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21.かくして盗賊はお縄になった


ネット小説大賞にこっそりエントリーしてみました。

弱小も良いところの本作ですが、やらないで後悔するならやって後悔しようかと。



「な、なんだてめぇら!?」

「ちくしょうっ、どこから入りやがったんだ! 見張りはどうしたっ!?」

「ひっ・・・くく、く来るんじゃねえ!」


 まぁまぁそれなりの騒ぎになり、目の前の男たちは慌てたようにこちらへバラバラと得物を向けてきます。


 今のところ全体に指示を出すような存在は見受けられませんが、この集団の頭はこの混乱の只中で己も混乱を装い様子を見ているのか、はたまたこの中にはいないのか。

 そもそもそんな存在はいない・・・というのはありません。

 そうでなければ隣領の兵士団までかわして長い期間討伐もされずにいたというのはあまりにも不可解ですし、この混乱を目にすると尚のこと頭を張る人間がいると、そう感じられます。


 これが全てこちらの油断を誘うための演技というのであればまぁ、全員がそれだけの頭脳と即応力を持ち合わせているという可能性もありますが・・・立ち直ることなくきっちり抵抗までした上で打ち取られていく様を見る限り、あり得ませんね。



 怒号と混乱渦巻くここは、先日冒険者組合から情報を頂いた盗賊の塒です。


 2日かけて隣領まで遠征するだけの理由をかき集め、予定通り討伐隊が差し向けられました。



 結果は見てのお察し、とでも申しましょうか。

 盗賊たちは問答無用で打ち倒され、後ろに控えた拘束班が争いの隙間を縫って後方に引きずってゆき鋼鉄製(まものよう)の鎖で縛り付けていきます。


 その風景の一部をお伝えするのであれば、盗賊側は罵倒から悪態を吐く声、叫び声(ひめい)が騒がしいですが、翻って我が方--討伐隊は時折気合いの声が上がる程度であとは坦々と獲物を狩り・・・もとい、盗賊を討伐していくのみ。


 感想を述べさせて頂くのでしたら、浅層とはいえ魔界と呼ばれる領域の魔物を相手にしているクラウディアス家の兵士たちからすれば、この程度の盗賊ではまるで相手になりません。



 と、いうわけで。


「っ・・・!」


 わたくしも戦線へと(勝手に)参加しております。


「なんなんだっ! 本当になんなんだよてめぁらはっ!!!」


 不満を口にするだけで自分からは前に出ようとしない相手(えもの)を一人見繕い、後ろから足元に入り込みます。

 丁度、相手の体の真下から、起き上がる勢いも乗せて()()()蹴り上げます。


 ・・・なお、本日は実戦ということもありバーストグリーブと護符(アミュレット)も着用してきています。



 するとどうなるか。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーーーっっっっっ!!!??? ァァアァァァァァ・・・・・・ッッ・・・・・・・・・・・・!!!。」



 悪態を吐いていたその口から今度は悲鳴が上がります。

 最初は勢い良く、それが徐々に声にならない叫びと化していき、その叫びに合わせるかのようにゆっくり、ゆっくりと膝を突くように白目を剥きながら泡を吹いて倒れていきます。


 手は、始終急所を押さえていました。



「「「「「・・・・・・・・・」」」」」



 そうして、魂を削るかのような叫びが不思議と争いの合間を縫って一際響き、この場に沈黙が降りました。

 敵味方共に引き攣った顔をしています。



「・・・なんですか」


「「「「「・・・い、いえ。なにも・・・」」」」」



 ・・・どこかで聞いたやりとりのような気がするのは気のせいでしょうか。


「お、おい。なんでお嬢様がこんな前に出てるんだ」

「知らない、ってかいつの間に・・・」

「なあ、アレ大丈夫なやつ? かなりヤバイ声上げてたけど・・・しかもよく見るとなんか若干焦げてるんだけど・・・」


 先程までとても静かだった討伐隊が酷くざわつき始め、逆に盗賊側は震えて顔を青ざめさせ静かになりました。


 なお、焦げているのはきっとバーストグリーブの力が暴走したせいです。

 わたくし個人の思惑や感情は一切関係ございません。


 えぇ、関係ないのです。



 ・・・ところで、戦闘が止まりましたね。



「・・・もう一人くらい蹴り上げるか踏み潰せば、戦闘を再開できますか?」


「「「ひぃ!!?」」」


「鬼ですかお嬢様!?」


「失礼ですね。このまま無抵抗で終わるのも不憫と思いましたので反撃の狼煙を上げて差し上げようという、わたくしからの僅かばかりの心遣いなのですから」


「反撃の狼煙は反撃する側が上げるものですし、そんな物騒かつはた迷惑な心遣いなんて魔界辺りにでも放逐してきてください!」


「それでは折角の狩りの機か・・・こほん。これまでこの盗賊の被害に遭ってきた方々の無念が報われないではありませんか」


 長期に渡ってこれだけの人数が生きていくだけの略奪をしてきたのです。

 わたくしたちが把握するより多くの被害が出ているはずです。



「だからって盗賊どもが無念を抱いたままショック死して悪霊にでもなりかねない方向で無念を晴らさずに、もっとちゃんと公の場にて裁きをくれてやってくださいよ・・・」


「当然、そちらも抜かりありません。法を犯したのですから法に則って捌かれるべきでしょう」


「人としての尊厳を踏み砕くレベルで痛め付けた上で更に追い討ちは流石に鬼の所業ですって・・・」

「てか、今なんか『さばく』の言葉の響きおかしくなかったか?」

「あ、お前も思った? やっぱり気のせいじゃなかったか・・・」




「ていうかお嬢様、なんか八つ当たりも入ってません?」



「・・・・・・・・・・・・・・・気のせいです」



 そうです。

 お父様がすぐに動いて下さり、即日例の黒い自称執事(仮)が参加決定となったにも関わらず本人はこの塒の別の入り口を発見し、そちらに向かったこととは何も関係ございません。



 折角の、彼の方が戦うところを直に目にする良い機会だったのですが・・・えぇ、それを潰されたことなど、関係ないのです。



「本当に気のせいと言うにはかなり間がある気のせいでしたね」


「何のことかと考える間があっただけに過ぎません。ですから早くに戦闘を再開しましょう、次からはもう少し積極的に蹴り潰しにいきますから」


「やっぱ無茶苦茶私怨ですよねそれ!!?」




































 結局、あれから更に抵抗はあったものの、わたくしがもう何名か蹴り上げたところでそれもなくなりました。


 ですが最後にはわたくしから距離を取り討伐隊に助けを求めていたのが解せません。

 どのように考えてもわたくしよりも討伐隊の兵士の方々の方が多くの盗賊を倒し、更には鎖で縛って捕縛までしているというのに何故そちらに。



「や、俺らお嬢様みたく執拗に急所狙ってませんし・・・」


「何人も目の前で同じ目に遭ってる中で再起不能になりかねない威力で只管急所狙われるって、控えめに言っても恐怖しか感じませんからね? しかも狙われると回避不能とか・・・」



 ・・・解せません。



頭目は仮面バトラーVが捕まえました。


頭「な、なんだ貴様は!?」

仮「通りすがりの仮面執事だ、覚えておけ」

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