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第183話 森の木をずさんに扱ってみる

一夜明け森の奥に進む。


やはり森の地表付近にはあまり日光が届かず仄暗い。


森の中に開けたところが無いか探すためにストライカー装甲車で進むが、木が邪魔になり思うように進めなかった。


「うーん。やっぱダメだな車じゃ進めない。」


「それはそうだがラウル・・このあたりでヘリを出すわけにはいかないぞ。木が邪魔で飛び立つことはおろか召喚する事も出来ないんじゃないのか?」


「そうだよな・・」


するとシャーミリアが言う。


「あの・・ご主人様。もし木が邪魔なのであれば、必要な範囲の木を切り倒してはいかがでしょう?」


彼女がすまし顔で提案してくるが・・このあたりの木々は胴回り20メートルから30メートルはある。


うーん。


確かにスーパースタリオンなら30メートルちょっとだ。3本も倒せばエミルの腕なら離陸出来るかもしれない。


「えっとエミル。このあたりの木を適当に倒して、スーパースタリオンを召喚したら垂直に飛び立つことは可能か?」


「は?木を倒すって・・太さ30メートルはあるぞ・・あれを?」


「なんとかなるんじゃないかな?」


「木を切ってもらえれば、やってやれない事は無いかもしれないが・・森が怒りそうだ。」


「そういえばこの森には意志があるって言ってたもんな。」


二カルス大森林は普通の森とは違う。いくら俺達が精鋭部隊とはいえ万が一があるかもしれなかった。それと人の土地に来てあまり大胆な事をするわけにもいかない。


「ラウル様。」


「なんだいカララ。」


「この木の頂点付近に私が足場を造ればよろしいのではないでしょうか?」


「この木の上に?でも木の頂点は細くて折れやすくないか?」


「数百の木で支えるのはいかがでしょう?」


「数百の木で支える?よくわからないけどカララはそれなら行けそうな気がするのかい?」


「はい。」


「いやラウル・・歩いて行くって言う手もあるぞ。」


「エミル・・作戦行動中だからゆっくりもしてられないんだよ。それだと他の部隊と足並みがそろわなくなる。」


「それもそうか・・」


「よし!カララの案で行こう!全て任せる!」



決めた直後すぐ動いた。


俺はシャーミリアに抱えられて飛んで上昇していく。ファントム、エミル、セルマ熊はカララが糸で吊るしスルスルと木の上に、アナミスは自分で飛んで上がっていく。


木の上に出たら空は快晴だった。太陽が東から登り世界を燦燦と照らしている。


カララは一部の木と木の間に小さく網をはり俺達をそこに降ろしてくれた。全員が250メートルくらいの高さに浮かんでいる。


「絶景絶景!」


「ホントだな。」


「ラウル様。少々おまちくださいね。」


「ああ。」


カララが木から木へと飛び移り糸を張り巡らせていく。約100本くらいの木を選んで円形に糸を結び、その円の内側に糸を流し込んで大まかに編み込んでいった。


そしてその円の中心の木の先端にカララが立った。


右手一本を上にかざす。


ギュウウウウ


木の先端がすべてカララに向かって近づいていく。250メートルもある木々がしなってカララを中心に曲がっていくのだった。


木の先端が集まり網が引っ張られ土台となる。カララを中心にかまくら状に木が集まっていた。


「おお!凄い!あっというまに発着場が出来上がったぞ!」


「カララさんは凄い器用だな。編み物とかしたら上手そうだ。」



《・・・カララの編み物?うん確かにセンスは良さそうだし良いかも。》


《あら?ありがとうございます!では今度ラウル様のお洋服を編んで差し上げましょうか?》


カララが俺の声を聞き念話で語り掛けてくる。


《そういう事もできるのか?》


《ラウル様がグラドラムに帰っているあいだに、カトリーヌが教えてくれました。》


《カトリーヌが?へえ・・彼女にそういう趣味があったとは。》


《器用なんですよ彼女。》


《確かに彼女にその趣味は似合ってるな。》


《はい。》


念話で話をしているあいだにカララはヘリコプター発着場を完成させていた。



「イテテテ!」



「ん?エミル何か聞こえなかったか?」


「いや・・俺には何も。シャーミリアさんは?」


「聞こえました。」

「私にも。」


シャーミリアとアナミスにも聞こえたらしい。イテテテって。


「・・・・・・」


「気のせいということにしよう・・」


「はいラウル様。それでは準備が整いましたのでどうぞ。」


俺達はカララに引っ張られ、その糸で作られた屋上ヘリポートのような場所に降りる。


「ビルの屋上ヘリポートみたいだな。」


「本当だ・・Hのマークを書きたくなる。」


「まったくだ。」


ヘリポートの上で俺は手を前面に出す。


「ほっ!」


ドン!


ヘリコプターのスーパースタリオンを召喚した。この網の土台は安定していて水平にヘリを置くことが出来るようだった。


「じゃあ行こうか。」


みんなでスーパースタリオンに乗り込んだ。


ローターが周りはじめ機体が20メートルほど浮かび上がった。カララがそれを見計らって糸を外し全て手の中に取り込んでいく。糸を外された木々は反発してブン!とヘリポートを中心に外側に広がった。


バイン!

バイン!

バイン!

バイン!


100本の木が反動で元に戻る。


「いったっいわ!」


空耳が聞こえる。


「ん?また何か聞こえたよな?」


「はいご主人様。」

「そのようですね。」


するとカララがポツリと言う。


「あの・・私が糸で結んだ木の中に、明らかに反発する木が1本ございました。」


「それを無理やり引っ張ったの?」


「ええ時間が惜しいと思いましたので。」


「そうか。そうだな、時間がもったいないもんな。」


1本反発した木があったのか・・それは申し訳ない事をした・・



「まあいいか!シュッパーツ!」


ローターの音を立ててスーパースタリオンが颯爽と南に向かって飛び始めるのだった。



しかし森は果てしなく続いていた。3時間1000キロほど飛んでいるが一向に森が終わる気配はない。


「ずいぶん広いんだな・・二カルス大森林って・・」


「そう、そしてこのあたりが森の中心だ。」


「そうなのか?ほかと変ったところはないように見えるが・・わかるんだ?」


「間違いない。このあたりにエルフの里の入り口があるはずだ。」


「まあエミルが言うんだから間違いないんだろう。里には上空からは入れないんだっけ?」


「そうだ、空の魔獣の侵入も防いでいるからな。」


「じゃあ降りよう。」


「分かった。今度はどうやって・・」


「はいこれ。」


俺はパラシュートを2つ用意して一つをエミルに渡した。


「つけるのか?」


「早く付けた方がいいぞ。」


「お?」


「じゃあカララやっちゃってー。」


「かしこまりました。」


シャキ


バラッ


ぱかっ!


1000メートルほどの空中でスーパースタリオンが細切れに分解された。


「えーーーーーーーーーーーー!」


「おいエミル。いつまで操縦桿握ってんだ?捨てろよ。」


「うわぁぁぁぁぁ」


飛んでいるところで、いきなり空中に放り出されてエミルがパニックを起こしている。


重力に惹かれ下に落ちていくのは俺とエミルとファントムだけ。セルマ熊はシャーミリアが飛びながら吊るして降り、カララはアナミスにつかまれて飛びながら一緒に落下していく。


バサッ!


俺はパラシュートの紐をひいた。


「エミル―!パラシュートを開けよー!」


俺に遅れる事10秒後下の方でパラシュートが開いた。エミルが先にパラシュートで下に降りてもファントムが護衛するため魔獣襲撃の心配はない。


まてよ・・ファントムって1000メートル落下しても大丈夫なんだよな?



そして俺がエミルのパラシュートが落ちたところから、100メートルほど離れたところに落下する。


《アナミスとカララはそのままエミルの所に降りてくれ。》


《かしこまりました》


《シャーミリアは俺のところへ。》


「はい。ご主人様。」


「もういたのか。」


既にシャーミリアはセルマ熊と一緒に俺の傍らにいた。どうやら俺の後を追いかけて落下して来たらしかった。


「よし!セルマ俺を乗せてくれ。」


うぉん。


俺はセルマの背中に飛び乗った。


「走ってエミルの所へ。」


ダッダッダッダッダッダッダッダッダッ


凄いスピードで走り出す。さすがは森のくまさんだ・・木を器用にかわして最短距離で走っていく。


「やっほーい!」


気分がいい。


やっぱ熊はいい。



全員がエミルのいる場所に集合した。


ファントムはエミルの傍らに立って相変わらずどこか遠くを見つめているようだった。


《やっぱり1000メートル落下してもファントムは大丈夫なんだな。どうなってんだろ?》


そしてエミルからは少し魂が抜けてしまっていたようだった。心なしか白くなっている気もする。


「エミルどうしたんだ?風邪でもひいたのか?」


「・・・ひいてねぇよ!じゃなくて!やる前に言ってくれって!臨死体験しそうになったじゃないか!」


「ああ先に言えばいいのね。」


「先に言っていいってもんでもないけど、とにかくだ!とにかく言ってからやれ。」


俺は戦闘糧食のチョコレートを召喚してエミルに差し出す。


「ほら。チョコレート。」


「ああ、ありがと・・じゃねぇよ!これで誤魔化すなよ!俺チョコレート好きって言った事あったか?」


「じゃあ俺が食う。」


「食わねえとも言ってねえよ!」


エミルは俺から戦闘糧食のチョコレートを奪い取って食べはじめた。


「どう?落ち着いた?」


「ふう・・まあ少しは。とにかくやる前に頼むぞ。」


「わかった。」


そして俺は森を見回す。


「エミル・・このあたりにエルフの里があるのか?」


「・・そうだが・・すぐに見つかるものでもない。」


「そうなのか?」


「ファートリア・バルギウス連合が森の魔獣を使役して攻めてきた時に、里に入って全てを封鎖したはずだからな。とにかくこのあたりをウロウロと歩くしかない。」


「森の魔獣を使役か・・そして確かに薄暗いな。これで真昼ってのがな・・」


「ああ。とにかく歩こう。」


「わかった・・じゃあみんな歩こ・・・」


ズゥウウゥウン


セルマ熊がいきなり1本の大木に張り手を喰らわした。


「どうしたセルマ?」


ズゥウウゥウン


セルマがはり手を喰らわせている木は滅茶苦茶太かった。胴回りは40メートルはありそうだ。


「セルマ?」


ぐるるるるるるるる


ドガァァ


最高に強烈な一発を喰らわせた時だった。


「いったいわ!!なんでワシの足をなぐるのじゃ!?おかしいじゃろ?バカ熊!なんでレッドベアー風情がこんな力をもっているんじゃ!」


ズズ

ズズズズズズ


バスゥ――


300メートルはあろうかという木の根っこが、土を大量にまき散らして抜け足の様になった。


「セルマ!ストップ!」


くぅーん。


そして俺達の頭上めがけて20メートルはあろうかという根っこが降りてくるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 森の木をずさんに扱ってみる 余談ですが、最初間違えて『吸ってみる』と読んでしまいましたw …で、本題に戻りまして…確かにずさんと言えば…ずさんですね… 無理やり頭の毛を頂点で纏めて引っ張ら…
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