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浮浪

 水を付近のゴブリンにかけている。


 ゴブリンは嫌がっているようすもない。

 水を強くするが、効果は変わらない。

 シャワーの水が蛇口の水になったくらいで、相手にダメージが行くはずもなかった。


 スライムは、水魔法の体得とレベル上げを繰り返した。

 このダンジョンのゴブリンは弱すぎて、レベル上げの足しにはならなかった。

 自己増殖と自己戦闘を繰り返す。


 しばらくすると、自己戦闘の過程において水魔法のみを使用するようになった。

 水魔法の使い方を考えていって、一番良いものを採用するしくみのようであった。


 最初は互いに全く傷がつけられなかった。


 しかし、スライムが自身の体の液体を振りかける術を覚えた。


 相手は自分の分身といえども、酸を濃くすればダメージがあったようである。


 次に、水を効率的に落とす方法を覚えた。

 水を生むプロセスを効率化して、最初と比べると同じ魔力で10倍の水が出せるようになった。

 また、水を強く叩きつける方法を覚えた。

 優しいシャワーの水が、金属をも傷つける強力な水流になった。


 そのころ、スライムは最下層に到着した。

 親玉のゴブリンはすぐに倒された。

 そこにあったのは……鋭い鉄の剣であった。


 しかし、スライムには扱えるはずもなかった。

 スライムはどうしたのかというと……どうやらまた剣に群がった。


 剣を動かし、スライムと接触させていた。

 それは何を意味するのかは、誰にもわからないであろう。



 しばらくすると、スライムは剣を振り上げた。

 刃が下を向いている。

 スライムに刺さる……が、傷はほとんどない。

 押しつぶされた部分の上部以外はほとんど無傷である。

 どうやら、スライム同士の結合方法を改良したらしい。


 このスライムは、何かの情報が与えられるたびに強くなっていった。



 ある時、スライムの一部が人形になった。

 しかしそれは自己戦闘時のみであり、また人の色も再現できていない。


 それは人形の生物との戦闘に備えるためであった。

 当初は普通のスライム対人形の対戦は全然ダメであった。

 だが時間が経てば立つほど、互いに強力になっていった。



【名前】Nameless(スライム・水)

【Lv】32 【HP】57 【MP】42

【スキル】分裂・水魔法



 洞窟生活に飽きたスライムは旅に出た。

 道なき道を歩いていると、森林に出た。

 森林を適当に探索していると、どこかから声がした。


「キャー!」


 女性が狼に襲われていた。


 スライムの姿を見て、狼は威嚇をしている。

 同業者としてのライバル意識であろう。


 威嚇に反応して、スライムは狼に飛びかかった。

 狼は溶かされ、うめき声を上げて動かなくなった。


「ありがとうございます!ぜひともお礼が……あれ、どこへ行くのです?」


 スライムは女性に興味を持たず去っていった。

 困ったのは、取り残された女性である。

 命を救われたが、なんと反応すればいいのかわからなかった。

 スライムを刺激しないようにすることにした。


 そのスライムは、やがて村に到着した。


「魔物がいるぞー!」


 村の男が叫び声を上げた。

 すでに一部の男たちは武器を持ってきて、戦闘可能態勢に入った。

 戦えないものは家に隠れた。


 スライムは人を殺すこともある魔物であるから、このような反応も当然である。


「おい、魔物!お前は俺が通さねえ!」


 腕自慢の男がスライムに斬りかかった……。

 これは逆効果で、中立だったスライムを敵に回してしまった。


 スライムがすかさず飛びかかり、男を取り囲む。


「うが……苦し……」


 男は酸の洗礼を受けていた。

 意識が削れていく中で、ある声がした。


「あれ?さっきのスライム?」


 さっきの女性が村に戻ってきたのである。

 その声に合わせて、スライムも一時的に戦闘をやめた。


「キーニア。お前、こいつを知っているのか?」

「さっき狼に襲われた時に助けてくれた。でも、私には目もくれず去ってった」

「うーむ……敵なのか?」

「わからない」


 二人は混乱している。


「うーん。とりあえず、スライムに薬草でもあげてみない? その後の処置は後で考えようか」

「待て、村に魔物を入れるのか?」

「いいでしょ、珍しそうな魔物なんだから。薬草も余ってるでしょ?」

「魔物を入れるのは危険だ。魔物が突然襲ってきたらどうしようもねえ」


 その間にスライムはすっかり戦闘態勢を崩して、ぷるぷると動き回り始めた。

 先程の凶暴性が嘘のようであった。


「こいつ、やけにおとなしくなったな。刺激しなければ大丈夫なのか」

「村人には刺激しないように言っておきましょうか」


 二人は、結局このスライムを村の中に入れることにした。



 スライムに薬草を与えると、スライムは愉快そうに動き回った。


「機嫌はよさそうね」

「このスライムはどうするんだ。ペットにするのか?」

「そうするのもいいんじゃない?」

「馬鹿言え。今はいいが、村が飢饉になったらこいつに飯なんか出せないぞ。

 それで暴れられたらどうする」

「うーん。どうしよう……じゃあ、1日。1日だけならこの村に居させていいよね!」

「仕方ねえな……それならいいだろう。

 といっても、ちょっとはこいつにも村の役に立ってもらわなきゃな」

「役に立つって、どうやって?」

「皿洗いでもさせたらどうだ」

読んでいただけて嬉しいです。

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