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第15話 地元に帰る事になりました

魔法の存在期限がある。


魔法で作られた物や召喚されたものは、魔力によって存在する期限があるようだ。


俺の場合いつまでもつの??

とにかく解明したかった。


俺は魔力の効力を調べる作業をしていた。


弾丸を呼び出してから消滅するまで毎日、正の字を書きながら確認していった。


「結局、弾丸が消滅するまではきっかり30日かかったな…」


弾丸をだした30日後の、呼び出した時間あたりで、スッと手品のように手の平の上から消えてなくなったのである。モーリス先生がいうように魔力量に関係しているならば、魔力の込め方がわかれば長持ちさせられるのだろうか?


次の日、出した弾丸はその30日後に、2日後に出した弾丸もその30日後に、結果5日分5発の弾丸はすべて同じ30日後きっかりに消えた。サバイバルナイフと乾パンについても1つずつ出して試したのだが、ほかのものでも結果は30日後で同じだった。


「なんか意味でもあるのかな?」


大きさも素材も違うものでも、きっちり30日で消えてしまう。とりあえずそういうものなのだろう。とにかく安心した。誰かが取ったんじゃなかった。


「俺の魔力で出したものは、存在期限30日か…考えながら使わないといけないな。」


そして…それに合わせたように、1か月間モーリス先生は毎日教えに来た。おかげで魔法の事もだいぶ理解したが、俺が他の魔法が使える事は無かった。本当は今が魔法の属性が決まってくる年齢なのだそうだが、何をしても俺は他の魔法は使えなかったのだ。


俺が唯一使える召喚魔法については未だ誰にも教えていない。たぶん理解してもらえないし、異世界から来たことが知られてしまうかもしれない。



今朝もモーリス先生は来た。魔法が使えない俺に気遣いながら、毎日座学を教えている。


「イオナ様、この子は神童かもしれんぞぃ!」


「まあ!やっぱり普通じゃないと思っていたんです。」


「ものすごい理解力と応用力があるのじゃ!」


「ラウル様素晴らしいです!」


モーリス先生とイオナ、マリアの絶賛の嵐だ。皆俺が魔法を使えないからってそんなに気を使わなくてもいいよ。


3人で、とにかく俺が勉強ができることを褒めたが、前世の高校で俺は理系だったから復習するようなもんなんだよ。結局、授業は小学生レベルは最初の3日くらいで終わり、1ヶ月でなんと高校レベルまできていた。


前世で高校生の時は平凡な成績だったのだが、いまは覚えるのに必死だったのと、この若い脳の吸収率がめっちゃ高くて、びっくりするほど飲み込めた。もしかするとだが魔力が増えて知力が上がったと推測している。武器のデータベースもかなり巨大化しているしな。


「王宮学院で学ぶ内容も覚えてしもた。まだ4才じゃぞ!それもひと月でじゃ!大賢者も夢ではないぞ!」


あら?この世界での最高学歴は、前世での高校レベルなのね…でも先生は割と本気で褒めてくれてるのかな?


「毎日夜まで勉強しているものね。ラウル偉いわよ。」


すまん…イオナよ…気を使わせて悪いが、夜は趣味の武器データベースの構築なんだよ…。脳内にインプットしたらまた描いて、溜まった紙は捨てて、カモフラージュ用にかいてるのは、モーリス先生から習った復習を書いて見せているだけなのだよ。


「私も街に羊皮紙を買いに行くので、店主に顔を覚えてもらってます。」


マリアも気をつかわなくていいって…


ただ高校の復習してるだけなんだよなあ…。ただ、モーリス先生は教え方が上手くて高校の時にこの先生に巡り会えていたら、人生変わっていたかもしれんが。


モーリス先生は魔法が使えないことは気にするなという。


「これだけの魔力が備わっているのだ、焦ることはないぞ!わしが初めて会ったときよりも、かなり膨大な量の魔力が増えてるからのう。まったく案ずることはありゃせん。」


「ですってラウル。一安心ね。」


イオナの方が心配してそうだ、俺はまったく心配してない。ただ便利な魔法が使えないのが残念だよ。水くらい出したかった。


「ありがとうございます。そのうち魔法を使えるようになったらいいなと思います!」


とりあえず元気に返事しといた。


「今日はまたパイを焼いたんです。皆さんで是非味見してみてください。」


マリアが話題を変えるように言った。するとその時、外がにわかに騒がしくなった。蹄の音や人の話し声だ。


「あら?お父様が帰っていらしたわよ。」


玄関に行く間もなく、ガシャと音がしてグラムが帰ってきた。


「帰ったぞ!」


皆で、エントランスに向かった。


「おお!みな元気にしてたか?」


「ええ」

「はい!」


俺とイオナが返事をする。


グラムはいつも勢いがあるなあ。


「これは!モーリス様もお元気そうで何よりです。」 


「グラム殿も息災のようじゃな。フォフォフォフォ」


「ラウルはどうですか!」


グラムはいきなり話始めたが、イオナが止めた。


「あなた、お疲れでございましょう。ちょうどパイも焼けたようですし、ぜひこちらへ。」


ひとまず全員でリビングに戻った。



全員が座ったところで、パイとお茶がふるまわれた。


「お、これは美味いな。セルマが焼いたのか?」


「いいえ私でございます。」


マリアが言う。


「マリアがか?上手くなったな。」


「いえ、まだまだでございます。」


モーリスが割ってはいる。


「本当にうまいわい。」 


「ありがとうございます。」


マリアが照れながら言う。


「ところでモーリス様!ラウルはどんな感じでしょうか?」


グラムがさきほどの話をした。


「うむ、まさに神童というやつじゃろな。勉学の飲み込みが素晴らしいのひとことじゃ!」 


「宮廷の文官にもなれるほどでしょうか?」 


「楽にな。まさに天才じゃよ。」


「ラウルよかったな。やはり俺の思ったとおりおまえは天才だった。」


グラムが凄くよろこんでいる。


「でも、すみません。まだ魔法が使えません。」


「それがどうした。魔法など使えなくても充分頭がよいではないか!剣士や魔法使いならば戦場に出なくてはならない時がくるが、文官や学校の先生なら戦場になど行かなくてもいいんだぞ。」


「はい。」


「まあ、おまえが進みたい道は自分で自由に選べばいい。貴族にだって縛られなくてもいいんだ。」


ん?大丈夫なの?後継なんじゃないの?


そして…俺に言わせれば貴族万歳でしょ。ひもじい思いをしなくてもすみそうだし贅沢な暮らしができてるしさ。しかしグラムは本当に俺のことを考えてくれているんだな。いい親父だ。


「わかりました。」 


「ところでグラム殿、西の地はどうだったかの?」


モーリスが話しを変えてたずねる。


「はい、西の山脈や樹海が騒がしく村には魔獣が降りていました。被害にあった地区は冒険者の数も少なくなかったのですが、ギルドにも要請して冒険者を集め、領軍の兵と協力体制をとりつつ収束に向かっております。」 


「それはよかったの。冒険者どもの懐も潤うじゃろうて。」


「まったくですな。しかし何故あんなに山や森がざわついていたのかが不可解でした。」


「山や森が騒いでおるのか…帝国もそれが原因で軍備を増強しておるのかもしれんと思っていたが、被害は我がユークリット公国だけと聞く…げせんのう…」


「まずは西の領主様たちも引き続き調査を行うとの事でしたが、私もどうも納得がいきませんでした。」


「宮廷はなんと?」


「冒険者と領軍の連携が終われば下がってよいと、あとは西の領主たちに任せて自領に帰るようにとのことでした。」


「また、勝手な言い草よの」


「いえモーリス様、私めには過分な大役かと存じます。」


「まったく、グラム殿は欲のない男よのぅ。フォフォフォフォ」


「モーリス様に言われたくありませんぞ。」


「フォフォフォフォ」


なるほど、この2人は師弟関係のようなものなのかな?わけあって王宮の中枢から出た人と、それを慕う武人といった感じだ。信頼関係の強さがみえる。


「と、いうわけでイオナよ、ラウルを連れてサナリアに帰るぞ!」


「本当ですか!?うれしいわ!1年以上王都にいて息が詰まっておりましたの。」


「おまえには苦労をかけた。さっそく出立の準備にとりかかるとしよう。レナードにも皆に準備をさせるように伝えてある。」


「すでに領にはカリウスに書簡をしたため届けさせております。」


「イオナは相変わらず手際がいいな。そしてモーリス様におきましてもラウルをこのように導いてくださるとは、なんとお礼を申し上げてよいか…」


「そんなものおぬしとワシの仲じゃろう、気にするものではないわ。それにしても良かったのうラウルよ。王都は窮屈だったであろう、サナリアは良いところじゃし思いきり遊ぶ事ができるじゃろ!また学びたくなればワシの元へくるがよい。」

 

「えっ、先生と離れるのですか?僕はまだ…」


「いやおぬしは十分すぎるほど知力にたけておるようじゃ、まだ4才なれば4才なりの楽しみや遊びも大事なのじゃぞ。なにごとも経験じゃ。あちらに着いたら教えた文字で手紙でも書くがよいぞ。」


「先生から学んだ事は反復して勉強します。」


「そうじゃな。」


うーむ?先生から学べなくなるのか…でも人生経験も大事っていってたし、違う土地には是非行ってみたい。もしかすると他の魔法が使えるようになるかもしれんしな。田舎ってどんな感じなんだろ?まあ行ってみりゃわかるか。


そして、その日そのままモーリス先生は帰ってしまった。親子水いらずにしてくれたのかもしれない。


それから1週間後に出発する事になった。フォレスト家3人のほかレナードとセルマ、あと4人のサナリア兵が帰郷の時を心待ちに準備をすることとなった。俺もちょうど隠していた武器が消えて心置きなくサナリアとやらにいける。


サナリアまでは馬車でやく2週間近くかかるそうだ。危険な場所は徒歩の護衛が交代でいるので、それも加味すると3週間との事だ。きっと新幹線なら1日でつくだろうな…。あのケツの痛みに耐えて3週間…ケツをダメにしそうだな。


魔物も見れるのだろうか?怖くないのかな?まあこちらには騎士がラウルとレナードの他2人もいるし、魔法使いもいるらしいから大丈夫だろう。


とにかくサナリアに行く前に、モーリス先生にはもう一度挨拶していきたいな。本当は召喚魔法についてもう少し聞きたいと思っていたのだが、聞けずじまいになりそうだ。


新しい土地にいったら、もっと大きい武器をだしてみれないだろうか?武器を隠す場所をいちから探さなくてはならないしなあ…そんな事をひとり考えながらも、毎日武器のデータベースを拡充していこうと思う。始めてから1日も欠かしていないしな。あちらについてからも日々精進しよう。


でも3週間の移動分の食料と、水って結構な量になりそうだ。あ、水はイオナが出せるのか…つくづく便利な魔法だよなあ…いいなあ…


異世界に来てから記憶がよみがえり今


すでに季節は夏になっていた。


この世界の夏は暑いのかな…エアコン無いし…

次話:第16話 マリアの苦悩 ~マリア視点~

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― 新着の感想 ―
[一言] 武器隠していたら、いざと言うとき速やかに使えないということ考えているのかな。
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