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第326話 五大神の均衡崩壊

夜のBBQの後、魔王城から一番近い山にルゼミアは巨大な洞窟を掘ったらしい。


それも今日オージェに聞いたのだが、ルゼミアは拳骨で穴を堀ったのだとか。


ガガガ


って。


その後オージェは母親のメリュージュと親子水入らず、洞窟で一夜を過ごし魔王城に来た。母親に包まれて寝たらしく暖かかったのだそうだ。


そして俺はと言えばふかふかのベッドでカトリーヌと一緒に眠った。


《いや…結局眠れなかった。カトリーヌと二人きりでなんてドキドキしすぎて眠れるわけがない。》


オージェは久しぶりに母親とゆったりできて疲れも取れたらしいが、逆に俺は身体的には疲れてはいないものの精神的に疲れた感じだ。


そしていま、俺達は昨日みんなで集まった謁見の間に再び集まっていた。ふかふかのクッションに適当に座っていて、俺の配下の魔人やサキュバスとハルピュイア達が周りに立っている。


「オージェはお母さんと水入らずで良かったよな。」


「ああ、だいぶ心配してくれていたみたいでさ。俺に会えて凄く安心したらしかった。」


「お母さん。優しいよね。」


「そうなんだよ。」


どうやらオージェも自分を探してきてくれた黒龍に愛を感じているようだ。


「今は?」


「城の前にいるよ。」


「なんかすまないな。」


「ラウルが海底神殿の事を聞きたいんだろ?」


「ああこっちの用件が終わったら聞こうと思ってる。」


「そう伝えてあるよ。」


メリュージュは城の前で待っていてくれてるらしい。すると少し間を開けてオージェが口を開く。


「そういえば!俺がママって呼んでいるたびにみんな凍ってたよね?」


いきなり俺達が気になっている事をオージェから告白してきた。


「あ、ああ…そんなことはないぞ。自由だと思うし。」


「あれは彼女から、そう呼んでほしいとたっての頼みなんだよ。」


「そうなんだ!なーんだ!」


《龍がママって言ってほしいなんて意表をつかれた。》


「なんつーか子離れしない人で、いや龍か。俺が人間の大陸に行くと言った時もかなり渋ったんだ。だけど俺の頼みで出してもらったいきさつもあってな。」


「そう言う事だったんだ。物凄く違和感があったよ。」


「ふふ。すまんすまん。」


《彼女はオージェが愛おしくて仕方ないんだな。きっと龍から見たら子猫のように見えるんだろう。190CMの偉丈夫が。》


俺達がそんな話をしているとルゼミアとガルドジンが寄り添いながら部屋に入ってくる。魔人達が膝をついて頭を下げた。俺達が一斉に立ち上がる。


「よいよい!楽にせよ。魔人も頭をあげるのじゃ。」


魔人達がその場になおる。


ルゼミアは中央のデカいクッションにボフン!と女の子座りで座り込む。そのしぐさがまるであの宅配している魔法使いにそっくりだ。


《魔王なのになんて可愛らしいんだろう。》


「ふぅ、アルよ…。おぬしは知らんのかな?教えてもらっておらんとか?」


いきなりルゼミアが俺の顔を見るや否や、おかしなことを言い始めた。


「か、母さんいったい何を?」


「そんなものきまっておる!」


ルゼミアが言いかけるとガルドジンが遮る。


「ルゼ!アルの名誉のためにここは黙っておくのも母の優しさぞ。」


「ん?そうか。まあそのうちわかるじゃろ。」


《いやあ、わかってますよ。言いたいことはわかっておりますよ!でもね、今の俺より年上とは言え、前世の俺からしたらカトリーヌは未成年なんですよ。そんな犯罪みたいなこと出来るわけありません。》


ルゼミア達が入って来たと同時に俺達の前に料理が運ばれて来ていた。これからするのは、いわゆるブレックファストミーティングと言うやつだ。パンや薄く切ったローストボア肉と、豆ぽいのが入ったスープと果物系のジュースが出てきた。


「遠慮なく食え。」


「ありがとうございます。」

「いただきます。」

「今日も美味そうですね。」

「それでは遠慮なく。」

「感謝いたします。」


俺達が朝食に手を付け始める。


《やっぱりうまいな。あの厳ついオーガは相当な料理の腕前だ。》


「それでアルよ、聞きたいこととはなんじゃったか?」


「はい5神について何かご存知ではないかと。」


「しっとるよ。」


「えっ!知ってますか?」


「もちろんじゃ。」


「ではお伺いします。ここに居るエミルは精霊神を受体しました。そしてグレースは虹蛇を受体したのです。それで魔人の私と龍人のオージェが呼び寄せられるように集まって来た。これらは偶然なのか必然なのか、なぜこんなことになったのか知っておられますか?」


「時期じゃからじゃろ。」


「時期?」


「ああ大抵受体は同じ時期になされるのじゃな。おぬしたちは生誕してからの年齢も一緒ではないかな?」


「そのとおりです。」


「そういうものなのじゃ。」


「あらかじめ決められた者が受体を?」


「そうじゃ。我も受体するまでは誰がその化身や神子なのか分からんがのう。」


「そうなんですね。」


《という事は俺もオージェもこれから受体をするという事で良いのかな?それにはどんな試練があるんだろう?》


「えっと僕たちが虹蛇や精霊神になった理由ってなんでしょう?」


グレースが聞く。


「ああ均衡が崩れたか、世の変遷の時なのじゃろうな。」


「均衡?変遷の時ですか?」


エミルもよくわからずに質問する。


「ふむ。五神のいずれかが力を落とした。もしくはそれを阻害する者が現れたと考えて良いじゃろ。」


「阻害するものですか?」


俺が聞く。


「五神に敵対する者とは何じゃと思う?」


「それがよくわかりません。」


「その一つはおぬしらがデモンと呼んでいる物じゃ。」


「ああなるほど!デモンですか。」


そうかデモンが五神の妨害をしているのか。


「魔人はデモンだけに創造されたものではないのは知っているか?」


「はい。セイラのようなセイレーンはレヴィアサンが生み出したと。」


「そうじゃ。レヴィアサンとは何か分かるか?」


「分かりません。」


「龍神の神体じゃ。」


「えっ!レヴィアサンが!一度会った事があるんです。」


《ちょっと魚雷を撃ちこんじゃいましたけど。》


俺がレヴィアサンと会った事がある事はルゼミアには伝えていなかった。


「ほう。」


ルゼミアが驚いている。


「敵の転移魔法が開いて出てきたんです。」


「どこで?」


「大陸の国のラシュタルです。」


「ふむ、何かに誘われてきおったか。」


「そのレヴィアサンとはどこに?」


「場所は分からん。きっとオージェの母が知っておるのではないか?」


「なるほど。」


《そう言う事かどうやら敵は海にまで来た事があるという事か。砂漠にも進出していたし海に来ていてもおかしくは無い。恐らくは海底神殿とやらだろう。》


「そして我やガルドジンなどの純粋な魔人は、魔神が創造したものの末裔よ。」


「なるほど、他の魔人と違って角や羽が生えておりませんので、何かが違うとは思っておりました。」


「ふむ。さらにスプリガンやハルピュイアなどは精霊神の創造により生まれた者じゃ。」


「という事は竜人は。」


「セイラと同じ龍神じゃな。」


《だんだんわかって来た。それぞれに創造された者のルーツが違うが、人間と見た目が違うため魔人と一括りにされているのだ。》


「デモンから生まれた者もいますよね?」


「アルの配下にもおるぞ。オーガ、オーク、ヴァンパイア、ミノタウロス、サキュバスなどは皆デモンに創造されたのじゃ。」


「そうだったんですね。」


「しかしの。そのデモンを作り出したものもおる。」


「それは?」


「我らと同じ魔神じゃ。」


《えっ!という事は、ルゼミアやガルドジンはデモンの親戚という事じゃないのか?なら俺もデモンの親戚という事か。》


「えっと元始の魔人と言うのは?」


「魔神が直接作り出した魔人の事じゃが、隔世して生まれて来る。」


《俺はちょっと鈍いらしい。いったいどういう事なのかよくわからない。》


「隔世して生まれる…。」


「うーん分かりずらいかの。人間の貴族で言うところの宗家と分家みたいなもんじゃ。アルガルドは宗家という事になる。」


「あーそう言う事ですか!」


ルゼミアの説明が意外に分かりやすくてびっくりだ。


「まあ言って見ればデモンとは魔神が生み出した失敗作よの。」


「失敗作ですか?」


「そうじゃ。」


《うーむ。デモンは失敗作なのにあんなに強いのか。いや宗家のルゼミアはもっとバケモノだから失敗作と言うのもわかるが…。》


「それで均衡が破れたというのは?」


「恐らく5神のどれかが弱くなってしまったのじゃな。」


「なるほど。その話からすれば、今ここに神子がいない神。」


「そのとおりじゃ、おそらくアトム神が弱っとるのじゃろう。」


「なぜでしょう?」


「それぞれの神にはそれぞれに力の源がある。魔神は魔力が源となり、龍神は海の力が源となっておる。精霊神は大地の力が源となっており、虹蛇は天空の力が源じゃ。」


「それで言うとアトム神は?」


「アトム神はのう、人間の信仰心が力の源じゃよ。」


「という事は人間の信仰心が弱まってしまったと。」


「そうじゃろうよ。このことは2000年前あたりから始まっておるのじゃが、人間はデモンなどの出来損ないを呼び寄せたりして戦争などしとったからのう。」


「それは聞きました。」


「では、それのどこにアトム神は信仰心を感じるかの?」


「無いですね。」


するとガルドジンが口を開く。


「人間は短命だからな。語り継がれずその内容も間違って伝わる事も多い。いつしか忘れさられてしまうんだろうな。」


「なるほどです。他の種族は寿命が長いからまだ世代も数世代ですもんね。人間が数十代にわたっていくうちに忘れてしまう事は十分に考えられますね。」


「もとよりアトム神と魔神は仲が良くなかったからのう。」


ルゼミアが言う。


「そうだったんですね。」


「そうじゃ。」


《なるほど…そりゃ魔神側からすれば出来損ないとは言え、自分が創造したものを利用される事は面白くないわな。そしてそれを止められないほど弱ったアトム神か。》


「アルよ。もしおぬしなら信仰心を弱めるためにどの国をあらかじめ占領する?」


「そうか…そうですね。ファートリア神聖国となるでしょう。」


「そうじゃな。そしてアトム神の創造した人間の血を色濃く引き継ぐものが、その国の有力者たちなのじゃよ。実は貴族と呼ばれる者が一番アトム神の力が強く出る、いわば魔法使いが多く出るのじゃ。」


「なるほど。それで世界の貴族が皆殺しにあったのですね。」


「そう言う事になるのう。」


ようやくわかって来た。


「と言うことは我々は、神々の喧嘩に巻き込まれたという事でしょうか?」


「ん?それは違うぞ。」


《違うんだ!?》


「違うんですか?」


「ああ。」


《一体どういうことだ。神々の喧嘩に巻き込まれたと考えるのが合点がいくんだが。》


「では何が均衡を破っているんです?」


「それがわからん。」


「魔神とアトム神ではないのですか?」


「何を言っておる、魔神なら既にアルガルドが受体しておる。神格化しておらぬがな。」


「えっ!!!私が!!!」


ここにきて衝撃の事実!俺はどうやら魔神を受体していたようだ。異世界組3人もカトリーヌも驚いているようだった。


「なんじゃ?いまごろ気が付いたのか!?」


「は、はい…。」


「嘘じゃろ…。ガルドジンよ…教えておらぬのか?」


「いや、伝えていない。」


「そうじゃったか…。」


「まだ赤子だったのでな。そして魔人国に来た時もまだ時期が早かった。」


「確かにそうじゃな。今なら理解できると言ったところかのう。」


ルゼミアが頷いている。


「り、理解は出来ますが、私はすでに魔神を受体しているのですか?」


「そうじゃよ。それを言うなら虹蛇も精霊神も自分が受体していると理解できんじゃろ?」


ルゼミアがグレースとエミルに言う。


「はい、実感がわきません。」

「私もよくわかりません。」


「ただ能力が上がったように感じ取るだけじゃろ?」


「そうです。」

「はい。」


「理解するまでは時間がかかるのじゃよ。」


ルゼミアが言う。


「あの!私はいつ受体したのです?」


「アルの身の安全の為に、魔神を受体させて人間の貴族に渡したのじゃな。」


「えっと、ガルドジン父さんが弱体化してしまったのって…。」


「魔神を受体させたのが理由じゃ。」


「父さん。」


「ああ俺からお前に魔神を受体させて弱体化してしまった。あの時アルガルドは物凄い熱が出て死ぬかと思ったが、落ち着いたのでなそのままグラムに渡したんだよ。そしてお前が元始の魔人だったと気が付いたのは帰ってきてからだ。」


「そういう事だったのですね。」


衝撃の事実だった。俺は既に赤子の時に魔神を受体していたのだった。ガルドジンは俺が人間の大陸で生き延びるために魔神を受体させたのだ。その上でグラム父さんに俺を渡していたのか。


「そう言えばオージェ君はまだのようじゃ。」


「俺は受体してませんか?」


「ああ。それで母君は海に探しに来てくれたのじゃろ。」


「もしかしてそれが…海底神殿。」


「そうじゃと思う。」


するとオージェがつぶやく。


「龍神は海に…。」


どうやら次の行き先は龍国ではく海底神殿とやらになりそうだな。


そして俺はもう一つの質問をルゼミアにしてみるのだった。

次話:第327話 魔神の鎧


いつもお読みいただきありがとうございます。


小説を気に入った!続きが気になる!と言う人は是非、ブックマークと評価の★★★★★をお願いします。


引き続きこの小説をお楽しみ下さい!

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― 新着の感想 ―
[一言] ガルドジンでした。そうですよね。魔王の移り変わりは知ってたはずなのにルゼミアが魔神だとばかり思ってました。 継承しても消えるわけじゃなくてよかったですね
[一言] 冒頭のオージェさん その後オージェは母親のメリュージュと親子水入らず、洞窟で一夜を過ごし魔王城に来た。母親に包まれて寝たらしく暖かかったのだそうだ。 (190CMの偉丈夫が龍の母親に抱かれて…
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