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第213話 コルトガバメント縛り

俺とシャーミリアは入って来た入口の方へ向かう。


もちろん俺達の襲撃に気づかれて外の兵に連絡されるのを避けるためだ。


入り口の見張り部屋には、テーブルをはさんで椅子に座る2人の兵がいるのが分かった。


バシュバシュ

バシュバシュ


無造作に中に入り振り向く間も与えず、二人の後頭部とこめかみに2発ずつ弾丸を撃ちこんだ。


「よし。」


だらりと腕が垂れ下げて後頭部をうたれた一人がテーブルに突っ伏した。もう一人は椅子の背もたれにもたれ天井を見上げるようにして死んでいる。


その部屋を出ると通路に一人兵士が立っていた。こちらに気が付き声をかけようとしてくる。


バシュバシュ


2発の弾丸を撃ちこむ。


おでこに穴を空け前のめりに倒れてきたので、俺が駆け寄り倒れる音を出さないように支えて寝かせる。


「まだ侵入者おれたちに気づいてないか。」


この建屋にいる兵士の力量を図るためにやっているが、俺達にはまだ一切気が付いていないらしい。


中に行くと、入ってきた時に見えた食堂がある。


「1,2,3・・7人か。」


足音もなくスッと食堂に入ると4人が話に夢中になっていた。1人で食ってるやつ、2人で食ってるやつがいたが1人の方が俺に気が付いた。口を開いて俺になにか声をかけようとしたので、眉間に一発。


バシュ


するとサイレンサー付きでも音はするため、その音にひかれて数人がこっちを向く。


バシュバシュバシュバシュバシュバシュ


ゴトッゴトッゴトッ


3人が料理に顔をつっこんで絶命する。あとの3人はその場でだらりと天井をあおぎ、椅子から倒れ全員がその場でおとなしくなった。


「まったく警戒していないな。」


「そのようですね。」


俺達が足早に厨房の方に走りよると、中には料理のおばさんと若い女性と少女がいた。


「この領の人ですか?」


俺が3人に声をかける。急に現れた俺に驚きながら、おばさんが答える。


「そ・・そうです・・」


「俺は圧政から民を解放しに来た、サナリア領主グラム・フォレストの息子ラウルと言います。」


「えっ!あんたが、あのグラムさんの?」


食堂のおばさんが驚いたように言う。


「ええ、父をご存知ですか?」


「知ってるも何も素晴らしい御方さ。この領の兵が皆殺しに合う前の話だけど、魔獣の倒し方を教えに来ていたんだ。豪放磊落で明るい人でねえ!私らにも分け隔てなく声をかけてくださったんだよ。」


「そうでしたか・・・」


「お父様は今もお元気で?」


「いえ。敵に殺されました。」


「・・それは申し訳ない事をきいたね・・」


おばさんは申し訳なさそうに言った。


「問題ありません。それで・・この建屋にいる兵の人数を聞きたいのですが。」


「夜は900人がつめているよ。100人が夜間の見張りさ。」


「ありがとう。すぐに民を解放します。」


「ユークリットの兵団が来てくれたのかい!?」


「いえ・・残念ながらユークリットも壊滅です。」


「なんてことだい・・」


「大丈夫です。今は私が軍を結成し、この国の敵兵を一掃しているところです。ユークリットからここに来るまでの村にいた兵も全て制圧しました。」


「さすがはあの方の息子さんだ。ファングラビットの子はファングラビットって事なのかもしれないねぇ。」


えっ・・こっちにも”蛙の子は蛙”みたいなことわざあるんだ。


すると少女が言う。


「あの・・わたしの!わたしのお父さんはこの領の兵士でした!でもあいつらに殺されたんです!」


「君もか・・」


するとおばさんも・・


「私の息子は二人も殺されたんだ!あいつらを憎くて憎くて仕方がないよ。あいつらの為に飯なんか作りたくないのさ!」


「そうですか・・」


すると若い女も言う。


「私の思い人も殺されました!そして奴らは事あるごとに私を慰み物として・・・。本当は料理に毒でも盛りたいくらいです!でも・・そんなことしたら私の家族まで殺されてしまう。」


「ご安心ください。すでにユークリット王都は奪還しバルギウス帝国も制圧しました。この領も奪還しますので、皆さんは戦闘が終わるまでここに潜んでいてください。出来れば目を伏せていてください。」


実はすでに音もなくファントムが入ってきて、この食堂で死んだ人間を吸収して出て行ってしまった。厨房からは死角になっているので見えない。


《3人は俺と話をしていたので気が付かないだろうが・・ファントムのあんな光景をみたら発狂するかもしれないからなぁ・・》


「は・・はい!」

「わかりました。」

「あいつらを!あいつらをやっつけて!」


「了解しました。あの・・」


「なんです?」


「あいつらを一掃したら・・ぜひあなた方の料理を食べさせていただきたいんですが・・」


「お安い御用ですよ。」


おばさんが快く受けてくれる。


チラッ


とシャーミリアを見るが別に何も気にしていないようだった。


・・よかった。


「それでは。危険ですので絶対にここから出ないでください。」


それを言い残して俺とシャーミリアは食堂を出ていく。


武器庫を過ぎて廊下を進むと、廊下の途中に右への曲がり角があった。まっすぐには人が見当たらない。角から頭を出して先を覗いてみるが廊下には誰もいなかった。通路には等間隔で扉がある。


そちらに行き一つのドアを開ける。



カチャ


どうやら作戦室のようだ。


しかし夜間の為だれもいない。戦時でもないので会議の必要が無いからだ。部屋を出て隣の部屋に行くとそこは同じような部屋だった。しかし人はいない。


3つ目のドアをあけると人がいた。豪華なローブをまとっているので、どう考えても上位の人間である事は間違いなかった。


「こんばんは。」


「ん!お前は誰だ!」


「商人です。」


「商人が何でこんなところに。」


「迷いまして。」


「早く出ていけ!」


「はい。お見受けすると・・ここのお偉いさんですか?」


「そうだ!お前が声をかけれるような人間ではないのだぞ!ファートリアの神官なのだ!さがれ!」


「よかった。民かどうか見分けがつかなかったから。」


すぐ見分けついたけどね。


「なにをっ・・」


バシュ


ゴト


コルトガバメントに撃たれ神官様はその場に倒れた。


「シャーミリア偉い人の部屋だってさ。何か情報ないか調べる。」


「はい、かしこまりました。」


「手分けしよう。」


「はい。」


その辺にあった書類や書籍などを調べていくが特にめぼしいものは見当たらない。俺が大きなデスクにある引き出しを開けようとするが硬く鍵がかかっていた。


「シャーミリア。」


「はい。」


シャーミリアは何事もなかったようにスッと鍵のかかった引き出しを開ける。しかし鍵の部分の木が壊れ鉄もねじ曲がっていた。鍵を開ける事もなくただ開けたのだった。


「スクロールだ。」


俺がそれを手に取ってデスクの上に広げてみると何かの地図のようだった。大雑把な地図だが場所はこの領と西の山脈、そして森を示していることが分かる。


「山脈の森の地図だが・・ここに印があるな。」


「ご主人様こちらにもう一巻書類が・・」


違う引き出しには書簡がはいっていた。袋から中身を取り出して見る。


「これは・・文章からすると・・討伐指令書だ。」


「討伐ですか。」


しかしその指令書にある討伐対象は魔獣ではなかった。人間の名前が書かれている・・・


罪人

サウエル・モーリス

サイナス・ケルジュ


と・・・


「モーリス先生と枢機卿の名前だ!」


ビンゴ!


どうやら二日後に森に討伐隊が出される予定だったようだ。討伐部隊人数は900名、従者が100名・・


「ここに居るほとんどの兵士で行く予定だったんだな。ということはかなりの戦力が森に集結しているという事か・・」


「可能性はございますね。」


「じゃ。よかったよ。」


「はい。」


他にも部屋を物色するが、めぼしいものは見当たらなかった。


「さっさと片づけて迎えに行こう。」


「かしこまりました。」


「でも今夜は俺の戦闘訓練に付き合ってくれよ。」


「はい・・今夜どころか・・いつまでもお付き合いいたしますわ。」


シャーミリアが頬を赤くして答える。


俺たちが廊下に出ようとしたら、ドアのむこうから人の気配がした。一旦やり過ごそうと息を潜めていると・・


ドンドン!


なんとこの部屋がノックされた。


《ちょっとびっくりした!》


兵が声をかけてくる。


「神官様!お逃げ下さい!化け物が!」


俺はわざと少ししわがれた声を作って答えてみた。


「ああーワシは後から行くぞよー」


「曲者!」


バレた!


バン!とドアを開けられたので、反射的にバン!と撃ってしまった。すると騎士は胸を撃たれてガクンと一瞬膝が落ちるも、そのまま突進してきた。


ヤベ!


慌てて数発。


バシュバシュバシュバシュ


ギィィン、シャン!


頭を狙った2発の弾丸が刀で弾き返された!騎士は体を狙った弾は避けず弾丸を体にめり込ませながら切り掛かってきた。瞬間的に懐に潜り込まれてしまう。


この至近距離で弾丸をはじくことができるとは、間違いなく小隊長クラスの騎士だった。


やっと戦闘訓練らしくなってきた。


俺がマリアに教えてもらった拳銃を用いた格闘を試すチャンスが来た。そして魔人の配下達にも散々仕込まれた体術がどこまで通用するのか?


俺の弾丸で負傷はしているが騎士の体の捌きはするどい。騎士は室内で振り回すのには不向きなミドルソードで、鬼気迫る顔で上段から袈裟斬りに剣を振り下ろしてくる。


「スッ」


俺が軽く呼吸を吐いて間一髪避けると、騎士は下から反対の手で押し返し上に向かって凪いできた。魔人達に仕込まれる前だったら間違いなく今の初太刀で一刀両断にされていた。


ギィィィン


俺は左手に持っている銃を捨て、すぐさまタングステンのコンバットナイフを召喚しその剣を腰の下でうけとめた。


さらにひいた足で思いっきり踏み込み、相手の胸元へ体をぶつけるが騎士はびくともしない。


俺は左手のタングステンナイフをそのまま刀に沿って擦り上げて手を狙う。すると騎士はその狙いを呼んだのか後方に飛ぼうとした。


バシュバシュ


飛ぶために踏み込んだ騎士の太ももと膝に、45ACP弾をゼロ距離から撃ちこんだ。骨を砕き弾丸は2発で左足を粉砕した。


ズルリ


騎士は後方に飛べずに体制を崩すが、剣を捨て床に手を突いて体を低くした。俺が振り切ったタングステンナイフが空を切る。


が・・そのままナイフを捨て、またコルトガバメントを左手に召喚し、至近距離から騎士の眉間に弾丸を叩きこんだ。


バシュ


ズササー


そのまま崩れ落ちて小隊長クラスの騎士は息絶えた。次の瞬間ドアの向こうから小剣が飛んできた。俺はもちろん油断することなくその剣をよける。するとまた一人騎士が突撃してくる。


「ふっ」


俺は地面すれすれに体制をおとし、横なぎに斬りこんできた騎士の剣を髪の毛の先を少し切らせながら躱す。剣が通り過ぎた後で蛙飛びの様にジャンプし、顎の下にコルトガバメントの銃口を突き付けて引き金を引く。


バシュ


すると脳漿を飛び散らせて騎士が後ろに吹っ飛ぶ。その勢いのまま騎士をドアから押し出して廊下に出ると両脇から槍が突き出てきた。それをスウェイバックでかわし両手を広げてコルトガバメントを撃つ。


バシュバシュバシュバシュ


バッと両サイドの騎士が後ろに倒れていくが、倒れているうしろから剣が突き入れられる。倒れたのを見計らって俺に剣を突き入れるつもりだったらしい。俺はその剣の方に向かって飛び剣をくるりと回ってかわすようにして、喉に銃口を突き付けて撃つ。


バシュ


「けくっ」


騎士が喉から血を拭きだして倒れていく。


すると俺の後ろから槍が2本突き入れられる。俺は今撃った騎士が倒れる同じ方向に飛び前転宙返りをしつつ、後ろの槍を突き出した騎士2人に弾丸を撃ちこんだ。2発の弾丸は騎士の眉間に吸い込まれていく。喉を撃たれ倒れた騎士が最後の力を振り絞って、剣を振り上げようとするが脳天から銃弾を叩きこんだ。


バシュ


脳天から撃ちこまれた弾丸で騎士はおとなしくなる。飛び込み前転のような形で転がったところは廊下のT字路になっているところだった。


間髪入れず両脇の死角になっている上段から剣が降って来た。


ギイイイン

ギイイイン


銃をそのまま落としてタングステンのコンバットナイフを両手に召喚し、2本の剣を受け止めていた。


バシュバシュ

バシュバシュ


一瞬俺の手がぶれる。そのまま落ちる寸前のコルトガバメントを掴み、両サイドにいる騎士に弾丸を撃ちこんだ。心臓に1発眉間に1発撃ちこんで黙らせた。


廊下の奥から数名の騎士が走ってくるので、そのままそちらの方に走る。斬り込んでくる剣をかわし先頭の騎士を飛び越えて、壁を走りながら5名の脳天にコルトガバメントを撃ちこんでいく。


5人の騎士は一気に倒れ込んだ。


《縛りゲーはきついな。》


そう・・俺は訓練のためにハンドガンとコンバットナイフ縛りで戦っているのだ。マシンガンやロケットランチャーを使わずに500人を殺す予定でいるのだった。


残り400人はファントムにまかせるけど・・


っていうか・・


すでにファントムは戦闘を終えて、俺が倒している騎士を片っ端から後ろで吸い込んでるけど・・おかけで死体が散らからずに済む。


階段から大勢の騎士たちが降りてくる。俺は大量の剣と槍を避けて弾丸を撃ちこんでいくのだった。


あと480人・・


《昨日と今日食った大量のステーキの分のカロリーを消化するぞ!》


俺は一人はりきっているのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] かなり無双したりしている魔人軍でしたが… ラウル君単体の戦闘能力というのはまだまだなんですね…(デモンとかを圧倒しているのも『連結』や強力な兵器あっての事ですし) かなり隠密行動などのスキ…
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