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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第十四章 勘弁してください
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「では、お願いします」

 そう言って、ウィリアム様とキース様が持っている巣盤を商会のスタッフへと渡します。

 スタッフの方達は軽く頭を下げ、馬車へと乗り込み去って行かれました。

 私とリンちゃんはといいますと、不気味に(うごめ)アレ(・・)から解放されたことにより、安堵の溜息をもらします。

 そしてリンちゃんが水の半分程入った球体を(魔法で)2つ出されます。

「二人とも、しっかり(・・・・)手を洗いなさいね」

 荷物の中から石鹸を取り出し、ウィリアム様に渡しました。

 ウィリアム様とキース様は顔を見合わせて苦笑いを浮かべて、しっかりと手を洗うのでした。


◇◇◇


「あらお帰りなさ~い。早かったのね~」

 受付のアンさんが和かな笑顔でお出迎えして下さいます。

「ただいま~。アンドリュー、これよろしく~」

「だから、アンだってばっ!」

 アンさんはそう言いながらもキラービーの針と毒嚢を確認されております。

「ん、大丈夫みたいね。ほら、みんなカード出して」

 カードを受け取ると、受付にある機械に一枚づつ入れていき、書き換えが終わった物から返されます。

「針と毒嚢は裏で買い取りしてもらってね~。状態も良いし、数もそれなりにあるから、美味しいもの食べられるくらいは稼げるんじゃないかしら?」

 アンさんに証明書を発行して頂き、手を振ってギルドを出ます。

 壁伝いにぐるっと左手に回り、裏手の買い取り専門の受付へと向かいます。

 ここはとても広い倉庫のようになっており、高い天井からは幾多ものロープのようなものがぶら下がっております。

 イメージ的には、ステージのない体育館を更に広く天井を高くしたような感じでしょうか。

 入口を入ると直ぐにカウンターがあり、こちらは小さな物専用カウンターです。

 入口の右手奥には大きなもの専用カウンターがあります。

 入って直ぐのカウンターに針と毒嚢を広げて置きました。

「買い取りお願いします」

 と言うと、パーテーションの裏から小柄な白髪の、少し気難しそうな初老の男性が出て来ました。

「おお、ウィルじゃないか。なんだ、今日はキラービーの討伐か?」

「そうですけど、ラン爺、引退したんじゃ?」

「ふん、のんびり引退生活を楽しもうと思っとったが、今日はドラゴンの討伐があるらしくてな。今の若いもんが不甲斐ないから、儂が引っ張りだされたんじゃ」

「へえ~、ドラゴンが。まあ、解体はラン爺の右に出るものはいませんからねぇ。あ、今度虫酒を作ることになりましたので、出来上がったらお届けに伺いますよ」

「ほう、虫酒とな? それは楽しみに待っておるわ」

「ラン爺、紹介します。私が今パーティーを組んでいる友人達です。キースとその婚約者のカレンと、リンのことはラン爺も知っていますよね?」

「おお、随分と大きくなったな。確かに面影はあるな」

「ランドンさん、お久しぶりです」

 リンちゃんが軽く頭を下げて挨拶されております。

 ウィリアム様が私とキース様の方を向き、今度はラン爺と呼ばれる方の紹介をして下さいました。

「この人はランドンさん。私はラン爺って呼んでるけどね。何年か前に引退した凄腕の解体屋なんだよ。今日みたく難しい解体の依頼が入る時なんかには、借り出されているみたいだけどね」

「おだてたって何にも出やしねえぞ」

 ランドン様はそう言いながらも、まんざらでもないご様子。

「キースです。よろしくお願いします」

「カレンと申します。よろしくお願い致します」

 挨拶が済みましたところで、持ち込みましたキラービーの針と毒嚢を鑑定して頂きます。

「随分と綺麗な状態で持ってきたな。また腕が上がったのか?」

 ランドン様は今鑑定している毒嚢から目を離さずに、ウィリアム様に話しかけられます。

「多少は上がっていると思いますが、みんなの協力の結果ですね」

 ランドン様は鑑定を終えたようで、口の端を上げて小さく笑って。

「少し色つけといてやったからな。いい友達が出来たようだ。良かったな」

 そう言ってウィリアム様の頭を撫でられました。

(……ランドン様は背があまり高くないので、ウィリアム様のおでこの辺りを撫でるような感じになっておりますが)

「頭を撫でられるのは久しぶりですね。昔はよくこうしてラン爺に撫でてもらいました」

 懐かしそうに目を細めてウィリアム様が仰います。

 ランドン様は今度は豪快に笑われます。

「今じゃ大きくなって撫でにくくなりおったがな」

 その後、私達の後ろに列が出来始めましたので、ランドン様に挨拶をして買取所を後にしました。

「さて、このまま学園に戻ってカフェか食堂でお昼を頂くか、街でお昼を食べてから帰るか、どちらが良いですか?」

 言われてみますと、そろそろお昼の時間です。

「婆さんの店に行かないか?」

 キース様が仰いました。

 思わずリンちゃんと同時に声を上げます。

「「行くっ(行きます)」」


 婆さんの店とは、腰の曲がった口の悪いお婆様が一人で切り盛りされておりますお店です。

 メインの通りより一本入った所にあるお店ですが、とても繁盛しておられます。

 三年前に初めてキース様に連れて来て頂いてから、時々この四人で寄らせて頂いているのです。

「今日は何食べようかなぁ」

 リンちゃんはご機嫌に鼻歌でも歌いそうなトーンで仰います。

「何を頂いても美味しいですから、迷いますね」

 かく言う私もご機嫌です。

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