第51話 天才メイドスナイパー
オーガとメイドの陸上自衛隊が行軍していた。
夜は草原にテントを張って野営をした。
俺はテントの中で、バージョンアップした武器のデータベースに触ってみた。すると凄い事に俺の武器データベースは格段に性能が向上していた。もともと俺が知っている武器がもとになっているはずだったが、しかし見たことのない最新兵器も出始めたのだ。武器が使えるレベルだけじゃなく、新しい武器が見れるのは俺にとって最高のご褒美だった。過去の俺の記憶にしかなかった武器一覧に知らない武器が多数加えられている。
武器のデータベースを開いてみる。
場所 陸上兵器LV3 航空兵器LV0 海上兵器LV0 宇宙兵器LV0
用途 攻撃兵器LV4 防衛兵器LV1
規模 大量破壊兵器LV1 通常兵器LV3
種類 核兵器LV0 生物兵器LV0 化学兵器LV0 光学兵器LV0 音響兵器LV2
対象 対人兵器LV4 対物兵器LV3
効果 非致死性兵器LV1
施設 基地設備LV2
日常 備品LV2
昨日と同じだ、よくまとめられている。これの陸上兵器LV3を開いてみる。
陸上 戦闘車両LV0 装甲車LV3 自走砲LV0 トラックLV1 トラクターLV1 水陸両用LV2
さらに装甲車LV3を開くとずらりと一覧が出てくるのだ。
「60式装甲車」「63式」「73式装甲車」「85/89式」「89式」「96式装輪装甲車」「AAV7」「AMV」「AMX-VCI」「AT105 サクソン」「ATF ディンゴ」「B-10 」「BMR」「BOV」「BTR-152」「BTR-3」「BTR-4」「BTR-40」「BTR-50」「BTR-60」「BTR-70」「BTR-80」「BTR-90」「BTR-D」「CM-21」「CM-32」「EE-11」「FV103 スパルタン」「FV105 サルタン」「FV432 トロウジャン」「FV603 サラセン」「K-1」「K200」「LAV-25」「LVTP-5」「LVTP-6」「M1126 ストライカーICV」「M113」「M-60P」「M93フォックス」「MT-LB」「OT-64」「Pbv 301」「Pbv 302」「SPA ドヴンクェ 35 プロテット」「TM-170」「UR-416」「V-100/V-150 コマンドウ」「VBTP-MR」「XA-180」「YP-408」「アチザリット」「エイタン」「オフェク」「カンガルー」「キャスパー」「クーガーH」「クーガーHE」「コンドル」「ザウラー装甲兵員輸送車」「タタ ケストレル」「ナクパドン」「ナグマショット」「ナグマホン」「ナメル」「パナール M3」「パンデュールI」「パンデュールII」「ピラーニャ」「ファハド」「フィアット 6614」「フクス」「ブッフェル」「ボクサー装輪装甲車」「マンバ」「ルノー VAB」「レオニダス1」「レオニダス2」
やばい・・俺の知らない装甲車がたくさんある。いつか必ず召喚してやるからな!かわいい子供たち!
他の兵器も見てみると膨大な量の武器がたくさんあった。魔石を使う事によってデータベースが向上する事がわかった。さらにデータベースは向上するのだろうか?魔石を集めたいところだがレッドヴェノムバイパークラスの魔物をそうそう狩る事はできない。
そして俺は思考をあやつり検索モードにする。すると文字列は消えてまた立体的なイメージになり、武器をイメージするとすみやかにその武器が出てくる。イメージと武器名が照合できれば呼び出せるのでこれからはかなり戦闘や行動の幅が広がりそうだった。
夜遅くまで検証していつの間にか眠っていた・・今朝になってまた行軍を始めたのだった。
行軍をはじめ1刻ほどたったころギレザムが話す。
「そろそろ、国境付近に差し掛かります。」
ギレザムが教えてくれる。
「やっときたんだ・・」
「ようやく・・たどり着いたのね・・」
「ここまでよく・・」
「本当によかった。」
「うえぇえん」
俺とイオナ、マリアとミーシャ、ミゼッタがそれぞれに感想を述べる。
「ん?ちょっと待ってください。」
ギレザムがみんなをとめた。
「なにか・・様子が変です。」
「どうした?」
俺がギレザムに聞く。オーガ3人で目を凝らして前方を見ていた。
「・・・・」
俺はTACTICAL SAFARI 327MR 軍用の双眼鏡を召喚する。それでオーガが言った方向をみた。
国境付近には、小さい布テントみたいなのか多数ある・・プレートメイルの騎士がいるな・・あとは・・!!!4本足の鳥みたいなやつが1・2・3・・5匹いる!
「ギレザム!これを覗いて確認してみてくれ!」
俺は軍用双眼鏡をさらに3つ召喚した。ギレザムに軍用双眼鏡を渡してみてもらう事にした。
「あれは、グリフォンですね。魔獣の気配はあいつらでしたか・・なぜ人間などと一緒にいるのでしょう?まるで・・飼われた馬のようではないか・・」
ギレザムはガザムに双眼鏡を渡した。
「本当だ・・なぜ誇り高いグリフォンが人間に付き従っている?」
あの鳥みたいな魔獣はグリフォンというのか・・そして本来ならば人間などに付き従う魔獣ではないということか。
「どういうことだ?国境の警備隊か何かか?」
「いえ・・普通ならば、あの木の小屋に1人か2人の見張りがいる程度で、それほど人がいるわけではありません。まして魔獣を従える人間など見たことがありません。」
「なるほど・・そうか。あそこにいるのは1人2人じゃないな・・」
「それと・・ふつうはプレートメイルの兵士などではありません。自警団がいるだけのはず。」
ギレザムが言うのを聞いて確信する。これ、間違いないな。
「母さん・・これ待ち伏せだ」
イオナとマリアにも軍用双眼鏡を渡してみてもらう。
「そのようね。」
「集合!」
俺はみんなに号令をかけて集合する。
「母さん、兵士たちの先回りの正体はあの鳥の魔獣のようだ。」
「間違いなさそうだわ。敵の動きが早いのは飛んで来たためね。」
「ラウル様、いかがなさいましょう?」
ギレザムが行動予定を聞いてくる。
「少し待て。母さん、これであそこに立っている旗の紋章をみて。」
俺はイオナに周りに立ててある旗を確認してもらう。
「あれは・・バルギウス帝国の紋章よ。」
はい、確定!
さてと、じゃあやりますかぁ。俺は双眼鏡でまた敵陣を索敵してみる。すると・・グリフォンと呼ばれた5匹の魔獣だけが全部がこちらを見ている。しかも、こころなしか・・目があったような気がする。
「ギレザム。グリフォンがこっちを見てるけど。」
「おそらく・・ラウル様に気が付いております。」
「俺にか・・」
兵士たちは座ってカードに興じていたり、なにかを飲んだりしているようだ。
「人間は気が付いていないみたいだな。」
「さすがにこれだけ離れれば人間にはむりでしょう。」
ギレザムが言う。
「そうねラウル、私たちもこれを使わないとまったく見えないわよ。」
イオナも見えないそうだ。そうだったのか・・俺は薄っすらと見えていたけど。よし作戦は決まった。
「母さんとミゼッタはゴーグに乗ったまま。ゴーグは俺達の後方50メードに待機し草原に隠れろ。ゴーグ!何かあれば母さんとミゼッタを守れ!ギレザムとガザムとミーシャはそのまま右の草原に入れ!俺とマリアはこの路上から攻撃する!」
俺の指示に従いゴーグは俺達の後方の草むらに下がった。俺はひとまずミーシャとギレザム、ガザムの元に行く。これは実戦を兼ねた戦闘訓練のチャンスだった。まだまだ弱い俺達はオーガに頼り切りにならねばならない、自分たちのチームでも戦えるようになるためだ。
「ギレザム、ガザム。もし敵がきたらミーシャを守ってくれ。俺たちも危険になったらここにくる。危なくなるまでは手を出さないでほしい。合図したら前進を始める。等間隔でついてこい。」
「わかりました。」
「ミーシャ。ここにこれを置いていく。」
俺は12.7mm M2重機関銃を召喚し三脚にたてる。
「ミーシャ、これの撃ち方はわかるね?」
「はい。」
「奴らの魔獣がきたら撃っていいよ。当たれば儲けもんだし当たらなくても牽制になる。」
「わかりました。」
「じゃあギレザム!ガザム!この武器をミーシャの代わりに運んでくれ、くれぐれも敵が接近したらミーシャを守ってくれ。」
「「はい!」」
「敵の状況はこれで確認してくれ。」
ミーシャに俺の双眼鏡を渡す。
3人に指示を出しマリアの元へ駆け寄った。マリアは双眼鏡で敵をみていた。
「敵の様子は?」
「はい、まだ気がついてません。」
「攻撃が届く距離まで前進する。身を低くな。」
「はい。」
ミーシャに手を挙げて合図をおくる。からだをさげて前進。敵から3.2キロほどの距離になって止まる。ミーシャにも合図をする。
「じゃあ2人でここから攻撃する。」
「こ…ここからですか?」
無理もない、肉眼ではほとんど捉えられない距離だ。何故かあちらのグリフォンが俺に気がついているらしいが、動きはないようだった。
「マリア、これを」
俺はマクミランTAC-50スナイパーライフルを2丁用意した。
「地形的には敵よりこちらの方が高い。それが証拠に敵陣が見渡せただろう。」
「そうですね。」
「ただテントで死界になっているところがある。」
「はい。」
「ここをのぞいてみてくれ。」
マリアはスコープを覗きこんで驚いた。
「近くに見えます。」
「そうだ、ここから狙い撃つ。」
「わかりました。」
「説明はいらないと思うが魔法発動イメージを使う。俺よりマリアの方が精度が高い。これが弾丸だ。」
俺はマリアにボルトアクションの装填を教える。数発の弾をポケットにしまわせた。俺も一緒にマクミランTAC-50スナイパーライフルのスコープをのぞく。
「いまどういう状況だ。」
「テントの陰に・・あれは・・小便をしてますね。」
「そうだ、小便をしてるやつはテントで皆の陰になっているな。じゃあこの銃の調整の仕方を教える。この距離で頭を狙うには少し上を狙う・・そうだそうやって微調整をする。右から左に風が吹いているのでそちらに微調整を、そして魔法発動イメージでゆっくりあいつのこめかみに弾がめり込む状態をイメージするんだ。」
「はい」
「呼吸を整えて・・撃て」
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
小便をしていたやつはこめかみから血を噴き出して倒れた。
「当たった」
《この距離で本当に当てるんだ・・》
「次だ」
まだ誰も小便をしていた兵士が倒れたのにだれも気づいていない。
「あの、テントにもたれかかって寝ているやつ。あいつだ。」
「はい」
「指示はいるか?」
「必要ありません。」
スゥー、マリアが息をはいた。
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
「着弾した。」
「はい」
寝ているままの姿で頭のてっぺんから血を噴き出している。
「次だ」
「はい」
「テントの中に寝ているやつがいるな。あいつだ。」
「はい。」
テントの中で寝転がって本か何かを読んでるやつがいる。
スゥー
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
本を読んでいるやつは顔の上に本を乗せるような形で、脳天から血をながし寝ているように転がった。
「当たりました」
「よし次だ。」
すごい・・マリアのスナイパーショット・・この距離とこの時間で数名を殺害した。
「まだ気が付いているやつはいないな・・」
「はい。」
「いったん待とう」
「はい。」
俺達は静かに敵の様子を眺めていた。なかなか動きがない・・発射音だって聞こえたはずだが。
残りは何人だ。カードに興じているやつらが4人談笑しているみたいだ。国境に立って監視している兵は2人、テントから一人出てきてグリフォンに近づいているな・・。テントに何人入ってるんだ?
「ひとり動いたな。」
「はい。」
「しかし、グリフォンのそばには監視兵が2人いる・・気づかれる。もう少し待て」
「はい。」
しばらく沈黙が続いた。じっくりと相手の行動を観察する。すると・・カードに興じていたヤツが一人小便をしている男のほうへ動いた。小便か・・?様子見か・・?
「マリア・・次はあいつだ。」
「はい」
スゥー
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
小便をして倒れているやつを見かけ、周りを見渡したところで眉間にあたった。
「着弾」
「はい」
計算プラス魔法イメージのなせる技である。前世では計算だけでここまでの精密射撃を連続で出来るやつがいるのだろうか?恐ろしい物を見るようにマリアを見る。すごい集中力でスコープを眺めていた。
「どうだ?」
「まだ、誰も気が付いていません。」
「そうだな、それじゃ今度は二人で狙撃をするか。」
「はい」
「あの人形のように立っている監視役二人なら俺でもいけそうだ。」
「では私は右を」
「じゃあ俺は左を・・」
「ラウル様の準備ができたら合図をください。」
上に数ミリ微調整、風向きが少し変わったな・・右に1ミリ微調整、蜃気楼があって揺らぐぞ・・集中だ・・、雲が流れて日陰になった・・見える。2ミリ微調整よし・・あとは魔法イメージで撃つ。
「撃て」
ズドン!
ズドン!
スナイパーライフルのデュエットのように二人の銃が重なって火を噴いた。
1.2.3.4.5.6.7
マリアは着弾までの間に次弾を装填していた。もう当たるのを予測しているようだ・・・二人の番兵はこめかみに穴をあけてのけぞるように倒れた。
「当たった!」
「他のやつが気が付きましたね・・」
「すぐにカードやってたやつらを狙う。」
「はい」
カードに興じていたやつらが、番兵が倒れたのに気が付いて駆け寄ろうとしていた。俺もすぐに次弾を装填した。
「ほぼ狙いはそのままで微調整だな。」
「はい」
死体に駆け寄った3人に向けて二人で撃つ。
ズドン!
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
マリアは既に次弾を装填している。マリアの1発は一人のこめかみを撃ち抜いたが、俺の弾は肩のあたりにあたって兵はのけぞって倒れる。
「外した!」
その間にマリアが装填をすませて、もう一人の逃げようとしていたやつに狙いをつける。微妙に銃身がずれていくのがわかる・・マリアは動く標的に当てようとしているのか・・?
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
逃げたやつはこめかみから血を噴き出して倒れる。
「凄いな・・・」
「テントの中からでてきました。撃ちます。」
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
「あ・・当たった。」
どこから攻撃されているかわからない兵士が振り向いているところで、後頭部を撃ちぬかれて前のめりに倒れる。
テントから3人が出てきた。
「まだこんなにいたのか。」
「撃ちます。」
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
「当たった。」
テントから出て倒れたヤツに近づいた奴が、しゃがみこんで倒れたやつを見ていたが脳天から弾がぬけたようで、死体に顔をうずめて倒れる。
「グリフォンをなでていたものがいません。」
マリアから報告を受けグリフォンを探すが、1匹いなかった。双眼鏡で上空を眺めるとグリフォンに乗った騎士がこっちに向かって来る。
《いやあれは逃げているんだ・・こっちに敵がいるのが分かっていないようだ。》
とにかく陸上のやつを仕留めねばなるまい。
「撃ちます。」
ズドン!
1.2.3.4.5.6.7
俺が天に上ったグリフォンに気を取られているスキに、マリアは地上の敵をみていたようだ。一人がグリフォンで逃げたので、残った二人がグリフォンに乗って逃げようとしていたが、グリフォンに手をかけたところでこめかみから血を吹いて転がった。
「一人逃げます。」
ひとりはグリフォンに乗って飛び立とうとしているところだった。さすがに飛んで動く奴にはマリアも狙いが定まらないようだった。
「逃げられます。」
「こっちに向かって来るな・・マリア、ギレザムとガザムのところに走るぞ!」
「はい」
走ってミーシャが12.7㎜M2機関銃を構えているところに行く。
「あいつらがこっちへくるぞ!」
俺が3人に声をかける。
「グリフォンが2匹、兵士を乗せて逃げるようだ!」
「はい。しかし・・ラウル様少し待っていただいてもよろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「グリフォンの魂に怒りが感じられません。それはおろか・・好意を・・」
「どうした??」
「おそらくこちらに降りてくると思います。」
???なんでだ?おそろしい魔獣なんじゃないの?
「ラウル様、いざとなれば我々で十分排除できますので、様子を見られてはいかがでしょう?」
「わかった。ミーシャも一応構えておけ。」
「はい」
すると・・グリフォンがこっちに向かって降りてくるのが見える。
「ん?本当に大丈夫なの??」
「おそらくは。」
どういう事なんだろう・・とにかくギレザムが言うのだから信じてみよう。
バサバサバサという音とともに、俺たちの前にグリフォンが降りてきた。
「おい!いう事を聞け!!おい!!!」
上に載っている兵士が焦ったようにグリフォンに向かって叫んでいる。そうこうしているうちに、もう一匹のグリフォンが兵士を乗せて降りて来ていた。
「くそ!おい!お前が飛ぶのはあっちだ!おい!!」
こっちの兵士も焦って叫んでいる。すると最初のグリフォンが背に乗っている兵士の首に噛みつき、ブン!!っと頬り投げた。ボキッという音がして力の抜けた人形のように飛んでいく。
「お、おい!お前何‥を!」
もう一人の兵士もグリフォンが体を震わしてブン!と振り落とされる。
「うわ!」
どうしたどうした??いったい何が起きてる?
ドサァ
兵士が地面にたたきつけられてうめいている・・
「うぅぅうう」
グリフォン2匹が・・俺によってきた。近い近い!!怖いんだけど・・怖い怖い!
「わっわわ」
するとグリフォンは俺にほおずりして来た。うわうわ・・もう1匹は俺の頭を甘噛みしている。さっき兵士をこの口でボキッって吹っ飛ばしたよな!大丈夫なのか!!!
「ラウル様に・・なついておられますな。」
ギレザムが言う。
「な、なついてる?」
「ええ。間違いなく本能で系譜の力を感じているのではないでしょうか?」
「系譜の力を」
「はい。」
ただ・・顔がグリフォンの唾液でべちゃべちゃになってきたのでやめてほしい。そう思ったとたんにグリフォンは下がってひれ伏した。2匹が俺にひれ伏する・・
「これは?」
「乗れ・・ということでしょうね。」
ギレザムが言うので、恐る恐る乗ってみることにする。俺が乗るとグリフォンは羽をはばたかせて飛んだ!
「うわっ!」
一気に天空に昇っていく。
「おおお!すげえええ。飛んでる!」
一行の上をぐるぐるとまわっている。
気持ちがいい!気分は最高だった。下をみるとマリアがまたスナイパーライフルを構えているのがみえた・・
ん?
ズドン!
撃った。
敵陣にいた敵兵を撃ったらしい、俺が狙いを外して肩を撃たれたヤツが歩き出してたようだ。遠目で見ていると、着弾しぱたりと倒れた。
「グリフォン!あそこに飛んでくれ!」
キュィィィィィ
と鳴いてグリフォンは敵陣のほうに飛んだ。
俺はAKM-47自動小銃を召喚してグリフォン上で構える。敵陣上空についたが敵は全滅していた。
「グリフォン降りろ!」
バサバサバサバサバサ
グリフォンは他のグリフォンがいるところに降りた。すると他のグリフォンが俺のほうを見てキュィィィキュィィと鳴いてくる。
俺はグリフォンを降りて周辺を確認する。全員死んでいるのを確認した。
俺は信号弾を召喚して、空に向かって撃つ。
パシュー
天に青の煙幕が咲いて、皆へ安全の知らせをする。
制圧完了。
メイドのマリアは敵兵を殺害しほぼ一人で壊滅させた。マリアのシューティング能力は前世の人間の比ではなかった。瞬時の判断能力と天賦の才そして魔法イメージの精度の高さが備わっていた。
幼少のころからキッチンメイドとして毎日毎日、火魔法の調節をし、王都の家でも火を使う場合は全てマリアがやった。もしかすると火魔法と銃の相性がいいのかもしれなかったが・・以前からイオナよりも命中精度ははるかに高かった。
「マリア、森での二人の訓練の成果がでたね。」
「ありがとうございます。ラウル様・・3年間しっかりやっておいてよかったです。」
そう、俺とマリアのサナリアの森での射撃訓練。すごいスピードで跳ねるファングラビット狩りで身につけた、射撃精度の高さがこんなところで役に立つとは思わなかった。
で・・先ほどの戦闘で兵隊に生き残りがいた。グリフォンから振り落とされた一人だ。右足と左手首の骨が折れているらしく身動きがとれていない。俺は兵士に詰問した。
「ところで・・お前らなんであんなところで待ち伏せしてたんだ?」
「俺は・・命令でここに来ただけだ!内容は知らされていないが、美しい貴族風の女が来たら全て捕らえてこいと。」
「誰にだ?」
「先行部隊の隊長だ。」
「いまどこにいるんだよ。」
「・・・・」
「言え!」
「・・・・」
「マリア」
パスパス
マリアがサイレンサー付きの銃P320で、兵士の折れた右足の太ももに2発撃ちこんだ。
「ぎゃぁぁぁぁ、わかった。わかった!」
「誰なんだ?」
「バルギウス第4大隊のグルイス・ペイントス隊長だ。」
「ほう、その大隊長殿はいまどこに?」
「う・・」
「マリア」
パスパス
今度は左足の太ももを2発。
「うぎゃああああ。わかった!!それを・・やめてくれ!!」
「どこにいるんだ?」
「グラドラムだグラドラムに陣をはっている。」
「そうか・・」
「兵士はどのぐらいいるんだ?」
「1000だ。1個大隊1000人だ」
「1000人だと!貴様謀れば首をはねるぞ!」
横からギレザムが声を荒げる。
「本当だ数日前にそろったばかりだ!」
1000人も来ているのか・・・どうやって輸送したんだろう?
「どうやってきた?」
「翼竜だ!翼竜に乗ってきた。何度も兵員を輸送して増やしていったんだ!」
ギレザムがいぶかしげに聞く。
「どうして翼竜が人間の言う事など聞くのだ?」
「それは・・言えない。」
「マリア」
パスパス
折れた左腕の上腕に2発撃ちこんだ。
「ぐ、ぐああああ。お前ら・・それでも人間か!?!?」
パス
マリアが無言で右腕上腕にも1発撃ちこんだ。
「わ・・わかった!アヴドゥル・ユーデル大神官さまだ!アヴドゥル様が神のお力でつかわされたのだ!」
「アヴドゥル・・なるほど、それがバルギウスの大ボスか?」
「ち、違う!ファートリア神聖国から来た大神官様で、西の魔獣を鎮めてくださったのだ。そしてそのあとユークリット公国に攻め入ったんだ。」
どういうことだ?バルギウスが戦争をけしかけたんじゃなくてファートリアが仕掛けたのか?
「あと知っていることは?」
「それだけだ・・神に誓う。」
「あ、あと聞きたいんだけど、ユークリットにはお前のいう、バルギウス第4大隊は攻め入ったのか?」
「そうだ・・先発隊だからな。命令で仕方なかったんだ!」
「マリア」
マリアは兵士の眉間に銃口を突き付けた。
「まて・・まってくれ!!俺には家族が!家族がいるんだ!」
「私にもいたわ・・・」
パスパス
マリアの放った弾丸は寸分たがわず兵士の眉間に2発撃ちこまれた・・
兵士の詰問後の処刑が終わった。
俺達は全ての死体を焼き払い、鎧は全て埋めたのだった。
次話:第52話 グラドラム潜入