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草原:vs初心者

 男2人女1人のパーティが、トソナ草原に向かっている。


「西松先輩もこのゲームやってたって意外でしたよー」

「ああ。俺だって日曜日はゆっくりしてんだぜ?」

「お二人ともゲーム好きですよね~! 前もゲーセンで音楽ゲームしてたんですよね」

「あれですか? 周りに若者しかいないので、最近は入るのキツいですね」


 雑談をしていると、草原が見えてきた。


「お、到着だ」

「といっても街からすぐでしたね」


 事前に調べていた情報は正しかった。

 その草原には、文字通り『最弱』のモンスター、スライムがたむろしていた。

 スライムのほとんどはLv1である。Lv1の初心者にも安全に倒せる範疇だ。


「先輩! いきますよっ」


 後輩の松崎がスライムに向かって剣を振る。

 スライムはたちまち形を崩し、消えていった。


「はっはっは。おい、松崎。先輩を差し置いて悪いやつだな、お前は」

「悪いっすね、先輩。早いもの勝ちですよ」

「それなら俺だって」


 先輩の西松もスライムを倒す。


「どうだ。これで互角だ」

「僕も負けませんからね!」


 2人はスライム狩りを始めてしまった。

 それを後輩と同僚の女、北原が見ていた。


「もう……2人はゲームの事だと、すぐこれなんだから……」


 北原はこの2人と違って、戦闘職ではない。

 どちらかといえば錬金術師であり、ポーションを作ろうと思っている。

 ポーションの作成方法なども奥が深いらしく、研究好きな北原の性にあっていた。


 錬金術師として、素材を見極めるのは重要である。

 そこで北原は、スキル・鑑定を所持している。


 北原は周りの草原を鑑定した。


『ゼム草:薬草の一種。効果:回復(極小)』

『ズイボ草:ゼム草の偽物。ただ苦いだけ』

『ナヴリャチャヴァン草:トソナ草原特有の草。レア。効果なし。ただ苦いだけ』


「いろいろな草があるのね」


 北原は、草だけとっても様々な種類があることに感嘆した。


「こんなところまで開発しているし。

 一体どうすれば草にこんな予算を費やせるのかしら……」


 そうして北原は歩き回り、多くの草を調べた。

 面白い雑草を収集した。


 周りにいるスライムたちは中立である。

 こちらを無害と判断すれば、全く攻撃してこない。

 北原は、スライムも鑑定してみた。



【名前】Nameless(スライム・水)

【Lv】1 【HP】4 【MP】2

【スキル】なし



「え、弱すぎでしょ」


 北原は、明らかに弱いと判断した。

「私でも倒せるのでは」と思ったが、さすがに北原もLv1であり、戦闘は控えることにした。



 その頃、遠くで西松が叫んだ。


「北原! ちょっと来てくれないか?」

「はーい」


 その声に松崎も近寄る。


 3人の目線の先にあったものは……分裂して自分自身を食べ続けるスライムの姿であった。

 3人は目を合わせる。


 気まずい空気が流れる。

 最初に口を挟んだのは北原であった。


「……なんですか、これ?」

「今調べたところ、この草原にいる変なスライムらしいですね。

 フォーラムに多数目撃情報が上がっています」

「詳しい情報は?」

「うーん。上がっているのは動画くらいで……

 あ、北原さん鑑定できますか?」

「はい。ちょっと鑑定してみますね」



【名前】Nameless(スライム・水)

【Lv】13 【HP】24 【MP】17

【スキル】分裂



「Lv13って書いてありますよ」

「俺、Lv5」

「僕も先輩と同じ、Lv5です」

「私はLv1ですよ。戦うのは無理そうですね」


 そう言いかけたとき、後輩の松崎が突然攻撃を仕掛けた。

 西松がそれに続く。


「よし! 戦闘開始だ!」

「おい、先輩の俺を差し置いて……」

「ええええ! ちょっと落ち着いてください二人とも! どうしたんですか!」


「勝率が1割、1分、いや1里あれば、それに掛けるというのが男だろ」

「はい、先輩!!」

「ちょっっっと、大丈夫ですか!? あなた方はLv5、あっちはLv13ですよ!」

「北原、よく聞け。Lv5が2人で、5×5=25だ! 勝てる!」

「なんで掛けるんですか!?」


 悠長に会話をしていたら、スライムの反撃が始まった。

 西松と松崎はスライムに捕らわれて、引き離されてしまった。


 松崎は叫ぶ。


「西松先輩!!!!」


 西松も同様に叫ぶ。


「松崎!!! 大丈夫か!!!」


「先輩、あなたに会えて嬉しかった、幸せだった! 引き離されてもこの感情は途絶えません!」

「俺もだ、松崎」

「来世でまた会いましょう!」


 そう言い残して、二人はスライムに倒されて消滅した。

 北原は最初の街に向かった。

 教会で復活する二人を待つためである。


「まったく、仲のいいこと」


 北原はため息を付きながらも、どこか二人を憎めないでいた。


――――――――――――


【フォーラム】ここはフォーラムです。どしどし議論をしましょう!


 [スライムの謎行動](984 views)

<スライムが自己捕食する動画>

 トソナ草原から。これやばくね?


 ――鑑定結果を貼っておきますね

 【名前】Nameless(スライム・水)

【Lv】13 【HP】24 【MP】17

【スキル】分裂

   ――ありがとうございます!!

   ――Lv13は強いね。初心者キラーになると怖いな……誤爆するとトラウマになりそう

   ――スキル・分裂が気になるところだね

     ――普通のスライムにむしろ備わってないのが驚き


――――――――――――

お読みいただきありがとうございます。

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