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第459話 ロケット叩きとカースドラゴン

俺達は絨毯爆撃によって黒煙の立ち上る聖都を見ていた。市壁が崩れ落ちている部分があるが中の様子は見えない。そして次に、ずらりと並んだM270多連装ロケットランチャーの車両の列を見る。


「シャーミリア。これ後でグレースにしまってもらわんとな。」


「左様でございますね。」


「とりあえず市内を確認するか。」


「はい。」


「マキーナはここにグレースを連れてきてくれる?」


「かしこまりました。」


そして俺は再びヴァルキリーを着た。


《素晴らしいです我が主。あの兵器はなんというものですか。》


ヴァルキリーが聞いて来る。


《M270A1 MLRS多連装ロケットランチャーって言うやつだ。》


《前線基地でもたくさんの兵器を見ましたが、一度主にゆっくり聞いてみたいと思っておりました。》


《興味があるのか?》


《私もある意味、我が主の乗り物のような物ですから。》


《同類って事?》


《近い認識かと。》


《お前は違うだろ。》


《そうですか?》


《そうだ。》


《わかりました。》


《‥‥てかよくよく考えたらお前は俺の分体なんだよな?》


《そうです。》


《えっと、てことは俺とリンクしてるんだよね?》


《はい。》


待てよ…リンクしてるって事は…


俺はふと考えた。


グレースは本体である虹蛇を自由に出す事が出来ていないようだが、収納庫とリンクして無限かと思えるくらいの収納が出来る。オージェは分体のリヴィアサンとリンクしてるのだろうか?海の中以外では活動出来なそうなリヴィアサンだが、遠隔で扱えていると言う事は聞いた事が無い。


《えっとヴァルキリー。》


《俺の意識にリンクできるか?》


《我が主が開放してくれれば、おそらくは。》


《開放ってどうするんだ?》


《覚醒を待ってのことと。》


《覚醒はどうやるんだろう?》


《それは我にも分かりません。》


《そうか。》


泥棒髭を操った経験のある俺なので、もしかしたらヴァルキリーを操れると思ったのだが、どうやら今の俺の状態では出来ないようだ。


「ご主人様。マキーナがグレース様をお連れになったようです。」


マキーナがグレースを連れて飛んできた。


「ラウルさん!ずいぶん大量にM270A1が並んでるじゃないですか!」


着地早々グレースが喜んだように叫ぶ。


「ああ絨毯爆撃するためにいっぱい出しちゃったんだ。収納してくれるか?」


「わかりました。すげえなあ…」


そしてグレースがM270A1 MLRS多連装ロケットランチャーを次々と消していく。


「マキーナ。グレースがすべてを収納したらすぐに森に連れて戻ってくれるか?」


「かしこまりました。」


「じゃあミリア。行こうか。」


「は!」


俺とシャーミリアは上空へと舞い上がった。


上空から聖都を見下ろすと、ほとんど無事なところが無いくらいに焼け野原になっていた。人間の遺体などほとんど残っておらず、デモンやしもべのちぎれた死体があちこちにある。しかし更地になってしまったわけではなくあちこちに無事な建造物があった。


驚くべきは、まだ蠢くデモンやしもべが残っていた事だった。


「ボロボロだけどな。」


「そのようです。」


煙が上がっていて確認しずらいが、ぼろぼろのデモンやしもべがあちこちにいるようだ。


「掃討するか。」


「かしこまりました。」


「市壁に降下する。気をつけろよ。」


「はい。」


そして俺達は光の柱にかからないように、市壁の上に降り立った。


俺は2基のAT4ロケットランチャーを召喚しシャーミリアに渡す。そして俺の両手にも同じものが握られていた。二人で市壁の上から生き残ったデモンやしもべに向かって、丁寧にAT4ロケットランチャーを撃ちこんでいく。


「しらみつぶしだ。」


「はい。」


市壁の上を移動しながら、生き残ったデモン達を見つけてはロケットランチャーで掃討していくのだった。撃っては直ぐにシャーミリアに渡し、そして俺も撃つをくりかえす。


「しもべも結構いるようだ。」


「そのようです。」


デモン達を丁寧に潰していく事、数分。


「ご主人様、あれを…」


「ああ。」


俺達が見つけたのは地面に浮かび上がった転移魔法陣だった。すると魔法陣の中からでっかい羽の生えたネズミのような生き物に乗った、これまた白い羽を生やした裸の人間が現れる。裸の人間というより王冠をかぶった天使のようなヤツだ。


「転移させてきたか。」


「そのようです。」


「厄介だな。」


「はい。」


俺達がそのデモンに向かってロケットランチャーを撃ちこもうとしたとき、また別なところに2つの転移魔法陣が現れた。


ジャッカルのような黒い生き物にまたがった、鳥の顔をした裸の人間だった。間違いなくデモンのオーラを放っている。


そしてもう一つの魔法陣からあらわれたのは、ライオンのようなたてがみのある体をしたダチョウのような頭のデモンだった。


「うえぇ!きりがないな…。」


「左様でございますね。」


「そんでさ。なんつーか、めっちゃ独特だよなデモンって。」


「なんとも不気味なものです。」


「とりあえず、消しちゃおう。」


「はい。」


俺達がロケットランチャーを撃ちこむ。3匹のデモンは転移魔法陣から出て来たばかりで、俺達の攻撃を避ける事も出来ずに粉砕されてしまった。


だが…


再び地面が光り出す。


「えっ!一体どのくらいの転移魔法陣が仕掛けられているんだ?」


「ご主人様。ここに転移させてきていると言う事は、敵の主はここではない場所にいると言う事になりますね。」


「そのようだ。」


魔石を放り込んで全部の転移魔法陣を発動させてしまいたいところだが、不可解な光の柱が邪魔になって聖都に入り込むことができなかった。


「オージェ応答せよ。」


「こちらオージェ。」


「どうやら市内は転移魔法陣だらけできりがない。」


「なら俺も向かおう。」


「ああ、グレースとマリアとセイラ、オンジとカーライル、カトリーヌとルフラは待機。カララとトライトンは彼らの護衛に当たってもらう。魔人には念話でつたえるから、マリアやカーライル達にはオージェが伝えてくれるか?」


「わかった。」


「オージェとファントムとマキーナはこっちで俺達ともぐらたたきだ。」


俺は直ぐに念話でカララやセイラたちに伝え、ファントムとマキーナはすぐさまこちらに呼んだ。


指示をしてしばらくは俺とシャーミリアで、魔法陣から出て来るデモン達を掃討していた。


「どっから転移させてんだろうな?」


「不可解です。敵はこちらの状況が見えているのでしょうか?」


「いや、送り出したデモンからの返答じゃないかと思うが。」


「はい。」


しばらく二人で潰し方をしているとオージェとマキーナとファントムがやって来た。オージェは4トンくらいあるM777榴弾砲を”かついで”ジャンプして市壁の上に登って来た。


「ああ、それおいて来てもらって良かったのに。」


「それを先に行ってくれ。」


ここにきて新しいM777を召喚すれば済むことなのに、持ってきたのはお前だろ。というツッコミを飲み込みながら市内に目を移す。


「あれを見てくれ。」


聖都内に波紋のように浮かび上がる転移魔法陣をみてもらう。


「あちこちにあるな。」


「ああ。シャーミリアと二人だと追いつかなくなってきた。マキーナは俺達とロケットランチャーで、オージェとファントムは二人でM777で出て来たデモンを掃討してくれ。」


オージェが市壁の上にM777榴弾砲を設置してファントムから弾頭を受け取る。こんな時の為にファントムには大量に弾薬を飲ませているので、かなりの数を出す事が出来るはずだった。


「本当にもぐらたたきだな。」


「だろ?」


そして俺達はいつ終わるかとも分からないロケットランチャーと、M777榴弾砲を使ったもぐらたたきを始めるのだった。市内のあちこちで上がる爆発に次々と飛び散っていくデモン。恐らくデモンは元々俺の連結を使わなければ武器が効く事の無い強敵だ。しかし連結LV2を常時接続しているため、人間のようにもろくも吹き飛んでいく。


俺とシャーミリアとマキーナはオージェ達と別れ、反時計回りに市壁の上を進みながら魔法陣から出て来たデモンを叩いていった。オージェとファントムは逆回りに進んで潰していく。


「1匹出しちゃうと100匹くらいしもべ増やしそうだからな。」


「はい丁寧に消します。」

「見逃す事の無いようにします。」


「ああ、丁寧にやって行こう。」


とにかく俺達は光る魔法陣を発見したら待機して、出てきたら潰すをくりかえしていた。


「ラウル!」


「どうした?」


オージェからの無線だった。


「こちらに特大の魔法陣が現れたぞ。」


「わかった!すぐ行く!」


俺はオージェとの無線を切ってデモン叩きを止め、シャーミリアとマキーナを引き連れ、時計回りにオージェの元へと向かった。


そして、それは上空からも確認できた。


オージェの側に降りたって話しかける。


「あそこから何か出て来たか?」


「いやまだだが。」


「デカいな。」


「ああ。」


他の小さい魔法陣を放っておいているので、どんどんデモンやしもべが湧いてきていた。だが巨大魔法陣の方が今は危険な感じがしたのだった。


嫌な予感がする。



すると…



ギャァァァァア


耳をつんざくような鳴き声が響き渡った。


「やべ!」


「どうした?」


俺がデカい魔法陣の中心に見たものは‥‥


カースドラゴンの頭


あの俺達を苦しめた、地獄の巨龍だ。岩のような肌にとげとげしいヒレとガイコツのような質感。


「カースドラゴンだ。」


俺がそう言うとオージェが担いでいたM777を下ろす。


ガシャン!


そして射角を下に向けて巨大な魔法陣から出て来るカースドラゴンへ向けた。俺は足元に20本のロケットランチャーを呼び出す。


「シャーミリア、マキーナありったけ撃ち込め。」


「は!」


首の付け根辺りまで出て来たカースドラゴンに向けて、155㎜榴弾砲とロケットランチャーの砲撃が降り注いだ。


ギャォオオオオス


「あれ?効いてる?シャーミリア!マキーナ!このまま撃ってて。」


「かしこまりました!」

「は!」


俺はロケットランチャーをシャーミリア達に渡してオージェの元に行く。


「オージェ。これを!」


俺はM777に装填するサーモバリックの砲弾を床に並べていく。


「ファントム!こめろ!」


ファントムがM777に装填した。


カースドラゴンの体は既にほとんど出てきていた。飛び立とうとするがシャーミリアとマキーナのロケットランチャーによる砲撃を、羽で防いでるような形になっているためくぎ付けになっていた。


バズゥン


155㎜榴弾砲から放たれるサーモバリックの砲弾。


ドッゴオオオオ


カースドラゴンに命中して恐ろしいほどの爆発を起こす。


「さ、もう一発。」


「わかった。」


ガパン


ガコン!



そして再びファントムにより装填されたサーモバリック弾がカースドラゴンに撃ち込まれる。


ドッゴオオオオオオ


「撃ち方止め。」


キノコ雲が収まるまで俺達は待った。次第に雲が晴れて現れていくカースドラゴンの姿はほとんど原型をとどめていなかった。ピクピクとしているが既に胴体や羽に大穴が開いており、動く事も出来ないようだった。


「復活するといけないから、もう一発。」


「わ、わかった。」


そしてファントムが再びM777にサーモバリック弾をこめる。


ズドォォオオオオオン


サーモバリック弾が命中してカースドラゴンは跡形も無く消え去った。


「いや、ちょうど穴から出てくるところが狙えてよかったよ。これで飛ばれてたらかなり手こずったはずだ。」


「集中砲火を浴びせる事が出来たからな!」


「よし!引き続きデモン掃討を始めるぞ!」


俺がそう言った時だった。


「ご主人様!」


シャーミリアの叫びに、俺達は瞬間的にその場所を飛び去って四方に逃げる。


M777が置かれていた場所が大爆発を起こしていた。


カースドラゴンの爆発したそのキノコ雲の後ろから…もう一匹のカースドラゴンが出てきていたのだった。


「デカい魔法陣は一つじゃなかったか…。まったくあれは2匹セットなのかね。」


俺達がいた場所は、カースドラゴンの地獄の火球によって燃え、その場所の市壁は跡形も無く崩れ去ってしまっていた。


俺達を睨むようにもう一匹のカースドラゴンが天空に登っていくのだった。

次話:第460話 聖都壊滅


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[一言] 必ずセットで現れるカースドラゴン 連れションでないと便所に行けない中学生みたいなもんなのかも
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