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第104話 快楽殺人者 ー大神官アヴドゥルー

くっそなんだよあのカラス!


カラスのバケモノから変な約束をさせられて俺は目を覚ました。


「なんだかわかんねえけど、変な約束させやがって!」


俺が目を覚ますとそこは貧しそうな家のベッドだった。


「あなた、目覚めたわよ。」


なんか貧相な女が俺をのぞき込んでいる。


「よかった。熱も下がったしこれで大丈夫だろう?」


質素な男が俺をのぞき込んだ。


《なんだこいつら?ボロボロの服を着やがって、とにかくこんなところ出て早く家に帰らねえと》


そう思って体を起こそうとした時だった。


《あれ?体が動かねえ・・なんだ?》


手を上げてみると赤ん坊の手だった。


《はぁ!?俺は赤ん坊になってるっていうのか?》


何だか知らねえが結局俺は貧乏な牧師の家に生まれたらしい。


死んで生き返ったらこのざまだった。



5歳ぐらいになって分かったんだが、なんかこのボロボロの服を着た親はどうやら神父らしかった。家は貧しい教会で集まった献金もわずかに自分たちが暮らせるだけを残して、貧しい子供なんかの救済にまわしたりしていた。おかげでまったく裕福な暮らしなんかできねえでいた。


《まったく馬鹿な親だ。せっかくの献金を自分たちのために使わねえなんてどうかしてやがる!》


いつも皆にいい顔をしてせっかくもらった献金を慈善のために使う。子供の俺にも優しい親だったがまったくもってバカなやつらだった。前世の親にくらべれば飯を食わしてくれる分いい親と言えねえ事もねえが、金を無駄に人のために使うなんて何を考えているのか分からなかった。


しかしこの教会にはいつも人が来る。こいつらは神に救いを求めてくるやつらだった。どうやらこの国自体が神を信仰する神聖国家らしい・・そこでこいつらはこうやって世の為、人の為頑張っているというわけだな。


俺はといえばすでに小さい動物を捉えては殺していた。どうやらこの世界では動物を殺してもそんなにおかしなことじゃねえらしい。森にいくと小さいウサギみてえな奴がいて牙なんか生やしていた。最初は危ないと思っていたんだが簡単に罠にかかる。ぶら下げては尖った木を刺してじっくりと殺していた。たまに森で火をおこして焼いて食うが、ほとんどは捨てていた。



それから3年、8才になった俺は今日も森の中で生き物殺しをしていた。


「やっぱりよ・・動物じゃあ物足りねえ。人間じゃねえと面白くもなんともねえな。」


貧困の村で気高くも人助けをしている神父の子供が、森でさんざん動物を殺しているなんて冗談にもならねえが、俺はすでに物足りなさを感じていた。毎日毎日森で動物殺しをして飽きが来ていた。


《つまんねえな。とりあえず今日はこのぐらいにして帰るか》


俺はつまらなくなって家に帰る。するといつものごとく教会にはたくさんの人が祈りに来ていた。


《まったくもって不毛な事をしてるやつらが多いな。》


そいつらの祈りが終わって帰ると家では質素な夕食となる。この家は1日2食しか食わねえが俺は森で肉を焼いて食ってるので腹が減る事はなかった。飯が終わると母親はいつも文字を教えてくれる。前世の母親に爪の垢を煎じて飲んでほしいくらいだ。これだけは本当にいい事だと思っていた。前世では学校なんざ行った事もなかったし、字はなんとなく覚えて読めるようになっていったが、それも20才くらいになってからだった。この世界の文字は見た事もねえ文字だが本ぐらいは読めるようになった。


教会には結構本が置いてあって夜は本を読むようにしていた。


「あなたは本の虫ね。」


母親が俺に話しかけるが特に返す言葉もねえ。ただただ無心に本を読んでいた。それからしばらくはそんな暮らしを続けていた。



ある日の夜だった、俺の夢の中に見た事のあるやつが出てきた。


あの・・カラス野郎だった。


-どうだ?この世界は?-


「ああ、悪くねえな。」


-だいぶ生き物を殺してるみたいだな-


「おう結構面白いぜ。あのウサギみてえな奴はネズミなんかより殺し甲斐がある」


-おかげで我もお前の夢に出てこれるようになった-


「どういうことだ?」


-お前が生き物の命を奪わないと我の力が増えないからだ-


「ああ俺がウサギを殺しまくったからお前は出てきたってわけか?」


-まあそういう事になるな、だが魔獣では力がほとんどたまらんわ-


「なんなら力がたまるんだよ。」


-人間だな-


「人間?どっちだって同じだろそんなもん。」


-違うのだ!人間の魂は重く深い業を背負っておる、その力はとても大きく魔獣などとは違う-


「俺はまだ小さいからな人間なんて殺せねえよ。殺したくてウズウズしてはいるがな。」


-そうだろうな・・お前が魔獣を殺したことでようやく我はお前の夢に出てこれた-


「どうしろってんだよ。」


-お前には魔力が備わっている。その魔力をこの世界の禁術とされている転移魔法につかうのだ-


「転移魔法?なに言ってんだ?俺がそんなもの使えるわけないだろう」


-お前に膨大な魔力が無ければお前を選んでなどおらぬわ-


「はあ?どうやって使うんだよ。」


-文字は読めるようになったか?-


「ああこっちの母親に教えてもらったからな。」


-ならばこの教会の地下に禁書庫がある、そこにボロボロの魔法の本が眠っている床をさがせ-


「禁書庫?んなもんがあんのか?」


-我は入れんがな人間なら入る事ができる-


「ここに地下なんかあったか?」


-祭壇の下に通じる道がある-


「ほう?そいつはしらなかった。」


-今ならだれにも気が付かれずに行けるぞ-


「おもしれえ、じゃあ行ってみるか。」


-転移魔法を極めた先に召喚魔法というものがある、それを習得し早く我をよみがえらせるのだ-


「名前を言うんだっけ?」


-そうだ、それが分かったらすぐに行け-


スーッとそのカラスは俺の夢から消え失せた。



するとパチリと俺の目があいた。


「夢か?なんだか胸糞わるい夢だったな。あのカラス・・なんてえ名前だっけ?」


しかし夢とはいえなんかやたら現実味があった。


「よし、行ってみっか。」


俺は寝床をでて礼拝堂に行く。


《礼拝堂の祭壇の下だっけな》


祭壇の下になにか板のようなものがある。祭壇をずらしてその板を取ると地下に続く階段が出てきた。


「あった!」


《あいつの言うとおりだった。階段があるじゃねえか!》


俺はランプを片手に地下に降りていく。すると古びた墓地の中にはガイコツが大量にあった。


俺は何かに誘われるように奥まで進んでいくと、きたねえ扉があったので開けてみる。するとそこには大量の本が置いてあった。


《あいつが言ってたのはここだろうな。そして床に空くところがあるとか言ってた。》


ランプでくまなく探していくと床に開きそうなところを見つけた。そこを開けてみるとボロボロの本がしまってあった。


「これか・・」


そのホコリまみれの本を自分の部屋に持ち帰った。ランプをかざして本を読んでみることにした。


「なんだよ!これ習った字が書いてねえじゃねえか!」


母親に習って本が読めるようになったのに、俺はその本の文字を知らなかった。


「クソ面白くもねえ!」


俺は適当に本を放り投げて寝た。




それから2年が過ぎ10才になっていた。


あの本は自分の部屋に隠してほったらかしにしていた。


俺が生まれた村はファートリア神聖国っていう国の片田舎だということが分かった。カデア領のホロキ村という村だった。人はそこそこいて村にはそこそこ人がくる。北のユークリット公国という国からの旅人がバルギウス帝国を迂回して、この村を通っていくためかなりの旅人が通行するのだった。逆にユークリット公国へ向かう人間もいた。



そして俺はなんと・・学校に通わされていた。


学校なんて前世で一度も行った事がなかったが、神父の息子ということで学校に通う事が出来たのだ。そこには村長の息子や商人の息子などが通い、村民でも裕福な家の子供が通っていたのだ。俺は貧乏ながらも神父の息子として学校に通う事が出来ていた。


「おいお前!またボロを着て学校に着やがって!」

「まったくだ、くせえったらありゃしねえ。」

「貧乏教会の息子だからって通わせてもらってんだ!ありがたいと思えよ!」


俺は・・学校ではいじめにあっていた。そりゃそうだ何を考えてるのかもわからねえ・・目つきの悪いボロを来た俺が普通の子供と馴染めるわけがねえ。


《でもおもしれえ。こいつらは殺し甲斐がありそうだ。》


俺は薄ら笑いを浮かべてそいつらからの暴力を黙って受けていた。


《いやぁ・・こいつらはかわいいな!》


殴られれば殴られるほど俺の心の底から湧き上がってくる衝動は、純粋な殺人の衝動だった。


《この小さな拳!くりくりとした目!半ズボンの中にあるかわいい物!すべてが愛おしい!》


衝動を抑えるのが難しくなってきた。


俺は3人のいじめっ子が学校が終わって帰るのを待っていた。すると3人が学校から出てきて家の方向へ歩いて行く、俺はその後ろをひたひたとついて行くのだった。一人が家に入り二人が道の分岐で別れた。俺は体の小さな村長の息子の後ろをついて行く。



人気のない路地に入っていくのを見て一気に駆け寄っていった。


目の前には村長の息子が歩いている。


歩くその両脇には雑木林が鬱蒼と茂っていた。村長の邸宅は大きく、村から少し離れたところにあった。そこにむかい村長の息子が歩いて行く。


俺はタオルのような布に大きな岩をくるんで、それを振り回し背後から村長の息子の脳天に直撃させた。


ベキョッ


頭から血を流し村長の息子は倒れた。


俺はその足を引っ張ってずるずると雑木林の中に引きずり込むのだった。


こっちの世界に来てから初めての殺人を犯した。


「やっぱりよ!人間はちがうな!」


俺は悪魔のような笑顔を浮かべて雑木林の奥まで、倒れた村長の息子を引きずって行った。


《一発で死んだか。なんか俺の力が強い気がするな・・》


俺はその辺にあった棒きれをひろい土を掘り始めた。そこに村長の息子を投げ入れて土をかけた。その上にその辺に落ちていた腐葉土をかけて隠した。気分は高揚していた。


《なんて気持ちがいいんだ!たまらねえな!》


俺はその場を後にして家路についた。



次の日、村は騒ぎになっていた。村長の息子が学校から帰ってこなかったからだ。冒険者による捜索もされたようだが見つからなかったようだった。


俺は神父のオヤジと母親からこう言われた。


「人さらいかもしれん。アヴトゥルも十分に気をつけるんだよ!」

「あなたがいなくなったら私たちはどうしたらいいか・・気を付けるのよ。」


「わかったよ、父さん母さん!危ない所には近寄らない事にするよ!」


素直にそう答えた。母親は俺を抱きしめて頭をなでていた。


俺は下を向いてニヤリと笑うのだった。



その夜・・またあいつが出てきた。


-おい・・やっと一人か・・-


「おう!お前か!また出てきやがったな。」


-まったく無能なやつだ、やっと1人か-


「はあ?うるせえよこっちは気分が良いんだ!消えろ!」


-そういうわけにもいかん、まあ一人殺したことで我に力が注ぎ込んだのは事実-


「それでいったいなんだよ。」


-お前はまだ転移魔法を身につけてはおらぬな-


「あああの本か!読めなかったよ!」


-なるほど古代神聖文字か、ならばそれをお前が読めるように出来るやつを遣わしてやる-


「そんなことできるのか?」


-お前が一人殺したことで我に力が蓄えられたからな、お前に使える下僕を差し向けてやるわ-


「下僕ねぇ・・」


-まあよいわ待っておれ-


「へ、俺は俺で好きにするさ。出しゃばんなよ!」


-誓いを違える事は出来ぬぞ・・楽しみにしておるがよい-

次話:第105話 悪魔の子供 ー大神官アヴドゥルー


お読みいただきありがとうございます


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引き続きお楽しみ下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 《この小さな拳!くりくりとした目!半ズボンの中にあるかわいい物!すべてが愛おしい!》 いや…もう本当にここだけではないのですが、ホントーに異常極まりないですね…まぁ…シリアルキラーなんです…
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