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第18話 メイドと秘密の射撃訓練

この世界に来てやっと俺の心を打ち明けられる人ができた。


マリアだ。


母親が家から連れてきたメイド。


俺はもっと彼女にうちあけることにした。


次の日は朝からマリアと一緒に出かけることとなった。イオナには話を通してくれたらしい。俺はルナ山で出したP320とミリメシの缶をショルダーバッグに詰め込んで出かけた。


すれ違う人に挨拶しながら、マリアについて郊外の方に向かった。2時間ほど歩き続けると森が現れた。


「ここなら、民家もないですし滅多に人も来ません。」


マリアが言う。


「魔物はいないんですか?」


「魔獣のファングラビットか、トレントぐらいです。人にはあまり近付きませんし、私の火で追い払うことができますから大丈夫です。」


「それでは行きましょう。」


俺とマリアは2人で森に入った。木もまばらに生えており日光も差しこむ明るい森だった。少し歩いていくと沢がありそれを越えて進んでいく。


すると少し開けた場所に出た。


「マリア、あの昨日頼んだものを持ってきてくれましたか?」


「はいこちらです。」


マリアはスプーン2本をカバンから取り出した。


「ちょっと枯れ木を集めて欲しいのですが。」


二人で枯れ木を集める。焚き火が出来るくらい木を集め、そのまわりに石をしきつめた


「あの。火をつけてもらえますか?」


「はい。」


焚き火が灯る。俺は召喚したアーミーナイフで缶詰を開ける。ひとつめの穴が空いたら少しずつずらしこんで、まわりにあなを空けていき、ひと回りして蓋が外れた。中にはきちんと炊き込みご飯が入っていた。


「これが食べ物なんですか?」


「うまいですよ。」


俺はもうひとつ同じ炊き込みご飯のミリメシ缶を出した。


「不思議なものですね。」


いや…俺にとっては、あなたの火魔法の方が不思議でならないっすよ。


同じように開けてふたつを火のそばに並べた。


「少しまってください。」


しばらく2人でじっとみつめながらまった。いい感じにあったまったみたいだ、そろそろかな。


「じゃあこの細い枝を2本持ってください。缶は熱いので少し冷ましましょう。」


持てるくらいになったので、俺が見本で食べてみる。ん、美味い!飯だ!ごはんだ!味飯だ!


「マリアもどうぞ。」


「食べて大丈夫なのですか?」


そりゃそうか…いきなり出てきたやつを食えって言ってもなあ…


「ええ大丈夫です。こんな感じです。」


俺はもうひとくち食べてみた。それを見たマリアはスプーンで一口食べた。


「えっ!え!え!?」


「どうですか?」


「とてもおいしいです!この粒々となにか…食べたことがない味です!」


「醤油味のごはんというものです。炊き込みご飯といいます。」


「この鉄のなかには、どうやって入れたんでしょうか?」


「うーん、それは僕にもよくわかりませんが、工場という場所で作られます。」


「すごいですね。」


2人で炊き込みご飯を無心になって食べた。

さてと…腹ごしらえもしたし、そろそろ始めますか。


「じゃあ始めますか。」


「なにをですか?」


「射撃の練習です。」


俺は空き缶を10メートルほど先の離れた木にひっかけた。


「射撃訓練とは、なにをするんですか?」


「まあ、見ていてください。」


俺は家から持ってきたP320サブコンパクトを両手でかまえた。手が小さくてギリギリだが、なんとかグリップを握って引き金に指をそえた。意識を集中させる。


パン!


カィン!


と缶を跳ね飛ばす事ができた。よし感覚は鈍っていないようだ。


「なるほど!それが、シルバーウルフを倒したんですね。」


マリアが驚いた様子で聞いてきた。


「そうです。マリアもやってみてください。」


「怖いです。私でも出来るんですか?」


「はい。まずはお教えします。」


俺はそう言ってまた空き缶を10メートルほど離れた木に引っ掛けた。そしてマリアに銃を渡した。


「まずは右手でここをこう握ってください。そして姿勢は右肩を少しおとしてこことここのでっぱりを覗いて、あの空き缶にあわせてください。よく狙って下さいね。ピタリとあったらここを後ろに引いて下さい。」


ひととおり説明をして、一歩さがった。


マリアはじっと缶を睨んで集中した。息を飲んで引き金をひいた。


パン!


・・・・・


当たらなかった。


マリアはびっくりして銃を落としていた。


「あの?なにも起きませんでした。」


「いえ当たらなかっただけです。」


俺はもう一度マリアに銃を握らせた。


「集中してみてください。」


「はい。」


また構えなおしたマリアの腕の位置や、構えなどをそっと手で修正した。集中した後マリアは引き金をひいた。


パン!


カィン!


当たった。


「凄い…」


マリアは飛んだ缶を見つめてつぶやいた。


「これはまだ近いので当てやすいです。もう少し離してやってみましょう。」


俺は20メートル先に缶をおきなおした。俺はまた銃を構えた。


パン!


カィン!!


当たった。ただまだ幼い俺の体は連発して撃つことは出来なそうだ。きちんとグリップを握ることが出来ていない。


「マリアももう一度やってみてください。」


「はい。」


またマリアが狙いをさだめた。


パン!


当たらなかった。


それはそうだ簡単に当てられたら俺の立場がない。俺には十数年のサバゲの経験もあるし、毎年のように観光でハワイに実弾射撃をしに行ってたからな。マリアに簡単に当てられたら、ちょっとショックだ。


「あのもう一回やってもいいでしょうか?」


「どうぞどうぞ。」


わかるー!やっぱ楽しいよね!マリアもわかってくれたみたいだ。


「じゃあ2回連続で撃ってみてください。」


「はい。」


パンパン!


また当たらなかった…


「あの…」


「ええ、ええ。いいですよ!でも待ってください。」


と、マリアから銃をうけとった。しゃがんでバッグを敷いて、その上に9mm弾を12発呼び出した。マガジンを取り出し弾を詰め込む。


「はい、どうぞ。」


俺はマリアに銃を渡した。マリアはまた銃を構えた。


パンパン!


パンパン!


ちょっと姿勢をなおして


パンパン!


カィン!


「あ、当たった。」


「次はもっと離れてやってみますか?」


「いいんですか?」


俺は缶をさらに遠く30メートルくらいの距離においた。


マリアはじっくりと構えて撃った。


パンパン!


パンパン!



そして結局一度マガジンは空になり、もう一度フルで銃弾をつめこんだ。


パンパン!


パンパン!


あーこれはもう一回補充かな?と思ったときだった。


カィン!


当たった。


「マリア、感触はどうですか?」 


「楽しいです。」 


マリアの目が楽しい!という気持ちで溢れかえっているのがわかった。この目…完全にハマってる人の目だ!


「ですよね!」


そうだよね!楽しいよね!当たり前だよね!銃って素晴らしいよね!


それからしばらく2人でマリアの射撃練習をしていたが、マリアに聞いてみたい事がでてきた。


「あの。マリアちょっといいですか?」


「なんでしょう?」


「火魔法を使うとき、火を熱くしたり大きくしたり出来ますか?」


「ええ、魔力を強めれば熱く大きくできます。」


そうか…じゃあ銃を撃つとき魔力を込めたらどうなるかな?


「あの、銃を撃つとき魔力を込めることはできますか?」


「はい、やってみます」


マリアはまた構えなおした。そして撃つ瞬間に手元が、ボゥと光った。


バシュ!


音が違った。射線がぶれて缶の下あたりにあったスイカくらいの石に当たった、その時だった!


ボズゥン!!!


と石が飛び散った。ハンドガンの破壊力ではなかった!


「マリアっ…すごいで…」


振り向いた時にマリアが崩れ落ちるところだった。パタリと倒れてしまった。


魔力切れだった…


「1発で…」


とにかくまずい!ここは安全な森の中とはいえ、小さな魔獣もいるらしい。とにかくマリアを少しずつひきずって木にもたれかけさせた。服のひもを少し緩めリラックスできる状態にした。


さらにハンドガンをもう一丁呼び出した。

ベレッタ92のコンパクトMだ。同じP320を呼び出してしまうとどちらが先に呼び出したかわからなくなってしまうので、あえて違う銃をよびだした。更に両方ともフル装填した。


大丈夫だルナ山でシルバーウルフを倒した経験もある。だがあれはアクシデントだった。あの時・・本当に死にかけたんだ。


シルバーウルフの襲撃にあい騎士達が余裕で退治しているのをみて、一匹くらいなら遠くから撃てばわからないだろうと思い、衝動に駆られ岩陰から狙おうとして岩陰に走った。誰も見られる事は無いと思っていた。走って岩陰に隠れ後ろを振り返ったらシルバーウルフが駆け寄ってきていた。


パニックに落ち入りながらも、既にバッグの中で握っていた銃を取り出し両手で無我夢中で撃ったのだった。


1発は胴体、1発は脳天に当たった。


完全にまぐれだった。騎士達が余裕で倒すのをみて、なんか出来そうだと思ったが本当に危なかった。たぶん怪我か死んでたと思う。異世界は舐めちゃいけないと分かった。サバゲとは違うのだ本当の命がかかっているのだ。


今もその状況だ、3時間くらいは目が覚めないだろうし、起きてもだるくてまともに動けまい…。とにかく俺が守らねばならない。


俺は警戒しながらマリアの前に立ちはだかっていた。


しかし…さっきのはなんだ…マリアが魔力をこめたら尋常じゃないくらい威力が上がった。ホローポイント弾だからとかそういう話じゃない、普通のフルメタルジャケットだ。それなのに岩がスイカみたいになったのだ。だがマリアは1発で魔力ぎれをおこした。マリアの魔力量がどの程度あるのかは知らないが、異世界の武器がかなり魔力を消費することは間違いない。


試すにも危険性が伴うのだ、実戦では使い物になどならないだろう。相当な魔力量でなければ魔力はこめられない。


「魔力射撃…しばらくは封印だな…,。」


まあ、俺は魔力の込め方もわからんし。モーリス先生は魔力が増えてると言っていたけど、どのくらい増えたのかもわからない。弾丸呼び出すのはわけないんだが、ひょっとして前世のものをこちらの人間が扱うのはかなり難しいのかもしれない。


ぐるぐると思考を巡らせている3時間ぐらいのあいだに、一度ファングラビットらしい魔物が50メートルくらい先を通過したが、こちらに気がつく事は無かった。まだ、マリアは起きていない。気を失ったとき太陽は真上にあったから、体感ではあるが3時か3時半ごろだ。


緊張感で疲れてきた。がここで気を抜くわけにはいかない。すると1匹のラビットが不意に横からきた!


パンパン!


よし!仕留めた!


すると後ろから声が聞こえた。


「ラウル様?」


「マリア!気がつきましたか?」


「私は魔力切れをおこしてしまったのですね。守らねばならない立場だというのに申し訳ありません。」


「いえ、僕が知らずに無理を言ったからです。」


「そんな事は…ありません。」


「いえ僕のせいです。でもほら!ファングラビットを倒しましたよ!」


「ラウル様…必死に守ってくださったんですね。」


「はいそれは必死でした!」


「でもそれはただのウサギです。」


ああ…穴があったら入りたい。


「でも、ありがとうございます。ラウル様は命の恩人ですね。」


「マリア、立てそうですか?」


「はい、なんとかなりそうです。」


少しフラフラしながらも、とにかく2人で森をでた。ショルダーバッグには装填済みの銃が2丁入っているため、なかなかの重さがあるはずだが、それほど重さは感じないようだ。


少し歩くと街道がみえたので、道端でマリアを休ませることにした。1時間ほど休むとマリアは動けるようになった。俺たちはゆっくり家に向かって歩き始めたのだった。


歩く途中で。後ろから作物をつんだ荷台を引いたロバをつれて農家さんがやってきた。


「あれー、領主様のお坊ちゃんでねーの。」


俺は農家のおじさんに頼んで、マリアを荷台に乗せてもらった。マリアは断って自分で歩くと言ったが無理矢理乗せた。


日が沈みかける前に家に着いたのだった。


森の狩りは細心の注意が必要だな…



次に行くときには気をつけようと思うのであった。

次話:第19話 戦争勃発

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