第112話 魔人会議
侵攻作戦のために何をすべきか?
魔人が集まって会議をする事になった。オブザーバーとしてポール王とクルス神父が参加する。
これから大陸に進出するにあたり、まずは拠点を作っていく必要があった。
グラドラムからルタン町までの間にある村はシナ村という。俺を襲ったシャーミリアがゾンビ化させてしまいそこは今も廃墟になっている。
シナ村にはいまだに敵兵も民も入っていない廃墟のままだった。まるでそこに侵攻してみろ!と言われているように思える。おそらくだが罠がしかけれらている可能性が高いと考えられる。一度発動してしまえば魔法陣は消えるだろうが、いつどこで発動するか分からない以上そこには入れないでいた。
危険なのはそのままルタン町まで侵攻してしまうと、転移魔法で中間地点のシナ村に大量に兵隊を送り込まれ、補給路が分断されてしまう事だ。補給ラインが切られてしまうと先行した隊がかなり危険な状態になってしまう。
シナ村に拠点を築くか焼き払って更地にしてしまうか、更地にしてしまえば敵兵が駐屯できなくなるためリスクが減るかもしれないが、こちらも拠点を作るのに時間がかかってしまう。敵兵がもしインフェルノを設置していればもとより拠点として考える事は出来ない。
そこで考えたのが、カトリーヌから聞いた情報から仮設を立てて行動指針をたてるということだった。
「カトリーヌが言っていた話なんだけどさ、モーリス先生は反乱分子の何らかに関わっているということで間違いないかな?」
俺がカトリーヌに聞くと頷いて答える。
「間違いないと思います。私の身の危険も考えて詳しく教えていただけなかったですが、モーリス先生の協力者はかなりいるとみていいと思います。何度か密偵のような人が来ていたのも見た事があります。私をグラドラムの使用人に潜り込ませてくれた聖女様は間違いなくそうでした。」
「そうか。」
するとクルス神父もそれに合わせて話してくる。
「私がラシュタル王国にいたころ、ファートリア神聖国から布教活動できていた枢機卿がいたのですが・・その方もおそらくはこのような争いに加担する事はあり得ない人格者でした。その時に美しい聖女様が一緒にいたのですがもしかすると同一人物かと。」
「その人の名前は何というのですか?」
「サイナス・ケルジュ枢機卿です。ファートリア神聖国の枢機卿でございますが、このような事を許すような人物ではないと考えられます。」
「信用できるのですか?」
「ファートリアからグラドラムに送られてきた神官とは違うかと。このバカげた戦争が起きる前からラシュタルの民のために奉仕しておりましたが、かなりの人格者であったと思います。」
「わかりました。名前は憶えておきましょう。」
少しでも情報をかき集めてどうにか数の差を埋めたかった。
「まずは仲間になれるかどうか、その2名を探しに行って話をする。そのための先発隊を決めるということで良いかな?」
「「「「「異議なし」」」」」
「あとは残った者たちでグラドラムを要塞都市化してもらおうと考えている。設計の構想は全てドワーフのバルムスに伝えてある。それに従い我らのグラドラムを難攻不落の都市にしようと思う。」
「「「「「はい!」」」」」
全員一致でファートリアバルギウス反抗勢力を探す調査に出ることと、グラドラムを要塞都市にするということで決定した。そして俺はさらに考えていた事を口にした。
「そしてさらに俺に考えがある。誰かこの世界には数か所、大迷宮や魔獣の森というのがあるのを知っているかい?」
「おお知っておりますぞ!」
クルス神父が言う。
「私も多少は知っているわね。」
イオナも合わせて言う。
「なにぶん私がモーリス先生と父のグラムから聞いたのが幼少のころでしたので、記憶がほとんどないのです。西の山脈が魔獣の巣窟になっている以外の事を知らないものですから、一から教えていただけますか?」
「お安い御用です。」
「私も補足できたらします。」
クルス神父が大まかな世界の地図をかき出してくれた。イオナも知っている情報で補足してくれる。
北東の果ての海の先に魔人の国グラウス
北東の果てにグラドラム国
グラドラムの西で大陸の北のラシュタル王国
北西の果てにあるシュラーデン王国
シュラーデンとラシュタルからグラドラムの西の下側までの広大なユークリット公国
グラドラムからユークリットの平原を抜けて南にファートリア神聖国
ファートリア神聖国より西に大きく広がるのがバルギウス帝国
バルギウスの南に広大に広がる二カルス大森林
ファートリア神聖国の南で二カルス大森林の東には小国のシン国
シン国を抜けたさらに南には二カルス大森林を囲むようにリュート王国
リュート王国の南西にマナウ大渓谷
リュート王国の南にはザンド砂漠がありそこには砂の国アラリリス
さらに南には南国のモエニタ
「私の知識でざっと知っているところではこんなところですな。」
クルス神父がざっくりと教えてくれた。
「海の外には国はないんですか?」
「この国で認識されているのはグラウス魔人国だけです。人間は魔人のように大海を渡る事が出来ないのです。」
「そうでした。」
《ということは・・この大陸以外にも国がある可能性が・・》
「それで魔獣が住み着いている地域や迷宮はどこなんですか?」
「まずは二カルス大森林でございますな、誰も奥地まで入り込んだことがございません。」
「なるほど・・そこに知能の高い魔人や魔獣がいる可能性はあるかな?」
「もちろん人間が入り込んだことはございませんので、可能性はあると思います。」
「あとはどこなんでしょう?」
「マナウ大渓谷にあるアグラニ迷宮」
「ああ!迷宮かきいたことある。幼い頃グラム父さんに聞きました!」
「ええ!あの迷宮に父上が行った事があるということですか?」
「冒険者の時に潜った事があるそうなんです。」
「お父上はよっぽど腕が立つ御方だったのでしょうね。」
《そうだった・・グラムは特撮ヒーローのような強さだった・・それなのに・・》
「・・・・」
「失礼しました。つい無神経に・・」
しまった。ついしんみりと考え込んでしまった。話が中断してしまった・・
「いえいえ!本当に父は強かったんです。あとはどこですか?」
「ザンド砂漠にある幻のスルベキア迷宮神殿ですね。」
「幻?」
「ええ、砂の上を動くため見つからないのです。伝承によるものなので本当にあるのかどうかは分かりません。」
「そういう事ですか」
「そして皆さんがご存知の西の山脈の奥にある、ナブルト洞窟でございますね。」
「なるほど・・」
「4大迷宮と呼ばれております。」
「わかりました。で・・2名の人間の捜索に合わせて、その4大迷宮の魔人を味方につけるための旅に出たいと思います。」
「「「「「なんですと!?」」」」」
「魔人の国のみんなは仲間になってくれたんだ、大陸の魔人や魔獣も仲間になってくれる可能性がある。それはグリフォンのイチロー、ニロー、サンロー達が教えてくれた。」
「確かにそうではありますが・・」
ギレザムが不安そうに言う。
「まあ確証はないが、そう確率の低いものではないと思うんだ。話は通じなくても可能性はあると思う。」
「まあ確かにそうかもしれません。」
「我々も最初は想像もつきませんでしたからな。」
ライカンのジーグと竜人のドラグが頷いている。
そしてポール王とクルス神父の二人は、そこにたどり着く事さえ困難な迷宮ばかりだったため、俺の意見に対して言葉を発する事が出来ないでいた。
「だからこの捜索隊に参加する人員の選出では、いろいろな有事を想定した人物を選ばなければならない。」
実はもっとも安全に移動する方法が俺にはあった。
俺のデータベースがバージョンアップした時にかなりのものが呼び出せるようになっていた。
場所 陸上兵器LV4 航空兵器LV2 海上兵器LV3 宇宙兵器LV0
用途 攻撃兵器LV6 防衛兵器LV3
規模 大量破壊兵器LV2 通常兵器LV6
種類 核兵器LV0 生物兵器LV0 化学兵器LV0 光学兵器LV0 音響兵器LV2
対象 対人兵器LV7 対物兵器LV5
効果 非致死性兵器LV2
施設 基地設備LV3
日常 備品LV4
連結 LV2
実はグリフォンを乗り回したことで航空兵器が加算され、さらにシーサーペントのペンタを使役したことで海上兵器が召喚可能となった。前回のバージョンアップから今の段階で変わってはいないが、特筆すべきなのは航空兵器LV2と海上兵器LV3だった。
航空兵器LV2をクリックすると
LV1輸送機
C-5ギャラクシー ガルフストリームC-20 リアジェットC-21 C-141スターリフター V-22オスプレイ C-130ハーキュリーズ
An-72チェブラーシュカ An-74チェブラーシュカ An-225ムリーヤ
LV2戦闘ヘリ
AH-1コブラ AH-1Wスーパーコブラ AH-1Zヴァイパー AH-64アパッチ AH-64Dアパッチ・ロングボウ
Mi-24ハインド Mi-28ハヴォック Ka-50ホーカム Ka-50-2エルドガン Ka-52アリガートル
こんなものが召喚できるようになった。最大の難点がひとつ・・俺を含め誰もが航空機の操縦など出来ない事だった。C-130ハーキュリーズが唯一のプロペラ機だから出来るとか出来ないとかの問題ではなく、ヘリコプターだから大丈夫とかの問題でもない。なにひとつ出来るわけが無いのだ輸送機に関していえば滑走路もない。
海上兵器LV3をクリックすると
LV1上陸用揚陸艇
LCU汎用揚陸艇 LCACホバークラフト型揚陸艇 輸送艇1号型
L-CAT双胴揚陸艇
LV2ヘリコプター揚陸艦
ボクサー級強襲揚陸艦 イオー・ジマ級強襲揚陸艦
LV3イージス艦
タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 コンステレーション級ミサイルフリゲート
こんごう型護衛艦 あたご型護衛艦 まや型護衛艦
が出てくる。
実は俺はまだこの船のどれも召喚したことが無かった。もちろん召喚するタイミングが無かったということもあるのだが、運用が出来なかったというのが大きい。BMP-T テルミナートルターミネーターを使いこなすまでもかなり時間がかかったのだ、船や航空機を訓練する余裕などなかった。航空機の訓練をして墜落して死亡者を出したり、船舶の訓練で沈没したりしたらと思うと呼び出す気になれなかったのだ。
おそらくヘリや輸送機やイージス艦をつかえばかなり安全に兵士を運び、相手を圧倒的に攻撃する事が出来るのだが・・前世でも全くやった事が無い。俺が航空自衛隊のパイロットだったなら・・海上自衛隊で航海士でもやっていたなら・・と思ったところで、普通のサラリーマンでサバゲーオタクの俺がどんなに背伸びをしても無理な事だった。
「隊の選抜は各隊長に任せたいところだが申し訳ない。ミノタウロスとオークとスプリガンは先行調査隊からは除外せねばなるまい。目立って標的になりやすくなる。各種族から一人ずつ連れていくことにする。そして逆にこの二つの種族はグラドラムの護衛及び要塞化にその労働力が必要不可欠だ。」
「はい!留守はお任せください」
ミノタウロスの隊長タロスが代表して答えた。
「そして各種族から3名の人員を選抜してくれるとありがたい。」
「ラウル様みなが行きたがっておりますが」
ライカンの隊長であるマーグが俺に告げてくる。
「それはありがたいんだが、まずは拠点を盤石な物にしたい。そして虐げられている人間を迎え入れる場所が無いと困るからな。」
「わかりました、では・・参加する隊長格はくじ引きで決めるというのではどうでしょう?」
「そうだなそれでいい。」
「わかりました。では6つの種族でくじ引きを行い3つの枠をひいた隊長が行くということでよろしいですか?」
「ああ、かまわないよ。」
するとミノタウロスとスプリガンとオークの隊長以外が色めきだつ。
「あ、ちなみに俺が作戦上必要だと思った種族は勝手に連れていくけどいいな?」
「それは当然至極」
「じゃあくじ引きしよう」
「「「「はい!」」」」
マリアとアナミスが選出するためのくじを作り始めるのだった。