表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

359/951

第357話 救出作戦会議

前線基地周辺には物凄い数の戦闘車両が置いてある。基地の防壁上から見る戦闘車両群は圧巻だった。


例えば日本にある16式機動戦闘車だけで言うと、全国に配備された台数を全部合わせても200両に満たない、87式自走高射機関砲に関しては52両程度、19式装輪自走155mmりゅう弾砲などは21両しかないのだ。


にもかかわらず…


俺がこの前線基地周辺に配備したのは、陸自16式機動戦闘車100両、87式偵察警戒車100両、87式自走高射機関砲150両 19式装輪自走155mmりゅう弾砲50両、さらには日本にはないブラッドレーADATS対空対戦車ミサイルシステムを50台。


おまけに山岳地帯にも19式155㎜榴弾砲50両、93式近距離地対空誘導弾SAM-3 50両を配備している。山頂基地はフラスリアに侵入されないための防衛線だった。


どう考えても異世界の風景じゃない。


俺が召喚した武器の弱点でもあり強みは使い捨てであるという点だ。これほど大量の兵器を配備しても戦争が終われば跡形もなく消え去ってしまう。弱点としては戦争が終わるまでに30日サイクルで、何度も供給しなければならないのがネックだった。


「圧巻だな。」

「ですね。」

「もう麻痺しちゃったよ。」


オージェとグレース、エミルが戦闘車両群を眺めながら言う。


なぜこんなに召喚したのかと言えば答えは簡単、カースドラゴンの脅威に備えるためだ。それ以上の敵がいないとも限らないし、これで十分かどうかすら分からなかった。


「グレースにもだいぶ大量の召喚武器を収納してもらっているからな。収納袋とやらに収納されている間は日数にカウントされないのは確認済みだから、万が一があった時はグレースが俺の代わりを頼むよ。」


「もちろんですよ。車両や航空機はファントムには収納できないようですしね。」


俺の魔力と時間があるときは、召喚して収納し召喚して収納してをくりかえしている。俺の魔力が底を突きそうになるまで繰り返してやった事もあるので、グレースはかなりの量の武器や弾丸を収納しているのだった。


「そうなんだよ。携帯武器はあの割れる口で飲みこめるくらいのものじゃないとダメらしい。それなのに人間の死体だと掃除機みたいに吸い込んでいくんだぞ?謎だよな。」


「思い出したくもないです。」


グレースが青い顔をして言う。


俺達4人は防壁の上で車両群を眺めながら、あるひとつの課題について話をしていたのだった。


「やはり防空と言う意味ではこれでは足りんよな。」


オージェが言う。


「俺しかヘリを操縦が出来ないというのが厳しい。」


エミルが返す。


ふたりの言うとおりだった航空戦力が少なすぎる。ヘリを操縦できるのはエミルしかいないからだ。


「エミルが魔人に操縦を教える事は出来ないか?」


俺が聞く。


「それは可能だが不測の事態に備える事が出来ないと、簡単に墜落死してしまうかもしれない。」


「爆発しなければ魔人が死ぬことはないと思うんだがな。」


オージェが言う。


「まあ人間とは違うからな。だがゴブリンやダークエルフは死ぬ可能性が高い。」


もっと多くの航空機が使えるようになれば、航空戦力だけじゃなくて軍の機動力も向上する。何とかしたいとは思っているのだが、こればっかりは簡単には行かなかった。


「オージェの言う通りだが、航空機同士の事故も検討しなければいけないしな。魔人の命を考えるのならハルピュイアかサキュバスであれば飛べるから、教えるとしたらこのあたりの魔人だろうな。」


俺が付け加えた。


「ただ兵員の輸送はかなり熟練してからの方が良いだろう。」


エミルが渋い顔で言う。それだけに素人が飛ぶのは危険と言う事だ。


「確かにそうですよね。」


「エミル。訓練の期間はどの程度見たらいいものかな?」


「飛ぶだけなら100から150時間で行けるかな。兵員を輸送するなら航空経験を何度もつんだベテランじゃないとダメだろう。ただ本来なら2年は訓練が必要だが別に決まりがあるわけじゃないから、教える魔人の能力によって数ヵ月程度でも可能かもね。」


「じゃあさ適性を調べるにはどうしたらいいかね?」


「うーん。まずはやる気じゃない?」


「やる気ね。ならエミルにお願いがあるんだけど。」


「なんとなく察しはつく。」


「もう戦争で航空機を扱えるやつを作るのは断念するよ。とにかく戦争中には無理かもしれないけど、時間があるときにハルピュイアかサキュバスから、適性がありそうなやつを探してもらえないか?もちろん戦後の為だけど。」


俺が言う。


「ああ!あの観光旅行計画ですか?」


グレースが食いついて来る。


「そうだ。」


「それは構わないが、大量の人間を安全に輸送するまでになるにはかなり時間が必要だ。」


「もちろんタダでとは言わないよ。将来的には魔人国エアラインの経営権の60%はエミルの物だ。」


「とにかく急ピッチで進めた方が良さそうだな。」


エミルの態度が急変した。


「契約成立だな。」


「もちろんだ!」


すっかり本題から脱線して、俺達は戦争そっちのけで戦後の儲け話をしていた。みんながワクワクする話をしている時だった。


《ラウル様》


ガザムからの念話が入る。


《おうガザム!》


ガザム達が一生懸命働いているのに、金儲けの話をしていたことがちょっと後ろめたい。


《二カルス大森林の入り口に到着しました。》


《思ったより早いな。》


《ありがとうございます。》


《状況は?》


《鏡面薬を使用しての調査で確認できた転移魔法陣は3つありました。》


《魔法陣は3カ所か。手は出していないな?》


《はい。インフェルノ魔法陣は見当たらず、さらに西の国境線には村が3つありました。》


《村か…人々の様子は?》


《特に魅了などの影響は受けていないように見えましたが、私では確認する事が出来ませんでした。さらに例の複合魔法陣があるかどうかは確認できていません。さすがに鏡面薬を使用するのもためらわれたため使用せずに通過しました。》


《了解だアナミスを連れて確認させる。そうなれば兵站線を作るにも、村を避けるか村の人を強制退去させて魔法陣を作動させるか…》


《人間を守るならばその通りかと。》


《分かった。ひとまず二カルス大森林基地のミノス達と合流してくれ。》


《は!》


二カルス大森林基地にはミノスがいるが一番手薄な場所だ。そのためガザム以下20名の諜報部隊を送り込むことにする。


そして俺は今伝えられた内容を、そのまま北大陸全土にいる魔人に念話で飛ばす。


《計画が進んだら必要人員を招集する。それまで待機。》


《《《《《《は!!》》》》》》


一旦魔人全員に伝え、その旨を目の前にいる異世界組にも伝えた。


「村ですか。」


「ああグレース、村にはまだ何も干渉していない。人々は普通に暮らしていたようだが、あの複合魔法陣が設置されている可能性もある。ラインを繋げるにもその人たちをどうにかしないといけない。」


「なるほどな。複合魔法陣が仕掛けられていたとしたら、また大量に人が死ぬか。」


オージェが眉間にしわを寄せて言う。


「だな。それを発動させるわけにはいかない。」


「万が一、村人が魅了されていたら?」


「俺とアナミスとで村人を解放するしかないだろう。」


「村を連れ出すのも難しいんじゃないですかね?」


「うーむ。アナミスと数名のサキュバスを連れて行くしかないか。とにかく洗脳状態にしてでも一度村から離れさせる必要がありそうだ。軍が出動すればあの複合転移魔法が発動させられる可能性もあるし、少数精鋭で行くしかなさそうだな。」


「なら俺が行くとしよう。」


オージェが言う。


「オージェが来てくれればかなり助かる。あとは武器の補給の件があるからグレースはここに残ってくれ、強い魔人も残していくから問題ないだろう。」


「この要塞に来て、ただで済む奴がいるとは思えないですけどね。」


グレースが大量の戦闘車両群を見て言う。


「敵が来た場合の弾薬の補給や武器の供給は任せたぞ。」


「了解です。」


「村人救出後は直ぐに移送しなければならないから、エミルも同行してくれるか?」


「もちろんだ。」


「それじゃあ指令室に戻って直属の魔人達にも作戦の説明をするよ。」


異世界組と従者と俺の直属の配下をすべて集めて話し合いをすることとなった。


「一度ガザムを呼び戻し到着次第すぐに救出部隊を出す事にする。部隊はシャーミリアとファントム、アナミスとサキュバス隊5名、カトリーヌとルフラ、オージェとトライトン、エミルとケイナ、ゴーグは二人を乗せて行ってくれ。この17名は俺と共に西部にいる人たちの救出を行う。」


「「「「「「はい!」」」」」」


ファートリア西部の村人救出作戦のメンバーは次の通り。


俺とシャーミリアとファントム。

アナミスと選抜したサキュバス5名(洗脳部隊)

カトリーヌとスライムのルフラ。(村人が怪我などをしていた時の回復要員)

オージェとトライトン(いざという時の保険)

エミルとケイナ(村人を救出した後にヘリで輸送)ゴーグ二人を乗せて移動

帰って来たガザム(部隊誘導)


17名の小隊を編成。以上の戦力で西部の民を救いに行く事になったのだった。


「基地司令官はギレザムだ。マキーナ、セイラ、ルピアは残留する魔人の指揮官として指示をしてくれ、グレースは戦闘時の武器弾薬の供給を頼む。ドラグは引き続きゼダとリズの護衛をお願いしたい。俺の留守中の武器弾薬を使用した訓練は一時中止だ。」


「「「「「「了解!」」」」」」


基地防衛は以下の通り。


前線基地には魔人2500人。

司令官はギレザム。

ドラグはゼダとリズの要人警護。

マキーナ、セイラ、ルピア、は魔人達の指揮官として。

グレースとオンジは俺の代わりに武器弾薬の補給を受け持ってもらう。


「マリア!お前の狙撃能力は戦闘になればかなりの魔人の命を救うだろう。カララはその護衛とサポートを頼む。」


「はい!」


山頂の監視部隊の所には500の魔人、カララとマリアが行って砲撃部隊の指揮を取る。


「以上、それぞれの役割を果たしてほしい。」


俺が言うと皆が返事をした。


「救出メンバーはここに残って作戦会議を行う。他のものは解散して日常業務に戻ってくれ。」


16人以外のみんなが部屋を出ていく。


「じゃあ続きだ。ガザム一人ならここまで5日はかからないはずだ。彼が戻り次第作戦決行となる。」


「通常の道を進むんじゃないよな?」


「もちろんだ。車両は目立つから使えない。」


「ゴーグ君。俺達は風の精霊術で軽くするからよろしくね。」


「はい。ちょっと揺れるかもしれませんが。」


「それも精霊術で何とでも出来る。」


「わかりました。」


「俺は小型の魔導鎧を着ていく。」


「それでは休息時には私奴とファントムがご主人様の鎧を守りましょう。」


「よろしく頼むよ。」


「あとは1日どのくらいの距離を進むかだな。」


エミルが言う。


「このメンツなら100キロってところじゃないか?」


オージェが言う。


「トライトンさんはついてこれるかな?」


「トライトンも問題はない。生半可な修練ではなかったようだ。」


「頼もしいです。」


「いえいえ。」


トライトンが謙遜する。


みんなの視線がカトリーヌに向く。やはり唯一の弱い人間なので心配な部分だった。


「それなら問題ございません。私が常にカトリーヌと同体で動きます。」


ルフラが言う。


「ならその状態でファントムに乗っていってくれ。」


「かしこまりました。」

「はい。」


「シャーミリアとサキュバス隊は上空から監視しながらついて来てくれ。ただし転移罠に気を付けるように異変を感じたら鏡面薬を使って調べろ。」


「かしこまりました。」


「一か所目の村に付いたら鏡面薬を使ってオージェとトライトンさんで、村の中を見てきてほしい。二人なら魔力に頼らず行動できるから魔法陣が反応する事も無いはずだ。」


「了解。」


「移動はなるべく夜間に行う。日没から日の出までは移動に使う。」


「村に付いたら?」


「村の状況を見てどう動くか判断しよう。」


「あとは戦闘に突入した時だよな。」


「カトリーヌはルフラをまとえばかなり安全だが、サキュバス一般兵が危険か。」


「私以外のサキュバスはデモンの攻撃には対処できないかもしれません。」


アナミスが言う。


「それじゃあガザムがつくまで綿密に編成や作戦を練って行こう。」


「「「「はい。」」」」


その会議があってから5日きっちりにガザムが前線基地に到着した。


俺達は西部の村々に向けて出発するのだった。

次話:第358話 雨の夜間行軍


お読みいただきありがとうございました。


次も読んで見たいと言う方はぜひブックマークをお願いします。★★★★★の評価もお待ちしております。


引き続きこの作品をお楽しみ下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ありえない風景w 日本で実際に配備されている車両 …に対して… ラウル君が召喚で呼び出した車両 …ミリタリーファンとかなら大喜びする光景じゃないんでしょうか? ラウル君達の反応を見る限りだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ