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43.珍客でない客の方が珍しいかもしれない



「あの、お嬢様・・・なんかお嬢様にお客様がいらしてるんですけど・・・」



 エリーさんが珍しくも酷く困惑した面持ちで教えて下さいました。

 普段は飄々とされている美人さんが困惑する表情は常よりも更に親近感を感じられてとても良いものですね。


 ですが、お客様ですか。



 ・・・廊下の窓から外を眺めれば相も変わらず雪が降っています。

 それはもう、しんしんと。

 それなりの頻度で雪除けもしていますが、昨夜から振り続く雪により人が通れそうな道は再び埋まってしまいました。



 このような中で、お客様・・・。


 ・・・なんとなく。


 本当にそれとない予感でしかありませんが、人では無い気がしています。

 このような状態の中、道なき道を切り開いて外から来られる人はそうそういませんし、わたくしの友人知人にそんなことをしそうな方は思い浮かびません。


 エリーさんの困惑もその予感を後押ししています。



 確かに我がクラウディアス家は魔界のゴブリンと取引をしていたり、ソラを雇い上げたり、ワイトニングさんをお招きしたりといった例も存在するにはしますが、魔物との友好的な関わりは世間一般と比べてもそれほど多いわけではないはずです。

 そこへ見知らぬ魔物が訪ねてくれば、それは困惑することでしょう。



「それで、どういった方がいらしているのでしょうか」


「や・・・ん〜、なんて言うか・・・顔が凄くデカイです」


 申し訳ありません、ちょっと分からないです。


「あ、あと意外と眼がつぶらな感じでした」


 更に答えが遠退きました。



「まぁ、まずはお会いしてみましょう」


 いったい何方がいらっしゃったのでしょう。




 ・




 ・・




 ・・・





「あ、お嬢様」


「ぐるるるっ」



 そうしてエリーさんに案内してもらったのは客間でなく、裏手の訓練場。

 更に何故かそこにはアルとソラ、人垣ができて外が見えないほどの兵士の方々。


 ・・・確かに魔物相手であればアルとソラは置いておくとしても、兵士が出張るのは正しい対応ですしいきなり屋敷内まで通さないのも分かります。

 分かるのですが、何やら人数が多くありませんか?



「ヒュース小隊長まで」


「態々お越し頂き恐縮です、リュミエールお嬢様」


「それは構いませんが・・・随分と物々しいと申しますか、厳戒態勢ですね」


「相手が相手ですから、警戒し過ぎるくらいで丁度良いと思っています。いえ、むしろこれでも足りないくらいかと」


 ・・・本当に何方が訪ねて来られたのでしょうか。


 ここは一番事情に通じてそうな相手に聞いてみるのが早いですね。



「アル」


「はい、お嬢様」


 説明。


「確かに私は日々お嬢様のお役に立とうと周囲の状況把握に努めておりますが私が必ずしも全てを把握しているわけではなく「説明、をしてください」こちらへどうぞ」


 何が言い訳のようなそうでないようなことを言っていましたが、再度問いかければ騒ぎの原因が見えるであろう辺りへと先導し始めました。

 こういった騒動にアルが関わっていないわけはありませんから、取り繕うだけ無駄だと思います。



「いやぁ、お嬢様も騒ぎの中心にいらっしゃることは然して珍しくない気が・・・」


「何か仰いましたか、エリーさん?」


「いえいえ、何もございませんとも」



 何か聞こえた気がしたのですが・・・首を傾げつつアルの背を追いますと、人垣が左右に割れていき段々と向こう側が見えるようになっていきます。



 そこに待ち構えていたのは。




「キィキィィ」



「蜘蛛・・・ですか?」



 雪の下から顔だけを覗かせている状態ですので断言できませんが、恐らく蜘蛛で合っていると思います。


 ・・・大きさを度外視すれば、ですが。


 兎に角大きいのです。

 顔以外は雪(恐らくは地面の下)に隠れて全貌は判然としませんが、顔だけでもクラウディアスのお屋敷と同じくらいのサイズがあるのではないでしょうか。

 


 もしやこの方は。


「こちら、いつも取引をしているガイアスパイダーにございます」


「キィィ」



 アルが以前に人が上で暮らせると言っていましたが、顔だけでこれでしたら背中には小さめの村くらい築けるのではないでしょうか・・・。

 しかしこれだけの巨躯を誇る魔物相手でしたら、この大人数でのお出迎えもそれですら足りないというヒュース小隊長の言も頷けるというものです。




「しかし何故こちらにいらっしゃるのですか」


「えーっとですね。それがどうにもお嬢様のお贈りしたお礼の品のいくらかを大層気に入られたらしく、それらを今度は取引にて手に入れたい、と私がしているように自ら足を運ばれた次第で」


「キィ」


 身じろぎするようにガイアスパイダーが僅かに頷きます。




「・・・・・・もしかせずともこの騒ぎはわたくしの責でしょうか」


「責かどうかは置いておいて、お嬢様のお心遣いがガイアスパイダーを駆り立てたのは確かですね」


























「それはそれとして、エリーさん」


「はいはい?」


「顔が大きいとか眼がつぶら以外に伝えられる特徴ありましたよね」


「あー・・・だって蜘蛛がお客様で来てますって言っても、何言ってんだこいつ???ってなりません?」


「それでも巨大な蜘蛛って伝えて頂ければそれで事足りたと思いますが」


「や、でも身体は見てませんから、実はこの下は馬っぽかったりするかもしれないじゃないですか」



 ・・・。


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