第119話 アンドロマリウス
魔人達は猿デモンの攻撃に防戦一方だった。
アンドロマリウスから石で腹を撃ち抜かれたダークエルフとライカンは、カトリーヌに治療してもらい戦線に復帰する。
《回復役が誰なのか見られてしまったな・・》
アンドロマリウスがカトリーヌを目で追っているのがわかる。
人数では勝っているが、あのミノスですら数匹の猿の悪魔に翻弄されていた。
唯一戦えているのはカララのみだったが、マリアとカトリーヌを守りながらなので思うように敵を追い払えないでいた。
さらに俺とヴァンパイアの二人とファントムがアンドロマリウスに銃を撃ちこむが全く効かない。
それに対しアンドロマリウスは蛇の手を自由自在に伸ばし、槍のように俺達を突き刺してきていた。
「くそ!かろうじてよけているが、ファントムがいなけりゃ俺は即死だな。」
「ご主人様お下がりください!ここは私たちがやります。」
「しかしシャーミリアこちらの攻撃が効かないとなると・・厳しいぞ。撤退するか?」
「ご主人様。おそらくは奴からは逃げられません。倒してしまわねば全滅するでしょう。」
《倒す・・か。全く攻撃が効かないとなると、どうするか?》
人間を想定している現代兵器では悪魔には効かないようだった。現状では勝てるすべが見つからない、とにかく時間ばかりが過ぎ去っていく。
「ほほほほ、どうした魔人達よ。私を倒すのではないか?」
「くっ!」
「ぐあ!」
「ふう!」
ギレザムもゴーグもガザムも防戦するしかないようだった。猿の悪魔は動きが早くかなりの連携が出来ている。さらに傷の再生が早い。
「シャーミリア。あの猿すぐに治るんだけどどうしてだ?」
「敵の大将を叩かねば永遠に滅びる事はありません。」
防戦しながら俺の問いに答えてくれる。
《アンドロマリウスとやらを殺さないと終わらないのか。》
「カトリーヌ!猿に光の回復魔法を強く浴びせてみてくれ!」
「リヴァイブ!」
ギャァァァァァ
サッっと逃げた猿の悪魔の下半身にあたると下半身が崩れ去った。そしてそれがもとに再生する事はなかった。上半身だけが動いて攻撃をしてくる。
《効くぞ!》
「カトリーヌ!もっと出来るか?」
「かなり魔力を消費するため・・あと1回・・は出せるかと。」
《1回・・相当魔力を消耗するんだな。だがそれに賭けるしかないか。しかし・・あのアンドロマリウスとやらには効くのだろうか?この猿悪魔をかいくぐって辿り着くのも至難の業だな。》
「シャーミリア、マキーナ、ファントム!カララの元に集まれ!」
俺たちはカララの元へ集まった。
「どうした?魔人達よ?それで終わりか?」
アンドロマリウスが嘲笑うように言う。
俺たちの周りにも猿悪魔がまとわりついてきた。
《くそ!撃っても撃ってもキリがない。あいつに辿り着くには・・》
周りは乱戦状態。
《飛ぶか。》
「シャーミリア、マキーナ2人でアンドロマリウスの上までカトリーヌをつれて飛べるか?」
「わかりました。」
「カトリーヌ!あいつにリヴァイブを浴びせられるか?」
「やってみます。」
《効けばいいんだが・・》
「ファントム!マリアを死守しろ!」
ファントムがマリアにたかってくる、多数襲いくる猿デモンを薙ぎ払うが、次々かかってきてきりがなかった。俺もダガーで猿デモンを追い払うがまったく減らない。
「マリア!カトリーヌがリヴァイブをかけたら、バレットM82であいつを狙撃してくれ!」
「はい。」
俺はバレットの弾丸にエリクサーをぶっかけた。
《ポーションはヴァンパイアに効いたが、これは悪魔にはどうだ?》
「シャーミリア行ってくれ、リヴァイブを発動させたらすぐ離脱しろ!」
「かしこまりました。」
シャーミリアとマキーナがカトリーヌを連れて飛び上がり、リヴァイブの射程にアンドロマリウスがはいる。
「リヴァイブ!」
アンドロマリウスにさきほど猿デモンに効いた魔法が炸裂する。
アンドロマリウスの首から肩、腕と胸かけてリヴァイブの魔法が当たったようだ。
「マリア」
ズドン!
弾丸は左目の下から入って後方に抜けた。頭は砕けることは無かったが顔面にひびが入る。
「う・うう!なんだ!?」
アンドロマリウスが驚いている。肩から首にかけて灰のようになり目の下のひびが広がっていく。
「やったか!」
しかし・・その直後だった。灰色になった肌がもとに戻り目の下のひびがなくなっていく。
「なんだその攻撃は?よくも私に痛みを与えてくれたな!」
「シャーミリア!カトリーヌを連れて出来るだけ離れろ!」
と俺が指示をするより早く、はるか上空に遠ざかっていたためシャーミリアとカトリーヌがいた場所でアンドロマリウスの蛇の手が空ぶっていた。しかし・・マリアをめがけてきたほうの蛇の手はファントムの腹を突き抜けて、マリアに迫ったが到達する前に俺がマリアの前に立ちふさがった。
「ぐう!!」
俺の肩から入り背中に抜けてやっと蛇の手は止まった。
「くそ!」
ボタボタボタ
肩から血が吹き出る。
蛇の手はみるみる短くなってアンドロマリウスの手に戻る。
「ん?人間を仕留め損ねたぞ。」
「ファントム!マリアを抱いて後方へ逃げろ!」
ブォン
ファントムとマリアがあっという間に目の前から消え去った。
俺はAT4ロケットランチャーを召喚して、アンドロマリウスに撃ちこんだ。
ドガーン
爆発して爆炎が消え去るが、その爆炎の後ろからアンドロマリウスの蛇の手が襲い掛かって来た。
竜人の隊長ドラグがうろこを高質化させて、俺とアンドロマリウスの射線上にかばうように躍り出る。
「グア!」
ドラグの腹にアンドロマリウスの手が深々と突き刺さるが、俺に届く前に触手のような手は止まった。
かたいドラグの高質化したウロコは鉄板のようにかたいがそれをやすやすと貫く。
アンドロマリウスの2本の蛇の手が、前後左右から俺に襲い掛かってくる。
俺は体を回転させボクサーのように身をこなしそれをかわそうとするが、肩の傷からの出血で思うように動けなかった。
「あいつは・・ラウル様ここは魔人全員で死守します。ラウル様だけでも・・」
カララが俺に言うが、答えは決まっている。
「だめだ!身を犠牲にすることは許さない。」
「しかし!」
カララは身を貫かれることなく、鋭い蜘蛛の手足でアンドロマリウスの攻撃をしのいでいた。
俺に考える余裕が出来た。
周りを見ると、ライカン、竜人、ダークエルフ、オーガ、ドワーフ誰もが防戦一方で、ひざをついてしまっている者がいる。倒れているやつは・・ゴブリン隊長が全滅している。
《やばいな、このままでは全滅してしまう。どうする?エリクサーをかけた弾丸は効いたぞ・・》
「ラウル様!あぶない!」
カララが猿デモン数匹から押さえつけられて身動きが遅くなり、俺にアンドロマリウスの蛇の手が襲い掛かって来た!
「くっ!」
かろうじて避けるが思うようにいかない。体から力が抜けつつある。
そこにミノスが体をはさみ斧で蛇の手を防いだ。すると斧が砕け散ってしまった・・ミノスは蛇の手を両手でつかみ体の筋肉がはちきれるほど力を入れて抑え込む。そこに巨人化したスラガがやってきて蛇の手を一緒に抑え込んだ瞬間・・
二人の体が浮かび上がり地面に強烈にたたきつけられてしまった。
「ぐあぁ!」
「うぐぅ!」
何というパワーだ。彼らは重機並みのパワーがあるというのにそれをやすやすと振り払う。
「おっほっほほほほ。しぶといねえ・・私を相手にしてこれだけ持ちこたえるとはさすがは魔人と言ったところか。お子様のような児戯でよくかわすこと・・だが、めんどくさいんだよ!逆らうのを辞めて死ね!」
もう動きまわっている者は20人に満たない。体から血がでて抜けていく。
《やばい・・俺の力が・・魔力が・・マジか?終わるのか・・ここで。》
その時だった。
「こっちだ!」
俺達の後方、北側からファートリアバルギウスの兵士が300あまりこちらに向かってきた。
「うおおおおおお」
「魔人を討ち取れ!」
「アンドロマリウス様が来てくださった!」
《来た!俺の・・補給源が!》
俺は12.7mm重機関銃を召喚し、後ろから来た人間に向かって掃射した。
ガガガガガガガガガガガ
「うあぁぁっぁぁ」
「ぎゃっ!」
「ぐぁ!」
バタバタと人間が倒れていく。
「おほほっほ、人間をいくら倒しても意味がないわ」
アンドロマリウスが人間など意味がないと嘲笑する。
人間の魂を喰った俺の中のデータベースが開く。
場所 陸上兵器LV4 航空兵器LV2 海上兵器LV3 宇宙兵器LV0
用途 攻撃兵器LV6 防衛兵器LV3
規模 大量破壊兵器LV2 通常兵器LV6
種類 核兵器LV0 生物兵器LV0 化学兵器LV2 光学兵器LV0 音響兵器LV2
対象 対人兵器LV7 対物兵器LV5
効果 非致死性兵器LV2
施設 基地設備LV3
日常 備品LV4
連結 LV2
連結LV1を押した。
そのまま12.7㎜を猿デモンに向けてみる。
ガガガガガガガガ
猿デモン3匹が粉々に砕け散っていく。
1,2,3,4
復活しない。
《よし!》
俺の元始の魔人の魔力をそそいだ兵器が猿デモンにもろに効きやがった。
光系の魔力では少しの影響しかなかったが、元始の魔人の系譜の力でねじ伏せたようだ。
「な・・なんだ!」
アンドロマリウスが初めて動揺した。
「全員武器銃をひろえ!そして敵に撃ちまくれ!」
「「「「「は!」」」」」
起きてたたかっている者は17人になっていた。しかしカララを筆頭にギレザムやゴーグ、ウルドが素直にM240機関銃を持ちなおし構えてくれた。
俺はデータベースの連結LV2を押す
「撃て!」
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
「ギャァァァァッァ」
「グゲェェェェッェェ」
「ギョエェェェェェ」
猿デモン達が消え去っていく。そして射線はアンドロマリウスにも向かう。
「ガァァァァァァァ」
アンドロマリウスの体が穴だらけになって、手先足先から崩壊が始まった。
「なんんだ!なんだ!この攻撃は!痛い!いだあぁぁぁい!ぐああああああ!」
アンドロマリウスの目から血が流れてきた。手が落ちる!しっぽがちぎれて飛び散り灰になる!目の玉が一つ落ちてきた。
「この魔力!この力!これは!あなたは・・あなたさまわぁぁぁぁ!もしや!もしやぁ!!」
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガガガガガ
「大変もうしわぁぁけけぇぇぇござあぇいまぁぁあ」
アンドロマリウスが絶叫しながら空中に灰となって流れ消えていく。
そして連結LV2により魔人が撃つ銃に魔力を吸われ続け・・俺がぶっ倒れてしまった。
意識が・・暗黒に落ちていく。
「ラウル様!」
マリアの声だ。
「ラウルさまぁぁぁ!」
カトリーヌの声
「ご主人様ぁぁぁ!」
シャーミリア・・
「ラウッ・・・・・」
誰だろ・・
完全に意識を手放した。