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アル&エテルノ目線です
アルが男に向かって体当たりし、エテルノがブレスを放ち、そしてここから二匹の遊びが始まったのである。
地上に向かう階段はアルとエテルノの背後にあるため、魔物の子供を拐った一味は地上に逃げることは、アル達を倒すか転移しない限り不可能なのだが。
この世界では、転移魔法は魔法陣を使用して行われている。
魔法陣なしで転移出来る者は居らず、長距離移動を含む移動系魔法は、魔法陣を使用するか風魔法で行うのが常識とされている。
それ以外では移動用の魔石を使用するしかないのだが、彼らが都合よくそれを持っているとは思えない。
その為地上に出るには、アルとエテルノを倒すしか選択肢はないのである。
アルとエテルノは一応人間を殺さぬよう、少しでも長く遊べるように本来の姿に戻ることなくかなり力を加減しているのだが。
アジトにいる者たちの放つ魔法はスカスカの魔力で構成されたもので大した威力もない。
自分が放った魔法をアルが尻尾で叩いて消したのを見て、ガックリと首を垂れる者。
エテルノに向かって大剣を振り下ろしたはずが、エテルノのブレスによって大剣が消し去られ、剣の部分のなくなった己の武器をただ見つめる者。
余りにも不甲斐ない相手に。
『弱いっ! 弱すぎるではないかっ!!』
アルは怒りで壁という壁に体当たりし、彼方此方に穴を開けまくり。
エテルノもエテルノで。
『暴れ足りぬではないかっ!』
怒りにブレスを床や天井目掛けて放ち。
アジトの人間たちは一番奥の部屋の隅に固まり、震えながら二匹を見ていることしか出来なかった。
『主の学園の生徒たちの方が、まだ戦い甲斐があるというものよのう……』
エテルノはフゥと小さな溜息を一つつく。
『アル、カレンに言ってギルドの者たちを連れて来てもらえんかの?』
そう念話してアルの方を見る。
アルも不完全燃焼なのが分かる、つまらなそうな顔をしている。
『分かったのだ』
言うが早いか、アジトを後にする。
このアジトの中で唯一無事な空間は、エテルノの背側にある、彼らが一番最初に連れて来られた部屋のみである。
エテルノの視界の前に広がるのは、壁から床、天井に至るまで穴・穴・穴の空間と、一箇所に固まって震える、何とも情けない男たちの姿であった。
これだけ見ると、やり過ぎのように見えるだろう。
そしてこれから来るであろうギルド員たちも、後始末が大変なことだろう。
『やはり怒られるかのう……』
今度は大きな溜息をつくエテルノであった。
◇◇◇
エテルノが地上に膨大な魔力を感知し、少しの後、アルを抱いたカレンが階段を物凄い勢いで降って来る。
転移魔法陣を使用して来たのだろう。
初めてのところに転移をするなど、余程魔力のコントロールに優れている者でなければ不可能なはずなのだが。
カレンの魔力コントロールの力は、それを可能にする程上がっているということなのだろう。
エテルノの目の前で止まり、空いている方の手でエテルノを抱き寄せる。
「お二人(二匹)が強いのは分かっておりますが、でも、だからって、無茶をして良い訳ではありません! 心配したじゃないですか! 怪我がなくて、良かった……。もう、勝手に、居なく、ならな……で下さ……」
『主、心配掛けてすまんのう』
『カレン、ごめんなのだ』
いつの間にか来ていたキースがカレンの頭を撫でる。
「もうその辺にしといてやれ。そいつらのお陰で拐われた魔物の子供を助けることが出来たのも事実だしな」
カレンは小さく「はい」と言いながらも、二匹を抱きしめたまま泣き止むことは無かった。
カレンが泣き止むまでキースは優しく撫で続け、そして空気となっているギルド員たちは後始末を淡々と続けていたのである。
ギルドに戻るとギルマスであるツァイより、
「まあ、後始末はかな~り大変だったけどね~。でも組織を一網打尽にすることが出来たのも事実だから~、今回はお咎め無しだけど~、あんまり勝手なことをするとカレンが心配するからね~。次はお小言だけじゃ済まないから~、気をつけるんだよ~」
と、お小言と言えるようなものでもないお小言を言われ、ペコペコ頭を下げるアルとエテルノの二匹。
普段涙を見せることのないカレンを泣かせてしまったことで、かなり反省をしている模様。
拐われた状況など幾つかの質問に答え、そして忙しいであろうギルマスの部屋を後にした。
◇◇◇
その後。
屋敷に戻り、カレンの部屋にて。
『カレンごめんなのだ、許してくれなのだ~』
「知りません!」
『主よ、本当に済まなんだ。機嫌を直してもらえぬか?』
「直りません!」
世にも珍しいアルとエテルノ(使い魔)の必死の土下座。
何故こんなにも必死で謝っているのか。
それは……
「どんなに謝られても、一ヶ月唐揚げ禁止は変わりませんからね!!」
『カレン~~~~~~~(泣)』
『主~~~~~~~~~(泣)』




