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キース目線です
「ボスが亡くなり代替わりして、今は彼がこの群れのボスだそうです。先程の障壁二つ分のウルフ達ですが、違う群れのウルフ達だったようですよ」
……普通に考えれば縄張りを越えて一緒に行動するとか、あり得ないと思うが。
「どうやらこの辺り一帯で子供のウルフが拐われているようで、そのために集まっていたみたいです」
「拐われたって、人間にか?」
「そのようですが、詳しくは彼らも分かっていないようですね」
とりあえず急ぎ討伐したウルフ達の牙を集め、遺体は火魔法で骨も残さず燃やす。
残ったダイアウルフがボスを務める群れは討伐せず、子供達の拐われた経緯を調べる約束をし、この地を後にした。
勝手に約束してしまったが、この件は俺達の手を離れ、ギルドの仕事となるだろう。
結果が出た時、ダイアウルフ達に知らせることだけでも俺達に任せて貰えたら……とは思うが。
◇◇◇
ギルドへと戻り受付嬢に簡単な説明をすると、予想通りと言うか受付横の部屋へと通され、今現在ギルマスが来るのを待たされているところだ。
受付嬢が紅茶を淹れてくれたのだが、一口飲んでテーブルに戻した。渋っ!
横でカレンが、やっぱりと言うような微妙な顔をして俺を見ていた。
知ってたなら教えてくれよっ!!
「やあ、久しぶりだね~」
と、ゆる~く残念な口調でギルマスが部屋に入って来た。
一応立ち上がって一礼する。
「わぁ、やめてよ~。もっと気楽にいこうよ~」
このギルマスの口調、何とかならないのかな……。
ギルマスが俺達の前の席に着くと、受付嬢がギルマス分の紅茶を淹れ、退席した。
「相変わらず、サーナの淹れた紅茶は渋いな~」
と言いつつ、二口三口と飲んでるよ。
なんだかんだ言って、この渋さはギルマスの好みなんじゃないのか?
「さて、と。サーナから簡単な話は聞いたけど、詳しく説明してもらっても良いかな~? 何度も悪いね~」
俺が説明するとはしょり過ぎて分からないとよく言われるので、カレンに説明をお願いした。
丁寧に、かつ相手に分かりやすい言葉を選んで説明していく。
カレンのこういうところ、凄え尊敬する。
誰にでも出来そうでいて、でも出来ている人間は結構少ないよな。
説明を終えると、ギルマスは片手を顎の下に持って行き、考える人のポーズで動かなくなった。
……五分経ったけど、帰っていいか?
「ダイアウルフがボスのウルフの群れっていうのに興味はあるけど~、今は置いておいて~」
ギルマスは大きなため息を一つつく。
「実はね~、魔物の子供が拐われる案件は、ウルフだけじゃないんだよね~。どうやら他国の貴族の間で~、魔物のペットが流行っているらしくてね~。大人になった魔物は懐かないから~、飼うのなら子供の頃からってことで~。拐った魔物の子供を~、他国に売っている団体があるらしいところまでは突き止めたんだけどね~」
マジか……。
その団体はかなり警戒しているのか、なかなか拠点の割り出しが出来ずに、ギルドとしてもやきもきしているところらしい。
「引き続きギルドも調査を行なっているから~、結果が出たら伝えるよ~。君達はこの件に関しては~、手出し無用だからね~」
どんな奴らが関わっているか分からないし、規模も分からないし、分からないことだらけだから。
だから危険だとギルマスは言う。
俺達の出る幕じゃないってことか。
まあ、本当に心配してくれているのは分かるし、カレンを巻き込むことはしたくないし。
気にはなるが、解決するまで大人しくしておこう。
ギルドへの報告と手続きは終わったから、当初の予定通り美味い店探しをすることに。
表通りの店じゃウィルやリンも知ってるだろうから、横道へと入って行く。
とりあえず、良い匂いのする店を探してみる。
犬任せなのはちょっと、いやだいぶ心配ではあるが。
アルがテトテトと歩く直ぐ横をドラゴンがフヨフヨと超低空飛行して、その後を手を繋いだ俺とカレンが着いて行く。
暫く歩いていると、アルが「キャンッ」とひと声鳴いて一つの店の前でお座りをした。
店の外観はかなりボロ……いや、かなりの年月が経ったであろう見た目の店。
だが、微かにだが良い匂いがする。
カレンが犬とドラゴンを肩に乗せたのを確認し、店内に入る。
外観はアレだが、中はまあまあ、小綺麗にしているようだ。
出て来た店員に使い魔の同席の許可を貰い、席に案内してもらう。
使い魔を連れているのもそうだけど、カレンはとても目立つというか、目を惹く存在だ。
店内にいる人間の視線がカレンに集中しているが、本人は全くの無自覚だったりするんだよな。
俺はつい俺のアピールするように、いつでもどこでもカレンの手を繋いでしまう。
自分でも知らなかったけど、俺って意外と独占欲が強かったんだな……。
カレン限定でだが。
何品か注文して、カレンとシェアして食べる。
(犬とドラゴン用には、別で肉料理を用意してもらった)
結果から言えばまあまあ美味い店ではあるかな。
けど、これなら前にカレンを連れて行った、あの婆さんの定食屋の方が上だろう。
ま、そんな直ぐに見つかるもんでもないか。
急いでるわけでもないし、長期休暇中に見つかったらいいな、くらいのものだしな。
「この後、カレンは何処か行きたいところとかあるか?」
「いえ、特に行きたいところなどはありませんが……」
そこまで言って、顔を赤らめ、聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟く。
「でも、あの、もう少し、一緒にいたい、です」
と。……まあ、ちゃんと俺には聞こえたけどな。
もう、マジ反則級の可愛さだろっ!
目の前のテーブルがなかったら、抱きしめてるとこだ。
とりあえず店を出て、ゆっくりお茶出来る店に行くことにする。
今度は手を繋いだ俺とカレンの後に、犬とドラゴンが着いて来る形になった。
話をしながら歩いていたから、いつ、どの辺りであいつらが居なくなったのか分からない。
そう。気が付いたら、後ろをついて来ている筈の犬とドラゴンが居なくなっていた。
カレンは真っ青になり、泣きそうになっていたが……。
忘れてるんだろうけど、あいつらは使い魔だから、召喚すれば何処にいても来るんだけどな。
だから俺はあまり心配していない。
してはいないが、この状態はおかしいことだとは感じている。
何故って、あいつらがカレンに何も言わずに消えることなどあり得ないからだ。
特にアルは、カレンが心配性なことは俺以上に理解しているからな。
だから、あいつらに何かがあったんだろう。
今のあいつらは、見た目仔犬と仔ドラゴンだからな。
多分だが、ギルドで言われた魔物の子供を拐って他国に売りつけている団体が関係しているんじゃないだろうか。
そう考えた俺は、オロオロするカレンの手を取り、急ぎギルドに向かった。




