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第192話 両翼包囲人海玉砕作戦

ユークリット王都奪還部隊の為に、なるべく時間稼ぎをしなければならないのだが・・


憂鬱だった。


だって兵士が50万人もいるっていうから・・


敵兵とはいえ彼らにも家族がいるだろうし、50万人も殺害する事を良しとしているわけではない。俺達に出会わなければ無事に家族の元に帰れた人もいるだろう。恋人とまた会う事も出来たであろう。それを全く想像しない訳ではないが、既に俺には敵兵を殺すのをためらう心は無い。


前世で戦争中に、都市へ空爆をしたり物凄い爆発力の爆弾を落とす事を命ずる人達に、ためらいはあったのだろうか?


俺が日本人だったころには疑問を持っていた。正義と言う名のもとに何をやってもいいのだろうかと?しかし当事者になってみるとおかしなことにそれをやってしまう。


この作戦はミノス部隊がユークリット王都を奪還するまでの陽動のつもりだった。だが蓋を開けると大量殺戮となってしまっていた。


「ああ・・やっぱりいるんだ。」


東の城壁の角を曲がったところに数千の敵兵がいた。それを見て少しがっかりした。


すぐに火の玉と氷の槍、そして石弾と矢が大量に降り注いできた。


そのすべてが俺達の前に透明な壁があるかの如く霧散する。


「カララ大変だろう?ごめんな。」


「いえラウル様。造作もない事です。」


やっぱり魔人ってのはすげえ。数百の攻撃を全て糸で細分化するほど切り裂いているのである。


数千の敵兵が、角を曲がって自分たちの眼前にゆっくりと現れた5人と一匹を俺達を呆然と見ていた。


きっと必殺の攻撃を準備して待っていたのだろう。それが霧状になって消えたのだから、呆然とするのも無理はない。兵士たちは刀や槍を構えて待ち構えていた。弓兵は次の弓矢を装填しているし詠唱を終えた魔法使いたちが、再度魔法を大量に放って来た。


やはり俺達の眼前で霧散した。


カララグッジョブ


うぉぉぉぉぉぉ


盾兵を前面にして刀と槍を持った兵が後ろに並んで走ってくる。隊列がきちんと統制されていて、相当の訓練をつんでいるようだった。


パカランパカラン!

パカランパカラン!

パカランパカラン!


騎馬隊が後ろから50騎ほど突撃して来た。


「我こそは!バルギウス10番隊の隊長!ジャヌルゾームである!伝説の剣フルティングの糧となれ!」


一番前を疾走する、筋肉隆々であろうフルプレートの騎士が馬上から叫んだ。


ズドン!


ギイン!


「おお!」


驚いたのは俺の声だ。


俺が放ったSVDスナイパーライフルの弾丸を刀でそらしたからだ。


「見えてるのか?凄い・・」


大泥棒の一味の侍みたいだ。


ズドン!

ズドン!

ズドン!

ズドン!


ギイン!

ギイン!

ギイン!

ギイン!


「おおー!!」


俺が喜んでいると、カララとアナミスが俺にどうするつもりなの?みたいな目線を送って来た。


まあ楽しんでばかりもいられないか。あんなスナイパーライフルの弾をよけるやつだからな・・とりあえずみんなに言おう。


「えーっと。じゃあ全員撃っていいよ。」


あと20メートル眼前に騎馬隊が迫ったところで、M61バルカンとM134ミニガン、M240中機関銃が火を噴く。


キュィィィィィィ

ガガガガガガガガ

ダダダダダダダダ


馬は倒れジャヌルなんとやらはあっというまに四散した。そのほかの騎馬も全てその場に崩れあっというまに50の騎馬は潰れた。それはおろか流れ弾によって、後方に迫っていた歩兵部隊の前面部分もかなり削れてしまう。


いきなり眼前で起こった惨劇に呆然としていた兵達だったが、蜘蛛の子を散らすようにわらわらと四方へ逃げ出した。


キュィィィィィィ

ガガガガガガガガ

ダダダダダダダダ


《殺しすぎだよな・・》


「あーストップストップ!」


キュィィィィィィ

ガガガガガガガガ

ダダダダダダダダ


「あそうか!止めて止めて!」


シューン


全ての銃撃が止まった時には数千の兵は数名になっていた。


ストップって言ったって分からないか。つい慌てて前世の言葉が出てしまった。



「暑いな・・」


さっきから俺の体がほてっているのか暑く感じる。


「ご主人様。その・・リュックと無線機をセルマに括り付けてはいかがでしょう?」


「あーそうか!これ暑いよな。」


俺はリュックと無線機をセルマの毛に括り付ける。


「少しは涼しいけど・・あっついわぁ。」


するとカララが自分の羽衣みたいな衣装の一部を扇子の形にして糸で操り、俺の周辺に2枚の扇子を広げた。


パタパタ

パタパタ


「あー涼しい。カララありがとう。」


「なによりです。」


熊の上にまたがった少年の周りを蝶々のような布がひらひらと舞っている。


「よーし止まれ!カララまた集めてくれ。」


「はい。」


カララが蜘蛛の糸を広げて死体と微妙に動く人間を周辺に集める。


「ファントム吸収だ。」


ぶわぁ


ファントムの肩口より上が牙だらけの口に変わる。


また掃除機の様にごうごうと遺体を吸い込み始めた。


ガリュン

ゴリリ

ゴキュ

メキョ


あっというまにあたりが綺麗になっていく。


「よし進もう。」


辺りが綺麗になったのでまた壁面に沿って進んでいく。


どうやらこの都市は6角形になっているのかな?


角は直角ではなかった。


「敵がいないな・・こっちに来たの気づいてないのかな?」


俺はLRAD長距離音響発生装置を城壁側に向けてスイッチを入れる。


「あの!私は革命家です。皆さんに再度警告しますがぜひ降参してください。今都市の東側を北に向かって進んでいるところです。繰り返します!今都市の東側を北に向かって進んでいるところです。」


LRADのスイッチを切ってそのまま北に向かって進んでいく。


すると城壁の上にまた人が出てきて槍と矢を放って来た。


「うむ・・まだ懲りないか。そりゃそうだよなまだ49万人くらいいるんだもんな。都市内に攻め入っているわけでもないし止めないか。」


とめどなく敵の遠距離攻撃が降ってくるがカララがそれを全て粉砕する。


なるほど・・アラクネ1人だけでも国が滅亡するってこういう事か。


《こんなん反則じゃん。》


《ラウル様?何か?》


あ、しまった念話してしまった。カララが?マークを浮かべている。


「いや、なんでもないよ。シャーミリア城壁の上を掃討してくれ。」


「かしこまりました。」


シャーミリアがM134ミニガンとバックパックを背負って飛ぶ。城壁の上を舐めるようにミニガンの弾が降り注いでいく。


どうやら上空にいるシャーミリアに壁内から魔法が飛んでくるようで、それをひらひらとかわしながらやってのけている。どうやら城壁の上は片付いたようだった。


《シャーミリア。降りてきてくれ。》


《かしこまりました。》


そのまま、また北に進んでいく。敵が俺達を認識出来なくなるといけないのでゆっくりと・・


「帝都ってなかなか広いんだな。」


「そのようでございます。」


「上空から見た感じ中はどうだ?」


「街の通りには兵士がひしめいております。どうやら我々の動きに合わせてなにか準備でもしているのかと。」


「なるほどね。」



俺達はそれでもゆっくりと北に向かう。しばらくするとシャーミリアが言う。


「ご主人様。前後に大勢の人間の気配がいたします。」


「なるほどね。最初の戦いのように両翼包囲作戦ってわけか。」


俺達は一旦その場所に止まって相手が来るのを待つことにした。


「止まれ!」


隊が止まる。


「俺達が動き続けていると挟み撃ちしづらいだろうからな。」


「ご主人様・・なんと寛大な御心でございましょう。」

「本当ですわ。グラウスにいる頃より素晴らしい成長をなさっております。」


シャーミリアとアナミスから・・なんか褒められちゃった。が別に寛大な心でやってるわけじゃない。


「二人とも何を言っているの?これは陽動作戦なのよ?ラウル様は出来るだけ時間をかけて敵の相手をしているだけよ。」


「わ・・分かっているわカララ!それでもご主人様の懐の深さを感じたから言っただけじゃない!」

「そうよ!だってあのラーズとの無謀な冬山修行の時から考えたら、今のラウル様は本当に変わられたわ!」


「まあ・・そうね。ごめんなさい。」


「まあまあみんなそんなに言い争わないで。戦いの最中だよ。」


「「「申し訳ございません。」」」


3人が俺に頭を垂れる。


「俺も少しは思うんだよ。相手だってこれまで血のにじむような訓練や戦いを経てきているんだ、せっかくだからきちんと戦いの場に来て戦わせてやりたいとね。」


「ラウル様そうだったのですね。陽動作戦のためだとばかり思っていました。」


「まあ9割は陽動作戦の為だけど。」


「わかりました。」


暫くすると北と南から数千の兵士たちが現れる。


城壁の上から人が顔を出した瞬間、一斉に俺達に魔法と矢が飛んでくるのだった。


「な。魔法だって一朝一夕で身につけたわけじゃない。長い年月をかけて習得したものだ使わずに死ぬのはかわいそうだろう。」


「その通りですね。」


カララがすべての攻撃を霧散させながら答える。会話を続けながら戦闘をしているのだった。


今度の兵士たちは少し作戦を変えてきたみたいだ。俺達の周りを取り囲み始める。


「どうします?」


「ああ。とりあえずせっかく何か考えたのだろうから、もう少し様子を見よう。」


「はい。」


すでに魔法は両翼と正面から飛ぶようになった。


すると城壁の上から上空に向けて煙玉のようなものが上がる。


俺達を囲む輪が一斉に突進してきた。


うおぉぉぉぉぉぉ


「動いたな。シャーミリアとアナミスは上空から攻撃してくれ。ファントムはそのまま振り回せ!」


「かしこまりました!」

「はい!」


「・・・・・」


キュィィィィィィ

ガガガガガガガガ

ダダダダダダダダ


M61バルカンとM134ミニガン、M240中機関銃の弾丸の前にまたも将棋倒しのように敵兵が倒れていく。その都度ガンガン俺に魔力が流れ込んでいるようだった・・


《あっついな・・》


俺もセルマ熊の上から12.7㎜機関銃を撃っていた。


「凄いぞ!今度の敵兵は引かないでどんどん出てくるぞ。」


城壁の上と南北からどんどん兵士がやってくる。


・・最初の戦いと違うな・・


殺しても殺しても兵士は屍を越えて次から次へと出てきた。バルギウス兵士の底力を見せつけるようにどんどんでてくる。どうやら北にも門があるようだった。


「なるほど・・玉砕覚悟か。あっぱれだ。」


するとアナミスの念話が入る。


《弾丸がきれました。》


《降りてこい。》


アナミスはすぐに俺のところに降りてきて新しいバックパックに替えて飛び立っていく。その直後にシャーミリアからの念話だった。


《ご主人様。弾が無くなりました。》


《降りてこい》


シャーミリアが瞬間で俺のところに来て、新しいバックパックに詰め替えて飛び立っていった。


そしてファントムが何も言わずに俺の隣に突っ立っていた。


「おまえもか。」


ファントムのバックパックも変えてやる。再びファントムがM61バルカンを振り回し始める。


うぉぉぉぉぉぉ

続けぇぇぇぇ

倒せぇぇぇぇ


なるほど・・怖い。相手の形相がもう死を覚悟した形相だ。


それが数千・・


こわいわぁ・・


「さて・・」


俺はセルマの背の上で12.7㎜重機関銃を撃つのをやめて地面に降りた。


「少し面倒になって来たし。」


手を前面に出して召喚のポーズをとる。


まあ・・このポーズしなくても・・説明はしないが。


ドン


俺の前に召喚されたのは数基の120mm迫撃砲だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 陽動とは。 どこの誰を引きつけようと企図しているのかな。敵の宗主国でしょうか。 どっちにしろこれは陽動ではなく同時攻略ですねえ。ヒャッハー 革命って意味が通じるんでしょうかね
[一言] あ~…ラウル君達は陽動だったんですね もう、普通に制圧の流れでも良いような感じですが… 「少し面倒になって来たし。」 ラウル君が面倒臭くなってきたようで、次回はまた制圧に拍車がかかりそうで…
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