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第263話 迷宮神殿の主

大砲をバンバンぶっ放した結果。


声の主の導きにより迷宮の中央までまっすぐ来れた。


《いやー大砲撃ってよかったよかった。》


「20時間以上かかっていたのが1分で着きましたね。」


「本当ですわ。嘘みたい。」


「僕たちのあの苦労は何だったんでしょうね。」


「まったくです。あーはっはっはっ!」


迷宮の中央は円形の広場になっており、白い立方体が真ん中にあった。


《たぶんこれは・・建物だよなあ?》


俺達はビーグルから降りて建物と思われる立方体に向かっていく。


「こんにちはー!」


とりあえず挨拶してみた。


すると5メートル四方の立方体の壁にいきなり穴が空いた。


《一体どういう構造になっているんだろう?》


「また穴が空きましたね。」


「本当だわ。」


「あれ?何か出てきますよ!」


俺はなにがあっても直ぐに対応できるように、全身の力を抜いて自然体で構える。いざという時はマシンガンでもぶっ放してやろうと思う。


そして建物の中から出てきたのは・・


《女?》


ただ・・


既視感がある。


その女の背丈は165センチほどで・・細面だが可愛げのある顔に・・


髪の毛が七色だった。


「おぬしら!痛いではないか!平和に遊んでいるのに、なんでこんなに痛い事をするんだ!」


いきなり怒られた。


「え?平和?遊んでいる?」


「そうじゃ遊びじゃ!遊びで痛い事をするのは規則違反だと思う!断固そう思う!」


「いやいや。」


「こんな遊戯盤をひっくり返すような真似をして!面白いのか?えっ?どうなんだ?」


「面白いも面白くないも俺達は遊んでくれなんて頼んでない!」


「なんだと!じゃあなんで中に入れてくれーなんて言うんだ!!」


「え…」


「せっかく招き入れて遊んでやろうしたのに!」


「それは・・」


「酷いな!我と遊びたくて尻尾によじ登ったりしたのだろう?」


《・・ああ・・そういえばケイシー神父が”すみませーん入れて下さーい!”とか言ったっけな。あれ?ってことは俺達が悪いの?でも・・尻尾って?》


「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」


俺達3人は軽く思い当たるふしがありすぎて黙り込む。


「我の尻尾によじ登りおって!くすぐったくてしかたなかったわ。」


《尻尾・・?》


「えっと・・あの外に建ってた白っぽい塔みたいなものが・・尻尾?」


「塔などではない!我の尻尾だ!見りゃわかるだろが!」


《いやいやいやいや!》

《いやいやいやいや!》

《いやいやいやいや!》


《わかんないって。》


3人して心の中で否定する。


「えっと、だって・・あなたとは寸法が合わないと思うし。」


「今お前たちが見ている我は小身体だ。話しやすいと思って出てきてやったまで。」


「という事は・・ここって尻尾の中?」


「そうじゃ!やっとわかったか!空っぽ頭!」


「俺達は尻尾の中でやりたい放題、暴れまくったと?」


「そう言うこと!痛くて敵わんわ!」


《うっそ!155㎜榴弾砲を炸裂させたのは尻尾の中?》


虹色のボブヘヤ―の女はお尻をさするようにしている。


「あの、すいませんでした。尻尾の中だと知らずに好き勝手暴れてしまって。」


「私もおもいっきり撃ってしまいました。ごめんなさい。」


「僕もやりすぎてしまいました。申し訳ございません。」


事態を察した俺達は速攻で謝る。


《悪いコトしたらすぐに謝った方がいい!》


すると虹色ヘヤーの女がキョトンとした顔で見る。


「え?案外すなおだね。」


「いやー。だって知らなかったとはいえ、尻の中で大砲をぶっ放されたら誰だって怒ります。」


「ええ。私ならもう・・怒りを通り越して悲しくなると思います。」


「僕なら死んでます。」


《・・俺達が勝手に塔の中だと思っていただけだ・・この人が言う事の方が正しい。》


「えっ・・そう?わかればいいんだけど。お茶飲む?」


「えっ?良いんですか?」


「もう遊ばないのだろう?」


「そうですね。遊びはもう十分です。」


「じゃあお茶を飲むのがいいだろ?」


「では・・いただきます。」


《ビックリするほど心がひろいんだけど!なんだか急に知り合いに会いに来たみたいになってる。》


「あのぅ・・その前に・・それちょうだい。」


虹色の女がチラリとみる先には俺が召喚した小型ビーグルがあった。


「あげますあげます!」


「そ!そうか!おぬしは気前がいいなあ!」


「そんなでもないですけど・・」


「それ凄いよね。ぶろろろーって走るの。」


「はい。楽しいですよ。」


「そうかそうか。」


なんだかずいぶんと機嫌がよくなってきた。


《というか無邪気すぎるような気もしてくる、底抜けに明るい雰囲気が伝わってくるんだが。》


「じゃあ!我についてこい!」


俺達は虹色の髪の女について行くことにした。白い立方体にぽっかり空いた穴に一緒に入っていくと後ろで穴が閉じていく。


「お前たちは砂漠から来たのか?」


「ええ、落ちてきました。」


「そりゃ災難だったね。」


「ええ。砂の波にのまれて気がついたらここに。」


「そうかい。じゃあじきに戻してやるからお茶を飲んで行け。久々の来客で何も用意できないがお茶くらいならあるぞ。」


「ありがとうございます。」


そして通された先は・・


めっちゃくちゃ天井が高くて広くて豪華な応接室だった。


ものっすごいふっさふさの毛皮の絨毯に気持ちの良さそうなソファー、天井にはきらっきら光るシャンデリア的な物がぶら下がっていて、中央には重厚な丸いテーブルが置いてある。


「すごっ・・」


「なんと・・このような場所が・・」


「こんな部屋初めてです。」


「そうかそうか!我の趣味で作った部屋だ。気に入ってくれてうれしいぞ。」


そして俺達は虹色の髪の女に言われるままにソファーに座る。


ぼふんっ


《あーこれは人間をダメにするタイプのソファーだ。》


「素敵なお部屋ですね。」


「そう?いろいろ考えていい感じにしてったらこうなった。」


「良い感性だと思いますわ。」


「わかる?」


「ええ。」


女は上機嫌になっているようだ。俺達が暴れまくった事なんか忘れてしまったのだろう。


「じゃあお茶入れる。」


女は部屋の脇に行って棚からいろいろと取り出す。


ティーセットだった。


俺達の前に並ぶティーセットはおしゃれでセンスがある。


「これもおしゃれですわね。」


「そう?我の趣味だよ。」


「良い感じですわ。」


トラメルは女と息が合うようだった。


そしてすっと手のひらから何かをポットに入れた。よく見えなかったが、何もない手のひらから手品のように何かが出てきたのだった。


「今入れたそれは?」


「お茶っ葉じゃよ。」


「えっと今・・召喚したのですか?」


「違うぞ我の道具袋から抜き出しただけだ。」


「道具袋?」


「ん?もしかしたらお前たち道具袋を持っていないのか?」


女が俺達に聞いてくる。


「道具袋というものが何か分かりません。」


「えーっと自分で作った空間に物を入れておくものだが。」


《おお!この人は前世のロールプレイングゲームでいうところのアイテムボックスを持ってるんだ!》


「もしかしたらこの部屋や迷宮と同じ原理ですか?」


「そうそう。意外に理解が早いのだな。」


「素晴らしい!」


「え?おぬしの車?とか言うやつは、おぬしの道具袋から出したんじゃないの?あのドカーン!とかいうやつも。」


「違います。いや・・たぶん・・違うはずです。私のは召喚魔法だと思います。」


「召喚魔法を使えるものがまだおったか・・」


「あなたの道具袋も私はてっきり召喚魔法だと思ってました。」


「ちがうよ。あらかじめ作った空間に物を出し入れしてるだけ。召喚魔法にも少し近いものがあるけど、想念やあの世から出しているわけではない。似てるのは出す時の原理くらいかな。」


「えっと・・」


「まず!お茶にしよう!話はいくらでも出来る。」


「あ・・ああすいません。」


「せっかちなやつだな。」


「は、はは・・すみません。」


そして女はてきぱきとお茶を用意してくれた。


「すみません。それでは私もお返しにお茶請けをお出ししたいのですが?」


「そう?楽しみだ。」


俺は手をテーブルにかざしてJASDF羊羹 (航空自衛隊の三沢基地の隊内使用に限定したチョコレート味のお菓子)を4本召喚した。栄養補助食品として普通の羊羹よりカロリーは高い。


「おお。じゃあ皿も用意しよう。」


「すみません。」


女はまた棚から皿を用意してくれた。


それぞれの更に俺はJASDF羊羹を置く


そしてまた女がポットに手をかざすと水が出てきた。


ちょろちょろちょろちょろ


スッ


手をポットにかざしている。


「それは?何を?」


「熱いほうがいいだろ?」


「温めているんですか?」


「そうだ。」


《このひと・・めっちゃ便利な魔法をいっぱい覚えているな・・》


トポトポトポトポ


皆のティーカップにお茶をそそいでくれた。


「ん?もしかしてこの香りは・・」


「おや?わかる?」


トラメルが言うと女が嬉しそうに答える。


「フラスリア産でしょうか?」


「おおー!凄いね分かるんだ。」


「あの・・私の生まれ故郷のお茶なので。」


「えっ?フラスリアの人?」


「そうです。」


「我はこのお茶大好き!おぬしの故郷のお茶が一番!」


「今もまだ作っていますよ。」


「えー!いいよね。いい香りだよね。」


「ありがとうございます。」


どうやらこの二人は趣味が合うようだった。


「じゃあいただこう。」


皆でお茶を飲む。


「んー。皆でのむお茶は格別だ。」


「ふふふ。そうですね。」


「では私の召喚したこのお菓子をどうぞ。」


俺はJASDF羊羹を薦める。


「これは・・どうやって?」


「箱に入っているので出して包装紙を剥いて食べます。」


「なるほど・・こうか。」


皆で包装紙を剥き始める。


パク

パク

パク


「うんま!」


「えっ?ラウル殿!こんなの物出せたのですか?」


「おいしいですね!」


JASDF羊羹の味は濃厚チョコレートなので美味いと思う。3人はめっちゃ気に入ってくれたようだ。


「こんな美味い物を出せるなんて・・おぬしはいったい何者じゃ?」


「はあ、えっと。」


「ああすまんな。私の方から名乗らねばな。」


「いえ大丈夫です。私はサナリア領主の息子のラウル・フォレストと申します。」


「私はフラスリアの領主をしておりますトラメル・ハルムートと申します。」


「僕はファートリア神聖国で神父をしてましたケイシー・アピスです。」


「おや?人間の貴族と神父さんか?なんでこんな砂漠に?」


「それが・・わけあって飛ばされてきたのです。」


「それは災難だね。」


「ええ。そしてあなたは?」


「我は虹蛇。」


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


「「「えっーーーーーーーー!!!」」」


「な、何?何?」



「「「虹蛇さまぁぁぁぁ」」」



「おもいだしたぁぁぁぁ!」


ケイシー神父がいきなり叫ぶ。


「ど・・どうした!」


「スルベキア迷宮神殿の祭り神は!虹蛇様です!」


「「いまごろ思い出したんかーい!!」


虹蛇様は俺達のボケツッコミをポカーンとみているのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 出てきた迷宮の主 …髪の毛が七色…『見た目は女性』…だけど、性別は…そうなんだろうな… 遊び? 「そうじゃ遊びじゃ!遊びで痛い事をするのは規則違反だと思う!断固そう思う!」 納得しても…
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