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転生令嬢の異世界愛され生活〜ご褒美転生〜  作者: 翡翠
第一章 転生しました 〜カレン5歳〜
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5

カレンの侍女、マリア目線です

 魔法の練習は夕刻まで続き、魔力の少なくなったラルク様とナギ様は床に大の字になられて。

 カレン様はそんな二人にタオルを差し出され、労わりの言葉を掛けておられます。

 私はカレン様の侍女をしておりますマリアと申します。

 カレン様にお茶の用意を頼まれ、準備しておいたものをサッとテーブルに並べます。

 温かな紅茶とカレン様の大好きなクッキーやケーキなどです。


 ラルク様とナギ様の好み?

 そんなものはどうでもよろしいのです。

 私はカレン様に喜んで頂ければ良いのですから。

 透けるようにきめ細かい白い肌、滑らかな金の糸のような緩やかなウェーブの金髪、少しグリーンがかった宝石のような大きな瞳、本当にまるで天使のよう。

 カレン様のために何かする度に「ありがとう」の言葉と、ほわっとした笑顔を見ることが、私の楽しみの一つなのです。

 世の中にこんな可愛い存在があるのかと、今の私はカレン様中心にまわっていると自覚しております。

 ラルク様とナギ様がヨロヨロとテーブルにつき、疲れた体に糖分補給をされる様子をニコニコと眺めるカレン様。

 そしてそれを眺める私。


「マリアの()れる紅茶は美味しいですね」


 ほうっと一息つきながら私の大好きな、ほわっとした笑顔で言われ、微笑み返す私。


「恐れ入ります」


 実際カレン様のその笑顔と言葉が欲しくて、今まで以上に紅茶の淹れ方には気を使っておりますから、今では当御屋敷一の腕前でございます。



◇◇◇



 私がこちらの御屋敷で使用人として働き出した頃に、カレン様がお生まれになりました。

 その頃はカレン様つきの侍女は私ではなく、長くこちらの御屋敷に仕えるミイナという者でした。

 大貴族の御屋敷で働くことはとても名誉なことでしたが、あくまでもお仕事であり、楽しいなどと思ったことはありませんでした。

 ミイナさんが歳を理由に退職されて、代わりに私がカレン様つきの侍女となりました。

 とても可愛らしい容姿をされていましたが、少しやんちゃといいますか、落ち着きがないといいますか……。

 お勉強の時間になると、とても上手に抜け出されて。

 その度に私を含む使用人達がカレン様を探してまわるのです。

 ミイナさんが辞めた理由は本当に歳のせいだけだったのか、少し疑いたくもなった私は、決して悪くはないハズ。


 そんな中、いつものようにカレン様を起こしに行くと、寝ぼけて起き上がろうと手をついた場所が悪く、バランスを崩してベッドから落ちてしまわれました。

 あっと思った時には既に頭から床に落ちており、慌てて近寄り声を掛けましたが返事がありませんでした。

 近くにいた使用人に、急ぎお医者様を呼んでもらい、診断の結果は脳震盪(のうしんとう)とのことでしたので、主人にその旨お伝えし、カレン様の目が覚めるのを待ちました。

 カレン様に何かあったら私はクビになってしまうかもしれないと、今思うととても不謹慎なことを考えておりました。

 カレン様の目が覚めてからの『ここはどこ』発言で、主人を含め皆が動揺し、お医者さまを呼びまくった結果、とても広いはずのカレン様の部屋はお医者さま達で窮屈(きゅうくつ)な空間となっておりました。

 あれだけの数のお医者さまを一度に拝見するなど、なかなかない光景ではありますけれども。


 記憶喪失と診断を受けたカレン様は、これまでと別人のように変わられておりました。

 甘やかされて育ち、何ごとも許されて当然と我儘放題であったカレン様。

 いえ、そう思わせてしまった周りの大人がいけないのだなどと、口が裂けても言えませんが。

 今だから白状致しますが、この頃の私は元々子どもが好きではありませんでしたが、そんなカレン様を見て更に子ども嫌いに拍車がかかっていました。

 黙っていればとても可愛らしいのに、と口には出せずとも思ってはいました。

 今の落ち着かれて和やかに微笑む姿は以前とは全くの別人というほどに違い、この世のものとは思えぬほどに可愛らしいお姿で。

 私の子ども嫌いがカレン様限定でなくなった瞬間でございました。


 今までに彼女の口から『ありがとう』などという言葉を聞いたことがありませんでしたが、変わられてからのカレン様は、ことあるごとに、和やかに微笑まれ『ありがとう』と。

 何があっても嫌な顔一つせず、


「私は幸せ者ね」


 と微笑まれるのです。

 ……五歳児の姿ではないように思えますが、そこはカレン様だからと思うことにしています。

 今まで仕事だからとこなしていたことが、カレン様が関わることで楽しくて仕方がないことに変わりました。

 起こしに行った時の、寝ぼけて目を(こす)りながら、『おはようございます』とフニャッとした笑顔を見せるところも私だけが知っている幸せでしたのに。

 最近はラルク様が私と一緒に起こしに行くと言い出しましたせいで、私だけの楽しみではなくなってしまいましたがっ。

 そして何よりも楽しいのは、カレン様を私の好きなように着飾ることが出来ることに他なりません!

 地味なドレスばかりを選ぶカレン様を理由に、毎朝私の好きなようにドレスを決め、ドレスに合わせて髪をアレンジ。

 カレン様ったら、何を着せても似合ってしまうんですもの!

 自然と鼻歌が出てしまっても、仕方がありませんよね?

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