第14話 武器の消費期限
消えた俺の武器ちゃんが…
謎を解かねば夜も眠れない。
そしてモーリス家庭教師の授業が始まった。
先生の教えはわかりやすくていい、4才に教えてて物足りなくはないだろうか?めちゃくちゃ丁寧に噛み砕いて教えてくれている。おかげでスラスラ入ってくる。
やはり午前は読み書きの勉強だ。基本あとは単語の意味さえわかれば文章として読めるだろう。文章の前後を追えばほとんど何が書いてあるのかがわかる。
それはさておき早く午後の部に入りたい。俺は、はやる気持ちを抑えしっかり学んだ。
昼は、先生とイオナと俺でランチした。
「この子はどうですか?」
イオナが聞いた。
「素直でよく話を聞いてくれておるのう。普通の子よりかなり飲み込みが良いようじゃ。良すぎるくらいかもの。」
いやいや、だって小学生レベルの理数だぜ。もうわかってるんだけど聞いてる感じだからね、初めて聞く演技が大変なくらいさ。
「はい、先生の教えの賜物です。」
「ラウルは少し前からなんですが、急にものわかりが良くなった感じなんです。少し前、春くらいからでしょうか?それからは部屋にこもるようになって心配してたんですわ」
「うむ。そうかそうか、魔法に目覚めるとの、急に人が変わったようになることは良くあることなんじゃよ。」
「そうなんですね、少し安心しましたわ。」
「この子の魔法属性はなんじゃろな。」
…はい…召喚魔法です。たぶん前世の武器のみの…
「どうすれば属性がわかるんですか?」
俺が聞いてみる。これはどうしても知りたい。
「ふむ。今はまだ4才じゃったかの?いまやりたいことや、よく夢に見ることはあるかな?」
先生に聞かれれる。
…考えてみると、毎日武器や兵器のデータを描いているせいか、前世のパソコンデータや、映画のシーン、ドキュメンタリーの戦争の映像や、サバゲの対戦ばかりの夢ばかりだ…なんて答えたらいいんだ…
「やりたいことは勉強です。夢はよく覚えていません。」
ごまかした。
「そうか、ならまだわからんの。魔法には水、火、土、風、光、闇、神聖、治療と言う属性があると言うのは聞いておるかのぅ?」
「はい、聞いております。」
「実はのぅ、それ以外にも魔力の使われ方があるのじゃよ。」
来たあああ!聞きたいこと、キター!
「は、はい。」
「魔法は魔力があることが大前提なのは知っておるな。そして大事なことは、想像したことを実際に使えるのだと魂が覚えていることじゃ。魂が記憶せねば魔法を実現化することは難しいのじゃよ。人の本能が理論として覚えねばならんのじゃ。」
「む、難しいですね。」
想像してたものに近いが、理解ができるわけではない。頭で考えて出来るといった類いではなさそうだ。
「しかしの、それらを理解しておらなくても、魔力が使えることもあるのじゃよ。」
あ、俺それじゃないっすかね。
「というのは?」
「うむ。魔人や魔物を知っておるか?」
「父さんが冒険の話を少ししてくださった時に聞きました。」
「うむ、魔人や魔物、魔獣などは魔力を持って生まれた生き物ということなのじゃが、生まれつき強い魔力が備わっているんじゃよ。」
「はい…」
強い魔力が備わってるから魔物とか魔獣っていうんだ…
「しかしそれらは、魔法が使えない事が多いのじゃ。魔人や魔物はの人のように知力が高くなく、理を理解できなかったり粗暴な生きかたをしているがゆえ、積み重ねて覚えることができんからなのじゃよ。」
なるほど、やっぱり魔法は知力なのね。
「魔法を使える魔物はいるのですか?」
「稀に知力の高いものが生まれることがある。数十万にひとつの個体じゃがな。が、ほとんど使えんと思ってよいな。」
「自然に魔法が使えたりするものなのですか?」
「うむ、魔獣や魔物は魔法は使えんが他に魔力を使っておるのじゃよ。」
「というと?」
「ドラゴンならば火を吹くしあの巨体で空をとびよる。あれは魔力のなせる技じゃ。あとは魔人や魔獣は体が巨大だったり、力が人間や家畜などの何倍もある。あれも魔力の影響じゃよ。体に生まれながらにして魔力がめぐりまくっておるんじゃ。」
「それらは魔力のせいだったんですね。」
「そうじゃ。」
なるほど、魔法が使えなくても体を強くしたり大きくしたりする効果が、魔力にはあるということか…
「剣士が強いのも魔力のおかげですか?」
「たしかに、魔剣を使う魔剣士はおるのだがの、しかし、おぬしの父君であるグラム殿はそうではない。あれは理力というものじゃ。鍛錬によって悟りをひらかねばならぬ。」
そうなんですね。悟りをひらくか….グラムすげえな。
「魔法や魔力のこと、もっと知りたいです。」
「よし!それじゃあ午後の部には入るとするかの!」
ふたりの話しを聞いていたイオナとマリアはびっくりしたような顔で俺をみていた。難しめの話しをしていたのが、本当に理解できているの?という顔をしているようすだ。
俺の部屋に戻って引き続き勉強をすることになった。足し算引き算をすぐ理解したため、掛け算割り算にうつるらしい。しかしまったく問題ない。
俺は先生から教えられた直後から、スラスラと問題をといていった。もう先生の前ではできないふりをするのを、やめることにしたのだ。先生も少し驚いた顔をするが、どんどん勉強を進めてくれた。理科の授業もまったく問題なく理解する。授業はどんどん進んでゆく。
「しかしラウルよ、おぬしはすごいのぅ。とても4才とは思えぬわい。学校では中等くらいの学びであるぞ。天才というやつかもしれぬな。」
いいえ、4才だから天才に見えるのです…31才の童貞の男に教えてると思ったらがっかりしますよ…
「いえ先生私は天才などではないと思います。」
「そうかのう…」
そうだ!今がチャンスかも。
「あの…先生。聞きたい事があります。」
「なんじゃ?」
「魔法を使うと、どのぐらい効果があるものなのですか?」
「どのぐらい持続するということでよいかの?」
「はい。」
やっと聞きたいことにたどりついたぜ。
「属性はさきほど言うた、水、火、土、風、光、闇、神聖、治療があるというたな。まず自然魔法からじゃが、水と火は魔力が途切れれば自然に乾いたり、燃えるものがなくなれば消えるのぅ。風と光と闇も同じようなものじゃ、魔力を止めれば消える。」
「ずっと続くものはないのですか?」
「まず魔法で作り出されたものは、永続的なものはないのじゃ。水は飲めば体を潤すことが出来る。火は体を温めることもできるし焼くことも出来る。風も闇も光も飛ばしたり目眩ししたり出来るのじゃが、周りに影響を及ぼすことがあっても、魔法で生み出されたものは消える運命にあるのじゃよ。」
なるほど…だいたいつかめてきたぞ。
「では、土や神聖魔法、回復魔法はどうなるんですか?」
「お主は賢いの。それらはまた少し違った意味をもつからのぅ。」
「違った意味ですか?」
「そうじゃな、神聖魔法であの世に戻された悪霊や屍人は戻ってくることはないのぅ。回復魔法で治された部位は再び跳ね飛ばされなどしなければ、そのまま体を保ち続けるし、生き返った者はそのまま生きることができるしのう。効果は一瞬じゃが火魔法で燃やされたものが戻ることがないように、生えた腕が消えることはないんじゃよ。」
「ならば土はどうなるのでしょうか?」
「土魔法がまた特殊での、石礫を飛ばすこともできるし、戦で盾のような壁作ることもできるものなのじゃ。膨大な魔力を持つものならば冒険のテントがわりに、岩のかまくらを作ることすらできるのじゃが、造形したものは1日2日で崩れて消えてしまう。魔力のそうとう強いものが練り込んだものであれは、半月は持つじゃろうが崩れてしまうのじゃよ。」
「では魔法で家をつくるなどは?」
「出来んのう。そのような魔力を持った者の話を聞いたこともないのう。作れたとしても半月で崩れてしまうものなれば、作るだけ無駄というもんじゃしの。」
なるほど。効果の継続には魔力も関係しているんだな。たぶん俺の武器は効果がきれて消えてしまったのだろう。
超納得した。
犯人はマリアでもイオナでもなかったわけだ。昨日召喚したこのポケットの弾がどれくらいで消えるのか、毎日確認するためにも肌身離さず持っておくことにしよう。
そして俺はもっと聞きたいことを聞いてみた。
「あの先生。」
「なんじゃ?」
「聞いた魔法のほかに、なにかを呼び出すような魔法はありますか?」
「・・・・」
「あるにはある。」
「あるんですか?」
「禁呪じゃがの、魔法の一種じゃ」
「どんなものなのですか?」
「何人もの魔術師が大量の魔力をつかい、生贄を用意して悪魔や精霊、魔獣などを呼ぶものじゃ。」
「いけにえ…ですか…いやなものですね。」
「そうじゃな、人がやってよい魔法ではない。」
やはりあった。召喚魔法…しかし俺が思っていたものより恐ろしいものだった。
「封印したというわけですね。」
「呼び出された恐ろしい悪魔や魔獣が、国を滅ぼしたような御伽噺もあるが真相は不明じゃ。そんな魔法ないほうがいいわい。」
「まったくです。」
しかし、俺はなにも生贄をつかわず何人もの魔術師を用意せずとも、武器を召喚する事が出来ている。となれば俺の召喚術はそれとは違うものなのかもしれない。
俺の魔法を考察してみると、前世で好きだった現代兵器を呼び出せるが、生贄などは必要ない。しかし召喚には多大な魔力が必要ということは、それなりに魔力を消費して呼び出している可能性がある。この世界の召喚は足りない魔力を人の命で補っているのだろうか?そして何より効果の持続時間が限られている。
…んー…言わば、魔力を使ってレンタルしている感じで、魔力量という対価がきれると消滅する感じか…乾パンは確かに食えたし腹にたまった。銃はどうなんだろう?さっきの先生の話なら、殺傷力はありそうだが…撃てるようになったら木に撃ち込んで実験してみるかな。
「それでは今日はここまでにしようかの。」
考えこんでいる俺をみて先生はきりあげることにしたようだ。
「それではまた明日もよろしくお願いします。」
「貪欲に学ぶ姿勢はいいのう。しかしおまえは不思議な子じゃの楽しみじゃわい。」
「はい。僕も楽しみです。」
モーリス先生が帰ったあとで、召喚した弾丸を見つめた。
「この弾の消費期限はいつなんだろ?」
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