アウトロー 後編
誰も更新すると思ってなかっただろ
「内装も中々わるくねぇなー」
「仕事の前だから飲んじゃダメだよ?」
釘を差してくるドーパンをよそに、俺は8の字を描くように店の中を見回した。
丸テーブル席が法則もなく並べてあり、中央にある柱の周りをぐるりと囲うようにカウンターテーブルまで用意されていた。外に飾ってあった注意書き以外は中々良さそうな店だな。
「ついでにどっかで安く旅支度出来ねぇか情報も仕入れとこうぜ」
「ならあのマスターの、前のカウンター席だね」
俺たちはバーカウンターに向かうが、その短い道中でもドーパンの体は非常に目立った。
辺りから聞こえるざわざわといった声や視線も俺とドーパンは気に留めることもなく。
カウンター席にどっかり座った。
「……ご注文は?」
テーブルを一つ挟んだ先にいる男はいかにもといった風貌で、丁寧にコップを拭きながら目線だけをこちらに差し込んできた。
「そうだなぁ。あそこで食ってる飯アレが美味そうだ、アレにしよう。あそこの男が食ってるやつを二つくれ。あと今度はそっちの席で出てる、女が飲んでるやつだ、それも二つ」
「……かしこまりました」
「相変わらずメニューとかみないよね」
これは俺の流儀というか癖みたいなもんで、文字や写真でいくら説明されたって実際の味の程度なんてわかんないだろ?だから俺は初めて行く店ではそこにいるやつが美味そうにバクバク食ってるやつを頼むんだ。これは俺の目利きの才能もあってハズレを引いた事はほとんどないぜ。ほとんどな?
しばらくすると男はシャンピニョなんとかってスープを俺たちの前に置いた。
よくはわからないがどうやらキノコのスープのようで香りは中々に食欲をそそった。さっそくスープですくって頂く。
「お、結構いけるな」
「ジェクトぉ、お替りいい?」
「はえぇな、もう食ったのかよ!」
俺たちはメインの品が来るまでマスターと少しだけ話して情報を聞き出していた。
「……でしたら三層の方へ行かれてみては。あそこが一番良質な品を安値で買えるでしょう」
「また上あがんのかぁ、ツリー式のパークはこれが面倒くせぇよなぁ」
「せめて移動方法がちゃんとしたエレベーターならねぇ」
{なんだったらあたしが飛んでいってあげてもいいわよ}
俺は内ポケットから聞こえてくる小生意気な声の主を服ごと押さえつける。
{ムギュウ!}
「しーっ! お前は喋るな」
「買い出しは僕がいこうか?あまり依頼人さん待たせちゃうのも悪いし」
「俺も見ておきたいもんがあったんだけどなぁ、この際しゃあねぇか」
「おっじさーん!この店和食もいけるって聞いたんだけどこーゆーの作れるー?天むすっていうんだけど」
大人の声とは裏腹にあまりにも無邪気な喋り方だったもので俺は思わず横目で隣に来ていた男を見た。そいつはこれまた目立つ髪色をしておりカウンター先のマスターにヘタクソな絵で描かれたご飯を三角に模ったものに何だかよくわからない赤いリボンのようなモノがつけられた何かを見せつけていた。
ていうかなんだありゃ食べ物か? ほっとくことにして俺は水を口に含んだ。
「……ええ、作れないことはありませんよ」
「ほんと? んじゃあ、五十個ほどお願い!」
「ゴフォ!? ……っオふッフ!」
優男は屈託のないはにかんだ笑顔で首をかしげながら言いやがった。そんなに食うようにも見えねぇが何かの買い出しかぁ? それ全部アイツの腹ん中収まるってんなら俺の目利きの腕もまだまだってことか。それにしても目利きの腕っておかしな言葉だな?
またしばらくして、それはおそらく本当にソレが五十個入っているであろう風呂敷をたやすく抱えながら男は立ち去ろうとした。
「ありがとうー! 地球最後のご飯みたいに美味しく大っ事にいただくよー!」
と手を振って言いながら道中その男は既におにぎりを一つ取り出して口に加えていた。
ドアの閉まった音を後ろで確認した後、俺はコップの水をすすった。
「世の中いろんな奴がいるもんだなぁ」
「僕たちもまぁまぁ、人の事言えないけどねぇ」
「ま、そうかもな」
既にメインも食べ終わり一息ついていたところで、店の中が再びざわつき始めた。
「んだ?さっきの奴がもうおかわりしに来たのか? 早食いと大食いじゃあお前といい勝負だな」
「違うよジェクト、あれ見て……」
それまでと違うドーパンの物言いにジェクトもゆっくり店の入り口を睨んだ。
「ゲハハハハッハァ……邪魔するぜぇい」
これがなんとまぁ、聞くに堪えないほどの下品な悪党の笑い声なんすよ。
「ゲハァ……久しぶりだなぁジェクトぉ!」
指名は俺か……。
「ドーパン、気づかねぇふりだ。やりすごせ」
俺は慌てる事もせず優雅に再び水をすすった。(金がないのだ)
「流石に無理あるんじゃない? ほらぁ僕、デカいし」
「大丈夫だドーパン、お前はジッとしてりゃあ何かデケェオブジェにしか見えねぇ」
「そっかーぁ、なら大丈夫だねぇー。とはならないからね!?」
{ちょっとあんたたち! そんな事してる場合じゃ――!}
ドパァンッ!
突如として後ろから鳴り響く破裂音、硝煙の香り、天井から落ちてくる木くずの音。
背後の男が天井に向かって威嚇射撃をしたのだとジェクトにはわかった。
「関係ねぇ奴らは失せな」
ドスの効いたその声を切っ掛けに俺たち以外の客は蜘蛛の子散らすように店の出口に向かって雪崩出て行った。
「困りますねぇお客さん。うちは他種族とアウトローは出入り禁止となっております。看板にもそのように」
重音。それ一つによってマスターの先の言葉は打ち消された。
「俺は二度は言わねぇ、それに外の看板の事言うならそいつ等もだろぉ?」
マスターの数センチ横のに置いてあった、割れた酒瓶の半分が辺りに転がる。
「真っ当な生き方してるやつぁそんな目してねぇよ。それと隣のデケェのもなぁ」
{ドーパン!}
「ブヒィ!」
三度目の射撃はドーパンの頭に向かって撃たれた。それはギリギリ脳天を外れ、彼の被っていた帽子のみを吹き飛ばした。
「やれやれ、随分と体の大きい人だとは思いましたがあなた方もですか。まさかオークとは」
露わになった帽子の下の顔は人の骨格に寄せられたブタの頭だった。
「キャっ!」
「しっ! 声を出すな!」
まだ客が残ってやがったか。
「おいジェクトぉ、そろそろお前の方もこっちに顔見せてくれよぉ!」
「しゃーねぇ、覚悟決めるか」
丸イスをぐるりと回転させジェクトは向き直る。
「よぉーお! バックスぅ、久しぶりだなぁ!」
「ゲハハハハ!ジェクトぉ!覚えててくれて嬉しいぜぃ!」
それはちっとも嬉しくもない数年ぶりの再会で、昔仕事で揉めた時のくだらない因縁付き合いの相手で、いつまでたっても変わらないヒゲづらとでけぇズウタイとでけぇ銃を持ち歩いていた。
「俺はなぁジェクトぉ、あの日からずっとお前のド頭ぶち抜きたくてウズウズしてたんだぜぇ?飯食ってる時も風呂入ってる時も女と遊んでる時も……」
「あーあーあー、いい、いい、いい! お前のラブコールなんざ一ッミリも興味ねぇ。
叶わねぇ夢に胸いっぱいわくわくさせてさぞ楽しかったんだろうな」
俺は平手を何度も前に出しストップをかける。
「楽しい……?おれぁなぁ!」
「バックス。俺が何故今まで目を合わせなかったと思う?」
俺はバックスを睨んだ。
「あぁん?」
「それはなぁバックス……」
俺はどっと肩を後ろのテーブルに掛けながら言った。
「俺には相手から殺気を向けられるとどうしても抑えられない症状がある。お前ならわかるよなあ?」
バックスはそこで口が裂けそうなほどニタリと笑った。
「ゲハァあ……ッ! ああッ わかるぜぇジェクトぉ! お前の言いてぇ事。俺なら理解してやれる! さぁ、はやく始めようぜぇ! 震えが止まらねぇ。」
「マスター、弁償代わりにアイツの首やるよ。賞金首だろうから少しは足しにしてくれ」
「弁償……?」
「これからぶっ壊れる分のな」
「いくぜぇええええええジェクトぉおおおっ!!!!!!!!!!!」
バックスの服の裾の至る所から銃火器が花束のように飛び出した。
「¨バッカス式銃花束¨!!!」
ズドドドドドドドドドドドッドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「隠れろ!」
俺たちは急いでカウンターテーブルの後ろへ回り込んだ。
なんだアレ知らねぇぞ! いっちょ前に変な芸覚えやがって。
炸裂音は鳴り響き、床や壁は穴を通り越して抉れていく。
「ああ! 私の店が!」
「どうするのジェクトぉ!?」
「……」
俺は今究極の選択を迫られている。
「ドーパン、良いニュースと悪いニュースどっちから聞きたい?」
「今それぇ!? この状況より悪いニュース何てないでしょう! はやくアイツやっつけてよぉ!」
コイツを含めた周りはみんなそれを俺に期待してるようだが、それには少し困った事がある。
それは俺の懐がスースーしていることに原因がある。俺は両の手の平を皆にみせた。
「まさか……。武器持ってきてないの!?」
「いや~、完全に油断してたわ。面目ない」
「ちょっとぉ! どうすんのさぁ!」
やがて撃ち止めたバッカスはボロボロになったカウンターからヒラヒラと揺れる白い旗を目にする。
「あぁん? どうゆうつもりだ」
「何って? みりゃわかるだろ? こっちは手も足も出ねぇの。悪いが持ち合わせが今なくってな。丸腰の相手をぶち抜いたって積年の恨みは晴れないだろ? 今日の所は一時解散してみんなでパイでもつまんでさぁ」
「なるほどなぁ」
バッカスはポケットから銃を一丁取り出しジェクトに投げつけた。
それを容易く空から我が手へ受け取り、慣れた手つきでシリンダーの中を確認した。
「弾は一発、お前にゃあそれで充分だろうジェクトぉ? ゲヒヒヒヒ」
「おいおい、お前のその土産のオモチャみたいな銃たちとこれ一丁じゃあ釣りあわ……」
「お前の腕を見込んでのことだぜぇ!!ガンショットブーケ!!」
再び銃弾の雨が始まりジェクトは元の位置に戻る。
「ただいま」
「ちょっとぉ!振り出しに戻ってんじゃん!!」
「バカいうなこれをみろ。貴重な一歩だ」
横から一緒に隠れているマスターも指摘してくる。
「貴方、そんなの一つでどうすると言うのですか!」
「あいにくこれをどうするかは俺たちの秘密でな……」
「そんな、こんな時に……ぐぉおッ!?」
ドーパンの当身で気を失ったマスターはそのまま倒れこんだ。
「よし、いいぞ。出てきてくれ頼む」
{はーーもうっ! あんた達はホントあたしがいないとダメね!!}
ジェクトの胸ポケットからピンク色の光が飛んで出てきた。
それはよくよく見れば人の形をしており、淡い光を発していた。
「ルービィ。お前の妖精の魔法でコイツを頼む」
ジェクトは銃弾をつまんで妖精の前に差し出した。
{まかせて!}
キラキラと発せられた頼もしい妖精の声。そしてその手の平の光は銃弾へと移っていく。
その光はどんどん強くなって銃弾の形を模ったままそれはジェクトの手の上で二つに増えた。
「よし、サンキュー!」
{なんのまだまだぁ}
光は止まらずに銃の弾は三つ、四つとどんどん増え続け、その内ジェクトの手に収まり切れなくなりポロポロと零れ落ちた。
「こんなにはいらねぇよ!」
{なによ! 多い方がいいじゃない!}
「ったく、ありゃいいってもんじゃねぇの」
しぶしぶ言いながらもジェクトはシリンダーに詰めれるだけ弾を詰め込んだ。
「さてっと」
今一度バッカスは銃撃をやめた。
「移動したなぁ」
それは彼なりの積んできた実戦経験からくる勘だった。
「殺気が漏れてるぜぇ! ついにやる気になったかぁ」
場所まで把握しているわけではないバッカスは銃と視線をバラバラに右へ左へと向けていく。
二つを同じ場所へ向けては視線だけで撃つ方向がバレてしまう。そこから編み出した彼の銃さばきは彼の戦闘に置いての手ごわさを十分に表していた。
「臭うぜぇ、何か企んでる匂いだぁ」
ガタン 突如奥のイスが揺れる
「そこだぁ!!!!」
バッカスは揺れた椅子の方へぐるりと身体を回す。
「……っと見せかけてぇ」
しかし、銃だけは反対を向いていた。
「逆だぁ!!!!」 ズドンッ!!! ドン!!
銃声が二つ鳴いた。
そしてその二つは誰の血も流してはいなかった。
「やれやれ引っかからなかったか……」
陰から立ち上がって出てきたジェクトの片手には紐が持たれており、その先は椅子に繋がっている事だろう。
「ゲヘァ、お互いに外したな。まぁ、決着はついたようなもんだが」
「ああ、これで本当に終わりだよ」
ジェクトは紐を離し、反対の手に銃を持ったまま両手を挙げて降参のポーズをした。
「……、何故銃を離さねぇ?」
「気に入っちまってな、最後まで持っていたい」
「へー、そうかい」
しばし、睨みあったのち。バッカスはジェクトとは別の方へ銃を撃った。
それは、逃げ遅れていた二人の客の頭を狙って放たれたものだった。
ドキュン!
ほぼ同時に二つの銃声が鳴り。二つの飛び去った銃弾は鉄の弾同士に着弾した。
それはジェクトの神業。自分の放った銃弾を相手の銃弾に合わせて相殺させるという芸当だった。
「やはりまだ弾は残ってたなぁ」
バッカスは尚もニタリと笑う。
「さっきのもそうやって相殺したんだろう? 俺にはわかるぜぇ。そいつを捨てな!
俺がやったのは一発だけだ! その一発がありゃあいつでも俺を仕留められた!! なのにてめぇはそれをしねぇ!!! 腰抜けにようはねぇ!! てめぇはここで終わらせる! タマぁ取る気がねぇんならその銃を置けぇ!」
バッカスは激情し、罵声を浴びせ、怒りを露わにした。
「¨祝祭の花火¨。でなきゃあコイツでこの店自体ぶっとばしてやるぅ!」
バッカスは上着を捲り身体に巻きつけられた無数の火薬を
みせつけた。
「わかったよ。その物騒なもんしまえ」
ジェクトは銃を遠くへスライドさせた。
「ゲッヘッヘぇージェクトよぉ、思ったんだがぁ」
口ぶりから察するに爆弾らしきものをバッカスは手放さない。
「おめぇと二人であの世に行くのも悪くねぇかもなぁ」
バッカスは爆弾を高く放り投げた。
「クッソバカ野郎がッ!」
ジェクトは大きく右に周りながら落ちている木の破片を手に取り空中の爆弾に投げあてた。
スコーンと大きく進行を変えた爆弾は店の外へ飛び出し大きく破裂した。
ドッ― これはその数秒にも満たない刹那の出来事である。
ジェクトはルービィから複製してもらっていたもう一丁の銃を懐から取り出し二発撃った。
バッカスはそれを察知し、なるべく鉄板を仕込んでいる胸周りに銃弾が届くよう正面を向き、
ジェクトめがけて銃を撃った。爆風が届くより早く動くそれはジェクトの弾と同じ位置に着弾した。一見バッカスが同じように技を見せたように見えるが、それは違うことは本人は刹那の速さ以上に理解した。
「(コイツ!俺の方が後に撃ったのに、俺の銃弾に弾を当てやがった!?)」
その横を逸れたもう一つの弾の行方、バッカスはそれに気づくのに一秒遅れた。
―カァァアアアンッッ!!!!!!!!!!!!
時間を思い出したかのように爆風は流れ、辺りの木の破片がそこかしこにぶつかる。
そこで立ち尽くす二人の男、その内の一人は頭から血を流していた。
「……いったぁ!?木の破片ささったぁ!!?」
もう一人の男は背中から腹の先まで通り道が出来ていた。
「まさか、捨てた銃を撃って……やっぱりお前はすげぇ、バケモんだぜぇ……ゲヘェ――」
ドタッ
猛獣はやっと倒れこんだ。
「はーっ!やれやれ、一件落着ってな!」
「面倒事は一件どころじゃ済まないけどね」
「何か言われる前にさっさと離れるぞ」
ドアにかけようとしたジェクトの右手は不思議な事に空を切った。
「ありゃ?」
そこにドアノブはなく代わりに鳥の頭をした妙なやつが
たっていた。
「有翼……人?」
「テメェかぁ?今のドタ騒ぎはぁ?」
「いいえ!アイツです!!店で暴れまわったのも
銃乱射したのも全っ部!アイツです!被害者です!」
ジェクトは誇張した事実を汗いっぱいの誠意を込めて
面倒事を押し付けた。
「アレは指名手配のバッカスジェーンだ」
「あいつか、どけ羽根なし!」
ハンスとブルーズはジェクト等を押し退けズカズカと
店内へ立ち入った。
「よし今だ!ドーパン行くぞ!」
「待ってよジェクトー!」
ハンス達が振り向いた頃には既にジェクト等一行は
影もなかった。
「ハロさん、も一回言ってもらえる?」
「今日はもう色々疲れたのよ。壁壊すの明日でお願いー」
そう言いながらハロは借家のベッドで横になり毛布に包まった。
「こっちとしてもあんまりもたもたしてらんないんだけどなぁ」
シセイは翡翠色の髪をゆらし一人宿から飛び立った。
「いやーお待たせしまして申し訳ない!」
ジェクトは面目無い人御用達の頭を擦るポーズで
依頼主の前に現れた。
「ちょっくら色々ドタバタしてしまって、つっても
仕事に支障はきたさないレベルなんで安心してください」
「ならいいんですがね」
鼻の下にチョビヒゲを蓄えた親父は横から布に包まれた
50センチ程の何かを取り出した。
「えっと、それが例の物っすか?それ一個だけ?」
「その通り。君たちにはこれ一つを確実に安全な場所まで
届けて貰いたい」
「一応業務なんで聞かせてもらいます。それ、何スカ」
ジェクトが聞くとチョビヒゲはまってましたとソレから布を
とった。
「女神像だ。良く出来ているだろう、これは家宝みたいなもんでな、価値があるけじゃないが家には大事なものだ。
これをトランパルナまで届けてほしい」
「オッケーす、んで報酬の件なんですけど」
ジェクトがそこまで言うとチョビヒゲ親父は今度は
ポケットから小封筒を取り出した。
話が早いとジェクトはニヤつくのを必死に抑えながら
封筒を覗き込んだ。
「ぶふぉ!?マジでぇえ?!こんなに!!?」
「前金ならそんなもんだろう残りは終わってから振り込む」
「って事は持っとくれるってこと!??」
ジェクトは中々手にしない大金に慌て態度を改める
「ドーパン!このチョビヒゲオジサマにお茶を出して
差し上げろ!」
「ないよそんなの」
「いや、私はここで失礼する後は任せたからな」
「毎度ー!この女神様はホコリ一つつけずにトランパルナまで お運びいたします!」
その会話を最後にオヤジ様は去りボードポートに
残ったジェクト等は出立の準備を始めた。
{ジェクトー。早くその変な像しまっちゃいなさいよ!
盗まれたらどうすんのよ}
ルービィが内ポケットから話しかける。
「まぁ待てよ、どうせならこの像ピカピカに拭いとこうぜ
印象良くなれば追加金も弾むかもしんねぇしよ」
「目的地につくまで油断は駄目だよぅ」
「油断なんてしねぇさ」
木箱の上に女神様を乗せドンと自分の胸を叩く!
{きゃあ!びっくりした!}
「いいかドーパン!仕事の出来るやつってのはな
言われた事をただやる奴じゃねぇ、それ以上の気配りが
出来るやつだ」
「また始まったよぉ」
「あれぇー何その態度だいたいお前はいつも少し慎重すぎー」
トン
「あ!女神像が落ち…」
ドーパンがそれを言い切る前に、
ソイツが地面に叩きつけられる前に、
ジェクトは全神経を使い女神像をキャッチした。
「「{ふぅ〜〜ーっ!!!あっぶねぇええええ〜〜〜!!}」」
額はバケツを被ったかのようにびっしょりと濡れ。
手から滑らさない内にゆっくり女神像を再び木箱の上に置いた。
「もぉ〜〜!!ジェクト!!」
{心臓が止まるかと思っちゃったじゃない!}
「すまねぇすまねぇ、きぃつけるよ。すぐに箱に戻して
これから…」
ズガドォン!!!!!!
「!?」
それは地震のように激しく、雷のように駆け抜け、
台風のように吹き飛ばし、猛獣のように唸った。
衝撃そこにいた全ての人間はそれに包まれた。
「なんっ…!!?」
その刹那木箱の上の空虚さに気付き体中が青ざめた。
ガッシャーーンっ!!!
「「{ああああああ!!!!女神像がッ!!!!!}」」
ジェクト等一行はとある場所で置きた謎の爆発により。
これから、数奇な運命を辿ることになる。
つづく
ジェクトは人をまたせすぎている