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第10話:ブラック労働とミリメシ

武器描きに勤しんでたらグラムお父さんが帰ってきた。


データベース作りも大事だが、家族の会話も大事なのだ。家族思いのグラムの話をきいてやろう。


食卓を囲みイオナと俺はグラムの話を聞くこととなった。マリアはグラムの後ろに立っている。


「王都に来て1年になるな。」


グラムが話出す。


「今の状況についてだが…」


「「はい。」」


「ラウルには難しい話になってしまうが聞いてくれ。ユークリット公国はいま難しい情勢にあり、俺が王都に呼ばれた。」


この国はユークリットと言うのか…初めて知った。なんかのんびりした名前だ。


「南にあるバルギウス帝国が強大になり、国交もかなり不利な条件で行われている。さらに南の国々との交易もバルギウス帝国を迂回する事となり、バルギウスを通れば大きな関税がかけられ我が国の負担になっている。」


ふむふむ。こちらの世界でも国同士の軋轢があるということか。


「北のラシュタル王国やシュラーデン王国などの我が国の属国は我がユークリット国頼りでもあり、際である我が国がバルギウス帝国との国交を間違えば、2国はさらに厳しい情勢になるだろう。」


俺が住んでるこの国は属国もある、そこそこ大きいと言うことかな?


「東のファートリア神聖国とは友好的な関係を結べているが、やはりバルギウスとの関係で厳しい立場にある。ユークリットとファートリア連合の話も出ているようだが、なかなか話が進まずにいるようだ。」


うーむ。うちはイオナの家が上級貴族だから裕福っぽいのに、飯が質素なのは貿易の都合か…と言うことは、南の方が農業が盛んでも物資が入らないのか?


「西側には翼竜や地竜がすむ山脈がそびえており、人が住む地ではないが、その向こうには海がある。海からの航路が確保できればな…確保できたところで、海も魔物がいるから安全ではないが。」


竜って、ド、ドラゴンいるのか?竜ってそうだよな。異世界だもんな、いるよな!ドラゴンの話が聞きたいけど、口をはさめる雰囲気じゃない。


「まあ、難しい話はいい。俺はそのために王都に呼ばれているのはわかっていると思う」


えっと、王宮の警備の為に呼ばれたんだっけかな?


「バルギウス帝国に不穏な空気がある事は王都に来る前に言っていたと思う。軍備を増強しているという話だ。まあ戦争だけが目的とも限らんがな。」


あ、そうなんだ。


「西の山脈裾野に広がる樹海付近の村には、魔物が出て来ているとも聞く。何かが動いているのかもしれん。今は調査隊を出しているがな。バルギウス帝国の軍備増強もそれが原因かもしれん。」


俺は思わず聞いて見た。


「村は大丈夫なんですか?」


グラムはしかめ面で言う。そのことに対し怒りを含んでいるようだ。


「甚大ではないが、子供にも被害が及ぶこともあるそうだ…」


食卓が、しん…と静かになる。グラムが続けていう。


「だから俺が王都に呼ばれたんだ。騎士団長の元で補佐をしながら、軍の増強や整備の手伝いを申しつかっている。さらに王都の警備や軍の強化のためにだ。」



「父さんがそれに選ばれたんですね。」


グラムに大きい責任があると聞いて、尊敬の眼差しで聞いてみる。


「そうだな。まあ選ばれた理由は西に魔物が出たことで、冒険者の知識が必要になったのが大きいだろう。冒険者に聞けば良いのだが、貴族の冒険者あがりで軍人そして騎士になった俺みたいなやつのほうが、兵士を指導する上でも都合が良かったのだろうな。」


うわ!責任重大な管理職じゃないか。


「軍組織の再編も終わり、王城警備の体制や人員配置も目処がついた。軍人や警備の騎士には安全な魔物の討伐の仕方も教えてある。あとは辺境の領軍に対しての動きや、戦い方の指導が終われば俺の役目はいったん終わる。あとは一領主に戻って自領の民のために働くだけだな。」


あらーぁ、ブラック企業の中間管理職並みにこき使われてる。大丈夫?グラム寝てる?いや寝てくれ。


するとイオナが言った。


「あなた、あまりご無理をなさらぬよう。お身体をご自愛くださいますよう…」


グラムは笑いながら。


「まだしばらくは休めんが、どうということはない。お前達と早くサナリア領に帰る為だ。こんな任務だとわかったら俺ひとりで王都にきたのだがな。」


「いいえ、あなた。私は好きで一緒にいるのです。マリアには付き合わせてしまいましたが」


「いいえ奥様!私は嬉しいのですよ。田舎の町娘をこんな都会に連れてきてくださるなんて、毎日がたのしくて仕方がありません。」


マリアがうれしそうに言っている。


そうだよな。異世界の東京からきた俺はこの王都でも田舎だが、海外の観光名所に住んでるようなものだ。食い物が健康食みたいなのと、サバゲショップに行けないのが残念なだけだ。


「とにかく、もう間もなくだ。間もなく役目が終わる。それまではしばらく家に帰られんかもしれんがよろしく頼む。」


「はい」

「かしこまりました。」


イオナとマリアが返事をしたので俺も返事をしとく。


「はい」


するとグラムが言う。


「ラウルはもうすぐ4才の男だ、母さんとマリアを頼むぞ。」


まあ、幼児の俺に出来ることはほとんどないが、まかせとけ!


「はい!お任せください!」


俺の返事にグラムは目を細めて笑った。


「あと10日ほどでラウルも4才ですわ。」


イオナは言った。


「そうか!では俺が落ち着いたら一緒にお祝いをしよう。」


グラムが喜びながら言うので俺はお礼を言った。


「ありがとうございます。」


「楽しみねラウル」


イオナも楽しそうだ。


「はい!」


しばらく楽しく話しながら食事をしていたが、イオナが話しをし始めた。


「そういえばあなた。ラウルが何か描き出したそうなんです。」


ん?


するとグラムが、


「おお、絵でも描き始めたのかい?」


と聞いてきた。


おいおいおい!ヤバい。あれを見られるわけにはいかない。説明がつかないぞ。どうする?


イオナが追っていう。


「私もまだ見せてもらってないのよ。何を書いているの?」


焦るな。普通の3才だ。そんな子供の描くものなんて限られている。


「父さんの絵を描いています。」


「俺の絵か!みてみたいな!」


ヤバ!墓穴を掘った!えっと


「あの、描き始めたばかりで出来ていません。すみません。」


「わかった!出来上がりが楽しみだな。」


俺はグラムにまた頭を撫でられた。とにかく乗り切った!



……その日の夜。


俺は黙々と武器のデータとイメージを紙に書いていた。やっぱ楽しい。家の中は寝静まっている。俺はと言えば全然眠くならない。俺の頭の中は某世紀末の暴走○のように、「ヒャッハー」といいながら、パソコンで作っていたデータがどんどん蘇ってくる。


右手が走る。産業用ロボットのように延々と武器を書き付ける。すると不思議な事に気がついた。紙に記した分だけの武器の記憶が頭の中で、データベースのように見えてくる。まるでタブレットのアプリみたいに。


指でスクロール出来そうだ。


目を閉じると背面が真っ暗で武器が浮かび上がる画面がみえてきた。もしかするとスクロール出来ちゃう?っと手を伸ばした。するとするすると画面が動き出す。自分で手書きした分だけ表示されている。


ん?


これは?イメージじゃないぞ。実際にデータに触れられているじゃないか。これは…魔法なのだろうか?空間にデータだけが理路整然と浮かんでいた。


パソコンやスマホを呼び出そうと思っていたのが失敗したはずだ。イメージで実現化した?・・しかしそれとは違う感じだ、あくまでも俺がイメージしたように3DCGが浮かび上がっている感じだ。画面の暗闇に武器が浮いてる。しかしCGではなくリアルな質感を感じる。


これ…子供の頃、SF映画で見たことあるぞ。空中に出てきた画面を手で操作すると画面をどけたり、ウインドウを何枚も開いたり。


でもこれはそれとも微妙に違う。ただ暗闇に俺の描いた武器が列をなして浮いているだけだ。



「もしかして…!」


凄い事を思い立った俺は、また武器を紙に書き足す事にした。そう架空の武器をだ。


まずは、アニメで見たビーム○イフルだ。これをかいたら凄いことが起きるんじゃないか!!


描き終わって先ほどのデータベースのイメージを思い浮かべてみる、



ない。


他の武器を描いて見る事にする。


つぎは、銀河帝国と戦うフードをかぶった騎士が、光の刀で戦っちゃうあれだ。ロマンだ!今度はしっかりイメージして書き出す。


ない。


ガッカリだ。どうイメージしてもアニメや映画のシーンしか出てこない。


これは…間違いなく、前世にあった実際にある武器しか出てこないしくみらしい。もしかしたら向こうの世界から召喚してる?とにかくしくみが理解できない。


では、実際にあった武器を書いてみる。


アメリカがベトナム戦争でつかったあれだ。


M9火炎放射器


大量に人を殺傷したり、草木や家を燃やすのに使われる凶悪きまわりない兵器だ。燃料タンクを背負うため機動性は悪いがかなりの被害をもたらす。乱戦では使えないが洞窟に籠城したりする敵には非常に有効である。


しっかり描き終わると…


完璧な形で出てきた。


やはり前世で実在した武器じゃないとダメらしいな。俺のイメージの問題かもしれないが…


これ、検索できるかな?


俺は不意に1番最初に描いたP320を思い浮かべた。すぐにP320の画面が呼び起こされる。あ、でてきた。指で横にスクロールしてみる。おそらくこのスクロールも俺がイメージしているだけなのだろう。


P320のフルサイズ、コンパクト、サブコンパクトとサイズ毎にでてきた。


成功だ。


凄いぞ!


俺は興奮して思わずP320のサブコンパクトに触れてしまった。


ゴトリ!!


《わー、やっちまった!!間違えてだしちまった!どうしよう。》


目の前に落ちたP320を見て呆然とした。でも…カッコいい…グリップを握ってみるが小さい手では引き金にとどかない。


おもむろに弾倉を外してみる。空だ。そうだ!


俺はそーっとそーっと部屋をでて、クローゼットにいそいだ。抜き足差し足そーっと。


弾丸とナイフを隠しておいた箱をとりだして、中から弾丸だけをとりだす。


P320に装填してみる。間違いなくピッタリだった。


うう、打ちたい。空き缶でいいから打ちたい。でも手が小さすぎるし、無理だろうな。早く成長しろ!俺!


仕方なく拳銃を箱にしまって、クローゼットの隠し場所に置いた。そしてまたそっーと部屋に戻る。


「ふう…」


こりゃ凄い。


複雑な武器も問題なくだせる!魔力も問題ない!


複雑な銃器でも描いた物が立体のデータとしてでてくる。興奮して眠るどころじゃないぞ。今日は残業だな。栄養ドリンクがほしいな。


その後もひたすら武器を描き続けた。


描き続けながら、ふと食料を呼び出せないものか試してみたくなった。こちらの料理はどうも味気ない、塩や砂糖なら呼べるのではないか?しかし普通に呼び出しても出てくるとは思えない。いままで武器以外は呼び出せなかった。


で、俺が呼び出そうと思いついたのは、普通に塩とか砂糖ではない。前世で食いまくったあれだ。


軍の携帯用食料だ。戦闘糧食…通称ミリメシだ。いろんな国の軍隊のミリメシを食ったが、とりわけ自衛隊のが1番うまかった。


何度も入手して食ったので形状も品名も覚えている。皆川から入手して食ってはブログに食レポを書いていた。


かなり味は濃いめで塩味が強かった記憶だ。


早速思い浮かべて絵に描いて見る。まずは缶詰の白米だ。想像どおりイメージに出てきた。背景は暗く質感もリアルだ。


脳内データベースも確認してみる。


成功だ。データにある!


腹が減ってきたが、缶切りがない。触れるのはやめておこう。いま出てきてもどうしようもない。


俺は次々と書き足していく。炊き込みご飯の缶、赤飯の缶、煮物の缶、ハンバーグ缶、魚缶、ソーセージ缶、漬物缶、乾パン袋…


腹が減って記憶の限り書き足していく。


しかし…これで兵糧攻めにあったとしても、間違いなく戦い続ける事ができそうだ。兵糧攻めにあうかどうかは知らんけど。長期戦を戦うには食糧がなければ負けてしまうからな!


遠征につぐ遠征でヘトヘトになるほどブラック労働を強いられているグラムには、これをもたせてあげたいなあ…


父思いの俺だった…

次話:第11話 背徳の戦場…洗浄?

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― 新着の感想 ―
[良い点] いきなり銃を召喚せず、銃弾から魔法によって召喚していくということや、その銃弾をどういう理屈で召喚するのかという細かい描写がなされている点 [気になる点] 悪い意味では無いのですが、 3歳…
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