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他には特に傷はないようなので、掌の傷に手を添えて治癒の魔法を使います。
「はい、治りました。気を付けて下さいね」
「ああ、サンキュ」
キース様は照れたように頭を掻きながら、今度こそはちゃんと椅子に座られました。
私の左肩に乗ったエテルノさんにが念話で質問されます。
『カレンは治療魔法が得意なのか?』
『はい。治療魔法と防御魔法が得意ですが、攻撃魔法は……使えません』
苦笑気味に念話でこたえていると、アルも会話に入ってきました。
『戦うのは我等に任せて、カレンは治療と防御に徹しておればよいのだ』
『そうよの、適材適所ということか』
私は彼等に感謝しつつ。
『はい。アルとエテルノさんには絶対に怪我などさせませんっ!』
その為にも、もっと魔力のコントロール力を上げなければいけませんね。
その後、教室より第一訓練室へと場所を移します。
本日は使い魔との連携訓練とのことで、皆様それぞれの使い魔を呼び出されております。
キース様の頭の上には不死鳥のピー様が、相変わらずのバランス感覚の良さで危なげなく寛いでおり、ウィリアム様の使い魔である土の四大精霊のソイル様と、リンちゃんの使い魔である風の四大精霊のヴァン様もおられます。
クラスの皆様の使い魔もおられますので、訓練室はとても賑やかです。
使い魔召喚を行ってから信頼関係を築くために、魔法学の授業中は必ず使い魔を召喚しておりましたからか、皆様使い魔との距離感が近付いているように見受けられます。
……相変わらずキース様は、ピー様に頭を叩かれておりますけれども。
多少痛みはあるでしょうが、怪我のないように叩かれている様子を見ると、あれはピー様の愛情表現なのかもしれません。
キース様も「いてーな、何すんだよ」と言いつつも、ピー様を頭の上から退かそうとされておりません。
仲良さげな二人(一人と一羽?)を見て、少し羨ましく思っていたのは内緒です。
「使い魔との連携がどれだけとれているか、チェックするぞ~。んじゃ、アルベルト・セントとレイラ・クラーク、ステージに上がれ~」
ヴァイス先生がいつも通り、何とも面倒臭そうに仰います。
アルベルト様の使い魔は全長3メートル程の紫色の双頭の蛇の魔物、レイラ様の使い魔は2メートル程の大きさのサーベルタイガーという二本の長い牙が特徴の魔物です。
ヴァイス先生の「始め」と言う言葉と同時に、アルベルト様とレイラ様が動き始めました。
初めての連携ということで、使い魔達もどう動いていけばよいのか戸惑われているようです。
正直どちらも連携が全く取れておらず、お互いの動きを阻害し合うような場面もありました。
やはり連携というのは難しいですね。その後、皆様が次々とステージに上がられますが、どなたも連携と言うには程遠いような状況です。
私もステージに上がりましたが、全くと言って良い程お二人をサポートすることが出来ませんでした。
お二人は私など居なくても強いのは承知しておりますが……。
それでは私のいる意味がなくなってしまいます。
お二人を守りながら阻害することなく、サポート出来るようにならなければ。
自分の不甲斐なさに少し凹んでおりますと、キース様が横にドカッと座られました。
「初めから連携なんて出来なくて当たり前。その為の訓練だろ?」
そう言って私の頭をクシャクシャと撫でまわし、ニカッと八重歯を見せて笑います。
気が付けば少し凹んでいた気持ちが、キース様の笑顔で浮上しておりました。
キース様のあの笑顔は、私を幸せな気持ちにしてくれる特効薬みたいです。
「はい。頑張ります」
ニッコリ笑って言うと、キース様は横を向いて更に激しく私の頭をクシャクシャと撫でまわしました。
結い直さなければならないレベルまでグシャグシャになった私の髪を見て、ステージから戻られたリンちゃんがキース様を叱りつけております。
先ほどチラッと見えたキース様の耳が赤く見えたのは、私の気の所為だったのでしょうか?
魔法学の授業が終わり、ランチにカフェへと向かいます。
先程の授業で行った使い魔との連携に対する反省点を上げていると、あっという間に到着致しました。
テーブルに座る席順はいつの間にか定着しており、私の左隣にリンちゃんが。
リンちゃんの前にはウィリアム様、そして私の正面にキース様が座られます。
いつの間にか誰が何も言わなくても、この席順に自然となっておりました。
「俺はハンバーグ&ステーキのごはん大盛り」
「じゃあ、私はパスタセットで明太子パスタにする」
「私はロコモコプレートランチと、サイコロステーキの単品を二つ(アル達の分)にします」
「私はカレードリアで」
「あれ? ウィル前にもカレードリア頼んでなかった?」
とリンちゃんが言いますと、ウィリアム様が少し照れたように顔を赤くされました。
「カレーが好きなんですよ」
ウィリアム様には珍しいその様子がとても可愛らしく、思わずクスクスと笑っていると、ちょうどお兄様と御学友の方々がカフェに入って来るところが目に入りました。
お兄様も私に気が付いたようで、御学友の方々を置いて私の方へ向かって来られました。
「カレンは今日も可愛いなぁ」
と頭を撫でられます。
「お兄様たちもこちらでランチですか?」
「ああ、たまにはカフェに行こうという話になってね。まさかカレンに会えるとは思わなかったが、来て良かったよ」




