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第206話 カースドラゴン

「セルマ!お前はこの都市を出ろ!」


くぉぉぉん!?


たぶん・・いやだと言っている。


「ダメだ!命令だ」


しぶしぶセルマ熊は来た方向を逆に向かって走っていく。


俺にはカースドラゴンがヤバい奴だと思えた。勘だがセルマにはどうしようもない相手だ。


グォァァァァ


カースドラゴンが吠えた。


地響きと共に鳴き声が伝わってくる。出現した穴の寸法と城を比較するとカースドラゴンは50メートル近い大きさがありそうだ。


「デカいな・・」


「ご主人様が危険です!」

「ラウル様少しお下がりください!」


シャーミリアとカララが同時に叫ぶ。やはりそれだけ龍が危険だという事だろう。しかもあの世だか地獄だかわからん所から出てきたやつだし恐ろしいに違いない。


次の一瞬で俺の視界が塞がる。


「!」


どうやらカララが蜘蛛糸の繭をはって俺を中に収めたようだ。


ゴォォォォォ


しかしカララの強靭な糸の繭が溶けて外が見えてしまう。間髪入れずにシャーミリアが繭に入り込んできて俺を掴み上空に飛んで逃げた。


ビシュッ

ビシュッ

ビシュッ


俺に向けて黒い炎が飛んでくる。俺が立っていた場所も黒い炎がたちこめていた。


「黒炎でございます!」


シャーミリアがよけながら言う。


なるほど・・黒い炎・・聞くからに危なそうだ・・



「ふははははは。我に逆らったのが運の尽きよ!人間もどき!地獄の黒炎に焼かれるがいい!」


ネクロマンサーのデモン、ネビロスが勝ち誇ったように叫ぶ。


俺はAT4ロケットランチャーを召喚して連結LV2のまま魔力を繋いでカースドラゴンに撃ちこんだ。


バシュゥー


ドッッッゴーン!


カースドラゴンが大爆発をおこしたように見えた。巨大な爆炎の中にカースドラゴンが隠れてしまう。なにせグラドラムに黒い雨を降らせた爆発力だ、ひとたまりもないだろう。


「魔力のたっぷり乗ったロケットの威力はどうだ!」


俺は敵を仕留めたと思っていた。


「まだです。」


シャーミリアが言う。


ビシュゥ


黒炎が煙の中から飛び出して来た。


ロケットランチャーはカースドラゴンに直撃しなかったようだ。カースドラゴンの前面に骨の扇のような物が広がりロケットの直撃を防いでいたのだ。


「えっ!防ぐのか!」


「ご主人様。あれは結界よりも堅牢な守りのようです。」


「だな。」


ビシュッ

ビシュッ

ビシュッ


また黒煙が俺を狙って来る。1体は完全に俺を狙っているようだった。


「もう一体は・・」


ファントムのM61バルカンとアナミスのM9火炎放射器の集中攻撃を防ぐため防戦体制に入っており、無限に出現するかの如く全方位に骨の扇が広がる。カースドラゴンはその隙をついて黒炎で反撃しているようだが、ファントムは容易によけていて空中を飛んでいるアナミスにまで攻撃する余裕はなさそうだった。ファントムは数百㎏のM61バルカンと給弾装置をぶら下げてフッフッっと消えるように俊敏に動く。


「カララ!ファントムとアナミスに加わって1体に攻撃を加え反撃をさせないでくれ!」


「はい・・」


カララの千丁のサブマシンガンがカースドラゴンを取り囲み球状になって撃ち始めると、骨の殻に包まれるように自分を守り始めた。


「1体の足止めは、成った!」


俺はシャーミリアに指示をして後方に飛ぶ。するともう一体のカースドラゴンがついて来た。


「ご主人様。どのように。」


「ああ!反転してもう1体に突っこめ!」


「かしこまりました。」


離れてついて来たカースドラゴンに俺とシャーミリアが突っ込んでいく。骨の扇がどんどん広がるが、こちらもAT4ロケットランチャーを召喚しては撃ち召喚しては撃った。たて続けに1枚1枚撃ちこんで骨の扇を破っていくと胴体の真上に到達した。至近距離からAT4ロケットランチャーを発射する。


ドゴーン


しかし・・カースドラゴンは自分の至近距離にも骨の扇を広げそれを防ぐ。俺は再びAT4ロケットランチャーを撃ちこもうと召喚の体制にはいった。


その時!


ビュン


カースドラゴンの骨の尾が俺達を襲う。シャーミリアはそれを避けるように飛びのいた。


ビシュー


なんと!尾の先からも黒炎が吐き出されたのだった!間一髪でシャーミリアはそれを避けた。尻尾の先を見るとそこにも鋭い顎があり牙をガチガチと鳴らした。


「尻尾の顎からも黒炎を吐き出すのかよ!」


ビュン


目の前にその顎が瞬間で近づく!


「いけない!」


シャーミリアが叫ぶ!


ビシュッ


至近距離で黒炎が吐き出されるが、俺の視界がものすごいスピードで急激に横に流れていく。シャーミリアが高速移動で躱したのだった。


「ご主人様・・はぁはぁ大丈夫ですか・・?」


「ああ。」


そして少しずつ高度が落ちてくる。


「申し訳ございません・・しくじりました。」


シャーミリアを見ると・・左の腕の付け根の胴体部分から腕が無くなっていた。


「シャーミリア!」


俺はシャーミリアと共に住宅地に落下していくのだった。そこを狙ってカースドラゴンが黒炎を吐いてくる。


ビシュッ


バッ


俺とシャーミリアの前にカララの糸の膜が現れ間一髪で黒炎の直撃を免れる。


しかし次々と黒炎の連射をくらっていく。


カララの糸の膜がその都度はられていく。さっきとは逆の状態になってしまった。


「すみません・・ご主人様・・黒炎のため再生がままなりません。」


「すまないシャーミリア!俺を守るために・・」


「いえ・・もうしわけございません。」


どうやらシャーミリアの再生を遅らせてしまう効果が黒炎にはありそうだった。


「シャーミリア、命令だ!戦線を離脱しろ!」


「しかし・・・」


「異論は許さん。」


「かしこまりました。」


シャーミリアは俺を住宅街に置いて、戦線を離脱するように南に飛び立っていく。


《ラウル様・・弾丸が切れました。》


アナミスからの念話が入る。


《アナミスも離脱しろ》


《いえ。そういうわけには。》


《異論は認めん。》


《はい。》


アナミスが戦線を離脱する。


ファントムを見るとどうやらM61バルカンの弾丸が切れて武器を捨てたようだ。


・・黒炎を避けながら・・


・・・・ファントムがカースドラゴンと1対1の殴り合いをしている・・・・


ゴン!

ズゴン!

バゴン!


「えっ・・・あいついったいなんなの?」


ファントムの本気の殴り合いを初めて見た俺はちょっと引いていた。


数発に一発は胴体に当たりひしゃげる。しかしいちいち骨の扇が出てきてファントムのパンチを防いでいた。


そのおかげで1体はその場を動くことは出来なくなったが・・



空を飛んでいるもう一体のカースドラゴンの俺達への爆撃が止むことはなかった。カララが防いでくれているが反撃の術がない。カララが俺の側に降りたつ。


「カララ・・一旦あいつを殺そうよ。」


「かしこまりました。」


俺とカララは都市内に潜伏した。


ドゴーン

ドゴーン

ドゴーン


すると俺達を見失ったカースドラゴンが黒炎の絨毯爆撃を始める。次々の家々が燃やされていく・・しかし俺達は家から家に逃げ込み行方を分からなくした。


「くっくっくっくっ!」


ネビロスが笑っている。


「どうやら屍人の支配が我に戻ったようだな・・お前たち!もう裏切りは許さんぞ!都市内に向かい逃げた者を殺せ!」


どうやらシャーミリアが戦線を離脱したおかげで、屍人たちの支配権を取り返されてしまったようだった。


パリーン!

バン!

ドガッ!


屍人や進化型グール達が住居に侵入して俺達を探し始めたようだ。



俺は無線を取る。


「エミル。」


「おう!北門付近には何もいなかったぞ。」


「そうか。」


「なんか城の付近に大きなものが飛んでいるみたいだが・・」


「龍ゾンビだ。おっかない黒い炎を出すぞ近づくなよ!」


「わかった!」


「出来るだけ距離を!」


俺がそういうと今度はグレースが答える。


「ラウルさんが置いて行ったマクミランTAC50がありますけど? 」


「そうだった!お願いがあるんだが・・スコープをのぞくと人型の骨が浮かんでいるだろう?そいつを遠距離から狙撃してくれるか?」


「ラウルさん了解です。狙撃なら俺がやります。」


グレースが言う。


そう・・グレース(林田)は俺達前世のサバゲチーム4人の中で一番狙撃が上手かった。


「俺の合図を待て」


「了!」


俺とカララは家から家に逃げ回っていた。


カースドラゴンの黒炎爆撃が続く。


しかし!


次に入った家に進化型グールが居た。


シュッ


進化型グールの手が触手の様に伸びて俺達を攻撃してくるが、カララが全て糸で切断していく。次に進化型グールは再生不可能なほどに細分化されて床のシミになる。


「ふははははは!そこかぁ?ネズミめ!ドラゴンよ!燃やし尽くせ!」


カララが進化型グールを倒したことでネビロスは俺達の位置を把握したらしかった。カースドラゴンに位置を教えて俺達を爆撃してきた。


ビシュゥ

ビシュゥ

ビシュゥ


ドーン!

ドーン!

ドーン!


シュッ


バン!


俺達はその家を出てまた家から家に逃げ回る。


「にげろ!にげろぉ!ネズミめぇ!いつまで逃げられるかなあ?」


ネビロスは面白がっているようにも思えた。俺達は追い詰められているように逃げ回る。


「ふはははは!殺せぇ殺せぇ!」



どれだけ逃げ回ったろう。屍人や進化型グールに遭遇するたびに位置を特定されて、カースドラゴンの黒炎の集中爆撃を受けた。


ズガーン

ボォォォォ

ゴオオオオ


家がどんどん燃えていく。


「カララ・・どうだ?」


「時々黒炎で燃やされて・・でももう少しです・・」


「オッケー!」


逃げる逃げるとことん逃げ回った。


「ネズミめが!そろそろ飽きてきたゎ!死ね!」


「グレース今だ!」


シュン


流星が流れた


しかしさすがはデモンのボスだった。異変を感じたのかスッと地面に落ちて身を隠す。グレースの狙いはさすがだったが一度攻撃を見られていたのが失敗だった。


「ふはははは、それは二人の部下がやられたときに見たわぁ!同じ手が・・」



しかし・・地面に落ちたのが運の尽き・・



その瞬間、俺はカララから伝わる糸の感触を確認した。


ドゴン!


地雷の爆発だった。ネビロスの左足から腰までが消え去った。


「なに!」


次の瞬間ネビロスを囲むように大量に信管を付けたTNT火薬が1000トン出現する。俺はカララを通じて糸の包囲網を広げさせていたのだった。その罠にネビロスはまんまとひっかかってくれた。


カララだけは有線でつながる事が出来るため、その先に兵器を召喚する事ができるのだ。


カチ


ズッゴォォォォンンン


俺の魔力も乗せているので恐ろしいほどの爆発が起きた。爆発によりネビロスが一瞬で消滅し側にいた1体のカースドラゴンの体が半分吹き飛んだ。後ろにあった巨大な城が跡形もなく吹き飛ぶ。


ファントムは既にカースドラゴンの元を離れかなり遠くに飛びのいていた。


バフ―

バガーン


衝撃波で俺達が潜んでいた家が吹き飛んだ。俺はカララに巻き取られてその場から飛ばされる事はなかったが屍人や進化型グールが吹き飛んでいく。周りの家も一気に吹き飛んだ。


ガガ

 

「・・お・・だい・か・・・・なに・・」


俺の無線機にエミルの声が入るが音声が乱れる。


家が吹き飛び俺達が丸見えになってしまった。上空を飛んでいたカースドラゴンに見つかってしまう。


ビシュゥ

ビシュゥ

ビシュゥ


俺とカララは黒炎の雨が降り注ぐ中を、それこそネズミの様に逃げ回る。


「いかん・・だるいぞ・・」


「・・はい・・」


どうやらデモンのボス、ネビロスを倒したことで進化が始まってしまったようだった。


「こちらエミル!魔人達が眠ってしまったぞ!」


ようやく無線がつながったようだった。


「・・ああ・・進化が・・」


《ヤバイ!こんなところで・・進化が始まるとは・・》


少しずつ動きが遅くなってくる。


《ファントム!来い!俺とカララを連れて出来るだけ遠くへ走れ!》


俺とカララがギリギリの意識の中で走り回り何とか黒炎を避けていた。



シュッ



俺とカララは急加速でやって来たファントムの腕の中に抱きかかえられていた。極限のスピードで走るファントムにカースドラゴンは追いつくことが出来なかった。


そして・・俺は・・薄れゆく意識の中でエミルに無線を繋げる。


「・・エミル。一旦ヘリを捨てて・・逃げろ・・」


「わかった。」


俺は暗黒の中に引き込まれるように目を閉じた。


カースドラゴンは不気味な鳴き声と共に大空に舞い上がる。半分吹き飛ばされたもう一体はおぞましく屍人やスケルトン、進化型グールを取り込み始め再生をはじめた。


エミル達の乗ったチヌークもユークリット王都から離れていくのだった。


「ラウル達・・大丈夫かな・・」


寝てしまった魔人を乗せて北へと飛んでいくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] カースドラゴン 連結LV2の攻撃を防ぐあたりなかなかの強敵…なのですが… ・・黒炎を避けながら・・ ・・・・ファントムがカースドラゴンと1対1の殴り合いをしている・・・・ ラウル君じゃ…
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