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第369話 秘密部屋の情報

俺達は自分達の力に大きな変化を感じていた。


数日前までの俺は人間の魂に干渉する作業で精神が削られまくっていた。俺の精神は消耗しきってやられかけていたと言っても過言ではない。そしてそのボロボロのボロ雑巾になった俺にシャーミリア達が協力して強力な回復術を施してくれた。


俺はシャーミリアがこういった効果が出る事を知っていてやっていると思った。そのうえで俺が魂核に触れたかもしれないとシャーミリアに伝えたのだが、そういう施術をしたつもりはないようだった。シャーミリアは俺がただ胎児のようにみんなに包まれて、魔力を注がれながら深い深い眠りにつけば、急速に回復するだろうという思いつきの行動だったらしい。


とにかく今の俺達の移動速度がハンパない。地面を走っているのにもかかわらず、シャーミリアやアナミスなどの航空部隊の飛翔速度についていけている。


《ギル。》


《は!》


俺は高速移動しながら前線基地のギレザムに念話を繋ぐ。


《まもなく基地に到着する。準備はできたか?》


《完了しています。》


《状況は?》


《ライカン5竜人5オーガ10オーク20ダークエルフ20ゴブリン50での中隊を3部隊構成済み。さらにサキュバス5ハルピュイア5混成の航空小隊を3部隊構成済み。計6部隊に対し、対デモン戦を想定した訓練は済んでおります。我とドランによる地上戦闘、マリアの指揮下での狙撃訓練、ルピアによる地対空及び空対空戦闘訓練。ラウル様の想定した教育課程は既に修了し、応用訓練迄終わらせております。》


《応用訓練?なんだそれ?》


《はい。カララの攻撃に600秒耐える耐久訓練を1日3回。5日が終了しました。》


《えっ?えっと…えっ?》


《はい?》


《ギル…死人とか出てないよな…》


《問題ございません。ただ…》


《ただ?》


《申し訳ございません。エリクサーを10本ほど消費してしまいました。》


《いや、エリクサー10本で足りたの?》


《ははは!カララが本気を出したとでも?》


《そうだよなあ。》


びびった。


《ですが既に各隊アンドロマリウスやアンドロアルフス級程度のデモンは確実に対処できます。》


優秀すぎる。


ガルドジンがギレザムを配下の筆頭に据えていた理由が分かった。


確かに俺と出会ったばかりのギレザムとガザムとゴーグの3人は、本気のシャーミリアの攻撃に耐えていた。今ではそれがギレザムの指揮官としての能力が優れていたからだと言う事がわかる。俺は常にシャーミリアと行動を共にして彼女の驚異の力を知っているつもりだ。あいつが本気を出してしまえば国など1日で滅ぶだろう。その恐ろしいシャーミリアの本気の攻撃を、進化前のオーガ2人とオーガライカン1人で耐えたのだ。優秀と言う言葉では足りないかもしれない。


《では俺達の到着と精霊神の到着を待て。到着次第作戦行動に移るから行軍の準備をしておけ。》


《すでにいつでも出発できます。》


うへぇ。あまりに優秀すぎて俺の出る幕が無いな。


俺はヴァルキリーの中で苦笑いをしていた。猛スピードで走っていても俺は魔力を消費をしていない、今はヴァルキリーが俺の代わりに走ってくれているからだ。このスピードでも配下の誰もが疲弊していないようだった。系譜の力による俺からの魔力供給が大きいが、俺が魂核に触れた事でその系譜のパイプがさらに太くなったような気がする。


まもなく前線基地に付くだろうが、俺達の到着の方が早かったようだな。


《ご主人様。》


《どうした?》


《精霊神様です。》


《うわ!もう来たのか!》


どうやらシャーミリアがエミルが操縦するチヌークヘリを捉えたようだった。どうやら俺が召喚したヘリの性能も向上しているらしく、既に前線基地に戻ってきたようだった。そんなところまで俺の力増大の影響が現れているとは思わなかった。


《シン国の民は置いて来たようですが、お一人想定外の方が乗っておられます。》


《いや、スラガだろ?俺が指示したんだ。》


《いえ。》


《えっ?誰?》


《恩師です。》


《モーリス先生?》


《はい。》


えっと…最前線はあまり安全じゃないんだがな。先生どうして来ちゃったんだろう?


《わかった。》


とにかく俺は基地への到着を急いだ。


基地は巨大な施設へと変貌していた。半月も空けていないはずだが、一つの街ほどに大きくなっている。俺が置いて来た戦闘車両数百台もあちこちに散らばっており、基地西側には巨大な訓練場が出来上がっている。


基地の番兵が城壁の上から走ってくる俺達を確認したらしく、光でチカチカとやって来たので俺は青い照明弾を召喚し空中に撃つ。


バシュー


遠い視界にはチヌークヘリが着陸するのが見えていた。


「よし、そのままヘリポートに向かうぞ!」


皆が俺について巨大なヘリポートに向かって走る。


ヘリのそばに行くと、既にエミルとケイナ、オージェとトライトン、ガザムとスラガ、そしてモーリス先生がすでにヘリを降りて立っていた。


「先生!」


「おお!ラウルよ!なんじゃ?ずいぶん力が大きくなったように感じるのう。」


「その話もいろいろといたしたく思いますが、このような危険な前線基地まで何故?」


「そうじゃな。それもゆっくりと話をせねばなるまい。」


「わかりました。」


するとギレザムがやってきて俺達に一礼する。


「ギル!留守を預かってくれてありがとう。」


「いえ。我は我の仕事を遂行するまで、ですが我にも聞きたいことがありました。」


「なら司令塔に行こう。」


「は!」


俺達は全員司令塔に向かって歩き出した。


ガシャン!


俺は途中でヴァルキリーを脱いでそのままみんなと歩き出す。そのままヴァルキリーが後ろをついて来る。


ガシャガシャ


「ん?ラウルよ!魔導鎧が勝手について来るようじゃぞ。」


「はい。先生いろいろとありまして、なぜか自動で動くようになりました。」


「面白い!少し研究させてもらいたいが今は我慢しておこうかの。」


「時間があるとき自由に見て良いですよ。」


「そうかそうか!」


俺はこっそり反対側を歩いているオージェに耳打ちする。


「なんで先生ここにいんの?」


「なんかラウルに一番に話さねばならない事があると言うので連れて来た。」


「こんなとこ連れてきて!まだ安全じゃないのに。」


「ならお前は先生が言い出したことを曲げられるのか?」


「曲げられない。」


「だろ?」


「そうだったな、すまん。」


そうか…どうやらモーリス先生は無理やりついてきたようだった。何か理由があるに違いない。


「こちらで。」


ギレザムがドアを開く。


俺達は指令室の横にある会議室に到着してテーブルの周りの椅子に座った。魔人達は全員立ったまま俺達を見ている。


コンコン!


はい。


後からグレースとオンジが入って来た。


「思いの外、戻りが早かったですね?」


「まあな。ただ…」


「どうしたんですか?」


「辛かったぁ!」


「ええ?」


「とにかく過去一過酷な任務だったよ。」


「そうなんですね。」


「とにかく終わって良かったよ。」


「なによりです。」


そして俺、モーリス先生、オージェ、エミル、グレースが席に着くと、ゴブリンのメイドさん達が俺達にお茶を持ってきてくれた。もちろんフラスリア産の高級茶だった。


「んーいい香りじゃのう?ずいぶん茶を入れるのが上手いようじゃ。」


「はい、先生。どうやらマリアが仕込んでいるらしいんですよ。」


「なるほどのう!さすがナスタリア家の元メイドはそのあたり抜かりが無いようじゃ。」


「ええ、私にはもったいないメイドですよ。」


「マリアもおぬしの事をもったいない主人じゃと言うじゃろうて。」


「いやいや。」


お茶がテーブルの上で湯気を立てていた。フラスリアのお茶は本当に香りが良かった。


「して先生はどうしてここに?」


「うむ。わしらがユークリット王都の復興をしておる際にのう、半壊した城に入ったのじゃよ。」


「ええ。デモン戦で大破してしまった城ですね。」


「そうじゃ。その城の奥に結界で封印されている場所があったのじゃよ。」


「そんな場所が?」


「そうじゃ。王族以外は入れないであろう場所じゃな。」


「それでどんな場所だったのですか?」


「書庫じゃ。」


「書庫?」


「うむ。王族でも容易に立ち入れない秘密の図書館と言ったところかのう。」


「先生はそこを知らなかったんですか?」


「もちろん禁断の書庫の存在を小耳にはさんだことはあるが、実際に見たのは今回が始めたじゃった。」


「そのような場所が…。」


「うむ。」


「中に入れたのですか?」


「結果としてはな。ただ書庫の中を全部は見ておらん。」


「そうなのですね?」


「最初の入り口の結界を解析して解くまでに、これまでの時間を費やしたのじゃよ。」


「先生でもそんなに手こずったんですか!?」


「かなり難解であった。」


そんな厳重な禁断の書庫を見て、モーリス先生が慌てて前線基地まで飛んでくるのだから、きっと何か重要な事があったのだろう。


「その書庫は今どうなってます?」


「わしがもう一度結界を施した。」


「どうしてです?」


「うむ。あれは一般の人間に開放して良い場所ではない。」


「それほどですか?」


「そうじゃな。」


「何があったのです?」


モーリス先生が周りを見渡す。俺達と魔人しかいないのを確認して俺に顔を寄せて来る。


「お前たちも近くによれ。」


オージェとエミル、グレースもテーブルの真ん中のモーリス先生に顔を寄せた。


「おぬし達どこから来たんじゃったか?」


「地球と言う場所です。」


「じゃったな。恐らくは何かそれに関するものが記されておるやもしれん。」


「!?」

「えっ!」

「!!」

「なんですって!」


「やっぱり驚くじゃろうと思ったわい。」


「そりゃ驚きます。」


「もしかしたらおぬし達なら読める言葉があるやもしれん蔵書もある。」


「本当ですか?」


「見てもらわねばならんがな。とにかくあんなもん崩壊した城の一部にあってはならんからのう、今はラーズにお願いして守護してもらっておるわ。結界を施して、なお不安じゃからのう。」


「ラーズに?」


「そうじゃ。ラウルよ、あやつは守りに優れているのじゃろ?」


「よくお分かりで。」


「ラーズはあそこにいるのが相応しい魔人と言う事じゃ。まるでおぬしがラーズはあそこにいる事が正しい事を知っていて、配置を決めたのかと思えるくらいじゃ。」


「偶然ですよ。」


「ふむ。」


「それでどんな感じだったのです? 」


「中に入ると膨大な蔵書が並ぶ棚がずらりと並んでおった。蔵書だけではなくいろんなものがあったように思う。」


「いろんなもの?」


「正面の入り口の結界を破っただけで、中にもいくつもの結界があり一部しか見る事は出来ておらのじゃ。」


「それは非常に興味がありますね。」


「じゃろ?しかしラウルよ、あの結界をひとつひとつ破るにはワシでは魔力が足りなすぎるのじゃよ。全部破る前に寿命がつきるじゃろうて。」


「そう言う事ですか、それで私の魔力を?」


「そう言う事じゃな。ただ今は戦時じゃし、そういう事をしている暇もないとは分かっておる。」


「ですが、もしかするとその書庫に何かのヒントがあるかもしれないですね。」


「そうなんじゃよ。」


俺たち異世界組は一気にモーリス先生の話に引き込まれた。もしかしたら前世の情報が取れる?またはこちらとあちらの世界の関係?俺達5大神の事も分かるかもしれない?そう考えると戦争そっちのけでその情報を見てみたい気もするが、今は本当に先を急ぐため優先順位をつけなければいけなそうだった。


「先生は何か情報を?」


「ラウルに前に見せてもらった魔導書があるじゃろ?」


「はい。今はファントムが持っています。」


「なんと似たような文字を見つけたのじゃよ。」


「ホントですか!!」


「ああ、間違いない。」


「もしかするとあの本の中身を解明できるかもしれないと?」


「そういうことじゃ。」


「先生!危険なところを良く来てくださいました!さすがは先生!それも含めた形で作戦を決定せねばならないようですね。」


「とにかく間に合って良かったと思っておるよ。」


「はい。ありがとうございます。」


俺達はファートリア西部ラインを完成させる前に、俺達がトレントからもらったあの謎の魔導書の真実を知る事が出来るかもしれなかった。きっとこのタイミングでモーリス先生が来てくれた事には意味があるのかもしれない。


しかし…禁断の秘密の図書館なんて、ファンタジーの王道を行く場所だ。


俺達4人はワクワクし始めるのだった。

次話:第370話 軌道修正


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