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第283話 シャーミリアとの再会

二カルスの森にはすでにギレザムたちが基地を設営しているはずだった。


俺は最大限集中して念話を飛ばしてみる。


《ギル。》


《えっ!ラウル様!いまどこにおられるのです!いきなり消えたと聞いて皆が混乱しておりました!ご無事なのですか!?》


すぐに念話が通じた。


ギレザムがめちゃめちゃ焦って聞いてくる。


《すまない!戻るのにだいぶ時間がかかった。転移魔法の罠にかかってザンド砂漠まで飛ばされてしまっていた。ようやく二カルスの森の中腹あたりにまで戻って来たところだ。》


《転移魔法にですか!そうだったのですね…。とにかく皆が喜びましょう!ただこちらはいろいろと厄介ごともございました。》


《どうしたんだ?》


《はい。ラウル様が消えてフラスリアが大変なことになりまして。》


なるほどだいたい察しがつく。


《…シャーミリアかな?》


《その通りです。》


《もしかして暴れた?》


《暴走しそうになったのを、ドラグそしてオージェという方が止めてくださっておりましたが、それだけでは収まりませんでした。》


《オージェがいたのに?》


《それがファントムも使役して大暴れしたようです。マキーナももちろんシャーミリアと一緒になってしまいまして。》


《そして?》


《こちらからエミル様がヘリを使い、カララとルフラとミノスを連れてフラスリアへと向かいました。》


《うちの最高戦力じゃないか!えらい事になったもんだ。》


《はい。それでようやくあいつらの暴走が止まったようです。どうやら3人でファートリア神聖国へと出撃するところのようでした。》


《3人でか?まったく!で、今は?》


《総力で封印しました。フラスリアにオージェさんがいたおかげで大事には至りませんでした。》


なるほどね。俺がいなくなって暴走しちゃったわけか・・かわいいやつだ。とにかくオージェがいてくれてよかった。それでなければ暴走は止まらなかったろう。


《ならば中継してシャーミリアに俺が無事だと伝えてくれ。そして至急二カルス大森林まで迎えに来いと。》


《わかりました。発狂しそうなくらいに喜びそうです。やっと解き放てるのでカララ達も一安心でしょう。》


《すまなかった。》


《ラウル様は悪くございません。シャーミリアはラウル様の事となると見境が無くなりますので、致し方のない事だと思います。》


《そしてグレースはいるかな?》


《はい我々と共に。》


《そいつは良かった。カトリーヌとマリアは?》


《カトリーヌ様はエミル様とフラスリアへ行きました。マリアはここにおります。》


《フラスリアで誰か怪我した?》


《ドラグとオージェさんが負傷したようです。シャーミリア達を無傷で抑えるために少々無茶をしたようで。》


《うわぁ。オージェに申し訳ない事をしたな。》


《すでにカトリーヌ様が治癒済みなので問題ないそうです。》


《モーリス先生とサイナス枢機卿一行は?》


《はい我と共に二カルス基地におられます。》


《わかった。ではすぐにシャーミリアに伝えろ。皆にも無事に戻った事を伝えてくれ!》


《はい!》


俺がいない間にどうやら大変なことになっていたようだ。シャーミリアとファントムの暴走モードとか恐ろしすぎて想像したくもない。とりあえずオージェが押さえ込んでくれたみたいだった。


「どうだった?」


虹蛇が聞いて来た。


「どうやら基地は二カルスにあるようですが状況は分かりません。また魔人の間でいざこざがあったようで、それの収拾にも手間取ったようです。」


「ふむ。それで化身はどうした?」


「二カルスの基地にいるそうです。」


「そうかそうかそれでは先を急ぐとしよう。」


「ええ。」


俺が念話中に急に黙りこんだ思ったら、虹蛇と訳のわからん事を話しだしたので人間たちが皆困惑していた。


「えっと?ラウル殿なにを?」


カゲヨシが聞いてくる。


「二カルスに駐屯している部下に繋がりました。」


「繋がった?」


「えっと魔人ならではの能力なのですが念話という力です。」


「念話ですと?」


カゲヨシ将軍が興味深そうに聞いて来た。


「ええ。魔人達はいわば私の血族のような者なのですが、離れていても意思の疎通ができるのです。これまでは二カルス大森林に妨害されて繋がりませんでしたが、かなり近づいたようで会話する事が出来るようになりました。」


「凄いものだ。」


《そりゃ驚くわな。念話はいわば携帯電話みたいなもんだからな。前世じゃ誰でもどこからでも念話が出来るような世の中だったぜ。》


「とにかくこのまま北に進みます。恐らく基地までは安全かと思います。」


「安全?二カルスの森が?」


「おそらく配下の勢力圏にあるようで魔獣などは出てきません。」


「二カルス大森林は恐ろしい魔獣の宝庫なのだが・・」


「魔獣など比較にならぬほどに、私の配下は恐ろしいのですよ。」


「魔人とは魔族の頂点に君臨する者達と考えていいのかの?」


「どうでしょう?魔人と魔獣が同じ種類かどうかは分かりませんが、魔人はほとんどの魔獣を食料だと考えていますので、魔獣からすれば恐ろしい天敵が現れたと思っているのかもしれません。」


「なるほどの。魔獣からしたら恐ろしい天敵の巣が、二カルスの森に急に出来たと認識してるのかもしれんのう。」


「おそらくその通りです。」


「これから魔人に会えるのが楽しみじゃ。」


そんな恐ろしい魔人に会うのが楽しみとか肝っ玉が座ってる。


《カゲヨシ将軍は凄い人だ。》


「それでは車に。」


「分かり申した。」


「もう危険がないなら我は天井から出ても良いか?」


「ええ。結構ですよ。」


虹蛇が天井ハッチから頭を出して進みたいらしい。なんかこの人いや神?まるで子供みたいだ。


ブロロロロロ


車は進みだした。


全く危険が無いと分かると気分も楽だった。ただ気を付けなければいけないのは魔獣だけではない。ファートリア神聖国が何かを仕掛けて来る可能性もある。慎重に進むにこしたことはない。


それから1刻(3時間)ほど車を進めるといきなり念話が入って来た。


《・・しゅじさ・・ま・・ごしゅじ・さま・・ご主人様・・》


シャーミリアだ・・早すぎないか?


《ミリア待たせたね。》


念話で答えてやる。


《ご主人様!ごじゅじんざまぁぁぁ!!》


どうやら俺を捕えたらしい。ヘリやジェット機よりはるかに速い速度でこちらに近づいて来たのだろう。さっきギレザムに話をしたばかりだというのに、もうシャーミリアと念話が繋がった。


《心配させたな。》


《じんばいだなんでぇぇぇ、いきなりお消えになられてしまうとは!私奴は死んでしまうかどおもっでおりましたぁぁぁ》


《ミリア?泣いてる?》


《泣いてまぜぇぇぇん、うえぇぇぇぇ!》


あー号泣だ。


すると車の前にサーモバリック弾が破裂したような衝撃が走る。


ドゴオォォォォン


「うわぁぁぁぁぁ!」


虹蛇が叫ぶ。


「敵襲かぁぁぁ!?」


カゲヨシ将軍が叫ぶ。


「きゃぁぁぁぁぁ!」


トラメルが叫んだ。


「おっわぁぁぁぁ!!」


ケイシー神父が転がった。


影衆が将軍を守るように囲んでいる。


「皆さん落ち着いてください!敵襲ではありません!味方が到着しました!」


「味方?爆発したぞ!」


「いえ爆発じゃありません。恐らく高速で飛翔し減速せずに地表へ降りたんだと思います。」


「飛んできた?どこから?」


「おそらくファートリアのフラスリア領から。」


「えっ?念話したのさっきじゃったよな?」


虹蛇もたいそう驚いておられる。


「私が消えた事でかなり焦ってたみたいで、堪えきれずに飛んできたのだと思います。」


「堪えきれずって」


車を停めて俺は正面を見るが土煙がたちこめてよく見えない。


《ご主人様!只今まいりました!》


《おうご苦労様。》


《いえ!お呼びだとギレザムから聞いておりますので!》


《ああ。俺が迎えに来てほしいって言ったんだ。》


《何という幸せ。ありがとうございます。》


念話をしていると周りが不思議がるので同乗者に声をかける。


「じゃあ車を降りましょう。」


「大丈夫なのか?」


虹蛇が聞いてくる。


「ええ。」


「本当なのかの?」


カゲヨシ将軍が聞いてくる。


「秘書ですから。大丈夫です。」


「そんな秘書いるの?」


「ええ。」


みんなで車を降りる。


土煙が消えて視界が開けてきた先には大きなクレーターが出来ており、その中心にセクシーな金髪の貴族が膝をついて俺を出迎えてくれた。


「ご主人様!ご帰還を心待ちにしておりました!ご無事で何よりでございます!」


「ああミリア。びっくりさせてごめんな。変な罠にかかっちゃって。」


「いえ!私奴の不注意によりご主人様を危険な目にあわせてしまいました。どんな罰もお受けいたします!何卒処分していただきたく思います。」


「いやシャーミリア。俺が勝手に罠にかかったんだ、あの時ミリアが俺と一緒に牢に入ると言ってくれたのに制したのは俺だ。お前は一切悪くないよ。」


「相変わらず寛容なお心痛み入ります。してその者達は何者でございましょう。女はフラスリアの貴族のようですが。」


シャーミリアがキッと全員を睨む。


《いやいや敵じゃないしそんなにおっかない顔しなくても。》


「トラメルは知っていると思うし、ケイシー神父はあの牢の中にいた者だ。こちらはシン国の将軍でその配下の方々、そしてこちらは虹蛇様だ。虹蛇様の協力でやっとここまでたどり着いたんだよ。」


「そうでしたか。それではここからは後は私奴がご主人様を連れてまいります。皆さんお疲れ様でした。これにて解散していただいて結構ですよ。」


「まてまて!シャーミリア!そうじゃないんだ!俺が連れてきたんだよ!皆それぞれに用があるんだよ。だからミリアが全員を護衛してくれたらありがたいんだが。」


「ご主人様がそうおっしゃるのであれば、私奴が全身全霊を持って護衛して差し上げましょう。」


「悪いな。」


「当然の事にございます。」


それじゃあそろそろこの車の燃料も無くなるころだし、処分して新しいのを召喚したいところだが、その前にやらなきゃならないことがある。


「えっとシャーミリア。俺達が通って来た街道をすこし逸れた森の中に、俺が召喚した船と車が放置されてるんだけど破壊してきてくれない?」


「かしこまりました。」


シュッ


シャーミリアが消えた。


そして10分くらい待っていると目の前にまたシャーミリアが現れる。


「ご主人様!分解して廃棄してまいりました。」


「ご苦労。」


すると他の人間たちが目を見開いている。


「えっ?あの大きな鉄の塊を分解じゃと?」


カゲヨシ将軍が言う。


「ええ。あれがあそこに置いてあると敵に見つかった時に厄介ですので。」


「今のちょっとした時間で?」


「シャーミリアどうなんだ?」


「はいご主人様。もちろん分解して四方にばら撒いてまいりました。」


「将軍様。そう言う事です。」


すると将軍と影衆の表情がこわばる。


「魔人国とは絶対に敵対したくありませんな。このお美しく可憐な女性があれを分解してばら撒く?」


「ええ。」


「彼女は最強なのですか?」


「えっと。最強格の一人です。」


「こんな方が何人も?」


「まあそうですね。」


「ラウル殿よ。シン国は今後も魔人国と仲良くさせていただけるのでしょうか?」


「もちろんでございます!世界が元に戻りましたら、ぜひ我が魔人国と国交を結んでください。」


「こちらがお願いしたいくらいですな。」


《シャーミリアの力を見せただけでこんなに驚いちゃうのか。いままでが戦いに明け暮れてばかりいたから分からなかったけど、これが正常な人の反応なんだろうね。やはり世界各国に基地を作る作戦は正解だな。》


魔人軍基地を世界に。


シン国にも駐屯基地が作れそうな事に少しにやけてしまうのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 冒頭の…暴走の話 …………いや…少しは想像したけど…想像以上の出来事が起こっていたようですね…(ファントム君とマキーナさんも一緒になってたとは…) とりあえず、他の魔人の方々はラウル君不在…
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