48.見つけたものは
「・・・」
・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
・・・。
「・・・あの、放送事故か何かですか、これ?」
包装事故?
「とは、何ですか?」
「放送事故にございます。とある界隈に於いて、始まったのに想定外に音や光が届かなかったりすることを指す言葉にございます」
アルの説明でもいまいち分かりませんでしたが、今はどうでも良いことですのであまり踏み込まないでおきます。
・・・踏み込みすぎると際限なくはまり込んでしまいますから。
「えっと・・・では何をなさっておいででしたのでしょうか」
「所謂一つの瞑想です」
「・・・、・・・。何ゆえ、また瞑想など」
と、何かを我慢するかのように、そこから必要な言葉だけ絞り出すようにアルが質問してきます。
しかし・・・
「こうするに至った元凶が何を言うかと思えば」
「え、元凶!? 私の何がお嬢様をそのような奇行へと駆り立てたのでございますかっ!?」
白々しい。
忘れもしない二日前。
アルに唆されて出向いた訓練場で、わたくしはまんまと『怪力ー』だの、『非常識』だの、『スリーアウトの女』などと不名誉な称号を擦り付けられる結果となりました。
誰にと申し上げれば、アルに、です。
いつものこととは言え、本当に失礼に過ぎます。
とは申せ、アルの言に分があることを今回ばかりは認める他ありません。
いくらわたくしとて平然と岩を砕く子供が一般的、なとど申し上げるつもりはございませんので。
「それは分かりましたが、そこで何故瞑想を」
「自らを見つめ直すために決まっているではありませんか」
「いいえ、決まってないと思います」
「そうですか?」
「そうでございます」
まぁ、どちらでも構いません。
「構ってくださいませ!」
構いませんとも。
今大事なことは如何にして自分のこれまでを振り返り、次へと繋げるかということですから。
「むぅ・・・ではお伺い致しますが、何か成果はございましたか?」
「そうですね。明確に物事を学び始めた頃の、初心を思い出しました」
「ほぉ」
わたくしが瞑想をして啓いた悟りをアルはとても期待に満ちた目で聞いてきます。
・・・何故そんなにも嬉しそうなのですか。
「いえ、ちょっとこう、ようやくこれまで無駄と知りつつもお伝えし続けてきた賽の河原の石積みの如き努力が報われるときが来たのかと思うと、ついつい」
今また、密かに・・・いえ、割と大胆に失礼な発言が混ざった気がしましたが。
・・・良いでしょう、今は折角のアルの期待に応えて差し上げるべき時です。
何せこれからはアルの失礼な言葉を聞く機会が減るわけですから、寧ろ惜しむくらいはしても良いのではとも思います。
「おぉ。おぉ・・・なんと自信に満ち満ちたお言葉にございましょうか。遂に、遂にお嬢様が真っ当な淑女道を歩まれるのなでございますねっ」
「アルの言う淑女道は分かりませんが、そうですね。今目指すべき道は見えました」
「して、そのお心は?」
「今わたくしが目指すのは、自身の力のみで先日の大岩を砕く力と技術なのです」
「・・・え?」
「え?」
ル「ですから、しばらくの間は加護の力を極力抑えるよう、頑張らねばなりません」
ア「・・・結論は合っているのに、そこに辿り着かれる理由が・・・・・・」