表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

345/953

第343話 ファートリア包囲網

働くゴーレムをファートリアとユークリット国境に置き魔人を約200人ほど配置した。拠点作りはゴーレム1体に任せ、魔人達は森林内に拠点を作らせてそこに隠れるよう指示をする。そのままここに拠点を築く予定だ。


牽制の目的なのだが、何かあればすぐに俺に連絡が来る手はずになっている。


どうやら人々はすぐにこの川を渡ってくる事はなさそうなので、一旦様子を見る事にしたのだった。ここに拠点を作っておけば、バルギウスかユークリットに進軍して来た時すぐにわかるはずだ。


「じゃあバルギウスに向かう。」


「現状視察も大事だしな。」


「ああ。」


俺達は森の反対側に停めてあるトラックの停車場所に来ていた。そこには俺達が乗って来た巨大ヘリも置いてある。


「じゃあ行こうか。」


俺がみんなに言った時だった。


《ラウル様!》


セイラから念話が入った。


《どうした?》


《敵です。》


《なに?フラスリアが攻められているのか?》


《いえ、敵は国境を越えてきては居ません。国境を超える前の山岳地帯に拠点を作っているようです。》


《そっちもか!?》


《はい。》


《兵士は居るか?》


《それが…おそらくラウル様が見たように、一般人しかいないようだと報告が入っています。》


《そっちもか…》


《いかがなさいます?》


《こちらの予定を変更してフラスリアへ向かう。引き続き厳重に警戒してくれ。》


《かしこまりました。》


「みんな。行き先変更だ。」


「どこに行くんだ?」


オージェが聞いてくる。


「フラスリアへ飛ぶ。どうやらフラスリアに繋がるファートリアとの国境沿いに、敵が進軍したかもしれない。」


「そちらは兵士が?」


「どうやらここと同じような一般市民が拠点を築き始めたらしい。」


「またか。」


「まだ未確認だが、その様な連絡が入ってきている。」


「それを確認しに行くという事だな。」


「そう言う事だ。」


そして俺達はフラスリアに飛んだ。


《一体どういう事なんだ。また同じように一般人を送り込んで来た?》


俺は敵の目的が分からず少しずつ焦りを感じるのだった。



フラスリア基地に到着して最初に俺達を出迎えてくれたのはトラメル辺境伯だった。


「ラウル殿!」


「トラメル伯、わざわざ出迎えすみません。」


「私達は魔人さん達に十分よくしていただいておりますので、私自らがお出迎えするのは当然かと。」


「そうですか。魔人達と上手くやっていただけているようでうれしいです。」


「こちらこそ誠にありがとうございます。日々感謝する事が多いですよ。」


「それで、セイラから聞いていると思いますが。」


「はい、どうやら敵が国境沿いに現れたとか。」


「ええ、それについてトラメル伯へ、お話がありましたので基地に来ていただいて良かったです。」


「ラウル様。代官の私も参加させていただきます。」


代官のローウェルも来ているようだった。


「それでは基地の司令塔へ行きましょう。」


「わかりました。」


俺達はそのまま基地の司令塔にある会議室へと向かう。


フラスリア基地はかなりの規模になっていた、というかフラスリア領内の街より堅牢で大きな建物が多いような気がする。3000人の魔人が住んでいるためかなり建造物も増えたようだった。


「それでお話とは?」


トラメルが口火を切る。


「ええ、敵国とユークリット国境に砦が必要なようです。ユークリット王都かバルギウス帝国に繋がる場所に私達は拠点を作る事を決定してきました。」


「聞いております。向こうにも進軍して来たらしいですね。」


「そうなんですが…我々が調べた結果どうやらリュート王国の市民らしいのです。」


「市民が?どうして?」


「それが私達にも分からないのですが、こちらの国境にも市民が送られたらしいのです。」


「市民が…。」


「はい。」


「という事はファートリア神聖国とフラスリア領の境にも拠点を?」


「はい、それにはトラメル伯の許可が必要ですが、いかがなものかと思いまして。」


「是非もない。最前線を押し上げるにも国境沿いに拠点があった方が良いと思いますわ。」


「それは話が早い。それでは早速取り掛からせていただきます。」


俺が言うと代官のローウェルが口をはさむ。


「もし可能であれば我々の兵も連れて行ってもらえませんか?」


「兵を?」


「足手まといになるのは重々承知しております。しかしただ守られているというのはいささか心苦しい。」


「かまわないんですよ!私たちはそういう約束でここに基地を作りましたので。」


「私達だけ安全圏でのうのうとしているなどと言うのは。」


「確かに前線は危険です。ですが魔人達でも無事でいられるかどうかわからない敵がいるのです。私の兵器があっても危険な状況がこれまで何度もありました。ですから何卒フラスリアでの待機をお願いいたしたく思います。」


「それでも!」


「いえローウェルもういいわ。むしろ私たちの兵を守りながら戦う方が、魔人様達を危険にさらすかもしれない。ラウル殿は本当はそう言いたいのですよ。」


トラメルが言う。


「いや私はそんな風に言いたいわけでもないのですが…。」


「お気遣いありがとうございます。それではこの基地から補給なども出るのでしょう?私達が携帯食料などを作り前線へ届けていただくというのはいかがでしょう?」


「それでしたら助かります!トラメル伯の申し出をお受けする事に致しましょう。後方支援をよろしくお願いいたします。」


「承りました。それではローウェル、早速兵達にその旨を伝えなさい。」


トラメルはきっぱりと言う。


「はい。出来る限りの事はさせていただくつもりでおります。何卒よろしくお願いいたします。」


「分かりましたローウェルさん。前線の兵達が万全の体制で戦えるように協力をお願いします。」


「かしこまりました。」


ローウェルも納得してくれたようだった。


「作戦を私たちが聞いても?」


「はい差支えはありません。ただ疑うわけではないのですが、トラメル伯とローウェルさん以外席を外していただけますと助かります。」


「わかりました。」


「それでは今決まった後方支援の件を、先に領兵に伝えておいてくれ。」


ローウェルが家臣たちに言う。


「は!」


トラメルとローウェル以外の家臣たちは部屋から出て行った。


「では早速ですが、今すぐヘリに乗れるだけの魔人を連れて山岳の国境へと向かいます。」


「わかりました。その拠点を私だけでも視察するわけにはいきませんか?」


「トラメルお嬢様!いえ辺境伯様!その役割なら私が!」


「いいえローウェル、私の方が剣術では優れています。邪魔にならないように立ちまわるくらいは出来ます。」


「それだけは!」


トラメルとローウェルが引き下がらないので、俺が決める事にする。


「それではトラメル伯を連れて行く事にしましょう。カララ!トラメル伯の護衛を任せる。」


「承りましたわ。」


「お嬢様!」


「ラウル様がお決めになったのですよ!」


「わ、わかりました。それではくれぐれもトラメル様の事をよろしくお願いいたします。」


「お任せください。カララは私の軍でも最高戦力になりますので、視察が終わるまでは安全を約束します。」


「ありがとうございます。」


《トラメルが言うのも納得だ。自分の領内にどんどん魔人の基地が作られていくのだし、そこを視察したいというのは当たり前の事だった。》


「では早速行かねばなりません。」


「わかりました。」


ローウェルが下がった。


「トラメル伯。詳しい事情はヘリの中で。」


「はい。」


とにかく時間が惜しかった。これだけスムーズに話が決まったのは、トラメルが俺と一緒に冒険をして、心を通わせた結果だと思う。俺は間違いなくトラメルの期待に応えなければならない。


「それで魔人はどれだけ連れて行くんだ?」


エミルが聞いてくる。


「フラスリアとファートリアはとにかく距離が近い、敵が大部隊を送るのも容易に出来るはずだ。さっきの場所より更に多い兵力がいるだろう。」


「ピストンするか、車両部隊を用意するかだな。」


「時間が無い。ヘリでピストンすることにしよう。」


「ではチヌークか?」


「だな、出来るだけ多く乗れる機体がいいだろう。」


「わかった。」


そしてそのまま俺達は司令塔を出て外に行く。とにかく時間が惜しいので急いでいた。


「ご主人様、連れて行く兵員の種族はいかがなさいましょう。」


「ああシャーミリア。各種族30人ずつだな。」


「かしこまりました。」


するとシャーミリア、ギレザム、カララ、ルフラ、ゴーグ、マキーナ、セイラ、ドラグがそれぞれ魔人達に通達するために動き出す。ハルピュイアのルピアは偵察の為、ファートリアとの国境沿いに居るはずだった。ファントムはこういう時は何ら役に立たないのでそこに立っている。


ミノタウロスは数が多くないので5体

ライカン30体

スプリガン30体

竜人30体

オーガ30体

オーク30体

ハルピュイア30体

ダークエルフ30体

サキュバス30体

ゴブリン100体


合計345体の魔人をチョイスしてもらった。


その魔人達がヘリポートに集まってくれた。


「これからファートリアとの国境沿いに砦を作るために、ヘリでお前たちを連れて行く!」


俺がみんなに伝える。


「「「「「「は!」」」」」」


魔人達が俺に向かって頭を下げた。


「みんな頭を上げてくれ!」


ザッ


魔人達の頭が上がる。


「敵はまだこちらに攻め込んできているわけではない。国境沿いにいるのは連行された一般人だと思われる。こちらから攻撃を仕掛ける事は無いが、その一般人たちには俺がかかった転移罠が仕掛けられている可能性も否定できない。拠点づくりは威嚇のためのものではあるが、実際今後も運営されていく可能性が高い。そのつもりで拠点づくりを行ってもらう。」


「「「「「「は!」」」」」」


俺の指示が終わり飛べない魔人達がヘリに乗り込んでいく。ハルピュイアとサキュバスと竜人は飛べるため、そのまま飛行してついて来ることになった。ライカンも狼に変身して高速で移動できるため、ゴブリンを背中に乗せれるだけ乗せて現地へ行ってもらう事になる。残りの魔人達をヘリで輸送する事になった。


俺と異世界組とトラメル、お付きの人とマリア、カトリーヌ、ギレザム、カララ、ルフラ、ゴーグ、セイラがヘリに乗り込んだ。あと第一陣30人ほどの魔人がヘリに乗り込む。


「ではエミル!やってくれ!」


「了解。」


ファートリアとの国境沿いに向かってヘリと、飛べる魔人達が出発した。


「そのうち俺もエミルからヘリの操縦を教えてもらった方が良さそうだ。」


オージェが言う。


「それを言うなら俺もだが。」


「いやラウル。お前は大将なんだ最前線に行くのも控えた方が良いんじゃないかと思うが?」


「オージェ。まさか俺からその役割を奪うつもりじゃないだろうな?」


「ふふっそうですよオージェさん。ラウルさんがじっとしてるわけないじゃないですか!」


グレースが言う。


「まあ正論をのべてみただけだ。ラウルが「はいそうですか」なんて言うと思ってないよ。」


まあオージェの言う事はもっともだ。魔人国の王子がいちいち最前線に出向くのはおかしいかもしれない。だが俺は後方でじっとしているなんで出来なかった。こんな面白そうな事、安全な場所でただ報告を待つだけなんて出来るわけがない。


「ラウル様。そう考えると南の二カルス基地はどういたしましょう?」


ギレザムが言って来る。


「二カルスにはミノスとドランがいる。俺達が行かなくても十分対応できるよ。」


「まあ、そうですね。」


「絶対数がいないがな。あそこには他にも心強い味方がいるんだ。」


二カルス基地にはミノス、ドラン、アナミス、ティラ、魔人300人がいる。しかしそれだけではない、森にはたくさんのトレントもいる。さらに言えば味方ではないが強力な魔獣もいるから、人間の兵隊には容易に進行出来ないだろう。万が一インフェルノが使われればそこに敵の大将がいると分かるから、大将も容易には動かないはずだ。


これでファートリア包囲網はこれでおおかた出来上がるだろう。


開戦に向けての準備が着々と進んでいた。ただ敵の動きが不可解なためこれが正解だとも思えなかった。やはりこちらから動くべきなのだろう。


敵が不気味なアクションを起こして来た以上必ず何かある。


そう思うのだった。

挿絵(By みてみん)


次話:第344話 難民にお菓子を振舞う.


お読みいただきありがとうございます。


続きが読みたいと思ったかたはぜひブックマークをお願いします。

★★★★★評価もクリックいただけましたらうれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ダブルスタンダードは権力者の鑑 >だが俺は後方でじっとしているなんで出来なかった。 前線で働きたい、なにかしたいという人たちを黙らせておいて自分は面白いから前線に出る。さすがですラウル様。 …
[一言] 別の場所でも… 「じゃあバルギウスに向かう。」 …と、言った矢先に再び緊急連絡…ここと同じような感じで敵の侵攻があったと、行き先をフラスリアへ変更 ラウル君の存在は気づいているとはいえ、こ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ