の階に降りていく。いよいよ人間が到達したことのない地下30階層だった。


ズゥゥゥン

ズゥゥゥン


なんか足音がする。


「キリヤ!トラックを止めろ!」


「はい」


地下に行く通路の途中でトラックを止めさせた。


《シャーミリア、カララ何かいる。先行して様子を見てこい、くれぐれも相手に見つかる事の無いようにな》


《《は!》》


俺達はその場でしばらく待つことにする。


《ご主人様》


《何がいる?》


《こんなところにカオスドラゴンがおります》


《うわ!気軽に進まなくてよかった!》


《いかがなさいましょう》


《もちろん正面からはやらない。飛べないから本来の力は出せないだろうよ》


《はい》


《一度上の層に戻るぞ》


《は!》


そしてトラックをバックさせながら29階層に戻って来た。ここは全滅させたので一匹も魔物がいなかった。


「先生」


「どうしたのじゃ?」


「30階層にカオスドラゴンです」


「なんじゃと?」


俺達の話からもカオスドラゴンの驚異は伝わっているので、みんなに緊張が走った。


「ラウル様。危険ではありませんか?」


カトリーヌが言う。


「ああ、かなり危険だ」


「どうするつもりじゃな?」


「ははっ!もちろん進みます。ですがあいつは俺とカララだけでやります」


「二人でか?」


「むしろ皆を巻き込む危険が無いのでその方が良いです」


「わかったのじゃ」


「よし!カララ!行くぞ!シャーミリアとゴーグはここでみんなを守ってくれ」


「かしこまりました」

「はい」


「ファントムは来い!」


「……」


そして俺とカララは再び30階層へと下りて行くのだった。


《ラウル様。カオスドラゴンですが、今は向こうを向いているようですね》


《そのようだな、チャンスだ。大量の糸を30階層に張り巡らせてくれ》


《聖都の地下の作戦ですね》


《そう言う事だ》


そうしてカララはカオスドラゴンに気づかれないように、30階層に糸を張り巡らせたのであった。


「爆発の余波が上がってくるから、ここに幕を張れるか?」


「もちろんです」


洞窟の一面にカララの網が張り巡らされて、30階から遮断されたのだった。


「じゃ、やる」


「はい」


俺はカララの肩に手を当てて系譜をたどる。そしてカララの糸の先に武器を召喚するイメージを固めていった。


「よっ」


カオスドラゴンの周りに1トンのTNTが出現した。


ギャオオォォォス


どうやら足元に出て来た大量の箱に驚いて鳴いているようだ。


「気づきました」


「じゃ、点火」


「はい」


ズボゥゴゥゥゥゥゥン


バフッ


あまりにもの爆発に頑丈なカララの糸の網がこちらに膨らんだ。


ガラガラガラガラ


「あれ?」


「崩落です」


カララが網を外したので奥の部屋を見てみると、ほぼ全壊に近いカオスドラゴンがノロノロと動いていた。そこに天板が崩落してきてカオスドラゴンを潰してしまった。物凄い砂煙が上がりこっちに向かって来る。もちろん俺はヴァルキリーを着ているため問題ない。


「カオスドラゴンの気配が消滅しました」


「了解」


《シャーミリア!トラックごとこっちに進んできてくれ!》


《は!》


俺達の後ろからライトを着けたガントラックが走って来た。天上が数十メートルあるので余裕で走って来れる。


「キリヤ君!」


「はい!」


「案の定崩落してしまった。俺の魔力を使って岩の除去と、洞窟内の進む場所を補強したいんだが出来るかな?」


「お力をお借りできるのであれば」


「すぐやろう」


キリヤがトラックの運転席から降りて来て俺の隣に立つ。


「うわ!かなり派手にやりましたね!」


「ああ、カオスドラゴンを倒すのにかなりの火力が必要だったもんでな」


「では私と先に進みましょう」


「ファントム、触媒に使う魔石を出せ!デカい奴が良い」


ファントムの腹から大きめの魔石が出て来た。ここに来るあいだに討伐した魔石をあらかた拾ってきたのだった。


「昨日の階層でとれた魔石ですね」


「そうだ」


「これなら大量の魔力に耐えられそうです」


「シャーミリア!ファントム!護衛につけ!」


俺達の両脇に二人が護衛につく。崩落個所に来てキリヤが周りを見渡した。


「何とかなりそうです。とにかく途中で魔力が切れると危険ですのでよろしくお願いします」


「問題ない」


そして俺がキリヤが抱えた魔石に魔力を注ぐと、あちこちの岩がなくなって更に地下に進むであろう通路も出て来た。崩落しそうな天井もあっという間になおり、カオスドラゴンがいた辺りは綺麗に元に戻った。


「ふうふうっ」


キリヤが汗をかいている。


「休んでいいぞ」


「ありがとうございます」


「カティ!キリヤに回復魔法を」


「はい」


まあ魔力は増えないので気休めだが、少しは体力が戻るはずだ。


「ラウル様それでは私がキリヤの運転を代わります」


「ああマリアよろしく頼む。俺とファントムが先行するから、シャーミリアとカララとゴーグはトラックを護衛するように進め!ルフラはそのままカトリーヌと一緒に居てくれ」


「「「「はい!」」」」


そして俺達は31層に向けて進みだした。普通に考えたらあり得ないダンジョン攻略だと思うが、そろそろ遊んでばかりもいられない。俺は本腰を入れて先に進み始めるのだった。カオスドラゴンのような敵がいる可能性もあるのなら、慎重に進む必要性を感じる。


そもそもこのダンジョンがどのくらいの深さなのか見当もつかない。この先に何があるのか?運命が指示したものを見極めるまでやめるわけにはいかないのだった。

次話:第520話 地竜

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