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第258話 謎の大迷宮ルール

しかしおかしい。


上空が真空ならば普通ドローンは飛べない。でもブラック・ホーネット・ナノは普通に上空を飛んでいる。という事は上空には空気があるという事だ。


《・・だけど・・さっきは俺の周りに空気のない空間がまとわりついたな・・》


ズル認定した部分にだけ、あの無酸素空間を発生させる事が出来るようだ。


でもいったいどうやって発生させているのだろうか?任意の空間の空気だけを消す事が出来るのか?いま飛んでいるブラック・ホーネット・ナノも周りだけ空気が消えているのか?


《謎だ。》


ブラック・ホーネット・ナノはもしかすると小さすぎて見えないか、虫として認識されているのかもしれない。そんなことは何も関係が無いと言わんばかりに、ブラック・ホーネット・ナノは上空を飛び続け、ディスプレイに迷宮の映像を映し出してくれていた。


「しかし広いですね。」


ケイシーが言う。


「本当に・・」


トラメルもしみじみ言う。それだけディスプレイに映し出される迷宮は広大だった。


迷路の壁も全て大理石が少し透けたようなつるつるの素材だった。つるつるにして人が登れないようにしているのかもしれない。天井は高く50メートルくらいありそうだ。天井も同じ素材で出来ているらしく錯覚をおこしそうだ。


「いままでここに迷い込んだ人間っていたのでしょうか?」


「北方の大陸までここが迷宮神殿として伝わっているのですから、誰かが入って出た事があるって事じゃないでしょうか?」


俺が言うと二人も頷いた。


迷宮はどこも同じような風景で、同じところをぐるぐるとまわっているような錯覚に陥る。


「本当にこの映像があって良かったですわ。」


「ラウルさん。これは魔法なんですか?」


「いえ。これは機械で映しているだけです。魔力はこれっぽっちも使ってませんよ・・・」


《魔力?俺には魔力が備わっている・・もしかしたらあの空気無し空間は魔力にまとわりつくのか?よくわからないな。》


とにかくこのディスプレイの映像があるから前進している事だけは分かる。もしこの映像が無ければ、同じところをぐるぐる回っていると錯覚して戻ったりしているかもしれない。


「上空からの映像から迷路をなぞっていくと、こちら方面の通路で間違いなさそうですね。ただ広すぎて最終地点だと思われるところまでは飛ばせていないので、間違ったら戻らねばなりません。」


「ラウルさん。それでもこれがあるおかげで効率良いはずですよ。たぶん普通の冒険者が迷い込んだら、何年も迷い続けて途中で死んでしまうかもしれません。」


「確かに・・でも途中に死体とかは無かったですね。」


「そういえばそうですね・・むしろここ凄く綺麗じゃないですか?どこもかしこも白っぽいつるつるの岩で出来ているし。」


「そうよね。こんな技術は見た事が無いわ。」


ブブブブ


俺はブラック・ホーネット・ナノを手元に戻す。


「あ、戻って来た。」


ケイシー神父が言う。


飛んでいるブラック・ホーネット・ナノのバッテリーが切れそうになったら、手元に呼び戻して予備のブラック・ホーネット・ナノを飛ばす。バッテリーが空になった物は召喚した俺の背中のリュックの中で充電されていた。


「ブラック・ホーネット・ナノを触ってみてわかりますが、特に変化はありません。相手はこれをズルだと認定していないですね。おそらく気が付いていないのだと思います。」


「まさかこんな事が出来る人なんて、いると思ってないんじゃないですか?」


「きっとそうですわ。普通に考えてこのような真似が出来るはずないですもの。」


「もしかすると生き物じゃないので罠にかからないのかもしれません。」


《罠はもしかすると生体に反応するのかもしれない。ドローンは生物じゃないから認識出来ないとみてよさそうだが・・》


「さてとそろそろ。」


俺達は迷路の十字路にいた。周辺を確認しても特に危険は無さそうだった。


「休憩しましょう。」


この迷宮に入ってから6時間は過ぎていると思う。


十字路を休憩場所に選んだのは何かが襲ってきたとしても、逃げる通路を確保できる為だった。


「よっ!」


ポトリ


俺は意外に好評だったイタリアのレーションを召喚した。


「ふう。」


腰かけるケイシー神父がため息をつく。


「疲れましたか?」


「はい・・少し。」


「ではここで長めに休憩をとりましょう。私が見張りをしておきますので二人は寝ても良いですよ。」


「それでは・・またラウル殿が休めません。」


「大丈夫です。私は疲れておりませんから。」


「まったくその体力・・ラウル殿には驚かされますわ。」


トラメルにじっと見つめられた。


《トラメルは、こうやってよく見るとかわいいな。》


トラメルはちょっとつり目で形の良いツンと尖った鼻に赤茶色のロングヘアーが似合う、今は悪役令嬢と言うよりおてんば娘といったかんじだ。


《なんか初対面の時とずいぶん印象がかわるもんだ。》


俺は下心満載でトラメルを見てしまう。


ふと2人の視線が俺に向けられているような気がした。


《えっ?鼻の下伸びてたかな?》


すぐさま襟を正した。


「では食いましょう。」


俺達はレーションを食べ始め、ペットボトルの水を飲み干す。


「この食料があるおかげで私たちは救われていますわ。」


「本当です。これが無ければ間違いなく死んでましたよね。」


二人がしみじみと言いながら味わってくれている。


「食べたら休みましょう。目をつぶって座っているだけでも違いますよ。」


「わかりました。」


「はい。」


そして俺達はレーションを食べ終わり、通路の壁に近づいてもたれかかった。二人が目をつぶって下を向く。


それから・・40分ほど休んでいると”それ”は起きた。


ブーブーブー


いきなり警報のような音がなる。


「えっ!」


「なになに?」


「どうしたんでしょう!!」


3人が立ち上がって警戒する。今はブラック・ホーネット・ナノを飛ばしていないしひっかかる事は何もない。


十字路からそれぞれの通路を見ていると・・


床が丸く光りはじめる。


「なんか!光ってます!」


「見ればわかるわ!」


「二人とも落ち着いてください!」


5個程度の光の輪が各通路の床に出現する。


俺は警戒態勢をとって何が来てもすぐに動けるようにしていた。


すると・・


「う・うう・うう・・」

「あ・はああ・ああ」


ズッズズズズ

ズルズル・・ズズズ


なんと光の輪からゾンビが這い上がって来たのだった!


「屍人です!」


トラメルは黙って剣を抜いた。


「トラメルさん・・斬りかからなくていいです。」


「ですが・・」


「大丈夫です。」


俺は黙ってモスバーグM500ショットガンを召喚する。そう映画とかでよく出て来るあれだ・・


ゾンビは俺達を見つけてゆっくりと近づいてくる。


「ラウルさん!来ました!近づいてきましたよ!!」


「ラウル殿!斬りかかった方がいいのでは?」


「まあ落ち着いて。」


「落ち着いてなんていられません!」


「大丈夫。とりあえずこっちに行きましょう。」


俺は1方向の5体のゾンビに向かって歩いて行く。二人は俺の後ろをついてくるのだった。


ガシャ


ズドン!


ゾンビの頭が吹っ飛んで倒れる。ピクリとも動かなくなった。


ガシャ


ズドン!


もう1体の頭も吹き飛ぶ。


繰り返して5体のゾンビを倒した。倒れたゾンビを見ていると消し炭の様になって消えていった。


「凄い・・」


「魔法・・」


トラメルとケイシーがつぶやく。


「いえ魔法じゃないです。こういう武器なんですよ。」


俺はさっさと散弾を込めて後ろを振り向く。


ガシャ


ズドン!


ケイシー神父のちょっと後ろまで迫っていたゾンビを撃つ。


「わわ!」


「あの、お二人は私の後ろに!」


「は・・はい!」


「わかりました!」


3通路から集まってきているのであと十数体のゾンビがいる。


ガシャ


ズドン!


ガシャ


ズドン!


俺は全てのゾンビを始末した。あっという間に消し炭の様になって消えていく。床は何もなかったように綺麗になっていた。


「今、床から出てきましたよね。」


ゾンビが出てきた床の所に行ってじっと見てみる。


「継ぎ目も無いしどうやって出てきたんだろう?」


「ラウルさん・・転移魔法じゃないですかね?」


「かもしれませんね。」


「でも・・アヴドゥルが使ったそれとは違うような気がします。」


確かにそうだ転移と言うより穴から這い上がって来たような気がする。


「とにかく相手は魔物が出せるようです。屍人など敵にならないですけどね。」


「あんなにたくさんの屍人をあっというまに片づけてしまわれて、本当にラウル殿は頼もしいですわね。」


トラメルがなんだかうれしそうに言って来る。


「はは。屍人はノロマですし頭を潰せば動きは止まりますから。」


「そうなんですね・・あんなに冷静に。」


「戦いは慌てた方の負けです。」


俺だけゾンビが出てきた床の部分を這いつくばって確認しながら話していた。


「どうやらきれいさっぱり出てきたところは消えてしまったようです。」


「この迷宮に魔物なんて出るんですね。」


「何者かが使役しているのか、なんなのか分かりませんがいましたね。さっきの屍人は頭を飛ばしたら消し炭の様になって消えましたよね?ひょっとしたら作った物かもしれません。」


「作り物ですか?」


「はっきりとは分かりませんが。とにかくここは安全とはいいきれない場所です。」


二人がコクリと頷く。


「あまり休んでいるわけにもいかないようです。先を急ぎましょう。」


「はい。」


「わかりました。」


俺はまたブラック・ホーネット・ナノを飛ばして方向を確認する。


「こっちです。」


「はい。」


「はい。」


ディスプレイに映る迷宮はかなり広かったが、間違いなく中心部分に向かっている。中心部分にゴールらしき部分があったのだが、初めに入って来た場所からはだいぶ離れた。


「外から見た時はこんなに広くなかったんですがね。」


「はい。不思議です外から見た建物の広さからしたら10倍はありそうです。」


「ですよね。」


10倍どころか・・この迷宮は直径10キロくらいあるのではないかと思われた。中心に向かっているようだが若干中央より右側にずれてきている気がする。


「目的地までの道のりはおそらくこれで良いと思うのですが、もしかして当たり道が一本だったりすると一度途中まで戻らねばなりません。」


「ここまで2刻くらいで来ちゃいましたから大丈夫ですよ。食料はラウルさんが出してくれるし、1日2日で簡単に攻略できそうには思えませんし。」


「ただ・・先ほどの屍人が気になりますが・・」


「確かに」


ゾンビが出てきてからすでに数十分たつが、もう魔物が出てくる気配は無かった。もしかすると出現条件があるのかもしれなかった。


《一定時間以上たつとゾンビが出て来るとか、一定の場所に長くいると出て来るとか?・・まるでゲームだ。》


俺は迷宮攻略を早めるためにもこの迷宮のルールを掌握したかった。


「まあ仕方ないですね。とにかく進みましょう!」


俺達3人はブラック・ホーネット・ナノから送られてくる映像を見ながらゴールを目指すのだった。

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[一言] トラメルさんの印象が変わる 《トラメルは、こうやってよく見るとかわいいな。》 トラメルはちょっとつり目で形の良いツンと尖った鼻に赤茶色のロングヘアーが似合う、今は悪役令嬢と言うよりおてんば…
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