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第122話 長距離索敵行軍

会食が終わり俺たちの出発の準備が終るとそこへパトス町長がやって来た。


「魔人様達の活躍を期待します。それと国を奪還したあかつきにはルタンの町をどうかご贔屓にしてください。その心づもりにございます。」


パトス町長から町で集めたと言う金貨100枚を渡された。


「なにもいらないと言ったはずなんですが・・」


と口で言いつつも手を伸ばす。もらえるものはもらっておこう。


《桔梗屋お主も悪よのう。》


などと思いながら軍資金を快く受け取った。金で解決できることがあればこれで解決させてもらおう。常にドンパチする必要はない。


「では俺たちは先を急ぎます。ルタン町に魔人を残していきますので、魔人達と獣人で協力しあって警備を強化しつつグラドラムからの増援を待ってください。」


「わかりました。魔人様たちの到着を待ちましょう。」


俺がアンドロマリウスを吸収してしまった後で、そのそばにいた魔人達はかなりの成長を遂げた。まだ力は未知数なれど間違いなく以前より魔力が増えている。ルタン町の護衛とシナ村の復興作業に魔人の力が必要だと考えた俺達は、3つのチームに分かれることにした。


分割したチームは以下の通り。


ルタン町での護衛任務の魔人チーム

ライカン隊長のマーグ ライカン3名 オーガ3名 ハルピュイア2名 サキュバス2名


シナ町で復興に取り掛かる魔人チーム

竜人隊長のドラグ 竜人3名 ダークエルフ隊長のウルド ダークエルフ3名 ハルピュイア2名 サキュバス1名


先行部隊

ラウル マリア カトリーヌ シャーミリアとマキーナ ファントム 

ギレザム ガザム ゴーグ ルピア セイラ ドラン ミノス スラガ ラーズ アナミス

後はスライムのルフラ、アラクネのカララ ゴブリン隊長5名


3チームに分かれる事になった。相性や役割を考えて選んだ人選だった。


ルタン町の護衛にはミノタウロスの次に強力な種族ライカンを置く。ライカンは森から魔獣を取ってこれるので食料の供給にも役立つ。戦闘に向いているオーガを主力に航空戦力のハルピュイアと、人間相手なら無敵の催淫術を誇るサキュバス。


シナ村には、使えない廃屋を焼いたり木を焼き払える人員として火を吐く竜人。森から必要物資を調達してくるためのダークエルフ、そして航空戦力のハルピュイアとサキュバスだった。ルタン町を越えてここまで人間の敵兵がたどり着くとは思えないが、保険でサキュバスを一人配置しておく。


ルタンにいた獣人の全員はシナ村の復興手伝い、一緒に炊事などをやってくれるそうだ。


俺が書簡でグラドラムに要請した200名の魔人がシナ村とルタン町にやってくる手はずだ。ミノタウロスやスプリガンも来る予定なので作業が格段に進むのと、ドワーフがくるため街の復元も早いはずだ。



バサバサバサバサ


上空からルピアが降りてくる。


「この先100キロの街道沿いには敵や人影は見当たりませんでした。」


俺がアンドロマリウスを取り込んでからルピアの飛行速度はかなり上昇した。索敵行動もあっという間に行えるのだった。


「じゃあドラグとマーグそしてウルド!あとは頼む。中に戦闘糧食と兵器をびっしり詰め込んどいたトラックを4台置いて行くから、有効に活用してくれるとありがたい。30日で消えるからその前に消化するといいよ。」


「わかりました。みんなラウル様を頼むぞ!絶対に守ってくれよ。」


「ラウル様が留守の間にシナ村を復興させましょう。御武運を祈っております。」


「ラウル様、みんな!朗報をお待ちしておりますよ!」


ドラグとマーグとウルドが声をくれる。



「状況を見て伝令を送る。じゃあな」


「「「はい」」」



俺達は1台の4駆と2台のトラックで西に向かう。次に向かう先は元ラシュタル王国だった。サイナス枢機卿がまだいるとは思えないが手がかりを探しに行く。


舗装していない道路でも、日本製の4輪駆動と魔人を乗せたウラルタイフーン装甲トラックはパワフルに進んでいく。


グラドラムからルタン町までは調査していた結果、人間はいないとふんでいたのでガンガントラックで進んできたが、ここから西には人間や敵兵がどこにいるか分からない。索敵をして確認しているものの注意しながら進むことになる。燃料もあと100キロくらいできれるだろう、そこからは全員荷物を担いで徒歩での移動となる予定だ。


「デイジーさんの好意でエリクサーと鏡面薬を大量にもらっちゃったな。」


俺がマリアに話しかける。


「ラウル様、デイジーさんは魔人達の働きから判断しての事だと思います。」


「そりゃそうさ、一方的にこんな大事な物をくれるわけないだろ。」


「私たちのもとに居ればより研究がしやすいと思ったのでしょうね。」


「実際そうだろ。危険な森の薬草は獲り放題、魔人の持つ毒や分泌物やウロコなんて伝説の代物だ。普通では絶対に手に入らないのが簡単に手に入るとなれば、エリクサーや鏡面薬なんて安い物だろう。」


「そうですね。そういえば・・魔人ひとりひとりが伝説級の存在でしたね・・なんかいつも一緒にいるから忘れかけてました。」


「実際は俺もそうだよ。伝説級の魔人が俺のしもべとか・・今でも信じられないよ。」


《その伝説級の魔人達がかたまって俺と一緒に西を目指して走っている。一人でも強力なはずの魔人が高等な戦術の知識を持ち、統率力を持つ俺の系譜の力が数パターンの連携を生み出す。1人でも国を滅ぼしてしまうような実力のカララまでいるし、その彼らが現代兵器を湯水のように使って戦闘する。これを・・チートと言わずして何と言おう。しかも俺がアンドロマリウスを取り込んだことで、彼らは数倍の魔力に膨れ上がってしまった。》


「なんでアンドロマリウスを俺が取り込んじゃったのかわかんないけどな。」


「ラウル様に人間を大量に倒した時のようは外見の変化はないんですよね・・残してきた魔人達もすごい魔力が上がっているようですし。」


「だよなあ・・。隊長格のドラグとマーグとウルドを見たか?あれはもうバケモノなんて言うレベルじゃないぞ。ファントムと互角にやれんじゃないのか?」


「味方でいてくれることに感謝です。」


「本当にそうだな。」



索敵していたとおり100キロ地点までは特に何もなかった。そこで俺はルピアに指示を出す。


「ルピア!この先50キロ付近までに敵や人がいないか偵察をお願いする。」


「わかりました。」


「あの・・ご主人様。」


「なんだシャーミリア・・あ!シャーミリア達は昼でも動けるんだったな。」


「はい。いつでも動けるようにしてくださいました。」


「すまんルピアは待機で良い!シャーミリアとマキーナが二手に分かれて偵察してこい。」


「ラウル様私も行けますが。」


ルピアが偵察に行きたそうにしているが俺はそれを制する。


「ルピア、アンドロマリウスのようなデモンがいたら困る。飛ぶ奴がいるかもしれないからな!夜間戦闘ならお前に任せるが、まだ明るいと視認されるかもしれんから、これから偵察は彼女らに任せようと思う。いいかな?」


「わかりました。お気遣いありがとうございます。」


「ルピア私たちに任せなさい。あなたにはあなたの能力があるのです、必要な時にあなたがいないのではラウル様が困ります。」


「わかりました。よろしくお願いします。」


シャーミリアはルピアにニッコリと微笑みかけてマキーナと空に飛び立っていった。


《俺の言葉足らずなところをフォローもしてくれる。シャーミリアは本当に素晴らしい参謀だ。》



二人のヴァンパイアはあっというまに帰って来た。


「ご主人様。ここより先50キロ地点までは人間はおりませんでした。」


「わかった。トラックから荷物を下ろす!食料などの荷物を詰めたリュックをからだの前にかけろ!M240中機関銃とバックパックを装備!ホルスターにはデザートイーグルとフルのマガジンを確認!ゴブリン隊とセイラとアナミスはAK47を携帯して、ホルスターにはP320を確認!ゴーグは狼形態になってマリアとカトリーヌを乗せてくれ」


「「「「「「「はい!!」」」」」」」


これだけの重装備で行軍するとなると人間ならすぐにへばってしまうが、彼らにしてみれば体感10Kgもないらしい。さらに数倍の強さになって鳥の羽ほどの重さも感じていないようだ。ゴブリン隊とセイラとアナミスはその中でも非力なため少し軽装となる。



「では車を焼却する。」



俺は爆薬を大量召喚し、全員で4輪駆動やトラックに仕掛けていく。


「よし離れろ!」



「点火!」


全員が安全な位置まで距離をとったところで、起爆装置のスイッチを入れる。


ドオォォォォン


大爆発をおこして車が大破し燃え上がる。荒野に火柱が上がり黙々と煙が立ち上った。



「さてここから先は足での行軍となる。50キロ先までは人がいないと思うが、行商人などが来る可能性もある。夜間になれば野営している人間もいるかもしれない。その場合は街道からはずれ荒野にひそめ。」


「「「「はい!」」」」


「では出発する!」



人間と魔人22名の行軍が始まった。



索敵して確認していた50キロ地点に差し掛かる。


「ここまでは敵影も人間もいなかったな。」


「はい、確認していた通りにございます。」


「日が落ちたのでこのあたりで野営をする。シャーミリア!マキーナ!さらに50キロ先までの索敵を頼む。」


「かしこまりました。」


シャーミリアとマキーナが夜の空に舞い上がった。


「ここからはずっとこの方法で進む。トラックの時とは違い進みが遅くなるが、みな安全にバカンスを楽しむためだ。」


「バカ・ン・・?」

「それはいったい何です?」


「いや・・なんというか・・何でもない。野営の準備に取り掛かろう。」


俺は人数が入れる分のテントを召喚する。すでにこういった備品は使い捨てにすることにしている。いちいち持ち運ぶと荷物になって動きが遅くなるからだ。30日たてばいずれ消えるため人間の手に渡ったところで問題ない。



雑木林の中に野営の準備をしていると、シャーミリアとマキーナが帰ってくる。


「ご主人様!ここから西に50キロの地点に野営をしている人間がおりました。おそらく商人の一行かと思われます。」


「わかった。ならこの場所で問題はない。」


野営はマリアとカトリーヌ、ゴブリン隊のためのものだった。ほかの魔人には数日間休みが無くても動き続けることが出来る。それを皆が分かっての行動だった。


「すみません・・私たちのために。」


マリアが謝ってくる。


「マリアが必要だから俺は来てもらっているんだ。これは全員が了承済みだからね何も考えないで休んでほしい。」


「ありがとうございます。」


「そしてカトリーヌ!君の回復魔法はかなり有用なんだ!魔人との行軍は大変だと思うが、体力的に厳しくなったら必ず言ってくれよ。遠慮される方がいざというときに困るからな。」


「わかりました。」


「ご主人様!本日のテントはマリアと一緒がよろしいのでは?」


シャーミリアがいきなりへんな事を言い出した。


「えっ?二人で?」


「はい、お二人でお休みになった方が休めるかと。」


「いやあ・・いつもみんなで寝てるからそれでいいんじゃない?」


「いえ、たまには昔からの旧知の仲でお休みになるのもよろしいのでは?」


どうしたんだ。ほかの魔人達もなんだか微笑ましく俺を見ているんだが・・


「ラウル様、昔を思い出して二人で寝るのもよろしいのではないでしょうか?」


マリアがなんだかうれしそうに俺にささやく。


《俺が物心ついてから、いや・・前世の記憶がよみがえってから二人で寝た事なんて無いと思うけど・・》


「とりあえず・・飯を、そうだ!とりあえず飯を食おう!」


「「「「かしこまりました。」」」」


全員で飯の準備をするのだった。


《まあきっと赤ん坊の頃は寝かしつけられた事もあるんだろう。メイドと添い寝するくらいいいか。》


とりあえず一人納得して皆が食事の準備をするのを眺めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 冒頭の金貨百枚…あれは辞退するべき…と、思ったのですが… ~金で解決できることがあればこれで解決させてもらおう。常にドンパチする必要はない。 このままファートリアバルギウスに戦争を吹っ掛…
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