表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/61

41.奇をてらうよりは無難な方が


 ちょっと遅くなりました。




「お礼参りでございますか?」


「その言い方は別の意味に聞こえるので止めてください」



 アルがまたぞろ失礼なことを申しておりますが。





 わたくしがしたいのは先日の手袋(仮)の素材を提供して下さった方々へのお礼です。


 お相手は(予想も含め)全て魔物ではありますが。



 ソラには、ご飯のお肉に良いものを用意するようにしました。

 ワイトニングさんへは彼女が以前より欲されていた香油を準備しておき、訪問頂いた際(手は指の第二関節辺りまで復活されていました)にお贈りしました。

 野良ゴン様にはいつものことではありますが、お礼のお手紙と読み物をアル伝手にお渡ししています。



 と、そこまでは良かったのですが。


 あと一名。

 アルによれば実はかなり以前からお世話になっていたらしき方。

 しかし直接にでも間接的にでも、お言葉を交わしたことの無い方がいらっしゃいます。


 ・・・魔界の奥地に住まわれると伺っている大きな蜘蛛型の魔物、ガイアスパイダーです。

 アル曰く、その上で人が暮らせるほどに身体が広いらしいです。


 この彼?彼女?には何を以て感謝の気持ちを現せば良いのか、まるで検討が付きません。



「そこで直接面識を持っているアルに相談した結果の第一声がこれなのですから、本当に失礼な使用人です」


「そんなはっきりお声に出して頂かなくとも・・・」


「どれ程声に出そうともまるで通じないのですから、実質独り言と同義です」


「独り言でしたらもう少しお声の大きさをしぼられた方が良いかと」


 やかましいです。



「それで、いつもお世話になっているガイアスパイダーへは何を送ると喜んで頂けそうですか」


「そうでございますね・・・私もそこまであの方とお付き合いがあるわけではございませんから」


 おや?

 アルにことの真相を聞かされてから改めて眺めてみたところ、アルの作る衣類、布類に関してはそれなりの割合でガイアスパイダーの糸が使われていたと思うのですが。

 それらを作った時期やその量を考えると、長期に渡り糸の取引をしていたのではないのですか?



「いえ、そうは申されましてもガイアスパイダーは巨大ですから一度にやり取りする糸の量もかなりのものなのですよ。ですから一度受け取ってしまえばしばらくは使いきれません」


 アルから伝え聞く巨躯を思えば分からないでもありません。


「まぁ、大体は獲物(おだい)をお渡しするのは何回かに分けてになりますので、その後しばらく通いますけど」



 ・・・結論。



「お支払いに通う分を足し込んでもやはり顔を合わせる頻度は低いです」


 でしたらその僅かなお付き合いの中ででも良いですから、何か参考にできそうな情報はありませんか。



「そうでございますね・・・」



 ここまできて漸く、アルは腕を組んで考え始めました。

 ・・・とても無駄な遠回りをしましたが、これで少しでも何かを得られれば・・・・・・・・・まぁ、無駄ではなかったと納得しておきましょう。



「あぁ、そういえば」


 おや、早速何か思い当たることでもあったのでしょうか。


「世間話として町の様子を語ったときに演劇の話題にとても食いついてきましたね」


「最近の魔物の間では人間の娯楽が流行ってでもいるのですか」
































「情報が得られたのは嬉しいですが、まさか劇団を魔界の奥にお連れするわけにはいきません。困りましたね」


「来てもら「却下です」え、ば・・・はい」


 演劇をお見せできれば一番かもしれませんが、ひとまずは物語に触れられるよう、最初に野良ゴン様に差し上げたのと同様に本をいくつか見繕って気に入って頂けるかお伺いを立ててみるとしましょう。


 が、そもそも字を読めるのでしょうか。

 ソラや野良ゴン様は当たり前のように読めていましたが・・・


「でしたら、子供が読むような絵本などもご用意頂ければ、私が簡単に教えてきますよ」


 簡単に言ってのけますが、大丈夫なのですか?


「まぁ、元々魔界の魔物って奥に行くほど頭が良いのばかりですから、文字程度であれば本当にすぐにでも覚えられるかと」



 ・・・魔界は本当に魔境ですね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ