第44話 フル装備の魔人
ラウルの体全体に紋様のような痣が浮いていた。
「ラウル!どうしたの?起きなさい!」
イオナが驚いて叫んでいる。
「イオナ様、ラウル様は魔力が枯渇しているのです。まだ目覚める事はないかと…」
ギレザムが答えているようだった。
俺は意識がなかった。だがイオナやギレザムの声が聞こえる。だが体が動かせない…はっきり音も聞こえる。いったん意識が落ちたのは間違いない。パソコンでいうところのスリープモードのように。
「これは、どういうこと!?」
イオナが怒ったようにギレザムに聞いているようだった。
「いえ、それが…よくわからないのです。我もたったいま気がつきましたゆえ。」
俺は天井で魔力枯渇でおちてしまったらしいのだが、先ほどから外部の音やギレザムとガザムの会話が聞こえてきた。
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少し話を戻そう・・
俺はM134ミニガンを出してギレザムとガザムに指示していた。
そのあと意識がおちて真っ暗になった…
どのくらいたったかわからないが音が聞こえ始めた。
・・・・・ドドドドドドドドドドドドドドドド
ああ、ギレザム上手く撃てたんだな。M 134ミニガンの音が心地いいわ…、バッテリーの電源も問題なかったって事か・・これは次に使えるかも。
「凄まじいな・・」
「ギル・・恐ろしいな・・」
「ああ・・」
ギレザムとガザムが驚いているようだ。どうやらミニガン&ポーション作戦がうまく行ってるらしい。よかった。でもなぜか意識がはっきりしているのに目が開かない・・
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「あの女ヴァンパイアがおそらくは奴らの頭だ。だがまだ死んではいないようだな。」
「おそらくは一番後方にいるのだろう・・」
「どう思うガザムこれほどの大群。我は初めて見た。」
「ラウル様をどうにかして捕えたいのであろうな。」
ん?やっぱ俺を捕まえたいのか。なんでそんなにヴァンパイアに執着されることがあるかね?とにかく起きて話に混ざりたいが体が動かん。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドガチ!
あ、弾切れか1分以上は撃ったみたいだな。ヴァンパイアはどうなったのだろうか?死んだんかな?
「おい!ガザム出なくなったぞ!」
「ああ、このベルトというやつがなくなってしまった。」
「ギル、ポーションももうない。」
「わかった。とりあえずこの武器とラウル様を連れて中に戻ろう。」
あ、2人が慌ててる。ひょっとしてヴァンパイアのこっちゃった?てか、なんでこんなに意識がハッキリしてるのに、起きれないんだろ俺。
「ラウル!」
イオナの声だ。なんか切迫詰まってるな…大丈夫だよ母さん生きてますよ。んー、しゃべれない…
「大丈夫です。ラウル様は魔力切れで寝ておられるだけです。」
「そう・・良かった・・」
いやいや起きてるんですよ。ほんとはっきりしてます!体が動かないんです聞こえてますよー!
「あの・・イオナ様・・ラウル様がおかしいです・・」
ん?この声はミゼッタだな・・なんかどうした?
「これはなに・・」
なにって、何が?
「これは・・元始の・・」
原資?原子?原始?元始?なんのこと?ギレザムどうした?
「ラウル!どうしたの?起きなさい!」
イオナさんがなんか慌ててる。俺おきてるんすけどね全然動かないんっすよ体が。マジでなんだ!?
「イオナ様、ラウル様は魔力が枯渇しているのです。まだ目覚める事はないかと…」
ちがうんだギレザム!俺おきてるんだよ、魔力切れで寝てるはずだと思うんだけど起きてるんです。
「これは、どういうこと!ラ・・ラウルが・・」
「いえ、それが…よくわからないのです。我もたったいま気がつきましたゆえ。」
えっ?えっ!なになに?俺が・・どうしたって?
「ただ・・イオナ様、これは元始の紋章に似ています。」
「元始の紋章?この体全体に出ているのが?」
えっえっえっ怖い!なにが出てんの?なに?怖い!俺どうなってんの?紋章?動けないだけに自分に異常が出ているとか聞くと怖いわー。ところで・・ヴァンパイアはどうなってんの?
「きゃぁぁぁぁぁl!!」
ど・・どうしたどうした?ミゼッタ?
「くっ!このっ!」
「よくも私の可愛い子供たちを殺しまくってくれたな!」
「貴様!」
ズガッ、ズ、ズズズ
「ギル!」
ガガッ
ザザッ
どうなった?いったいどうなったんだ。
「ぐあ!放せ!」
ガザムの声が聞こえる。あ、俺ひもでガザムとつながってんだ!
ブワッ!
と一気に体に風が当たっている感覚がする・・これは外だな。耳にゴーゴーと空気が流れる音が聞こえる。感覚的には・・空を飛んでるな・・
ズザザザザザザ
たぶんM93 フォックス兵員輸送車が停まった音だ。ブレーキ音に聞こえる。
あれ?
感覚的に落下しているようだが・・
「ぐふぁ!」
地面にたたきつけられる衝撃だと思ったが、地面との間にクッションがあるように感じた。おそらくガザムが俺をかばって落ちたのだろう。その瞬間腰ひもで縛ってた二人の体が離れたようだ。ひんやりとした地面の感覚が頬っぺたに伝わってくる。
「いいかげん!その魔人の子をこっちによこしな!」
あ、これは女ヴァンパイアの声だな。捕まって空に連れ出されたのかガザムか・・くそ!体が動かない・・殺されるんじゃないのか?
シュパッ!
「くっ!しつこいね赤髪のオーガ!」
「そっくりそのままその言葉をお前に返す!何故、その子を狙う!」
そうそう!俺もそれが聞きたかった!ギレザムさんよく言ってくれました。なんで執拗に俺をねらうんだよ!!
「ふっそんなこと聞いてどうするのさぁ!教えるはずがないじゃないか。」
だよね。
「ん・・・その子供・・その痣・・それは・・」
「そうだ!それが分かったのなら手をひけ!」
だからぁ・・さっきからなに?俺の痣?そういえばへその脇にシミがあったようなきもするが、痣なんてなかっただろうが。あー早く見たいんだが!なんで目が開かないんだ!
「なおさらひけないねえ・・無傷で連れ帰らねば、私が滅ぼされてしまう。」
「誰に頼まれた?」
「関係ないんだよ!死ね!」
ガシュ、キン!ドバッ! ズササ!シュパ!
「くっ!」
「あっはっはっはっは。ボロボロじゃないかい!この数相手に勝てるのかい?あっちの黒い奴もどこまで持ちこたえられるのかね?」
ムカつく!この女ヴァンパイア余裕ぶっこいてる。てか・・これそうとうヤバくね?
ダン!ズバッ!
「ん?死にぞこないの狼男もどきじゃないかい。まだ生きてたのかい?」
「お前なんかの攻撃で死ぬわけねえだろ。」
おお!ゴーグ生きていたか!心強いな!
パタパタパタ!
ギェエエェ
キャアス
ヴァンパイアたちの声があちこちでなってるな。
「くそ!」
「ゴーグ!お前の体じゃ無理だ!下がれ!」
「ギル!コイツは俺がやるよ。」
「やれるもんならやってみるがいいさね!」
どうしたもんかね?体が動かないんじゃ俺はいずれさらわれるか、殺されるかするんじゃねぇかな。
ガキン!ザシャー!ズバァッ!
「ゴーグ!」
「くそ!きたねえぞ眷属が邪魔なんだよ!」
「この子たちも私の一部だからねぇ」
ヴァンパイアがずるいマネをしてゴーグをもてあそんでいるようだな・・うーむ。ムカつく。
「ガザム、すまない・・俺、足手まといみたいだ・・」
「ギル!ゴーグがひどい!」
パンパンパンパンパン!!
「ミゼッタちゃん!もどりなさい!」
銃声とイオナの声が聞こえる。どうやらゴーグのピンチにミゼッタが銃を持って飛び出したようだ!!えっ!ミゼッタだめだ!!戻れ!
パンパンパンパンパン
「イオナ様!だめです!マリアも!あ・・ああ・・」
ギレザムが絶望的な声を上げる。
「あーっはっはっはっはっはっは!!」
高笑いしてやがる。女ヴァンパイアコイツどうしてやろうか!!
パンパンパンパン
また銃声が聞こえた!
シュパ!!
「きゃあああああああ」
ミーシャの叫び声だった!
なんだよ!!俺の体!!
動け!!
「やらせはしない!」
「おっとそんな簡単に動いていいのかねえ?」
「グアぁ!」
ギレザムの叫び声が聞こえる。もう・・頼みの綱が・・
動け動け動け動け
「きゃあああ」
「ミゼッタ!」
ゴーグが叫んだ!
動け動け動け動け!
「ラウル?」
「ラ・・ラウル様?」
「ラウル様!?」
「ラウルゥー?」
うちの女性陣が・・みんなが俺を呼んでいる。
動け動け動け動け!動け動け動け動け!
「ん?なにかおかしい!ガザム、ゴーグ皆を抱いて離れろ!」
「グぅ!」
「がはぁ」
「ラウルを置いて行ってはダメ!」
「ラウル様も連れて行って!」
「ラウル様を先に!」
「ラウルを置いて行かないで」
ん?俺・・おいて行かれてるの?どうなってんの?あ・・そうか俺を敵に渡して逃げる作戦かな?うん、それでもいいよ・・みんなが助かるなら。
「お・・お前・・なんだい?」
ん?ほかにだれかいるのかな?誰だ?
「う・・。子供たち!こいつを始末しな!!」
ダムダムダムダムダムッ!!!
ドゥバーーーン
ブゥワアアアアア!
ズガガガガガガガガ!
なんだ?すっごい音がする。爆発音や射撃音だがいろんな武器の音が混ざってる気がする。
こんなに武器出したっけ?俺?・・拳銃とミニガンと・・なんだ?体の全面が熱っいぞ!
怖い!怖い!怖い!なんだ!
ドン!ドン!
ズバーン
誰だ?誰が攻撃しているんだ!?
しばらく攻撃音が続いたが、急にシーンとした。
その時だった・・
ぎゃるぁひるぅぅううぅぅぁああああ!!
えっ!?なんか変なけだもののような叫び声がする!新手か?万事急須か!!
一気にあたりがシーンとした。
目覚めろ目覚めろ目覚めろ!!
すると・・ようやく薄っすら目を開けることができてきた。
やった!目覚めることができた!
とにかくみんなで逃げるんだ!M93 フォックス兵員輸送車に乗り込んで・・
目を開いたところで・・俺は気が付いた。目の前が火の海になっている事を・・顔が炎で照らされて熱い。もう一つ気が付いた事がある・・
俺は10メートルくらい上空にいた。
「なんだ・・これ。」
爆撃されたような焦土。あちこちえぐれたクレーターとヴァンパイアの子分どもの残骸。
ん?なんじゃあぁこりゃあああ。俺の腕が・・両腕に・・
Mk19自動擲弾銃が・・・
生えてる!!!
Mk19自動擲弾銃はグレネード弾40x53mm擲弾を連続で射出する武器だ。いわばグレネードのマシンガン。40x53mm擲弾は弾着すれば半径5メートルの人間を殺害し、集団で行動する敵に対して特に有効な兵器だ。
それが・・俺の両腕から生えてる・・デカい・・
ん?顔の両脇になんかある・・
目線で追ってみると・・両肩にM134ミニガンがくっついてる。・・これ俺の体から生えてるみたいだ。なんだよこれ・・体から出てんじゃん!!
体の下にも違和感があるので自分の体を見てみると、腰の両脇にAT4ロケットランチャーがくっついてる。
ちょっ・・・ロボットアニメじゃないんだから・・
見える見えるぞ!じゃなくて・・愛を・・カルチャー・・じゃなくて!!
そして10メートルほど上空にいた、俺の体が自然と下に降りて地面に着地した。
目の前にはあの貴族風女ヴァンパイアが跪いて首を垂れていた、その後ろに1人のヴァンパイアがいて同じように跪いている。
てかみんなは!?
俺が振り向くと、ギレザム、ガザム、ゴーグまで跪いて首を垂れていた。後の全員イオナとマリア、ミーシャ、ミゼッタが倒れていて動かない。
母さん!マリア!俺は思わず叫ぶが聞こえた声は・・・
「るぎゃぃひるぅぅぅぅぁぁあるぅぅいぃいぃ!!!!!」
ん?なんだ!?これ俺の口から出てるみたいだ!!!
「ははぁ!!」
女ヴァンパイアの声がして振り向くと、ヴァンパイアが這いつくばってひれ伏している。まあいい・・
イオナのところにいかなきゃ、彼女は身重なんだ。
彼女たちのもとに行こうとしたら、ギレザム、ガザム、ゴーグのオーガ3人衆も這いつくばってひれ伏していた・・
・・・と、とにかく・・イオナの元へ・・
ドサ!!
俺の意識が急激に遠のいて暗黒に引きずりこまれていった。
「ラウル様!」
ギレザムの声だけが最後に聞こえていた・・・・
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