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ある日の放課後。
職員室に用があるというリンちゃんにつきあって、職員室前で待機しているキース様とウィリアム様と私。
何気ない話をしていると、慌てた様子でリンちゃんが職員室から出て来られました。
「ちょっとちょっと、大ニュース!」
何故か物凄く楽しそうに悪い笑顔を浮かべられております。
「此処じゃ話せないから、早く部屋に行こう」
と言い、身体強化を使って寮の方へ走って行かれました。
慌てて私たちもその後を追います。
いつもの半分以下の時間で寮に到着致しました。
部屋に入り、リビングのソファーへと腰を下ろします。
リンちゃんの顔には笑顔がはち切れんばかりに浮かんでおります。
「で、何が大ニュースなんだ?」
キース様が待ちきれないとばかりにリンちゃんに問われます。
リンちゃんは勿体ぶったように「ふふふ」と笑いながら話し出しました。
「さっき、用があって職員室にいったでしょ? そこで聞いちゃったのよ」
ウィリアム様はマリアの淹れた紅茶を飲みながらゆったりとされて聞いておられますが、キース様は前のめりになられて。
「だから何をだよ」
とリンちゃんを急かすように問われます。
「職員室の奥って学園長室と繋がってるじゃない? 扉がね、少~しだけ開いてたのよ。で、ちょ〜っとばかし中を覗いて聞き耳立てちゃったりしたんだけどね〜」
そこまで言って、紅茶を飲み始めるリンちゃん。
リンちゃん、引っ張りますね。
キース様の顔が「早く言え」と物語ってます。
紅茶をテーブルに置き、徐に。
「んふふふふ。今度の週末に、ヴァイス先生がお見合いだって~~」
と、爆弾発言をされました。
これには優雅に紅茶を飲んでおられたウィリアム様も驚いたようで、目を丸くされております。
何かとても珍しい物を見せて頂いたような気がします。
キース様も吃驚したように「うわ、マジか」と呟いておられます。
リンちゃんは皆んなのそんな反応を見て満足したように笑いながら。
「というわけで、もちろん見に行くでしょ?」
と、とても黒い笑顔を浮かべました。
ウィリアム様も黒い笑顔を浮かべられて。
「寧ろ行かない理由がありませんね」
と。こうなった二人は誰にも止められません。
キース様と二人、苦笑いを浮かべるしかありませんでした。
「お見合い場所と時間もしっかり確認して来たから、バッチリよ」
リンちゃんの話によると、次の週末の十二時に今人気のレストランCIELで行われるそうで。
このレストランはウィリアム様の御実家であるサンチェス商会経営のレストランで、早速ウィリアム様の手配でお見合いの席の隣の席(間に仕切りがあるので声は聞こえるけれども姿は見えない)を押さえたとのこと。
……ウィリアム様、仕事が早すぎます。
リンちゃんとウィリアム様は、楽しそうに先生のお見合い話について語られております。
キース様はお見合い話に吃驚はされておられましたが、特に興味を持つことはなく、今は私を膝の上に横向きに乗せてご機嫌な様子。
私はというと、ただただ恥ずかしくて俯くことしか出来ません。
だってですね、顔を上げたら直ぐそこにキース様のお顔が、お顔が……。
などとワタワタしていると。
「ちょっとそこのバカップル~、聞いてる~?」
リンちゃんが呆れたような顔をされております。
「次の週末は十時に寮を出て、CIELに向かうからね~。あと、目立たない服装にしてよ?」
やはり私たちも、覗き確定なんですね。
◇◇◇
四日後、週末。
ただ今朝の七時です。
クローゼットの前で洋服達を前に悩んでおりますと、トントンとノックの音がし、ガチャッと扉を開けてマリアが部屋へと入って来ます。
「おはようございます、カレン様。……どうなさいましたか?」
私を起こしに来たマリアに、目立たない服装を選んでいるのだと言いますと。
「では、こちらは如何でしょう」
薄いピンクのワンピースに茶色のカーデガンを手にしておりました。
「じゃあ、それにします。マリア、ありがとう」
ワンピースとカーデガンを受け取り、一度ベッドの上へと置き、洗面所へと向かいます。
顔を洗い、歯磨きをし、マリアの選んでくれました洋服に着替えます。
髪型も今日は目立たぬように、ハーフアップにしてもらいました。
マリアは少し物足りなそうな顔をしておりましたが、今日は目立たず地味にしなければいけないのです。
ですので、目立つアルとエテルノさんとさくらには、お留守番をお願い致しました。
……お詫びと言っては何ですが、お土産を買って帰ろうと思います。
テーブルに並ぶ、マリアの作った美味しい朝食を頂いております。
目の前にはリンちゃんが居り、同じように美味しい朝食を頂いておりますが……。
一言で申しますと、全身真っ黒です。
黒シャツに黒スキニーが、リンちゃんのスタイルの良さを強調し、とても格好良過ぎて逆に目立つように思われます。
マリアも同じ事を思ったようです。
「リン様、その格好は逆に目立つように思われますので、よろしければこちらにお着替え下さい」
いつの間にか手にしていた白いスキニーを、リンちゃんに手渡しました。
いつの間にか食べ終えていたリンちゃんはマリアにお礼を言って、部屋に着替えに行かれました。
黒から白スキニーに履き替えただけですが、これならばそんなに目立たないかと思われます。
この世界に宝塚があれば、きっと男役に抜擢されて大人気になったのではないでしょうか。




