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第130話 武器職人

奴隷商で買った3人にしっかり飯を食わせたら、空腹が満たされて多少落ち着いたようだった。


「みんな体調は大丈夫か?」


「僕は大丈夫です。」

「私もあの薬のおかげでかなり元気になりました。」

「私も食べたので動けますよ。」


どうやらマイルス、ティファラ、リューズ3人は回復したようだった。


「そのまま行くけどいいかな?」


「はい」

「大丈夫です。」

「行きます。」


俺とマキーナとアナミスだけでもちょっと不思議な組み合わせだが、そこにさらに一人のだぼだぼの迷彩服を着た少年と、女自衛官が二人くっついてくる。


とにかく情報収集しなければならない。


《ラシュタルでいきなり失敗するわけにもないからな。》


「とりあえず武器屋行きたい」


「かしこまりまりましたご主人様」


「俺はロードだよローラ」


「あ・・大変失礼いたしました。」


おかしな6人が街の中を歩いて行く。


武器屋に向かって俺は先頭を歩いて行くのだった。


「こっちだよ。」


「ロード様は武器屋の場所がお分かりになるんですか?」


「武器の事なら俺に任せろ。」



しばらくして武器屋らしき建物の前に着いた。


「ここがたぶん武器屋だ。」


「ここが?」


「ああ俺にはわかる。」


「武器屋の看板などがございませんが・・」


「大丈夫だ。」



キィ


ドアは軽く開いた。


「こんにちは。」


ひげ面の屈強な男が座っていた。


《頬に傷があってなんだかおっかないな。》


「いらっしゃい。」


「ここは武器屋ではないのですか?」


「ああ、武器を売るには許可が必要になったからね。第一武器が置いてねえだろう・・今はただのしがない雑貨屋だ。」


なるほど・・店の外からは武器屋のオーラがでていたのだがな。


「そうですか・・佇まいが武器屋だったものですから、武器を売っているのかと思って入ってしまいました。」


「わかるものかね?」


「ええ、武器屋には雰囲気がありますから。」


「まあ元冒険者用の武器屋だったんだけどな。」


「武器屋に変わりはありません。」


「ふふ、面白いな小僧。」


《さてと・・情報はとれるんだろうか?》


「でも武器屋をやめたはずなのに、武器を売っているのですか?」


「だから・・今は売ってないんだが。」


「なぜ武器の匂いがするんですか?」


店のおっさんが少し訝し気な顔になる。


「武器の匂い?坊主・・何が言いたいんだ?よく見るとおかしげな連中をつれているが」


「ああ、この人たちは奴隷商で買ってきたんです。」


「奴隷?奴隷がこんな格好をしているのか?」


「ああ、たまたま俺が服を持っていたんです。」


「そんな服見た事ないな。お前たちはどこからだ?奴隷を買ったって事はバルギウスのやつらか?」


「いえ違います。私たちはユークリットから来たんです。」


「ユークリットから?本当か?」


「はい」


ユークリットから来たと伝えると、途端に考え込むように黙り込んだ。


「どこに行くんだ?」


「ラシュタルへ」


「そうか。冒険者か?」


「まあそんなところです。」


「何しにいくんだ。」


「人探しです。」


「人探し?」


「はい。」


「よくユークリットの人間が無事にここまできたもんだ。」


「そこそこ剣や魔法が使えるものですから。」


「ランクは?」



《へ・・・ランク?ランクってなあに??マキーナ知ってる?》


《申し訳ございません。人間の事は存じ上げません。》


《えっとアナミスは??》


《私も・・分かりません。》


慌てて念話で確認し合うが誰も分からなかった。


《ヤベエ・・》


無言の俺達を訝し気な目で見ている。



「この方たちはアレキサンドライト級とおっしゃってました。」


「えっ?」


俺達の後ろからティファラが武器屋のオヤジに言い放った。


「ほう・・それじゃあ駆け出し冒険者ってわけじゃねえんだな。」



《アレキサンドライト級ってなんだ?初めて聞いたぞ!どのくらいなもんなんだ?》


《まったくわかりません・・》

《わたくしも・・》


念話で焦りながら俺達が話している。



とりあえず俺はその話に適当に乗ることにする。


「そういうわけです。アレキサンドライト級だからここまでこれたんです。」


「見かけによらないもんだ。」


「よく言われます。」


「ユークリットから来たんだな。」


「はい」


「ユークリットの冒険者が、よく今まで生きていられたもんだな。」


「まあなんとか・・」


「とりあえずここではなんだ・・奥に。」


「えっいいんですか?」


「入れ。アレキサンドライト級なら俺を殺すのは一瞬だろ、話し合いをするって言うなら拷問でもなんでもできたろうからな。」


「もちろんそんなことしません。平和的に話が出来たらうれしいです。」


「そうか・・」




俺達6人は奥に通される。奥にはリビングのような部屋があってテーブルが一つ、6つのいすが置いてあった。


「座れ。」


主人は椅子に座るように言う。


「ローラとカーは立っててくれていいか。」


「かしこまりました」

「はい」


「ん?奴隷が座るのか?」


「今、奴隷商で買ったばかりで体力が無いのです。ダメでしょうか?」


「いや・・いいよ。お前は優しいんだな。」


「そんなことは無いです。」


「おそらくこの子らは、元はラシュタルで普通に暮らしていた人間だろう。あいつらが来たおかげで奴隷として売られたんだ・・普通に扱ってくれるのがうれしいんだよ。」


「そうですか・・」


すると奥の方から女の人が出てきた。


「いらっしゃい。」


コップと飲み物を持ってきてくれたようだった。


「まめ茶ですがどうぞ。」


「ありがとうございます。」


「俺の妻だ。」


「申し遅れましたロードと申します。いきなりお邪魔してすみません。」


「いえ、いいんですよ。ユークリットからきたのでしょう。」


「はい。」


「ゆっくりして行ってください。」


「ありがとうございます。」


ゆっくり話が聞けそうでよかったよ。




「それで人探しと言ったな。それは誰なんだ?」


《うーんいきなりファートリア神聖国の枢機卿とか言ったら敵扱いされそうだな。あともう一人ミゼッタのために探そうと思っている人物を言ってみるか。》


「ラシュタルとユークリットの国境に住んでいた老人なんですが・・」


「バンスか!」


「はい!ご存知ですか?」


《あれ?当たったか?》


「知っているも何もあの大戦の前はここに野菜を売りに来ていたよ。」


「そうなんですね!?」


なんとミゼッタに朗報が持って帰れるかもしれない!


「小さなお嬢ちゃんと一緒にな・・でもあれからは顔を見ないな。」


「来てないですか。」


「残念ながらな・・」


《そうか・・バンスはまだあそこに住んでいるのだろうか?ユークリットに向かうときに確認が必要だな。とにかくミゼッタとここまで野菜売りに来てたんだな。》


「とりあえず我々はラシュタルまで向かいます。」


「まあバンスはそっちには行っていないと思うが、どうなったかは分からんからな・・」


《死んだと思っているんだろうな・・》


「あの、実はそのバンスと来ていた小さい女の子のほうは生きています。」


「生きている?本当か!!」


「はい。彼女が元気にしている事を伝えてあげたいんです。」


「わかった。ここにもしバンスが来るような事があれば必ず伝えておこう。」


「はいお願いします。」



《さてと・・俺が気になっている事を聞くかな。》


「それで・・あの・・武器、今も売っていますよね?買えますか?」


「ああ、ここだけの話だがな・・山賊に武器を売っているんだ。」


《ビンゴ!山賊が武器もなしで戦い続けられるわけないもんな。》


「ラシュタルの兵士の生き残りですか?」


「ああそうだ。ファートリアバルギウスの目を盗んで武器を横流ししている。」


「炉が無いのですが、どうやって造っているんです?」


「ここで作るわけにいかんからな、森の中に隠れ家を作ったんだ。」


「そうですか?俺も買えますか?」


「悪いが・・今は作り置きがない。そしてラシュタル兵たちのために造っているから、お前たちに売るわけにはいかないんだ。」


「いえ仕方のない事です。ラシュタル兵の残党は反乱を考えているんでしょうか?」


「そこまではわからん。まあ知っていても教えられんがな。」


「そうですよね。わかりました・・教えていただいてありがとうございます。」



ラシュタル兵の残党はきっと何かを考えているんだろう。武器を集めて力を蓄えているのかもしれない。


「お前たちは?バンスを探しているだけなのか?」


「いえ・・この世界に散らばった仲間を探しているんです。」


「それがお前の言う探し人なのか?」


「はい。どこにいるかは探してみないとわかりませんが、早速見つけました。」


「どこかにいたのか?」


「はい・・目の前に。」


「俺か?やめてくれ・・俺にそんな力はない。」


「ラシュタル兵の残党に力を与えています。それがいずれ必ず実を結ぶはずです。」


「そう願っているよ。」


「ラシュタル兵には会えますか?」


「すまないがそれもダメだ。」


《そううまくはいかないか。とにかく情報を得ることができたので、これ以上はここに迷惑がかかるといけないな。》


「我々が長居をするのもあまりよくないでしょう。そろそろ行きます。」


「そうか・・何も協力できなくてすまないな。」


「いえ。俺も必ずこの世界を取り戻すつもりで戦います。あなたもあきらめないでください。」


「わかった坊主。死ぬなよ。」


「もちろんです。簡単にはくたばりません。」


「それと・・ギルド跡に行ってみるといい。」


「ギルド・・あるんですか?」


「いやすでに組織は無くなっている。自警団のような奴らが何でも屋をやっているからな、何かの役に立つかもしれん。」


「わかりました、行ってみます。」


武器屋の主人と硬く握手をして家を出る。


《やっぱ武器好きに悪い人はいないんだなあ・・武器はかっこいいんだもの》



「ティファラ。ありがとう冒険者の事なんてよく知ってたね。」


「ええ、昔旅行の時は護衛に冒険者を雇ったりもしましたから。」


「そうなんだ。」


「ほとんどは兵士の方が護衛してくれましたが、完全なお忍びでの旅行となると冒険者がついてくれました。」


「とにかく助かったよ。」


「いえ、助けていただいて何もしない訳には行きませんので。」


「俺達が分からないって良く気が付いたな。」


「皆さまは・・冒険者では・・無いですよね。間違っていたらごめんなさい。」


「はは・・分かるか。冒険者じゃないよ。」


「訳はお尋ねしません。」


「助かるよ。」


えっとティファラの身分はどのくらいなんだろう?


お忍びで旅行って・・

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