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第457話 空中戦

ここ聖都でも不可解な光の柱が立ち登った。まったく予測していなかったわけではないが、まさか首都の人間にもあれがセットされているとは思わなかった。


既に30体以上のゴーレムが市街戦を行っており、ある程度自動で戦っているため光の柱が立っても攻撃は継続している。


「オージェ!投げ入れストップ!」


俺は無線機を通じてオージェに指示を出す。


ズン!


俺は速攻でオージェの側に着陸した。バルムスデイジー社(仮)のバーニアの性能はハンパない。


オージェを見ると次のゴーレムを投げるべく担いでいたところだった。それって持ち上げられるものなんだね…うん。


「それを下ろしてくれ!」


「ん?」


「あの柱が立った。」


「マジか。」


「これ以上はゴーレムを損失する恐れがあるから、投げ入れるのをストップしてくれ。」


「了解。」


次のゴーレムの投擲をストップさせて、そのままシャーミリアに念話を繋げる。


《ミリア!光の柱が立ったが狙撃は継続だ。そのままゴーレムを狙う魔法使いを攻撃してくれ。マリアにそう伝えてほしい。》


《かしこまりました。》


ひとまず俺はゴーレムの損失を防ぐことを優先する。


「オージェはこのまま待機していてくれ!トライトンをお前の念話でつれ戻しておいてほしい。」


「了解だ。」


なにが起こるか分からないため、聖都市壁付近で観測しているトライトンを戻させる。警戒してしすぎる事は無い。


そしてすぐさまグレースへと無線を繋ぐ。


「グレース!映像の確認をしていてくれ!」


「わかりました!」


次の瞬間猛ダッシュでグレースの元へと駆けつける。


「グレース!ゴーレムに取り付けたドローンカメラの映像はどうだ?」


「どうしたんですか?」


「光の柱が上がった。」


俺とグレースが話している間にも聖都の方から、ゴーレムたちの戦闘している音が聞こえて来る。


「映像には何も映ってません。」


「え?」


「光の柱は、カメラには映らないみたいですね。」


「マジか。」


「はい。」


「ゴーレムの無差別攻撃を止めて、攻撃して来た者だけを対象に切り替えられるか?」


「問題ありません。ヘッドセットに一斉送信で指示を出します。」


「やってくれ。」


むやみに攻撃してあの光の柱を増やせば、ゴーレムを回収できなくなってしまうかもしれない。とにかく慎重に事を運ぶ必要がある。


《ご主人様。聖都より翼竜が出てきました。》


《数は?》


《その数100。》


《マジ??》


《はい。》


《なら俺が行く。》


《かしこまりました。》


《マリアは援護を頼む。》


《は!》


《それとマリアの身の安全のためだ。絶対に戦闘空域に近づくんじゃないぞ。敵が差し迫ってきたら距離をとるんだ。》


《仰せのままに。》


そんなに大量の魔獣を使役していたのか…聖都には何かあると思ったが、着々と迎える準備をしていたらしいな。


「グレース!ゴーレムには敵対行動をとる相手にだけ攻撃するように継続させておいてくれ。」


俺はグレースに念を押す。


「了解です。」


次の瞬間バーニアのフル加速で上空へと飛び立つと、翼竜の軍団がシャーミリアとマキーナが担ぐストレッチャーの方に向かっていた。狙撃を見つけて攻撃を仕掛けて来たらしい。


《お前たちは下がれ!》


《は!》


そして俺は猛スピードで聖都から飛び立ってきた翼竜軍団の側面へと迫る。


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


M134ミニガンを掃射すると、側面の近い方の翼竜と上に乗っている騎士たちがその体を飛び散らせて、虫のようにパタパタと落ちていく。俺が急襲したことによって、翼竜部隊はこちらに進路を変更したようだった。


「おお来た来た。」


ガガガガガガガガガガガガガガガガ


ハラハラハラハラ


《みろ!翼竜がまるで〇〇のようだ!》


ハラハラハラハラ


数分で全部の翼竜が落ちてしまった。乗っていた騎士たちも皆即死してしまったらしい。


《ご主人様!再び何か上がってくるようです。》


《翼竜か?》


《いえ。あれはデモンです。》


《すぐにオージェの所にマリアを下ろしてきてくれ!》


《は!》


デモンがこちらに到着する前にストレッチャーに乗せたマリアを下がらせる。


聖都から上がって来たのは、キメラにコウモリの羽のついたバケモノにまたがった、ハゲで毛むくじゃらの筋肉隆々のデモンだった。しかもデカいハエの集団のような物が一緒に飛んで来ている。


《キモいな。》


俺はオージェに無線を繋げる。


「そこから目視で見えるか?」


「えらい、うじゃうじゃと飛んできたな。」


「ハゲのゴリラとハエの集団だ。」


「うわあ…キモっ」


「俺に当てないように榴弾砲を撃てるか?」


「お前が動かなきゃな。」


「まあ無理だな。それじゃ分かった!俺の方がよけながら戦うから、援護射撃を頼む。」


「タイミングは?」


「俺が武器を変更した時だ。」


「了解。」


オージェと無線で話してすぐシャーミリアから念話が来る。


《ご主人様。マリアを下ろしましたのですぐにそちらへ。》


《いや、まて。オージェが榴弾砲で狙っている。俺がデモンを戦闘でひきつけている間に撃つ手筈になっている。森を這って西側にまわれるか?》


《はい。》


《俺が敵をひきつけるから後ろから急襲しろ。》


《かしこまりました。》


そして俺はそのまま上がって来たデモンとハエの軍団の方に近づく。


「よう!お前たちは聖都の住人かい?」


とりあえずハゲの毛むくじゃらに話しかけてみる。もちろんシャーミリアが回る間の時間稼ぎだ。


「あはははははははは。そうだ!今はあの聖都が我の住みかだ!」


「あそこは信心深い、神の信徒である人間が住む国だと思ったがな。」


「面白いだろう!神の信徒とやらは我らの恐ろしさに、従順な羊となって我らの餌となっておるわ。」


えさ・・・ね。


「まだ…生きている人が居るってのか?」


「そりゃ当然だ!いなくなってしまったら食いもんが無くなるだろう?」


「ふーん、そう言う事ね。なら、お前の名前を聞いておこうか。」


「ぷっはーはっはっはっ!お前のような虫けらに名を名乗る必要がなかろう。」


「なら別に聞かん。」


「な…まあいい、冥途の土産に聞かせてやろう!」


「いや、別にいいや。」


「な、なにを!我の名はアビゲル!高位のデモンよ!」


「あっそ。」


「な、お…お前たちは、いったい何なんだ?その様な鎧を着てなぜ飛んでいられる?」


「企業秘密だ。」


「きぎょう?ええい!とにかくお前を殺せとの命だ。死ね!」


ボッボッボッ


ハエの軍団から火の玉が飛んできた。


あら、火を出すのね。


それを回避してお返しにM134ミニガンをぶっ放す。


ガガガガガガガガガガ


「あら?」


落ちない。少しは効いているようだが翼竜のように落ちてはいかない。


「ふ、ふはははははは。かなり魔法の射速が早いようだな!だがそのような威力では落ちんわ。」


いや、魔法じゃないんだけどね。でもミニガンの威力が通じないなんて相当防御力が高いらしい。


そしてアビゲルがもっている槍の先端をこちらに向けた。


ボッ


するどい氷の矢がこちらに向けて飛んでくる。凄いスピードではあるが所詮は魔法のスピードだった。簡単によける事が出来る。しかし…徐々にその弾数が多くなってきた。俺は氷の矢とハエの火の玉を避けまくって飛んでいるが、軽く被弾し始めるのだった。


だがヴァルキリーの装甲はびくともしない。


ボッボッボッボッ


アビゲルはさらに氷の矢を連射してきやがった。


避けながらミニガンを掃射していく。弾は当たっているようだがなかなかしぶとい奴らだった。


ガパン


俺は潔くM134ミニガンを捨てる。


シュッ

シュッ

シュッ


旋回性能が良くなり容易く魔法を避けられるようになった。


《来たな。》


《はい。》


アビゲルとハエの集団の後ろにシュッとシャーミリアが出て来た。後方からM240中機関銃をぶっぱなす。


パラララララララララララララ


バス

バッ

ボッ


ハエの集団に命中はするが、それでもしぶとく飛んでいた。防御力の高さが厄介だった。


「無駄だ!そんな弱い攻撃では落ちぬ!」


アビゲルがシャーミリアの方を向くと、ハエの集団も一気にシャーミリアの方を向いた。


あら?


いいの俺に背を向けちゃって。


俺はおもむろにM61バルカン砲を召喚した。


ブオオオオオオオオオオオオオオオオ


俺がM61バルカンの20mm弾を掃射すると同時に、地上から155㎜榴弾砲が飛んできた。


ドゴン!


バチバチ

バチバチ

ボゴッ

ズバッ


20mmバルカンの掃射と、155㎜榴弾砲はさすがに効いたらしい。


ビシャ

バチャ


あっというまに飛び散っていくハエの軍団。残骸が地上へと落下し始める。


「な、なんだと!」


ドゴン!


また155㎜榴弾砲が炸裂する。


ブオオオオオオオオオオオオオ


俺のM61バルカンも火を噴く。


ハエが続々と地上に落ちていく中で、アビゲルが意を決したのか扇風機のように槍を回して俺の方に突っ込んで来た。その形相は必死だった。


だからさ俺を舐めすぎなんだって。


ブオオオオオオオオオオオオオ


アビゲルがM61の掃射に耐える。恐らく魔法などなら絶対に貫通する事は無かっただろう。


ボギン


あまりの攻撃にアビゲルがもっていた槍が折れた。


バババババババババババ


「馬鹿な!ぐあ!」


あっというまにハチの巣になっていくアビゲル。しかしなかなかしぶとくて落ちない。やはり高位のデモンというだけはある。乗っているキメラも素早く飛ぶ事が出来なくなっているようで空中に止まってしまった。


ボボボボボボボボ


穴だらけになりながらもなにかを唱えているようだ。


すると俺めがけて突っこんで来た。


「なんだ?」


俺を抱きしめるような姿勢で突進してくるが、頭は半分吹き飛んでおり、あれで生きているのが不思議なくらいだ。


まあデモンに生きてるっていう概念があるのか知らんけど。


すると俺まであと数メートルの所で


ドッッゴォォォン


アビゲルは爆散した。


そう、俺はM61バルカンを捨てて、SMAW-NEロケットランチャーでサーモバリック弾を撃ち込んだのだった。


シャーミリアを見るとハエの軍団にたかられているのか、逃げ回りながらM240で応戦していた。


「自分たちの親玉が消えたのに生きてんだ…」


しかし親玉を失って弱体化したハエは、M240中機関銃の攻撃でも十分通用するらしくパラパラと落ちていく。遅れてやって来たマキーナが加わって更に殲滅速度が上がった。


「じゃ、俺も。」


再びM134ミニガンを召喚してハエの軍団めがけて掃射する。


あっというまにハエの軍団は一匹残らず消滅してしまうのだった。


「ご主人様!お怪我などはございませんか?」


「まったく問題ない。敵の攻撃がかすりはしたが、この装甲のおかげでびくともしないよ。」


「それは良かったです。」


「マキーナもありがとうな。」


「い、いえ。遅くなりまして申し訳ございません。」


「いやいや、シャーミリアの飛行速度について来れるわけないし。」


「はい。」


するとオージェから無線が入る。


「片付いたようだな。」


「ああ。だがまだ予断を許さない。敵に隠された航空戦力があるかもしれんからな。」


「だな。」


そしてその後でグレースから無線が繋がる。


「ラウルさん!」


「どうした?」


「地上にも恐らくデモンらしきものが出ました。」


「今どうなってる?」


「ゴーレムで応戦中ですが、マリアさんの狙撃による援護も無くなったので、何体かが魔法使いの攻撃でやられました。あとはデモンの攻撃でも数体ダメになったようです。」


「しかたがない、中に投入したゴーレムには囮になってもらうか。」


「わかりました。」


そして俺はシャーミリアに向かって言う。


「爆撃を開始する。」


「は!」


爆弾を召喚するべく俺は手を前に差し出すのだった。

次話:第458話 湧き出るデモン


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