第48話 オーガvs巨大蛇
2時間ドラマで死体遺棄をするようにヴァンパイアを土に埋めた。
まだ死んでないけど。
埋めた後で、俺とギレザムはM93フォックスを森の中にすすめることにした。
「じゃあ行ってくるよ。」
「ラウル気をつけて」
「わかったよ。母さん。」
しばらくM93フォックスをレッドヴェノムバイパーの通り道に沿って走らせた。森は深く続いており1キロくらい進んで車を停める。
「ギレザム、このあたりに停めよう」
「はい」
車を停めて二人で降りる。
「しかしすごいな、この通り道。」
この感じ・・前世で見た腐った森を進むでっかい昆虫の通った道・・のようだ。
「じゃ、壊すか。」
俺はおもむろに武器を召喚する。
ドサッ
目の前に出てきたのはダンボールだった・・
「ラウル様、これが武器ですか?」
「ああ、爆薬っていう武器だよ。」
「爆薬・・」
早速ダンボールを開けて中身を取り出す。出てきたのはC-4プラスチック爆薬だ。緑色に包まれた羊羹みたいな延べ棒が40本はいっていた。
「じゃあこれを車の中に敷き詰めよう。」
ギレザムとふたりで車の運転席助手席、後部座席にまんべんなく敷き詰めて起爆装置を取り付けていく。
「うーんなんか足りないかも。」
もうひとダンボールC-4を呼び出してみる。またギレザムとふたりでまんべんなくおいて今度は天井にも乗せて起爆装置をとりつけていく。
「まあ、このくらいでいいか。C-4ってどのくらいの威力あるんだっけ?」
「これが武器なのですか?」
「ああ、危ないから気をつけないとな。まあこの状態だと爆発しないけど。」
一つの包装を破くと中には乳白色のプラスチック爆薬の物体がみえる。粘土のように柔らかい。
「んーこれできっと足りると思うんだけど、念には念を入れて追加しておくか。」
俺はまた別の爆薬を召喚した。目の前に現れたのはTNT火薬だ。缶のようなものに入っていて表面に英語文字が表記されている。TNTデンジャラス。よし!これも1本おまけして車内に置いておこう。こういうのは景気よくいったほうがいい!!
俺は・・悪乗りしていた。召喚してみたいだけだったのだ・・前世で出来なかった事ぜーんぶやりたいのだから勘弁してほしい。
「よーしギレザム!オッケーだ。車を離れるぞ!」
「はい。」
レッドヴェノムバイパーの道がまっすぐだったので見える範囲で、そのまま200メートルくらい離れた。
「これで・・どうするのです?」
ギレザムが不思議そうだ。
「ああ、ちょっと待って。」
俺はSMAW ロケットランチャーを召喚する。照準からのぞくとM93フォックスが見えた。後部ハッチを開けているのでそこに入れようと思う。魔法イメージで精度をあげて確実にっと。
魔法イメージで着弾の精度をあげたら、完全に射線が目に浮かんだ。
バシュ―
後部ハッチに弾が飛び込んだ。
ドッガズゥーン!!!!
命中と同時にM93フォックスは大爆発をおこして木っ端みじんになった。周りの木もなぎ倒して相当な威力だったようだ。遅れて爆風が届いた。
「!!!!」
ギレザムが滅茶苦茶びっくりしているようだ・・そうだろうそうだろう。俺もびっくりしてる。
「ラウル様すぐに逃げましょう!」
「えっ?」
「やつが来ます。」
「やつって?」
「レッドヴェノムバイパーです。怒ってます・・」
「え!わかんの?」
「はい。」
「い、急がないと!」
俺とギレザムは一目散にみんなのいるところまで走った。女子のみんなはテントの中でくつろいでいるようだった・・
「ガザム、ゴーグみんなをお連れして森からできるだけ離れろ!!」
ギレザムが叫んでいる。
「どうした?」
「レッドヴェノムバイパーが森を焼かれて怒っている。来るぞ!」
「なに!?」
「毒を撒かれたらまずい!皆様をお守りするのだ!」
「わかった!」
ゴーグが出てきて急激に力み始め、身震いし始める・・
「う・・うがぁぁぁぁ」
ゴーグの体が膨らんでいく爪が出て顔も鼻が突き出てきた、鎧の留め具が外れ鎧が全ておちる。特殊メイクのようにどんどん変わっていった。
「ゴーグ!?」
ミゼッタが叫ぶ。
ゴーグはあっというまに銀のたてがみのでっかい狼になった。イオナの前に伏せの体制になる。
「乗ってください。」
「わかったわ。」
「ミゼッタも乗れ」
「は、はい!」
ゴーグの背中にイオナとミゼッタが乗る。てか狼なのに話をしてるぞ?どうやって発声してんだ?
「ミーシャは私のほうに来てください。」
ガザムがミーシャを呼んでおんぶする。
「マリアは我に!」
マリアがギレザムにおぶさる。
「走れ!」
俺が号令をかけると皆一目散に草原の街道のほうに走り始める。ビュウウゥウウと風を切る音とともに、ものすごいスピードで風景が流れていく。特にゴーグのスピードがハンパない!80キロくらい出てんじゃないの?
「ゴーグ先に!」
ギレザムが叫ぶ。どうやらゴーグについていけないようだ・・ギレザムもガザムも女子をおんぶしてるしな・・無理らしい。俺もどんどん離される。
「街道が見えてきた!」
ミゼッタが大きな声で教えてくれる。
「いったん止まれ!」
俺が言うとギレザムとガザムが止まる。俺たちは森のほうを見ていた、特に何もなさそうな気はするが・・
バキンッ
ボキッ!
森の奥の木が吹き飛んで中を舞っているのが見えた。
「近づいて来た!」
俺はみんなに指示を出す。
「マリア!ミーシャ!ふたりはここから走ってくれ!ギレザムとガザムはここで俺とあいつを食い止めよう!ゴーグはそのままみんなを連れてグラドラム方向へ走れ、彼女らを守ってくれ!」
「わかりました!」
「いえ!ラウル様を置いてはいけません!」
マリアが叫ぶ。
「大丈夫だこの二人なら勝てるそうだ。足手まといにならないようにできるだけ離れてくれ」
「わ、わかりました。」
ゴーグとマリア、ミーシャが走り去っていく。
「ラウル様も行ってください!」
ギレザムが言う。
「俺は少し離れたところから援護する。」
「わかりました。毒の範囲からなるべく離れてください。当たれば我々でも無事ではすみません。」
「わかった」
俺は彼らから100メートルくらい後方に移動する。するとギレザムとガザムは森のほうに進んで行った。
バガーン
という音とともに大木をまき散らして、レッドヴェノムバイパーが森の端から飛び出してきた。怒っているのが伝わってくる。
「デカイ・・」
胴回りがジャンボジェット機ぐらいある。赤に黒のまだら模様が禍々しくてまさに毒蛇というかんじだ。こちらに一直線に進んでくる・・俺達を見つけているらしい。
「あ・・あれだ!これはあのセリフのタイミングだ!」
「怒りで我を忘れてるん・・」
いってる場合じゃない、すでにギレザムとガザムがレッドヴェノムバイパーと交戦しはじめた。さて・・俺はどうするか?
グァアァァア
レッドヴェノムバイパーの咆哮がこちら迄聞こえてきた。鎌首を上げてギレザムとガザムを振り払うように暴れている。さすがに一撃でとはいかないようでかなり手こずっているようだった。
「よし!」
俺は、バレットM82A1軍用対物狙撃銃を召喚した。
おそらく相当な皮の厚さだと思うので、これなら貫通してくれると信じて呼び出す。腹ばいになりスコープに目をつけて照準を合わせた。動き回っているが胴体がデカいので命中はさせやすそうだ。急いで徹甲弾を召喚して装填する。
「ガッ!」
あ!ガザムがしっぽにあたって吹っ飛ばされた。ギレザムが自信満々に勝てます!といっていたので、余裕だと思っていたがそれほど余裕はなさそうな気がする・・ギレザムがあちこち飛び回って攻撃を回避しているが・・これって長期戦になるってことだよな。
「もしかして・・勝てるって言うのは何日も戦って削っていくってことなんじゃ・・」
グラムなら一刀両断出来そうなんだがな。
ガザムが起きあがって再びレッドヴェノムバイパーに立ち向かっていく。また細かく切りつけていくらしいが、ほとんど傷を負わせられてないじゃないか。時折紫色の唾液のようなものをはきだしているがあれが毒なんだろうな。
「んー?どこ狙おう鎌首あげて暴れてるから頭には当てづらそうだ。とりあえず胴体に」
俺はバレットM82A1でレッドヴェノムバイパーの胴体に狙いをつける。400メートルくらいの距離だから全く問題なくあたりそうだ。
ズドン!反動が大きい!ズドン!・ズドン!・ズドン!
バレットM82 A1を連射してみた。反動が大きい分、威力も大きい。
ギャアアアアアアアアア
レッドヴェノムバイパーが叫び声をあげてバタバタと暴れた。
「なるほど、皮は貫通するらしいな。きっと痛いんだろう。でも死にはしないらしいな・・」
ギレザムとガザムはレッドヴェノムバイパーから距離をとったみたいだ。痛みで暴れているので近づけなくなったらしい。バレットM82のマガジンを装填する。
「よし、じゃあも一回」
ズドン!・ズドン!・ズドン!・ズドン!
連射してみる。一発ごと体の芯に響くような反動だ。
グァァァァァアアア
「あ、やっぱり痛いんだ。」
レッドヴェノムバイパーはのたうちまわり始めた。ギレザムとガザムは近寄れないでいる。
「そのあいだにっと。」
俺はバレットM82A1の弾丸の充填を完了した。遠目で見てみるとどうやら暴れまわっていたレッドヴェノムバイパーの動きは止まっている。スコープを覗いてみると鎌首を上げて・・・こっちを見てる?
目があった…
「あれ?」
こっちに向かって猛スピードで進んで来た!
「やっべぇえええ」
鎌首を上げてこっちに向かって来る!俺はバレットM82A1を担いで走り出した。振り向くと・・
「速っえええええ」
どうしよう。よし!
俺はパラパラと武器を召喚しながらばらまいた。FASCAM スマート地雷がそこいらじゅうにばらまかれていく、俺が通った後をレッドヴェノムバイパーが通ると、バンバンバンバンバンとスマート地雷が爆発していくがバイパーには爆竹ほどの威力だった。
「うわぁぁぁぁ」
するとギレザムとガザムが追い付いた。レッドヴェノムバイパーに飛びかかって刃を突き立てる。ヴァイパーが止まって彼らを振り落とそうとするが、胴体に深く突き刺した刀がそれを許さなかった。
俺はバレットM82を捨てて、違う武器を召喚した。ブローニングM2E2重機関銃である。弾丸は12.7x99mmの徹甲弾のベルトを呼び出す。一回の反動が大きいバレットM82より連射はこっちのほうがうえだ。
振り向いて鎌首を上げているバイパーの首元に打ち込む。
ガガガガガガガガガガ
血しぶきを上げて首元の皮が飛び散る。
「グギャァァァァ」
あ・・やっぱり痛いみたいだ。徹甲弾だと貫通力がたかいな。
あ・・また俺をにらんでる。一番の脅威と思われているらしい・・頭付近にブローニングM2E2重機関銃を連射する。
「ガァァァァァ!」
うわ!死なない!!硬い!!てかなんでヴァンパイア戦の時みたいにチート魔人にならないの?俺・・全然弱いじゃん!飛ばないし。死んじゃう!!
レッドヴェノムバイパーが大きな口を開けてこっちに顔を向ける。
ジュバ!
紫色の液体がこっちに飛んでくる!あっ・・死んだ・・
シャッ
俺は空中を飛んでいた、いや・・ギレザムに担がれて空中を飛んでいるところだった。
「あ、ありがとう!」
「ラウル様!あの車をやった時の物は出せますか?」
「出せるよ。」
「では次にあいつが毒を吐く瞬間を狙いましょう!」
ギレザムは着地してまたレッドヴェノムバイパーに向かっていく。胴体に刃を突き付けてしがみついているようだ。ガザムも体にのって斬りつけている。
「よし。」
俺はロケットランチャーを呼び出して地面に置いた。再度ブローニングM2E2重機関銃をレッドヴェノムバイパーの頭付近に連射する。
バババババババババ
ギャオォオォォオオ
バイパーがこっちをにらむ。そして鎌首を上げて俺のほうに向いて口を大きく開けた。
「ここだ!」
俺はAT4を肩に構えて魔法イメージを使い、バイパーの口の中にロケットランチャーを打ち込んだ。
ボンッ!
口から入ったロケットはバイパーの後頭部をはじけさせて脳漿を飛び散らせた。
一瞬バイパーは動きを止め・・ぐらりと倒れてきた。
「うわわわわわ」
俺は慌てて横に飛びのいた。
ズゥゥウゥウウウン!!
レッドヴェノムバイパーは頭に大穴を開けて地面に倒れた。
「し・・死んだか・・」
ギレザムとガザムが俺の元に駆け寄ってくる。
「ラウル様!大丈夫ですか?」
「あ、ああこれ・・死んだの?」
「はい・・魂は既に消えました。」
俺は・・その時、自分の体に力がみなぎるのを確かに感じ取っていた。
次話:第49話 巨大蛇を喰らう