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第188話 異空間の謎

「よお、エミル調子はどうだ?」


「まだ少しクラクラするがだいぶ落ち着いたよ。」


湖の儀式では二人に高位精霊が宿り、それからエミルとケイナは倒れこんでしまった。


長老がしばらく待っていればおちつくと言うので、俺達は彼らが目覚めるのを待った。


そして二人はそれほど時間を待たずに目覚めたのだった。


「ケイナさんもどうです?」


「私もだいぶ良くなりました。」


「二人とも出来れば朝までしっかり眠っていてほしい。完全に回復したら出発しよう。」


「ああ。」

「わかりました。」


「じゃあこれを!」


エミルとケイナの二人にミーシャ製ローポーションを渡す。


「すまない。」

「ありがとうございます。」


二人は休憩のため寝所に行った。



俺は長老に話しかける。


「長老様。エルフの里を見て回ってはいけませんか?」


「はい、かまいませんよ。それでは従者をお付けしましょう。」


「ありがとうございます。」


一礼をして一人の女性のエルフが入って来た。


「お客様にエルフの里をご案内差し上げて。」


「かしこまりました。」


スッと礼をして俺達を外に連れて行ってくれる。


議事堂を出てエルフの森に出ると森の中に多少の人の気配がする。


「森に誰かいますね?」


「はい、エルフ達が農作業から帰って来たようです。」


「そうですか農作業から・・。あの、この森の外が見たいんですが?」


「かしこまりました。」


エルフの後ろについて森を抜けていく。森の中にはエルフ達がたくさんいて俺達を珍しそうに見ていた。


「ここにエルフは何人くらいいるのです?」


「はい・・二カルスの森で獣人を守るためかなりの死者がでましたから・・里に逃げ込んだのは300人くらいでしょうか。」


「300・・そうですか・・」


凶悪な魔獣を従えた騎士たちに蹂躙されたらしい。二カルスの森のあちこちで炎の柱が立ち、たくさんのエルフや獣人そしてトレントが燃やされたようだった。


《それなのに、この空間の内部には全く被害が無いということか。どういう構造なんだろう?》


そして、改めて今戦っているファートリアバルギウスは厄介な敵だという事がわかる。



そのまま歩いて森を出ると畑が眼前に広がった。


「この素晴らしく美しい農場は皆さんで管理されているのですか?」


「はい。全員が携わっております。」


「凄く綺麗な畑だ。農業系の技術を持った人たちがいるという事ですか?」


「はい。土民がおりますので大地の事は彼らに聞くと詳しくわかると思います。」


「料理で振舞われた素晴らしい野菜はここの物ですか?」


「はい。その通りでございます。」


そうか。


なんとかサナリアの農業を復活させるためにも知恵を借りたいところだな。


「このエルフの里は二カルスの森とはまったく違う空間にあるようですが?」


「はい全く違う空間となっているようです。しかしこの土地には限りがあります。広大に見えるかもしれませんが1日ほどで土地の端についてしまいます。」


「土地の端?」


「はい。平坦になっており先は無くなります。見えない壁に遮られており外に出ることは出来ません。」


「不思議なところですね。」


「古の時代からあるそうで、長老でも物心ついたころにはこの空間はあったそうです。」


「そうなんですね。その土地の端を見にいってもいいですか?」


「1日かかりますが?」


「とにかくこの道をずっと行けばつくんですよね?」


「まあそうなります。」


エルフが言うには道には行き止まりがあるという事らしい。


「では俺とシャーミリアの二人だけで見てきます。」


「お二人で?」


「はい。すぐに戻りますのでお待ちください。」


「はい?すぐ?すぐに?え、ええ?」


「ファントム!カララ!アナミスはここで待て!」


「はい!!」


シャーミリアは黒い羽を生やし、俺の手を取って上空30メートルほどに浮かんだ。


「わ!」


エルフが驚いていた。


「じゃあちょっと行ってきますー!」


「お気を付けて!!」



フォン


シャーミリアの高速飛行に移る。


「上空から見ても美しい土地だな。まあ作られた土地という感じはするがな。」


「そのようです。できる作物は本物のようですが、遠くの風景などはどうやら反射のようです。」


「そのようだ。鏡に映った風景のようなものか。」


ブン


シャーミリアが止まった。


「ご主人様終端についたようです。」


どうやら行き止まりに到着したようだが、目の前に見えるのは普通の空間だった。ここからもずっと続いているように見える。


が・・・


俺はその空間に向かってそっと手を差し伸べてみる。すると水の波紋の様に空間が波打ち、それ以上手を入れる事は出来ない。


「本当に行き止まりだ。」


「左様でございますね。」


「ちょっと実験してみようよ。」


「何をでございますか?」


シャーミリアが可憐な顔を傾かせると、金色の縦まきロール髪がなびいた。


そして俺はワルサーP99を召喚した。9mm×19の弾丸を17発装填できるハンドガンだ。


パンパンパンパンパンパン


その空間に向けて銃を撃ちこんでみた。


すると・・弾は空間に止められ波紋を残しながら、こちらに弾を吐き出して来た。


ポトリポトリ


地面に弾丸が落ちていく。


「銃の至近弾が効かないみたいだ。これなら異世界の武器や魔法も十分耐えるってことか。」


「はい。不思議なものです。」


「そのあたりが確認できたからもういいや。帰ろう」


「かしこまりました。」


そして俺はエルフとファントム、カララ、アナミスの待つ場所まで数秒で戻る。



フッ



といきなり出てきた俺とシャーミリアにエルフは驚いていた。


「わっ!はぁっ!?」


後ずさっている。


「驚かせてすみません。」


「い、いえ・・」


「あの空に輝いている太陽は本物でしょうか。」


「はい。どうやらここは外の天候に左右されているようなのです。エルフでも詳しく知るものはおりませんが、二カルスの森に雨が降ればこちらにも降るようです。」


「なるほど。別空間だけど外から何らかの干渉があるって事か。」


「詳しくはわかりませんが。」


「長老たちが空間のゲートを開ける以外に外に出る方法はあるのですか?」


「ありません。もし長老の一人が亡くなったとしても、その瞬間他のエルフが長老をつぎますので開かなくなることはありませんが、長老長の決定と2人の長老の承諾が無ければ開きません。」


「そうですか・・わかりました。地面の土も本物のようですが、大地をどこまでも掘ってみたことはあるんでしょうか?」


「古くは分かりませんが、聞く限りではなかったかと思います。井戸の深さなら掘り進んで水を得ていますが。」


「なるほど。外から侵入されるのは二カルスの主が許した時だけ?」


「はい。」


だいたいこの空間の概要は分かって来た。おそらくは円形になっているんだろう。遠くに風景が見えているようだが、どうやら鏡面になっていて空間がどこまでも広がっているように見えるだけだ。天候は外世界に左右されるということだ。


「シャーミリア。間違いなくこれはエルフか、もっと高位の存在の創造物だな。」


「間違いないと思われます。私の推測ではありますがエルフではこの空間は作れないかと。更に高位の存在であるというご主人様の推測が正しいと思われます。」


「うむ。昔からあったのかな?」


「私も人魔の対戦以前はまだ幼かったため詳しくはわかりかねます。」


「シャーミリアが分からないとなると、ルゼミア母さんなら何か知っているかな?」


「その可能性は十分にあるかと。」


「わかった。」


このエルフの里のようなものが作り出せれば、転移魔法やインフェルノから民を守る事ができるんだがな・・そもそもこの地上に存在するものが作ったとも限らないが。人知を超えた何かの仕業かもしれない。いずれにせよ、ものすごい偉大な神の領域に踏み込んだものの仕業だろう。


もしくは・・神か・・


まあ分からない事を考えても仕方がないか。



「ありがとうございました。十分に見せていただきました。」


「かしこまりました。それでは今日のお宿までご案内させていただきます。」


「はい。」


そして俺達は泊めてもらう予定の家まで連れてこられる。


1本の木の前だった。


「え?」


「上です。」


木の上を見上げると立派なログハウス風の建物があった。


「こちらのはしごを使って登ってください。」


「あ、大丈夫です。じゃあファントム!お前はここで見張れ。」


エルフの里は魔獣もおらず安全なのだが、ファントムがログハウスに乗ったら底が抜けるんじゃないかと思って待機を命じる。


するとファントムは棒立ちに立ったまま遠くを見つめるだけだった。


「では案内ありがとうございました!」


「ごゆっくりと。」


俺とシャーミリア、カララ、アナミスはそのまま木の上のログハウスまで飛んだ。


「中も結構綺麗だな。外は丸太の家なのに中が凄く繊細なのがビックリだ。」


「本当でございますね。ラウル様こちらの調度品などとても美しいです。」


アナミスが指さした先にある戸棚のような家具がとても精巧な物だった。どうやらエルフは木の加工に関しても一流の腕を持っているようだ。


「それではご主人様。そろそろお疲れの様子ですこちらへ・・」


どうやらここには大型のベッドが置いてあるようだった。


「あれ?ベッド一つしかないね。」


「私奴たちには必要ございませんわ。ねえアナミス。」


「はい。」


なんか・・急激に睡魔が・・あれ・・アナミ・・


とふっ


俺はベッドに突っ伏して寝息を立て始めた。


スースー


「さあ、ご主人様のお疲れを取ってさしあげなくては♪」


「そうですね。シャーミリアそれではマッサージをして差し上げましょう。」


「ええ、お目覚めの場合ゆっくり出来ないでしょうから眠っている間に♪」


「ゆーっくりたーっぷり揉みほぐして差し上げますわ。」


「不敬かもしれませんが本当に可愛いです。」


「本当に不敬ですよ。」


「まあまあシャーミリア。とにかくラウル様を癒しましょう。」


「ええ・・」


3人の魔女の夜は始まったばかりだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・



朝起きるとシャーミリアとカララとアナミスが、ベッドの両脇に腰かけて微笑みかけていた。



「ご主人様。朝でございます。」


「ラウル様お目覚めはいかがですか?」


「うん!なんかねすっきりしてるよ!めっちゃしっかり寝たって気がする!なんでだろう?」


「それは良かったです。ねえアナミス。」


「はい。やはり休息は大事でございますから。そうですよねカララ?」


「そうね。」


3人は上機嫌にやたらとニコニコしている。



でも・・なんだろう・・ものすごくいい。体が軽いというかすぐにでも飛び出したいくらいだ。



俺は‥シャーミリアとカララとアナミスが軽く舌なめずりをしているのに気が付かなかった。



ログハウスを出ると木の下には、ファントムが昨日指示した姿勢のまま立っていた。


「ファントム!悪かったな!いこうか!」


体の軽い俺は飛びおりてファントムの肩に肩車をするように着地する。


ゴン!


「グエ!」


《硬って!》


ファントムが鋼鉄のように硬くて股間を強打してしまった。


ドサ


俺は地面に落っこちてしまう。


「う・・ううう・・」


「どうされました!ご主人様!」


「い、いやなんでもない。俺が間違って足を滑らせて落ちただけだ。」


少しジッとしていると3人の魔女が心配そうに見つめている。


《ふう・・落ち着いた。》


さてと、長老のところに行って二カルスの主を説得しに行くか!


俺達がエルフの森を歩いていると、またそちらこちらからエルフがのぞき見をしていた。


「いやぁどうも!おはようございます!」


「おはようございます!」


「おはようございます!」


今日は返事が返って来た。昨日は挨拶をしそびれていたから気分がいい!


今日はやたら体が軽かった!エルフ達に挨拶をしながら歩いて行く。


道の向こうからエミルが駆けつけてきた。


「ラウル!」


「おおエミルどうだ?」


「すこぶる調子いいよ!何ていうか力がみなぎる!」


「ラウル様おはようございます!」


「ケイナさんも!お元気ですか?」


「はい。なんかスッキリしました。なんでしょう・・集中力とでも言うんでしょうか?何かが変わったようです。」


どうやら上級精霊の加護があるらしい。


「ラウルもなんだかつやつやだな?なんかあったか?」


「ん?そうか?つやつやかな?自分ではわからないな。」


まあこれだけ体の調子がいいんだ!つやつやでもおかしくないだろうな。


「それじゃあ二カルスの主を説得して基地の設置の許可をもらうとするか!すぐ出発しよう!」


「おう!」


「はい!」


議事堂の前でラッシュ長老が深くお辞儀をしていた。

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[一言] このエルフの里のようなものが作り出せれば、転移魔法やインフェルノから民を守る事ができるんだがな・・そもそもこの地上に存在するものが作ったとも限らないが。人知を超えた何かの仕業かもしれない。い…
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