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第321話 魔王城のおもてなし

久しぶりの魔王城での風呂は、異世界組が水入らずで入ることになった。


カラカラ


風呂の扉を開けると湯気がモワリと立ち込める。


「おお!」


「凄っ!」


「温泉みたいですね!」


エミルとオージェとグレースが感動している。


「いや、温泉なんだよ。」


「ええー最高じゃないですか!」


「だろ?」


魔王城は部屋以外の場所は寒いので、この温泉はうれしいに違いない。


するとサキュバスの一人が俺たちに言う。


「お召し物はこちらへ。」


それぞれに脱衣室があり、その棚を指差す。


「よくできてんなあ。」


オージェがこの温泉施設について言う。


「ここで家族会議したりするんだよ。」


「変わった風習だな。」


「そうなんだよ。」


この風呂はルゼミアやガルドジンと入って話をしたり、マリアとミーシャと一緒に入ったりした思い出の場所だった。


「ラウルさんのお母様とですか?」


グレースが聞いてくる。


「そうだが?」


「いいなあ。」


《どうせグレースはまた、人の母ちゃんでろくでもない事を考えてるに違いない。》


「とにかく寒いし入ろう。」


「行こう行こう。」


みんなが服を脱ぐと…俺たちの目線は1人に釘付けになる。


「なあ、グレースよ。お前と一緒に服を脱ぐとなんか背徳感があるんだが。」


俺の言葉を聞いて、グレースが胸と股関を隠して言う。


「うっふん。」


「ば、馬鹿止めろキモい!」


オージェが言う。


「とかなんとか言っちゃてー、釘付けじゃないっすかあ?」


「マジでやめてくれ。」


エミルが嫌悪感をあらわに言う。


虹色の髪をした十代前半くらいの少女に見えるグレース。鼻筋がツンとしていて可愛い顔をしている為、どこからどう見ても女の子なのだ。中身が林田なので滅茶苦茶気持ち悪い。


「はい!」


急にグレースが大の字になって裸体をさらす。


「お、おい!」


「まてまて!」


「だめだめ!」


俺達が慌てるが、すでに俺達の目にはグレースの裸体が飛び込んでいた。


「ん?」


「あれ?」


「なんで?」


「本当だ…。」


「なんもない…。」


「上も下も…。」


グレースの体には何もなかった。胸の突起も無ければへそもないし、あるべきところにはまさに何も無いのだった。本当に何も。


「やっぱり本当なんだな。」


「ほら!」


グレースが反対をむいてお尻を向ける。


「マジだ。」


「なんもない。」


「でしょ。」


「本当に排泄とか一切出来ないんだ?」


「そうなんですよ。」


そう言っていると隣でエミルが話し出す。


「俺はついている物は一応ついてるんだが、精霊神を受体した時から何も出なくなったんだよ。」


「そういえばそう言ってたね。」


俺が言う。


「でも食ってるよな?食ったものはいったいどこに消えてんだ?」


「わからないんですぅー。」

「さっぱりわからない。」


「ある意味羨ましい体だよね。食い物の味はあるんでしょ?」


「そうなんですよ。美味い物は美味いと感じるんです。」


「それは俺も。腹は減ってないんだが美味いと感じるから食べてるみたいな、後は習慣かな。」


「分かります!習慣ですよね僕たちが食べるのって。」


「不思議だな。俺もオージェも食わねえとダメっぽい。」


「受体良いですよ〜。」


「いいですよって言われてもなあグレース、俺達が出来るとも限らないんだよ。」


「だな。」


「そうなんですかね…?」


俺達が浴槽の縁に座って桶で体にお湯をかける。


「少し熱めですけど丁度いいですね。」


「本当だ。」


「こりゃいいわ。」


グレースとエミルとオージェが喜んでいる。体を流してからみんなで湯船に入った。


ザバー


「ふぅー。」


「いやぁー。」


「いいわぁ。」


「うはあ。」


俺達はおじさんのような言葉を吐きながら入る。それは仕方がない!だっておじさんなのだから。


「芯から温まる。」


エミルが言う。


「神様とか言う存在になってもそう言う感じなんだ?」


「そこらへんは変わらない。」


「なるほどねー。」


俺達が首まで浸かって温まっていると、脱衣所の方から何やら音が聞こえる。


「ん?誰か来たか?」


「俺達が入ってるの知らないんじゃない?」


オージェの言うとおりかもしれなかった。


カラカラカラカラ


ドアを開けて誰かが入ってくるようだが数人いるようだった。しかし湯煙のせいで誰が入って来たのか分からない。


「俺達が入ってんぞー。」


俺が入って来た人に声をかけると、女性の声で答えが帰って来た。


「はい?存じ上げておりますが?」


湯煙の中から裸のサキュバスが出てきた。


「おう!」


「おわぁ!」


「なに?」


「なんです?」


するとその後ろから更にサキュバス、そしてハルピュイアが6人ほど入って来た。もちろん最初のサキュバスと同じく皆が全裸だった。


「どうした?」


俺が聞く。


「皆さんのお体を流して差し上げます。」


「ああ…もしかして母さんかな?」


「はい、ルゼミア様のご命令です。」


「あー、皆びっくりしちゃってるよ。」


「どうしてです?」


サキュバスに聞かれる。そりゃそうだ、これは魔人国では当たり前の事、とにかくルゼミアならおもてなしとして当然するだろう。


《これは俺から説明する必要があるな。》


「あのう、みんな。もしよかったら体を洗ってもらってくれるか。 」


「え!いいっていいって…」


「そんな!」


「は、恥ずかしいです。」


3人ともめちゃくちゃ動揺している。


「うーん。皆が体を洗ってもらわないと、彼女らがルゼミア母さんに怒られるかもしれない。」


「えっ?」


「そうなるんだ。」


「それはかわいそうです。」


皆が動揺しつつも彼女らに同情するような視線をおくり、そして美しい裸体が目に入り目をそらす。彼女らの裸体は目の毒だ。


「とにかく彼女らの為に頼むよ。」


俺が言うと皆がコクコクと頷いている。


サキュバスたちに促されて皆がそろそろと洗い場に歩いて行く。


美魔人は俺に一人、オージェに一人、エミルとグレースには二人ずつ付いて体を洗い出す。皆が恥ずかしさからか声を出さなくなった。


なんとなく気まずいので俺が普通に話す。


「カトリーヌは順調に魔法陣書いてるかなあ?」


魔人達から体を洗われるのは慣れているので、それほど気にはならない。


「あ、ああ、きっと俺達がいないから集中出来て、あふぅ。」


オージェがおかしい。


「だよなあカトリーヌは集中してたもんなあ。とにかくガルドジン父さんの目が改善されると良いんだけど。」


「は、はふ。そうだねえ、きっと上手くできると思うよ、カトリーヌちゃんはぁあう。」


エミルもおかしいようだ。


「カトリーヌは凄いからね。あの回復魔術を見たら出来そうに感じるんだけどね。」


「そんなにしゅ、凄いんだぁ。はへ、早く術を見たいでしゅね、ふぅ」


グレースもまともに喋れない。


「ああ。」


《うん。ちょっと語り掛けるのはやめておこう。逆に皆が恥ずかしい事になってしまう。》


湯煙の先で何が行われているのかはだいたいわかる。今まで俺がたくさん経験して来たことだからだ。


《こればっかりは慣れなんだよな。》


暫くしてみんなが体を洗い終わったようだった。


「ふ、ふう。」


「世も末だ。」


「た、耐えた。」


「すまないね。これでみんなが怒られずに済むよ。」


俺達が湯船に入ると、サキュバスやハルピュイア達も一緒にお湯に入って来た。


「ら、ラウル!今度はなんだ?」


「ああ、マッサージだと思う。」


「マッサージ?」


「そうだ。」


俺が答えるのと同じくらいのタイミングで、スルスルと各人に近づいて行く美魔人たち。体を擦り付けるようにして肩を揉んだり、頭のマッサージをしたりと優しく接している。


「もう…。」


「ああ、天国…。」


「これは、眠ってしまいそうです。」


「はい、眠っていただいてもよろしいですよ。」


するとグレースがあっさりと眠りに落ちてしまった。さすがはサキュバス。微妙に何らかのアロマ的な霧を出したんだろう。


グレースがお湯に沈んでしまわないように、一人のハルピュイアが体を支えてサキュバスがマッサージを続ける。


「連携が出来てるんだね。」


エミルが言う。


「本当だ。」


オージェも感心していた。


それから30分ほどゆったりと湯船につかりながら、体をほぐしてもらった俺達はすっかりゆであがっていた。


「本当は途中で湯船を上がればよかったんだが。」


「ああ、オージェの言うとおり止められなかった。」


「天国過ぎてな。」


グレースはまだ寝ていて、そのまま湯船から引きずり出されている。


サキュバスがスッと水を救ってグレースの首のあたりにかける。


ピチョ


「ん、ンん…。」


「グレース起きた?」


「あれ?僕寝てました?」


「ああ。」


「寝た記憶がないんですが。」


「スッキリした?」


「ええ、もう!」


そして俺達はそのまま脱衣室に行く。皆がツヤツヤになっているようだ、肌の色艶がいい。


バサァ


サキュバスたちから体を拭く布がかけられて、それぞれが体を拭いてもらう。


「至れり尽くせりじゃないか。」


「まったくだ。」


「気持ちいいです。」


みんなの体を拭き終わると!バフっ!とものすごく柔らかくてもふもふの服を着せられる。その服はそのまま寝れるようにローブになっていて、恐ろしく着心地が良い。


「柔らか!」


「こんなの着たことない。」


「気持ちいい。」


「これは北部の山地で獲れた魔獣の毛皮から編み込んだ寝間着です。」


サキュバスが答える。


「凄いゴージャス。」


「なんかホッとするな。」


「気持ちよすぎます。」


みんな物凄くご機嫌になっている。


「ラウルは、もしかしてこんな毎日を送っていたのか?」


オージェが言う。


「ああ、そうだな…」


「お前…俺が龍国で毎日バッキバキに鍛えられていた時に、こんな毎日を…。」


「そうですよ。僕が奴隷になって必死に洗濯とか掃除をしていたというのに…。」


「えっと…。」


《あれ?逆に二人の目線が痛い。》


「いやいや、ラウルは大陸で恐ろしい思いをして死にもの狂いで逃げてきたんだ。少しくらい良い思いをしても良かったんじゃないか?」


「だよな!エミル!」


「ただ、俺も仲間がいっぱい殺されて捕らえられ、サナリアで強制労働を強いられていたけどね。」


「・・・・・。」


3人のジト目が刺さる。


「す、すみませんでしたぁ!」


俺は3人にジャンピング土下座をかました。


「ラウル様!どうなされたのです?」


「お顔を上げてください!」


サキュバスやハルピュイア達が慌てて俺に近寄って抱き起す。


「いいんだ!みんな!俺は本当に皆に顔向けできないんだ。」


「ははは、ラウル嘘だよ。」


「何をマジに土下座なんかしてるんですか。」


「お前は本当に面白いよな。」


「えっ?」


皆が俺を見て大笑いしている。


「ただラウル。そろそろこの人たちみんなに服を着てくれるように言ってくれ。」


俺達がじゃれ合っている間も、美魔人達は全裸で俺達の側に膝をついていたのだ。まじまじと見ればいろいろと見えてしまう。皆はあえて目をそらしていた。


「あ、お前達!もう下がっていいぞ!みんな凄く良かったみたいだ。」


「かしこまりました。」


ドアを開けてスルスルと魔人達が出て行った。


「でもマジで凄いな魔人のおもてなし。」


「ほんとほんと、びっくりした。」


「明日もお風呂に入りたいですねぇ。」


「ああ、明日も風呂に入ることがあれば自動でそうなるぞ。」


俺が言う。


「「「そうなんだ!」」」


3人ともめっちゃ嬉しそうに答えるのだった。


すると廊下の向こうからイケメンのダークエルフがやってくる。


「準備が整いました。謁見の間へどうぞ。」


「わかった。」


俺達はダークエルフについて謁見の間に戻るのだった。


カトリーヌが書き終わったらしかった。

次話:第322話 強制恋愛イベント


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― 新着の感想 ―
[一言] エミルは排泄不要な身体になったか これであっちの方も出なくなったり、息子が活動停止したりみたいな事態になって生殖機能まで無くなってたら悲惨だな
[一言] 冒頭のグレースさん 「いいなあ。」 《どうせグレースはまた、人の母ちゃんでろくでもない事を考えてるに違いない。》 グレースさん…何考えてるんですか… グレースさんの…ka・ra・da…
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