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第322話 強制恋愛イベント

ルゼミア達がいる部屋にもどると、すでにガルドジンが魔法陣の中心に座っていた。その前にカトリーヌが座っている。ルゼミアと魔人たちが周りを囲んで見ていた。


「母さん。お風呂ありがとうございました。皆の疲れもとれそうです。」


「そうかそうか!」


ルゼミアがニッコリ笑って返事をする。


「ありがとうございました。」

「感謝いたします。」

「素晴らしいおもてなしでした。」


3人がつやつやの顔でお礼を言っている。


「よかったよかった。それなら滞在中はいつでも使ってよいぞ。」


「い、いつでも?」

「いいのですか?」

「あ、明日も?」


《このスケベどもめ。でも癖になるのはわかるぞ、前世ではこんなこと体験出来なかったしな。》


「コホン!それで準備は整ったのですか?」


俺が聞く。


「はいラウル様、私の考えうる魔法はこの魔法陣に記しました。」


「少しでも回復してくれたら良いのじゃが。」


ルゼミアが心配そうだ。


「実はこの魔法陣は、お二人に発動させていただこうと思っています。」


「重ねがけの為の魔法陣と言う事かのう?」


「おっしゃる通りです。」


「ここに魔力を注げは良いのか?」


「はい、私の合図に合わせて段階的にお願いします。」


「と言う事です母さん。」


「わかった。」


「どちらかと申しますと、お二人が主で私が補助ですが。」


「魔力量の問題じゃな。」


「そういう事にございます。」


そして俺とルゼミアがカトリーヌの両脇に座り、魔法陣に手をつき合図をまつ。


ホーっとカトリーヌが白く輝き始める。


「キュア!リパーツ!」


「ほう。簡易詠唱かい?」


ルゼミアが感心している。


フォン!


ガルドジンの体が白い光に包まれた。


「ではお二人で軽く魔力を流してください。」


俺とルゼミアが魔法陣に魔力をながすと、魔法陣に沿って光が流れ文字や幾何学模様が光り輝く。


「うお!」


ガルドジンが声を出す。


「大丈夫ですか?」


カトリーヌが聞く。


「ああ、いきなり体に力が流れたので驚いた。」


「それはこのお二人の魔力が膨大だからです…続けます。」


カトリーヌがガルドジンに手をかざして唱える。


「ヒール!」


「重ねがけ…」


ルゼミアがぽつりと言う。


「ではさらに強く魔力を注いでください。」


俺たちがさらに魔力を注ぐと、ガルドジンの目の当たりに光が集まる。


「目が暖かい。感覚が出てきた。」


ガルドジンがつぶやく。


「それでは次の魔法をかけます。」


「う、うむ。」


カトリーヌが両手を重ねてガルドジンの目の上に置く。


「リバイブ!」


「三重がけ?」


ルゼミアが驚いている。


「魔力をさらに強く!」


カトリーヌの掛け声に合わせて俺達が魔力を注ぐ。


シュパァァァ


「おお!」


ガルドジンが声をあげる。


「いかがです?」


「ぼ、ぼやけてはいるが見えるぞ!」


「魔力を止めてください。」


カトリーヌに合わせて魔力を止めると、光と魔法陣はあっという間に無くなってしまった。


「凄いぞ!ルゼミアにラウル、お前がカトリーヌか?ぼんやりと見える!」


「はい。」


ガルドジンの真っ白に濁った目が深い赤色に染まる。さらに瞳には光が戻ったようだ。


「凄いぞカトリーヌ!」


「ラウル様まだ治療中です。今は死んだ細胞をある程度再生しただけです。」


「そうなのか?」


「はい。ではもってきたエリクサーを。」


「わかった。ファントム!エリクサーを出せ。」


ファントムが近づいてきて俺の前に腕を伸ばすと、腕の皮下がモゾモゾと動き出しぬうっとエリクサーのカプセルが出てきた。それを取ってカトリーヌに渡す。ファントムはすっかり俺のアイテムボックスと化していた。


「ではガルドジン様。上を向いて下さい。」


言われるままにガルドジンが上を向く。カトリーヌはカプセルを2つに割った。


パキン


そしてカプセルの中の液体をガルドジンの両眼にかけた。


「うお!染みるなあ。」


「回復した証拠にございます。」


シュウシュウ


ガルドジンの目から煙がたちこめる。


「お、おお!」


「いかがですか?」


カトリーヌが聞く。


「見える!」


ガルドジンが俺を見る。白目があって赤い瞳がじろりと俺を向いた。


「アルガルド!お前がアルガルドが!」


「はいそうです。私がアルガルドです。」


「似ているなアイツにも俺にも。」


「はい、それは父さんの子ですから。」


《アイツと言うのは死んだ実の母ちゃんの事だろう。》


ガルドジンが泣いている。


無理もない成長した息子の顔を初めて見たのだ。その顔が自分に似てたら泣くに決まっている。


「はっきり見える。ルゼもはっきり見える!」


「おお!そうか!あいかわらずかわいいじゃろ?」


「もちろんだ、変らずにかわいい。」


両親のノロケみたいなものを見るのは嫌なものだが、今は逆にそれが微笑ましかった。


「カトリーヌよ!我から礼を言うぞ!」


ルゼミアがカトリーヌの腰のあたりを持って、高い高いをするように持ち上げる。華奢な小さい女の子が、同じくらいの大きさのキレイな美少女を軽々と持ち上げてクルクル回っている。カトリーヌの美しい金髪が揺れている。


「きゃ。」


カトリーヌがかわいい声をあげた。


「ぬしが欲しいものはなんじゃ?褒美をやろう?」


「いえ、私はすでにラウル様から沢山のものをいただいているのです。欲しいものなどなにも。」


「ダメじゃ。」


「だ、だめ?と申されましても。」


「うーむ。ならラウルよ!この娘をもらえ!」


「ブウっ!」


俺はおもいきり吹き出してしまった。


「もらうって何をです?」


「嫁にじゃ。」


「そ、そんな母さん!いきなりなにを!」


「なんじゃ嫌なのか?」


「嫌とかじゃないですけど。」


「けどなんじゃ?」


「いとこですよ!」


「だからどうした?」


「血がつながっていないとはいえ親戚ですし。」


「親戚だとなんじゃ?」


《あ、そうか。こっちの世界でも、いとこ同士は結婚出来るんだ。》


「いやいや、カトリーヌの方が良いと言ってないですし。」


「鈍臭いのう。女の気持ちもわからんのか?」


するとガルドジンが言う。


「ルゼミアよ。アルガルドは自分の実の母親の事を気にしているんだよ。」


《流石、実の父親!わかってらっしゃる。元始の魔人と言われる俺が、もし人間を身籠らせてしまったらどうなるか不安があるのだ。》


「そんな事か、カトリーヌは自分の命が尽きてもアルの為に役立ちたいのじゃ。女として本望であろう?」


「ルゼはそう考えるが人間は違うんだよ。」


ガルドジンがルゼミアに言う。


「カトリーヌよアルガルドの子は欲しいか?」


「あ、あの?正直にお答えしても?」


「誰にはばかる?」


「欲しいです。私はラウル様を愛しております。」


「えっ?」


愛しております愛しておりますおりますおりますます…


俺の中でエコーのようにカトリーヌの声が反響している。


「ほれ。ガルは女心がわからんのじゃ。」


カトリーヌは茹で蛸のように真っ赤になっていた。頭の上から湯気がでていそうだ。


「えと、カトリーヌ母さんに強要されたとか?」


「いいえ。」


「冷静じゃないんじゃない?」


「いいえ。」


カトリーヌは冷静さを取り戻している。間違いなくそう思っているらしい。


「ほれ!アルガルドよ、実の父親を救ってもらったおなごを無下にするのか?」


「し、しません。ですがイオナ母さんの許可もいただかなければ。」


「は、はっはっはっ!イオナが反対するとでも?」


《うん。流れからして反対しないだろうなあ。むしろ喜ぶ様が目に浮かぶ。》


《ご主人様。ここはルゼミア様の意向にそうべきではと愚考します。》


シャーミリアから念話が繋がる。


《そんな…》


《ラウル様、シャーミリアの言う通りですわ。ここはひとまずお引き受けしたほうが良いかと。》


《カララまで…》


みんなが俺に注目している。


《いや!ガルドジン父さんは俺と同意見なはずだ。》


「父さんは許可しませんよね?」


「ん?するよ?」


なんか白々しくどこかを見ながら答える。


《いきなり裏切りやがった。》


「ラウルどうするんだよ。」


エミルが言う。


「こんなチャンス逃したら次ないかもしれませんよ。」


グレースが言う。


《しかし親友のオージェ(皆川)なら》


「やっとラウルの幸せがやってきたな!」


《オージェおまえもか!》


「だってカトリーヌさんは、ユークリットの王族の血をひくんでしょ。お母さんの旦那さんは第何王子だっけ?」


エミルが言う。


「そりゃそうだけど。別にそれがいまの話と何が関係あるの?」


「何言ってんだよ。ラウルお前王子じゃないか。」


するとそこにルゼミアが食いついた。


「なに?カトリーヌはユークリットの王族の血をひいとるのか?」


「はい。父が継承権のない王子でしたのでナスタリア家に婿に。」


「なら、なおの事良いではないか!」


ルゼミアが喜んでいる。


「そんな…」


俺はだんだんめまいがしてきた。


《それではまるで政略結婚じゃないか。》


「アルガルドよ。まさかこのような良い縁談を断りはすまいな?」


《えっ!えー!》


「どうすんだ?」

「どうするんですか?」

「良かった良かった、まさかラウルがなあ…。」

「ご主人様!」

「ラウル様!」


みんなの圧迫感が凄い。


みんなにつめよられ何が何だか分からなくなってきた。


「えっと、カトリーヌ。俺でよければ。」


つい口走った。


「…え…ラウル様…それは誠ですか?」


カトリーヌが呆けた顔で言う。


「ホントホント。」


するとカトリーヌがうつむいて泣き出してしまった。


「まったく!女を泣かせるなぞ、慰めてやらんか。」


「は、はい。」


俺はルゼミアから半ば強制的にカトリーヌを抱き寄せさせられる。


「めでたいのう。」


「ラウル、カトリーヌさんおめでとう。」


「いよいよラウルさんにも春かあ。」


「ラウルよ俺はうれしいぞ!」


《え、え、え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!》


パチパチパチパチパチパチ


配下の魔人達はみんなで祝福の拍手をしている。


「そうと決まれば今宵は宴じゃの!」


「ルゼミア様、それでは私奴どもがご主人様の為に希少な魔獣を狩ってまいりましょう。」


「頼むぞ、下準備は従者にさせておくでのう。」


「は!」


シャーミリア、マキーナ、カララ、ルフラが部屋を出て行った。ファントムだけ何事もないようにそこに立っている。


「あのーみんなすまない!急にこんなことになって。」


「ラウルこういうのはタイミングさ。」


「こういうの逃しまくるとどうなるか、身をもって知ってますよね?」


エミルとグレースが言う。


「うっ!まあそれはそうだけど。」


そう…俺は前世では31歳まで一度も彼女がいた事のない童貞だった。あれをこっちの世界で再現するわけにはいかない。


でも心の準備が…


「そうかあ、とうとうラウルにも春が…お兄さんうれしいよ。」


オージェが言う。


《いつから、テメェは俺の兄さんになった?》


「とにかく!父さんの目を治してくれてありがとう。カトリーヌには感謝してもしきれないよ。」


「いえ、当然の事をしたまでですから。」


潤んだ瞳で俺を見上げるカトリーヌ。


こんなん… ズッキューん、てなるよ。女耐性の無い俺がこんな美少女に、こんな目をされたらどうする事もできない。


「アル。観念せい。」


「はいぃぃ。」


俺は蛇に睨まれた蛙のようになってしまった。


《いいんだか悪いんだか分からない…》


とにかくガルドジンの目が回復して、ルゼミアとの生活にもまた変化がおきるだろう。


「よーし。ガルよ息子とどちらが先に子を作れるか競争じゃのう。」


「へっ?」


ガルドジンも変な声をあげる。


「なんじゃ?その顔は?」


「いやルゼよ、それ子供の前で言うことか?」


「悪いのか?」


「友達もいるんだぞ!」


「虹蛇と精霊神と龍の子がな。こんなこと普通じゃろ。」


そんな事を言うルゼミアの前で、若干一名の某虹蛇様が顔を赤くしていた。


《おそらく、また人の母ちゃんで良からぬ事を想像していたに違いない。他の2人は日本人の倫理観をもつおっさんなんだよなあ。その友達の前でそんな事言わないで欲しい。》


「まずはいろいろとお話したい事が。」


俺が言う。


「おぬしはなぜそのように無粋なのじゃ?今日はそのような話は無しじゃろ?」


「そうですか。そうですね。」


するとルゼミアがドアの方向をみる。どうやら念話で魔人を呼んでいるようだ。


コンコン


「お呼びで。」


「アルの友達をそれぞれの部屋に連れて行って差し上げなさい。」


「はい。」


サキュバスやハルピュイアたちが部屋に入ってきて、俺以外の3人を連れ出していく。


「じゃあラウルあとでな。」


オージェが最後に声をかけて出ていった。


「さてアルガルド達は、前に使っておった部屋がよかろう。」


「アルガルド…たち?」


「そうじゃ。カトリーヌを案内してあげなさい。」


「てか二人ってこと?」


「あと誰がおる?」


「ですよねー。行きます。」


俺はカトリーヌを連れて部屋を出るのだった。


《てか!どうすんねん!これ!》


俺の頭はパニックをおこしていた。


真っ白になりながら俺の部屋に向かう。


なぜこうなった?

次話:第323話 魔王城の宴


お読みいただきありがとうございます。


続きを読んでもいい。ちょっと気になる。

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★★★★★の評価がいただけましたらうれしいです!


引き続きこの作品をお楽しみ下さい。

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[一言] 前回のお風呂の話 ルゼミア母さん曰く 「よかったよかった。それなら滞在中はいつでも使ってよいぞ。」 とりあえずケイナさんに連絡入れときますか? カトリーヌの回復魔法陣 一朝一夕にいかな…
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