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第148話 セイレーンの魔女

蜘蛛の糸をふり切って巨大な氷のミサイルがふたたび襲いかかってきた。


「回避!」


「はい」


シャーミリアは俺を乗せながらジグザグに飛ぶ。氷の槍はデカイがかなり正確に俺を追ってきているようだった。レヴィアサンの目がどうやら俺を追っているらしい・・


なにか恨みでもあるのだろうか?


すると・・レヴィアサンの目がさらに赤く光り、その巨大な顎が大きく開かれた。


「なんだ!?」


レヴィアサンの口から大量の水が放水され俺達を飲みこもうとする。まるで・・津波だった。


「回避!」


ギリギリで水をかわすが氷の槍が俺達をかすめてしまう。


バチッッッッ


俺とシャーミリアが離れた!


ドボーン!


俺は水中に落下したのだった。シャーミリアが慌てて俺をひろいに来ようとするが、氷の槍が突き刺さり行く手を遮る。それをかわして再度俺に向けて飛ぶシャーミリア。


「ご主人様!」


「まて!シャーミリア!」


俺の目はレヴィアサンの頭の動きを捉えていた!シャーミリアめがけて巨大なレヴィアサンの頭が振り落とされる。あの巨体なのに、ものすごいスピードでふりきってきた。


ドッゴオオオオ


バッシャーン


シャーミリアが強力な頭の直撃を受けて水中に落ちてしまった。


「シャーミリア!」


そしてその頭はそのまま今度は俺に向かって突進してきた。今度は顎を広げて・・


《なに?俺を食うつもりか?》


しかし俺がいるのは水中のため思うように体を動かす事が出来ない。慌ててブラック・シャドウと呼ばれる水中ヴィークルを召喚するが間に合いそうもなかった。


《ヤバイ!》


既に頭上に牙が迫っていた。


《詰んだか!?》


そう思った時不意に体が浮かび、水中から脱出する事が出来た。


ザバーン!


レヴィアサンの頭が水中にもぐり、水中ビーグルは粉々に砕け散った。その波が周りに広がっていく。


《カララ!助かった!》


《いえ!とにかく城壁の上に!》


俺の体はカララの蜘蛛の糸によって上空に浮かんで行く。城壁の上に俺を送り届けるつもりらしかった。しかしレヴィアサンはそれを許さなかった。まるで大蛇のようなひげが俺とカララを繋ぐ蜘蛛の糸に振り下ろされて断ち切ったのだった。


《くっ!》


バッシャーン


ゴボゴボゴボ


俺はまた水中に逆戻りだった。急いで水面から顔を出すとまたレヴィアサンの顎が襲い掛かって来ていた。水中にいてもお構いなしのようだ。またカララの糸が俺を絡めとり脱出させようとするが、今度は髭がそれをおさえ俺は身動きが出来なくなってしまった。


《うわわわわ》


巨大な口の中に体が入っていく。凄いデカイ牙がぞろりと並んでいるのがみえる・・俺を口に捕らえレヴィアサンの顎が閉じかかってきた・・


《どうする・・方法は!?》


俺は自爆覚悟でMk54魚雷を10本召喚した。


《死なばもろとも。》


そう思った時だった。


《待ってください!》


セイラの声が聞こえた。俺は一瞬Mk54魚雷を発射するのを躊躇してしまう。




ルーラールゥラー ラールララー ラゥラールルー 

ルーラールゥラー ラールララー ラゥラールルー 

ラーラルラー ルーラゥルルー ララールラー


《美しい・・なんだ・・この音は・・》


《セイレーンの歌にございます。》


カララが教えてくれる。


脳をしびれさせるような歌声が高らかに聞こえてきた。美しい旋律に思わず意識が持っていかれそうになる・・かろうじて保つことができた。


「祖よ!どうか怒りをおしずめ下さいませ!」


閉じられかけていたレヴァイアサンの顎が止まった。どうやらセイラがレヴィアサンに話しかけているらしい。俺はカララの糸でそのまま空中に助け出される。


《た・・助かった。カララ!シャーミリアを!》


《すでに助けております。意識を失っておりますが無事です。体を再生中のようです。》


《よかった・・》


水かさはどんどん増して西側の建物は既に飲みこまれてしまっている。今頃はだいぶ東に水が押し寄せているだろう。


「我が末裔の女よ・・なぜおまえはこんな陸地にいるのだ・・」


《え!この巨大な龍はしゃべるの?どうやって?》


口を動かしていないのに言葉がはっきり聞こえる。セイラに話しかけているようだった。


「私はいま・・この御方の僕としてお守りしているのです。」


「末裔の女よわかっているのか?・・それは・・魔であるぞ?」


「はい。それは分かっております。しかしこの世界を救おうと尽力なさっております。」


「魔が・・世界を救う?おかしなことを・・それは災いをなすのみだ。」


「いえ、この御方は人間の血を持っています。」


「なに?」


「祖には微量すぎて分からなかったかもしれませんが、確かに人間の血も流れているのです。」


レヴィアサンはとにかく水を出すのを止めたようだ。波が落ち着いている・・動きもとまりうねうねと動いていたひげもおとなしい。


「よく見れば、たしかにそのようだ。こんなことがあるのか・・しかし!これの魔は!末裔の女よ分かっておるのか?」


「はい。祖と同じように始まりの・・」


「こんなものを世に放てば、人も魔人も支配されてしまうのではないか?」


「しかしその未来は平和な物だと信じています。」


「・・・・・・・・」


レヴィアサンが黙り込んでしまう。



しばらく沈黙が流れているが、東のアナミスからも念話が入る。


《ラウル様!こちらの住居も1階部分は全て飲まれてしまいました。》


《ギレザムです。こちらもすでに水没してしまいました。》


《ここに住んでいた人々はどうなっているんだろう?どれだけの人が助けられたんだ?》


俺がそれを皆に聞こうとしたときに、レヴィアサンが動き出した・・俺のもとに髭がはってくる。逃げようと泳いで離れようとした時カララの糸が再度俺を空中へ引き上げ、髭から逃げようとする。


「逃げなくともよい!殺さぬ!」


レヴィアサンが俺達に叫ぶ。カララの糸はそのまま俺を連れ去ろうとするが俺がそれを止めた。


《カララ!とりあえず言う事を聞こう。》


《しかし!》


《命令だ!》


《はい・・》


スーッと髭が近づいてきて俺を巻き取っていく。俺はレヴィアサンの目の前に連れていかれるのだった。


「あの・・」


俺が話そうとすると、レヴィアサンがひと言。


「黙れ」


じっと俺を見つめている・・しばらく俺を見つめていると不思議そうな顔で言う。


「面白い・・最高位の魔を人間が御している・・こんな事があるのか。人間の精神が魔に勝っているなどと。」


《最高位の魔?御してる?どういうこと?》


「なるほど・・末裔の女よ・・お前はこれに何を見たと?」


「平和な未来を・・」


「そうか・・世界が許せばそれも叶うだろう。しかし魔を御せずに支配されるような事があれば、我らが神族の力で全て滅ぼされることになるぞ。」


「いえ・・私はラウル様を信じております。決してそのような事にはならぬと魔族が全てこの御方に従ったのです。ルゼミア様が正式に御子と認めました。」


「ルゼミアが・・」


「はい」


「わかった・・ひとまずお前の言を信じる事としよう。それでは・・」


なんだか勝手に話が終わって大団円になりそうだったので、俺が急いで止める。


「あー、まってまって!レヴィアサン様!ちょっとお願いがあるんですが!」


「お前の言う事など聞かぬわ!」


「そこをなんとか・・」


「なんじゃ!いうてみい!」


なんだ・・意外に話が通じるのかな?


「あの・・この街を見てわかる通り、ここには人々が住んでおりまして・・レヴィアサン様のお水により、民が死んでしまったのではと・・」


「なんだ、それか。一人も死んでおらぬわ。」


「へっ?だって見ての通りこの街はこんなに。」


「お前の優秀な配下達が全て助けたようだぞ。」


「えっ?一人も死んでいない。」


「我は必要であれば人の死などそれほど大きな問題ではないが、お前の配下が全て助けたようだ。それも含め末裔の女の言を信じるに至ったのだ。」


どうやらレヴィアサンは俺の配下の行動で、ある程度俺の事を信用したようだった。そして俺は都市内の人間が全員死んでいないという事に安心する。


「ありがとうございます!で・・お願いが・・」


「なんだ!」


「壁を思いっきり壊してほしいんです!」


「なんだ!そのようなことか。分かった!」


レヴィアサンの頭が西の城壁の一部に落ちていく。


ドドォォーン


壁が崩壊してそこから水が流れ出ていく。水の流れが逆になり東から西に向けてどんどん水が抜け出していく。


「これでいいか?」


「はいありがとうございます!」


「では・・魔よもう一つ聞くが、あの城にいる魔はお前の仲間か?」


「えっ!城にも魔とかいうのがいるんですか?それは俺の仲間じゃないです。」


「なるほど・・ならばあの魔石を砕いてやろう。」


スッっとレヴィアサンの顔の周りに氷の槍が出現する。それが王城付近に猛スピードで飛んで行ったのだった。


王城の上にある魔石に四方から刺さり魔石が砕け散る。


すると魔法陣が閉じ始める。


「これが閉じる前に行く事にする。さらばだ!」


レヴィアサンの頭が魔法陣のむこう側に引っ込んで行った。魔法陣は光を失い閉じてしまった。水は西の壁からどんどん抜けていき水位が下がっていく。


「ご主人様・・申し訳ございませんでした。不甲斐ない事を・・」


シャーミリアが戻り謝って来た。


「お前は全力で俺を守ってくれた。謝る必要がどこにあるんだ?」


「何という寛大なお言葉。ありがとうございます。」



水が引いて行くと町がかなり破壊されてしまった事が分かる。これは復興に時間がかかるだろう。しかしながら人が全て生き残っているというのは大きい。


《よし!カトリーヌ!無線機を使ってアジトにいるティファラと兵士たちを呼んでくれ。》


カトリーヌにはルフラアーマーが着せられているので念話が通じる。そのカトリーヌに指示を出して兵を呼び寄せる。


《かしこまりました》


次に俺はアナミスに連絡をとる。


《アナミスにお願いがある。城壁と屋根の上にいる人たちを全て眠らせろ!そして俺達魔人の記憶をなくしてしまうように夢を見させるんだ。ラシュタルの騎士が救助に来た夢をだ。》


《はい!かしこまりました。》


《残りの全員に告ぐ!都市の中心にある王城に集合せよ!王城に巣くう敵が逃げたりしないうちに襲撃する。》


《《《《《《《はい!》》》》》》》


全員が王城に向かって動き出す。しかし・・水の流れがあり思うように動けなかった。するとセイラが俺のもとに来てくれた。俺をスッと抱き上げて移動し始めるが水中はやはりセイラが速い。


「セイラ、ありがとう・・お前のおかげで死なずに済んだ。そしてレヴィアサンを説得してくれて礼を言うよ。」


「とんでもございません。私がお役に立てたのであれば何よりです。」


「本当に。セイラがいなかったらおそらくこの都市も俺達も全滅していたよ。ありがとう。」


「ありがとうございます。これからもラウル様のお側に居させてください。」


「こちらこそよろしく。」


全ての魔人達が街の中心に向けて進んでいくのだった。



そのころ元の世界に戻ったレヴィアサン


「うわ!ぺっ!ぺっ!なんだこりゃ!?」


Mk54魚雷を10本吐き出していた。


これが爆発していたら・・カンカンに怒られていたかもしれない・・


ラウルは知る由もなかった。

次話 :第149話 魔人の起源


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― 新着の感想 ―
[良い点] 死んだ都市民はいなかったんだね! 被害が出ていたらグラドラムの二の舞ということでラウル君に精神ダメージが入っていたでしょう。よかったですね。 [一言] 魔人、原始魔人、ルゼミア、レヴィア…
[一言] 作中でも『デモン』とラウル君が(勝手に←責任転嫁w)言っていたので、感想で魔獣とか言ったのですが『神獣』様っぽいですね…僕としてもこっちの方がしっくりきます。 レヴァイアサンの口から大量…
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