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悪天軌  作者: milkマン
2/4

セカンドコンタクト 後編

無限に手直しが出来る。


こちら転結編になっております


 「あちゃあ、手が早いな」


アルバートは肩を落とした。壁だの関所だのを超える前に出鼻を挫かれたからだ。


「ぬうぅぅう!!! 今この付近に悪……指名手配犯の目撃情報が我々調査司令部の耳に聞き届いた! したがって関所どころかこの門の入り口すら通すわけにはいかんのだぁ!」


「有翼人!? それにあの雲のみたいに真っ白い服は間違いなくミーベイの機関ね。あ! もしかして彼が探してるのってあなたの事!?」


「だしょうね、まいったねこりゃ」


「まいったねこりゃー。じゃないでしょ!! どうしてくれんのよ! あんたのせいでむしろ難易度上がってんじゃないのよ!」


アンはアルバートの真似をしたと思いきやそのまま胸倉をつかみかかった。

「落ち着きなって、それよりアレ」


アルバートは大きな声で演説してる有翼人のさらに向こう側を指さした。乗り物。席は一つでタイヤは前に一つ後ろに二つ、真っ白な塗装で車よりバイクに近かった。


「たぶん俺を捕まえたらアレの後ろのトランクにでも詰められる予定だったんだろうな」


アルバートがこしょこしょと耳打ちしてくるのがアンはちょっとくすぐったかった。


「って、あんたまさかわざと捕まる気?」


「それじゃあ君は乗っけてもらえないでしょ。アレに乗るのはアン、君一人だよ」


ますます状況が呑み込めずアンは困惑した。


「アレで関所まで走って、行けるなら通り過ぎてもいい。障害は全部はたく」


この男の最初にあった紳士ぶった態度がもう思い出せない。完全にアウトローの顔をしているし、それに加担する私も完全に危ない人だ。アンは全てを含めて自分の撒いた種でもあると思い花が咲くのを信じて受け入れた。

「それじゃあ結局あんたは……」


「ちわーっす。指名手配中の半分悪魔アルバートでぇ~っす」



あ、あいつやりおったぁーーーーーーー!!!?

羽のように軽く堂々とした態度で渦中の人物は名乗りを上げた。


「ぬぅう? 悪魔だとォ!?」

近づいたアルバートと比べると身長は約三メートル程もある有翼の男。彼はすぐさまアルバートを睨みつけ大きなシャクレ顎に手を当てた。


「せ、青年よ、滅多なことは言うもんじゃない! あ、悪魔何ているわけないだろう? ハッハッハー。それに貴様のどこが……」


「アー、ハイハイ。そうゆう体で行きたいわけねおたくらは」


アルバートは全部理解したというように頷き左腕の裾をゆっくり捲りあげ両手を挙げた。


「ヌ!?」


流石にその瞬間まわりの見物人もざわつき始めた。

「すげぇあの左腕全部機械かよ」


「外にはあんな技術があんだな」


中でも件の大男は額に汗を流し難しい顔をしていた。


「ぬ、ううぅ……機械の義手、赤い瞳……確かに例の悪党と情報が一致する。しかし、緑色の髪ぃ?」


「あ、これはイメチェンね」


「なるほど、ならよし」

大男はすんなりと納得した。


「しかし、それだけでは捉える事は出来んな。やはり他人の空にだろう」


おかしいなぁ。どうも話がスムーズに行かない。

アルバートは男を不審に思った。


「お名前と役職お聞きしても?」


「これは申し遅れた。私は西調査司令部出張部隊隊長ガンリキだ! お見知りおき願う」


「出張部隊……これは、とんだ下位の方が飛ばされてきましたねぇ……」


てっきりもっと上層部やオーシャンズレベルの奴らが来ると踏んでいたんだけど。


「ここだけの話、悪魔の目撃情報など各国にごまんとあってな。確かな情報でないと上は派遣してくれんのだ」


「つまりあんたが悪魔を確認できれば更に上の人が来てくれると?」


「まぁ、つまりそうゆうことだな」


なんて空気がマイルドになって来たところで白バイクの方にちらりと目をやる。そこにはアンがすでに搭乗していたがキーがなく発進出来ないようだ。


「ま、考えたら当たり前だよね」


アルバートは上げている左手を、指を二本ほど立てて一瞬バイクに向けて振った。


瞬間、エンジンの回転が鳴り響いた。


「ぬぅ!? なぜ勝手に三輪が?」


急に音がなって驚いたアンは同時に隠れていたが。ここからが時間稼ぎの真骨頂だ。


「ガンリキさん、不運だと思ってちょっと付き合ってよ」


ヒュっと今度はアルバートが右手を振ったと思えばそこには一つの軍用手帳があった。


「ハッ!? 貴様いつの間に!」

ガンリキは懐をまさぐるがやはり自分のポケットから消えている。


「これないとオタクヤバいでしょ? 取りに来なよ」


「貴様っ!コレはれっきとした重罪であるぞ!!」


ガンリキは自身の大きな翼を広げその場で浮かび上がった。

下から風が吹き上げ全ての力学を無視し飛んでいる。


「そう来なくっちゃあな」

アルバートは地面を蹴り上げ走り出した。アンとは違う方向へ。




――追いつけない

なぜだ、それがガンリキにはわからない。

そも人間と有翼人には翼だけの違いには留まらない。恵まれ持った力には人の努力では到底到達しえない壁があった。あるはずだ。アルバートの走るスピードに翻弄されながらガンリキの人生観はゆっくりと瓦解させられる。

確かにやつはあえて小道に入り、幾度も道を曲がり単純な素早さでは追いつけないように工夫している。しかしすばやさの問題だけであれば、最初の走り出した段階で既に決着は

ついていたのだ。


もしや本当にやつは悪魔――


脳裏に最悪の想像がよぎる。確かに先刻のやつの掲示した腕は指名手配中の半身の悪魔に酷似している。しかし、悪魔とは人の形をしているだけで破壊と殺戮を繰り返す存在、それに奴はそれ以外の何かにも見える。


「ぐぬぅ、片腕に鉄の塊を付けながらちょこまかとぉ! いったいなんだというのだぁ!」


角を曲がったその時走っている奴のその先に行き止まりがあった。


「しめた!降伏しろォ!」


そのまま止まった奴を捕まる体制に入ったその刹那、奴は上に飛び上がった。

「んぬぁ?!」


突然視界から消え去った相手を目で追った。

そこには、雲のように真っ白な翼を生やして浮かぶ奴の姿があった。


「……天使…さ――」


突如視界は瓦礫の破片に覆われ、岩の瓦解する音に包まれた。

ガンリキの意識は力強く闇に包まれた。



 「派手にぶつかったなぁ」


ゆっくりと飛翔した体を地面に着地させ翼をしまった。


「コレ、返すよ」


瓦礫の山になってしまった哀れな男に手帳をポイっと投げ捨てた。



 アンはアルバートに言われたとおりに走り続けた。

存外拾い広大な大地にポツンと囲いすらない関所が見えてきた。

あんなものは形だけであり、あれをどうにかしない限りまだ見えざる壁を超える事は出来ない。

大丈夫、私が今乗ってるのは軍用のバイクだし不審には思われてないはず。話は通ってるだろうから。きっとアルバートを捕まえて帰ってるんだと思ってくれれば素通りできるはず。下手に会って嘘をつくよりこのまま突っ切った方が。


その祈り届かず、やかましいほどにサイレンが鳴り響いた。

ヴァーー!ヴァーーー!


「嘘!? どうして!」


まだ関所を通り過ぎてもいない、話をして怪しまれたのならまだわかる。

しかしなぜ、このタイミングなのか。

その理由にたどり着く余地もなく更に向こうの平地の下で、巨大な壁がせりあがった。


 関所の中には青い服を着た監視員が三人。その中に浮くように白い服を着た男が

一人いた。彼の胸には一等兵を示すマークがあり、毅然とした態度でその場に立っていた。


「あの隊長が何の連絡もなしに、しかもあのバイクを使って走るなんて怪しすぎる。

ここから先誰も通すな。」


「ッハ」


それは男の独断だった。まさかとは思うが、念を入れた防衛手段。もし本当に人ならざるものを出してしまうのならこの小さな街に閉じ込めてしまうべきだ。


「きっと隊長も同じ考えだ」




 アンは尚も壁に向かって走り続けた。

関所はとうに過ぎさり、壁は立ち上りそれでも走り続けていたが、ついに止まってしまった。


「……なんでよ」


下唇を噛み締め壁を睨みつけた。綺麗な青空の描かれたのんきな絵が更にアンを苛立たせた。


「やっぱり、こんな壁……」


「なくなってしまえばよいと?」


不意に後ろから声がした。初めはアルバートかと思ったが、男の声ではあるが彼とはまた違った落ち着いた声だった。


「あなたお一人でしょうか? 察するにレッドフォールからどさくさに紛れて出ようとなされたのでしょう。お転婆が過ぎる」


白い軍服を着ており一目でさっきの大男の仲間だと分かった。

胸のバッジを見るに階級は下のようだが、当然のようにこの男も有翼人。さしずめ関所あたりから飛んできたのだろう。


「さ、街まで送ってあげます。見なかった事にしますから大人しくしてください」


「なんでよ、何でこの街の人たちを閉じ込めるの!」


男はその問いに少しだけ疑問が過った。彼女の言葉がどこか他人気だったからだ。


「残念ですが我々にはお答えできませんし知りえない事です。さぁ両手を頭の後ろに―」


「理由を知りもしないで人を閉じ込めておくなんて正気の沙汰じゃないわ!!

これがあなたたちの信仰の対象のやる事なら!そんなの……!!」


「それ以上続ければ、より大きな罪であなたを捕えますよ」


その声には怒気が籠っていた、自分でも失言だったと思う。でも、言葉にせずには

いられなかった。今、この日この場所が最後のチャンスだったというのに……


「……ごめんなさい。許してください。もう言いません。誓います。」


アンは平伏した。


「お嬢さん、私たちも可哀想に思いますよ。この辺りまでにはなりますが

私が上に掛け合って何とか来られるようにしてあげます。この壁の日陰でピクニックも

悪くはないかと思いますよ」


男は一歩踏み出した。アンは一歩仰け反った。いずれバイクに手が触れ、追いつめられる。男が手を差し伸べるとアンは信じられないものを見るような顔をした。


「心配いらない、本当にそれ以上の事は出来ないけど、いずれ自分の運命を受け入れる

時が……」


「あなた、有翼人だったの……?」


男は何を今さらという顔をした。ここまで乗り物もなしに移動するなど飛んでくるしか

あるまいに、やはり長い事閉じこもっていては頭も冴え――


「いったでしょ天使だって」


アルバートは銀色の冷たい手を男の首筋に掴ませた。


「なっ!? あ…っ!」


「君の隊長さんにはぐっすりしてもらってるよ。今日はいい天気だね。君もどうだい?」


男は突然背後に現れた謎の人物に困惑した。


「(なんだこの男は!? いつの間に! エンジンの音はしなかった、まさか

飛んできたのか!?)」


アルバートはポイッとあっけなく有翼の男を離した。今度はそれを見たアンが困惑する。


「ちょ! なんで!」


「悪いけどこの人には帰って報告してもらう。悪魔ここに在りだと。」


「は!?」


「おい貴様なにを……!?」


アルバートは白い翼を広げた。


「君の隊長さんはいつ起きるかわかんなくなっちゃってさ。代わりに君に頼むよ

そうしてもっと上の上層部に掛け合って戦争おっぱじめる勢いのどでかいのおびき寄せてよ」


アンは少しづつアルバートの真意が見えてきた。


「あなた、本当に悪魔なのね……」


「それこそ本当に何を今さらって感じだよ」


アルバートは不敵にほほ笑んだ。


「いいだろう、呼んでやる。ただしこの場からだ!」


軍の男は胸のスイッチを押し声を荒げた。


「今! 軍の緊急通信電波を送った!! これは通常隊長レベルに与えられる権限だが

現在私が預かっている! 私がお前たちから目を離すことはない! 悪魔が出たとなれば

通信後十分もしない内にこの辺りは……っ!」


ピーーーーッ ガツ


男の胸から機械音が鳴った。どこかと繋がったようでサーーっという

空気の擦れる音だけが鳴り響く。

軍の男はゆっくりと距離を引きアンとアルバートの二人が見える位置に移動していた。

サーーーーー。向こうからの応答が来ない。


「ぐ……、こちら調査隊出張部隊長のガンリキの権限を預かり緊急通信を行っている

一等兵の――」



『……シセイくん、そこにいるのかい?』



男の胸から発せられる通信の声にその場が凍り付く。

それは、男も、アンも、疑問符に頭を覆われていたからだ。

誰だ……っ?

それは声の主と、【シセイ】と呼ばれられた謎の人物の二重の意味で答えが出ない。アンは最初、発信している軍の男がシセルという名前だと思った。

しかし、名前を言いきる前だった彼の反応を見る限りそれは違うと改めた。軍の一等兵はシセイという名前よりも、相手先の反応に疑問視した。軍用の緊急発進電波だぞ。軽率すぎる、何もかも。いったい軍の誰が出たのか、またはどこぞの俗にジャックされたのだろうか、うかつな情報をこちらから流すわけには

いかずみな硬直状態が続いた。一人を除いて。


「やぁ、博士。まさかあんたが出るとはね」


それは勿論自身を悪魔と公言するアルバートと名乗っていた男だった。


『やはりね、君の電波がちょうどそこからキャッチしたものでさ。我先に権限を用いて出させてもらったよ。シセイ・サンライトくん』


それはやはりアンの知らない名前だった。

私はこの男にどれだけ食わされているのだろう。


『君が我が施設から忽然と姿を消した時は流石に目を丸くしたよ。どうやったんだい?』


「目を丸くした博士の顔見たかったな。ま、その辺踏まえてどっかで飯でもどうですか

月が淡く綺麗な日でも……」


「ア、アルバートっ!!」


アンは会話を遮断した。


「いや……シセイ。あなたは私を騙してたの?」


「……アン、悪魔の契約にはね、真名がいるんだ。どちらかが偽ってしまっては

契約は果たせない」


「だから、あんたと私の間に約束は無かったってこと……? そう言いたいの?」


「いいや、あくまで契約の話さ、約束は無かったことにはならない」


「同じことじゃない!! どうせあんたに守る気がないんならここで私に出来る事なんてもう……っ!」


アンは膝をつき顔を覆った。肩が震え縮こまっていく。シセイはそんなアンにゆっくりとやさしく近づいた。


「アン、驚かせて悪いな。形の良いことばっかり言っておいてこれだもんな。でも、お前ここから出してやりたいとは思ってるさ。今すぐは無理になるかも知れないがまたここに……」


「……ンじゃないわ」


そのか細く小さな声をシセルは聞き逃した。


「御免、聞き取れなかった今なん――っ!?」


刹那アンはシセイの体をくみ取り地面にあっというまにねじ伏せてしまう。青いライフルを突き付けながら――



 「うわーぉ……ビックリ仰天。御免も一回言って」


「私はアンじゃないって言ったの。私の本当の名前はハロ・グッドマン」


「結局誰も本当の名前なんて言っちゃいないわけね」


シセルはあきれ返った。


「ちなみにジュエリーアンは私の好きな本のタイトルよ」


「はぇ~どうりで聞いたことあると思った……」


「あら、あの本知ってる? 今度語りましょうよ。今度があったらね」

青白いライフルはカチャっと音を立てた。


「大事そうにトランクに入ってたのそれかよ。もっと可愛いもんいれとけよ」


「私には似合わないわ」



 『ふむ、んーそれで? 今どういう状況かね?』



「女の子に馬乗りにされて銃を突きつけられてる」


『聞く限り羨ましい限りだな』


「銃って部分聞き取れてます?」


あまりに状況が二転三転しすぎてついぞ軍の男は喋らなくなっていた。可哀想に。

今、間違いなく主導権を握っているのは間違いなくハロだ。

ここからの動向を見守るようにしよう。


「そこのあんた!」


一瞬有翼の男が反応したがハロに「あんたじゃない!」と一喝され縮こまる、本当に可哀想だ。


『私かい?』


「私は警察業務特務機関オーズ。コード八六丸 ハロ・グッドマンサリー・グッドマンの娘といえば分かるかしら」


『サリーの娘かい? ははーなるほどその辺境の地に閉じ込められていたわけだね』


「つまり君はこの街の住人ですらなかったわけだ」


「悪魔がまんまと騙されたわね。そうよ、私はただ本当の居場所に帰りたいだけ、あんたを突き出してこのまま帰路させてもらうわ。この街じゃ誰にも信用されなかったけど。軍のあんたなら……」


『うむ、ではまず君のその勘違いを正していこうか』


シセルはこの辺りで気が遠くなりつつあった。


『まず第一に、我々ミーベイ信仰の帝国軍と君たちのレティスとは戦争状態にある』


「……え?」


シセルからハロの表情は見えないが、見たいとも思わなかった。


『からして、君の帰路の安全は保障しかねる。興味もないしね。』


今いるこの領地もおそらく緊急時の一時的な停戦状態なのだろうな。


『ま、ずっと閉じ込められていたであろう君たちの知るところではないか。

そして第二に私はそこで挽肉のように押さえつけられている悪魔をどうこうする気がない寧ろ泳がせて置くつもりだ、その点感謝したまえよシセイくん?』


「……」


『やれやれ、誰も返事はなしかい? では最後に忠告だけしておこう君たちのいる場所から五十スコルほど離れた所にオーシャンズと呼ばれる戦闘部隊が待機している。この通信が終わったのち彼らは君たちのいるその場に向かうだろうが、安心したまえ彼らは野蛮ではない。スマートに殺してくれる』


ハロはとっくに頭が真っ白になっていた。


『それでは君たちの旅路に光が指すことをミーベイの神に祈ってるよ。グッドラック』


ツーーーーーーーーーーーーーーーーー




会話はそこで途切れその場の誰一人立ち上がれず呆然としていたが、その沈黙をやぶったのは意外な人物だった。


「……サリー・グッドマン私も聞いたことがあります」


それは白い軍服に身を包んだ有翼の男だった。


「オーズに属する聖戦の英雄。人のみでありながら天に近い男だとも…」


「……」


ハロは何も発さない。


「あなたがその娘なんですね、親子そろってオーズに……」


「……ええそうよ」


ハロから先ほどの覇気はなく、魂ごと抜け落ちてるようだった。


「今日の事私は見なかった事にします……」


「え!? なんで!」

ハロはそれが父への尊敬の念からくるものであると信じた。


「これ以上関わると消されかねないからですよ。幸い私はまだ名乗っていませんでしたしまだ誤魔化しが聞くでしょう、悪魔を見逃したとなれば首は飛ぶ。かかわっていても首が飛ぶ。ならば、今日という日を無かったことにするしかないでしょう」


男は立ち上がりその場からゆっくりと去る。


「あなたたちは私の名前を知りませんし、私もあなた達の名前何て覚えちゃいない、さようなら。半身の悪魔と英雄の娘さん」


男は翼を広げ飛び去っていった。



 また少し時が流れた。

その間シセイはずっと下敷きになっていた。


「どうする?」


「……わからない」


流石に痺れを切らしたシセルにハロはそっけなく答えた。

「どうしたい?」


「……」


ハロの答え、神にも使命にも見放された彼女の歩む先とは……。


「やっぱり私外に出てみる。それから考える」

胸ポケットの父の写真に手をやる。


「じゃ決まりね」


シセイはグッと力を入れその場で起き上がる。それに伴い上に載っていたハロが

ひっくり返った。

「ぎゃ!? ちょっ急に立つなぁ!」


「改めてよろしくハロ・グッドマン」

シセイはハロに手を差し伸べた。


これは、今度こそ本当に契約の犠だ。この手を取れば、もう後には引けない。

「よろしくシセル・サンライト」


ハロはシセイの手を掴んだ。

「悪魔はね、願い事を聞かないと力が十分に出せないんだ。特に俺は半端ものだから」


「興味ないとはいったけど、あんたの正体いよいよ気になって来たわ。そうね、改めてお願いするわ」


ハロは人間と、天使と、機械の体を持った悪魔に願った。



 「この壁を破壊して――ッ!!」













                                       つづく



熟読、斜め読み、ご愛読ありがとうございました。


作者の次回話と同時連載予定の勇魔も応援よろしくお願いします。

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