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第349話 デモン迎撃隊

なんか簡単だった。


デモン討伐。


2点、俺は今回のデモン戦で気がついた事がある。


あいつらに準備の期間を与えなければ攻略しやすいと言う事だ。いままでの戦いでは周到な準備をされ待ち伏せされていたが、急造したデモン軍に隠し球はない。


そして、少人数の魔人部隊で戦った時と違いこちら側に3000の将兵がいた事で、元始魔人の系譜の力が強く働いたようだった。おかげで元始魔人の力が遺憾無く発揮された。


「ご主人様。3000の魔人達が目覚めたようです。」


「そうか。ミリア、魔人兵には怪我人とかいた?」


「皆無です。」


シャーミリアが涼しい顔で言う。


「そりゃそうだろラウル。ワンサイドゲームだったじゃないか。」


「おかげでオージェ達の出番はなかったな。」


「だな。」


オージェはデモンの強さが気になっていただけに残念そうだ。異世界組はほとんどと言っていいほど戦闘に参加していない。


「いやオージェはいいよ。俺なんかずっとヘリの中で後方待機だぞ、フラストレーション溜まりまくりだよ。」


もっと残念そうな人がつぶやく。


「エミルすまない。今回は出番あると思ったんだがな。」


「俺はこれまで兵員輸送しかしてないぞ。」


「いやいや、精霊神様には戦闘以外で凄く助けられてるよ。」


「ならいいんだが、戦闘ヘリがどこまで通用するのか見てみたいんだよな。」


「そのうちにそんな機会もあるだろ。」


エミルがやれやれだぜって顔をした。


「僕は何体か猿ガイコツを狙撃しましたよ。ただほとんどの猿は魔人達のミニガンや迫撃砲と榴弾砲で爆散してましたけどね。」


「いいなあ。」


「だけどグレースは戦闘では未知数だからな。万が一もあるしこれからも遠距離攻撃での支援を頼むよ。」


「願ったり叶ったりです。だって実際の戦場はサバゲと違って死にますからね、囮なんてまっぴらごめんですし。まあ虹蛇の僕が死ぬのかどうかは良くわからないですけど。」


「ともかく俺たちの出る幕はなかったな。」


オージェが言うとエミルとグレースが頷いた。


「それを言うなら私もです。まったくお役に立っていません。」


カトリーヌが言う


「いいんだよ。カティが活躍しなかったと言う事は、怪我人が出なかったと言う事なんだから。」


「まあ確かにそうですが、マリアは敵の総大将を撃ち落としました。」


「カトリーヌ様。私はそれほど凄いことはしていません。ラウル様の魔力により弾丸の飛距離が格段に伸びたおかげなのです。」


確かに俺が今回一番びっくりしたのはマリアの狙撃だった。猿達の後方10kmくらいの上空を飛んでいた双頭の竜、さらにその上にまたがっていたヴァラクと名乗るデモンを撃ち落としたのだ。俺たちの場所からは点くらいにも見えない。ドローンで確認しているから存在がわかったようなものだ。


「俺の魔力でいくら射程が伸びたとしても、それを命中させる技術が凄いよ。ここまでの冒険でかなり成長したのが見て取れる。」


「ありがとうございます。」


マリアが嬉しそうに笑う。


マリアのこの能力は今後の戦術でもかなり使えそうだ。その驚異の能力は俺の幼少期からそばにいたのが大きく影響しているのだろう。


「で次はどうするんだ?」


オージェが言う。


「まずは山を降りてファートリア国へと侵攻する。」


「更に奥地へいくのか?」


「いや。西に発生したデモンを、サナリアとユークリット王都から軍を進軍させ、こちらからも軍を出兵して挟撃する。」


「なるほど。部隊もまったく消耗していないし早い方が良いってか?」


「そうだ。デモンに準備させたら碌なことがないからな。俺は今回の事でデモン発生の条件が分かったし、出現したてだと罠の類もなくて攻略しやすい。そして俺たちは消耗してないだけじゃない、さらなる第一次進化を遂げた魔人達が3000もいる。」


「進化してなにか変わったか?」


「魔力にリミッターをかけなきゃならなくなりそうだ。」


「なるほど。俺が龍神になった事と似た感じかね?」


「かもな。」


俺がニヤリと笑う。


「ラウルさん怖い顔してますよ。」


グレースに指摘されてしまった。


「えっ?そんな顔してた?」


「ご主人様が光り輝いて見えます。」

「本当に、いつのまにかこれほどご立派になられて。」

「魔人を統率されるに相応しいお顔になってますわ!」


シャーミリアとカララとセイラがうっとりした顔で言う。


「それではラウル様。次のご指示を。」


マリアが言う。


「そうだな。じゃあ次の作戦に移るとするか。」


俺は目をつぶった。


《全軍に次ぐ!》


俺は念話を繋いだ。


《は!》

《はい!》

《ラウル様!》

《はい!》

《は!》


北の大地にいる全ての魔人に繋いでみると、方々から返事が来た。


ユークリット公国にいるラーズやスラガ、西北の果てシュラーデンのマーグ、バルギウス駐留のタロスやマカ、サナリアのウルドやクレ、ラシュタルのザラムやナタ、哨戒行動中のザラム、本拠地グラドラムのタピ、ルタン町のガンプ、ニカルス大森林のミノス達やティラ、および兵士全員に俺の念話が聞こえたようだった。


北の大陸ならどこにいても俺の声が届くようになったらしい。


…いや、これ便利なんだけど。


《俺たちはファートリア神聖国への第一歩を踏み入れた。更に一体のデモンを蹴散らしたところだ。急遽召喚されたデモンなど、すでに我々の脅威にはなりえない!》


各地からの称賛の声が鳴り響いた。


《次の作戦を申し渡す。》


《《《《《《は!》》》》》


《俺はこれよりフラスリアから来た軍3000のうちの2000と一緒に、このファートリアの入り口に拠点を築き上げる!ここを押さえればファートリアから北西への出口はない。》


魔人達は静かに俺の声を聞いていた。


《更にファートリアから1000、ユークリットから1000、サナリアから1000の魔人を出撃させ、西に現れたデモンの挟撃作戦を開始する!》


俺の周りにいる配下達も念話で聞いている。


《ファートリアからの部隊の大将はドラグ、ユークリットからの部隊の大将はラーズ、サナリア部隊はウルドを大将とする。全軍の総大将はギレザムだ!20名を一個小隊とし部隊編成を急げ。ガザムが周囲を哨戒している、ガザムからの連絡が入るまでユークリット隊は東へ、サナリア隊は南に進軍しろ。》


するとすぐにガザムから連絡がきた。


《ラウル様、デモンは西へ向かっています。行き先がユークリットかバルギウスかはまだわかりません。》


《みんな!ガザムからの連絡だ!デモンは西へ向かったそうだ。準備が整い次第出撃しろ!》


《準備はもう出来ています!》

《こちらも!》


ラーズとウルドからの返事だった。


魔人達の日頃の訓練の賜物だ。常に有事に備えていたのだ。


《他の地区の者は第一次警戒態勢、敵はどう動くかわからん!いつでも戦闘に移れるようにしておけ!》


《《《《《《は!》》》》》》


全軍から返事が来た。一糸乱れぬ行動伝達ができるようになったのは本当にありがたい。


《我々魔人の恐ろしさを、毒虫どもに思い知らせてやれ!諸君らの健闘を祈る!》


《《《《《うおおおお!》》》》》


俺の念話放送で魔人達の士気が一気に向上した。


「と言うわけだギル。総大将よろしく。」


「身に余る光栄です。心してかかります。」


「常に連結LV2にしておく。銃器を使わなければ魔力の消費もないみたいだしな。」


「かしこまりました。」


俺の元始魔人の系譜のネットワークが北大陸全土に繋がった事で、俺の魔力が無尽蔵にわいてでるのがわかる。と、言うことは逆に大陸全土の魔人達もかなりパワーアップしてるはずだ。ルゼミアに俺は覚醒していないと言われたがこれで十分な気がする。


「してラウル様は?」


ギレザムが聞く。


「ここの拠点はニカルス大森林基地にも近いしかなり重要だからな、デモンはみんなに任せてこの拠点設営の陣頭指揮をとろうと思う。」


「なるほどです。」


「ここに基地を作っておけばもう北に侵攻される事もないだろう。」


「ではデモンの件は全て我に一任ください。」


「そのつもりだギル。お前にしか総大将は頼めない。車両部隊も全部連れて行ってくれ。」


「は!」


ギレザムは早速部隊編成に取り掛かるべく魔人達のところに行ってしまった。


「さーてと。この地は各国に睨みを効かせるにも良い場所だし、かなり大きめの基地にしようっと。」


「戦後の事も考えてんのか?」


「そりゃそうだよエミル、取れるうちに領土は広げておかないと。ファートリアを奪還した後の政府に事後承諾させるつもりだ。実効支配してしまえばこっちのもんだ。」


「ラウルは戦後に軍事力で睨みを効かせつつ、経済でも有利に働くように考えてるって事だな。」


「もちろんさ。経済に偏っても軍事に偏っても良い事ない。今のうちからどっちも強くするための基盤を作るんだよ。」


「僕はその考え大好きですね。だって相手はぐうの音もでませんよね?」


グレースは賛同してくれた。


「ごちゃごちゃ言わせないためにも盤石にしておかないとな。」


俺が言ってると傍から茶々を入れられる。


「よっ!独裁者!」


「やめろよオージェ。カトリーヌが見てるんだぞ。」


「未来のお妃様だ、問題はあるまい。」


「ええラウル様。私はラウル様についていくだけですわ。」


カトリーヌが俺の腕に手を当てて言う。


「まだ公にしてないんだし、ここだけの話にしてくれよ。」


「他言はいたしません。」


「で、悪巧みしてるところ悪いんだけど、どうやらギレザムさんが部隊編成を終えたみたいだぞ。」


エミルに言われそっちを見ると、1000の魔人が跪いていた。


「ああ悪いギル。」


「いえ、大事なお話をされておったようですので。」


「よし!ギレザム!ドラグ!そしてみんな!皆の力ならデモンなど敵ではない。軽く蹴散らして帰ってこい!」


おおおおおお!


一次進化して人間ぽくなった魔人達が歓声をあげた。


「では!」


ギレザムとドラグが一礼し、魔人達を引き連れて出陣していった。


野良デモンなど一気に蹴散らしてくれるだろう。


俺は一面焼け野原になった場所を眺めるのだった。

次話:第350話 ユークリット王都防衛 ~ラーズ視点~


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― 新着の感想 ―
[一言] ラウル君が気づいたこと 読者の視点からしても、これまで散々苦戦していたデモンの討伐が簡単に行えました 理由としては ・これまでのデモンは準備万端で待ち受けていたが、召喚直後はそういったもの…
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